トラックリミット:違反行為と罰則適用について
昨今あちこちで議論を巻き起こしているトラックリミット問題。スティリアGPでもMoto2ではホルヘ・マルティンが最終コーナー最終ラップの緑ゾーンはみ出しを理由に優勝を取り消されたのに、同じコーナーで同じようにはみ出したポル・エスパルガロにはお咎め無しでした。
この2年ばかり、ずいぶん厳しくなっているようにも思いますが、こうした状況を受けてFIMがレース・ディレクターのマイク・ウェッブ氏によるプレスカンファレンスの内容をまとめているので訳出。
なおトラックリミットは「コースの一番外側の線」という意味なので、そのまま訳したりもしてますが、「トラックリミットの外側」を読みやすさ優先で「コース外」と訳したりもしてます。
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レノボ・サンマリノGPでレースディレクターのマイク・ウェッブが土曜に記者会見を行いトラックリミットに関する規約について説明を行いました。
この会見ではZoom経由で多くのメディアの質問に答えるとともに、FIM MotoGP世界選手権のルールの概要の説明を行ったほか、理解の鍵となるポイントについても取り上げています。
トラックリミット違反とはどういうものですか?
トラックリミット違反とは「ライダーがコース外を走った結果有利な状況になり得る場合」のことを指します。縁石(二重縁石を除く)はコースに含まれます。縁石の外側にある二重縁石と緑に塗られたすべてのエリアがコースの外側となります。
前後のタイヤが同時にコース外に出た場合にトラックリミット違反の対象となります。テニスと同様にラインに触れていれば「イン」すなわちコース内と見なされます。前後のタイヤが完全にコース外に出た場合にのみ規則違反と見なされるのです。
ライダーが違反したかどうかは誰がきめるのでしょうか?
トラックリミットに関する決定は他のペナルティと同様、FIMのMotoGP審議委員会だけが権限を持っています。ここでの決定が最終的なもので、抗議や不服申し立てはできません。トラックリミット違反はビデオによる確認となりますが、もちろんペナルティにかかわることですから審議委員会に提出される画像は鮮明なものでなければいけません。
トラックリミットは専用のカメラと画像認識ソフト、そして複数の操作員によってモニタリングされています。そうした映像は国際映像やテレビ中継で使われているものと同じとは限りません。
コース外走行をした場合はどういうことになるのですか?
・プラクティス走行及び予選走行中
レース本戦以外のプラクティス及び予選においてライダーがトラックリミットを越えて走行した場合、その区間のタイムはキャンセルされます。これに伴い、自動的にその周回のラップタイムもキャンセルとなります。
・レース中
ライダーがコース外走行し、タイムや順位を落とした場合は、コース外走行は記録されずペナルティは科せられません。
有利になったか不利になったか不明な場合は、まずコース外走行の事実が記録されます。ミスについては多少考慮しますが、あまりに頻発する場合は有利になっていると見なします。そのライダーが他のライダーと同じコースを走っていないということになりますからね。
コース外走行が3回記録されると「トラックリミット警告」という表示がライダーのダッシュボードに送られます。5回コース外走行を行った時点でロングラップペナルティが科せられます。こちらはダッシュボードとコース脇のシグナルボードの両方でライダーに伝えられます。
コース外走行で明らかに有利になったとFIM審議委員会が判断した場合は1回だけでもペナルティが科せられます。ただしこれはペナルティに至らないその他のコース外走行には加算されません。
こうした、明らかに有利になっている場合のペナルティには、ポジション変更、タイム加算、ロングラップペナルティなどがあります。
また、コース外走行の直後にライダーが自主的にアドバンテージを返上した場合にはペナルティが科せられないこともあります。
もし他のライダーに幅寄せされたアウトにはみ出した場合はどうなりますか?
他のライダーのせいでコース外走行をした場合は、その事情が考慮されます。
だから1周目のコース外走行については、明らかに有利になるような場合を除いては記録しないことになっています。数多くのライダーが密集して走っていますからね。1周目1コーナーもトラックリミット違反は記録していません。スタート直後の1コーナーでライダーが外側に押し出されるのは良くあることですし、不必要なクラッシュを避けるためにランオフエリアを走らざるを得ないこともありますからね。
とは言えライダーがこうした状況を利用しないように、はっきり不利になったことがわからなければならない。明らか有利になったらたとえ1周目でもペナルティは科すんです。
最終ラップの場合はどうなるのでしょうか?
ライダーが接戦でポジション争いをしている場合、最終ラップでFIM審議委員会がレース結果に影響ありと判断したコース外走行については、まずそのライダーが不利益を被ったことが明確に示されなければなりません。これには順位変動の有無は関係ありません。
コース外走行でゴール順位が変わったと判断された場合、もしそのライダーが明らかに不利になったのでなければ順位を落とすかタイムペナルティを科すことになります。
最終ラップでコース外走行をした結果、そのライダーは順位争いをしている他のライダーと比べて損をしていなければならないというのが原則なんです。
最終ラップはレース結果に影響があるので、特別な取り扱いとしているんです。
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なるほど、スティリアのマルティンは「明らかに損をしているとは言えない」けどポルは「明らかに損している」という判断なのね。
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