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ストーブリーグ表2019(2018.5.21時点)

ドヴィツィオーゾとアレイシを確定。ミラーのドゥカティワークス入りとミルのスズキワークス入りも可能性として加えました。あとペドロサのレプソルホンダ継続を復活させると共に、アンヘル・ニエートのところでヤマハに乗ってタイトルを獲得するという妄想も付け加えました。

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公式リリース>フランスGP2018

ホンダヤマハドゥカティ(英語)スズキKTM(英語)アプリリア(英語)

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次に来るMotoGPの電制制御制限

電子制御が統一されたおかげでおもしろいレースが観られるようになったわけですが、ハードとソフトを統一してもまだメーカーの裁量が残っている部分があります。これが次に制限されるというMat Oxley氏の記事をMotor Sport Magazineより。
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今のMotoGPがかつてと比べて面白くなっているのにはいくつか理由がある。その一つとして2016年からのソフトウェア統一が挙げられる。

ドルナが供給する統一ソフトウェアによりマシンの性能差が縮まったが、なにより重要なのはライダーの手にマシンの支配権が戻ったことである。そんなわけでマルク・マルケスやヨハン・ザルコのリアタイヤから煙が上がるとき、それをコントロールしているのはライダーの右手なのだ。彼らはリスクと報償の間で綱渡りをしているのである。ここでがんばっているのはアルゴリズムに従ってカチコチリズムを奏でる小さなブラックボックスなのではないのだ。まあ、ある程度まではということではあるが。

何年もにわたってドルナの会長カルメロ・エスペレータはメーカー製ソフトウェアを禁止するための戦いを各社の幹部と繰り広げてきた。MotoGPマシンがコンピュータ制御のミサイルと化してしまったからだ。エスペレータにとってこの戦いに勝利し統一ソフトウェアの導入を実現した日は最高の一日だったろう(彼がどうやってそれを実現したかは神のみぞ知る、だ)。

ドルナはさらに電子制御をダウングレードすることで性能差を縮めるとともに電子制御によるライダー支援を削減する。今シーズン限りでメーカー製IMUが禁止されるのだ。

IMUとは何だろう?。電子制御ソフトが脳だとしたらIMU、すなわち慣性測定ユニット(Inertial Measurement Unit)は感覚器に相当する。電子制御システムにマシンの運動状態を伝えるのだ。ピッチング(前後の傾き)、ヨーイング(進行方向に対する左右の動き)、ローリング(傾き)といった情報だ。MotoGPマシンのIMUにはジャイロスコープと加速度計が備わっており、それぞれがこうした測定を行いつつバンクやピッチングの速さといった動的要素を計算しているのである。加速度計が最初に実際の現場に投入されたのは第二次世界大戦でのことだ。米国空軍が戦闘機パイロットにかかるGを計測しようとしたのが始まりである。

理論上はIMUは横方向のGから諸々の計算を行い、電子制御ユニットにその結果を送信するだけである。そして電子制御ユニットがトラクションコントロールやウィリーコントロール、エンブレコントロールやローンチコントロールといった様々な制御を行うのだ。

ではなぜドルナが自社製IMUを禁止したいと考えいるのだろうか?実はほとんどのメーカーが、サテライトも含めてルールをねじ曲げて、電子制御ソフトがより上手く作動するようIMUのソフトウェアを仕込んでいるのだ。これはルール違反だがそれを見つけることはほぼ不可能である。

どうやってIMUでごまかすのか?おそらくこんな具合だろう。例えばエンジニアがトラクションコントロールのアルゴリズムを変更してリアタイヤを温存し最終ラップでライダーが速さを見せられるようにしたい場合を考えてみよう。かつてMotoGPで使われていたメーカー製ソフトウェアと異なり、ドルナのキットではどうにもならない。統一ソフトウェアではバンクさせる速さとライダーが必要とするトルク(つまりスロットル開度)を関連づけられないからだ。そしてエンジニアはドルナのソフトウェアをいじることはできない。誰かがごまかしていると疑えばMotoGPの技術スタッフは好きに中身を検証することができるのだ。

そこでエンジニアは下流の電子制御ユニットをいじるのではなく、その上流にあるIMUをいじるのである。こちらは独自の計算ソフトを使っており、ドルナの支配下にはない。そもそもMUソフトは非常に基本的な機能しか想定されていない。ジャイロスコープと加速度計からの信号を整理して電子制御ユニットに計算結果を送るだけだ。

しかし勝利に向けて必死になっているエンジニアだかチームだかメーカーだかは、要するにそこにいる全員と言うことだが、彼らはIMUをもっと役立つようプログラムできるのである。バンキングスピードに関するアウトプットを他の数値と組み合わせて自分のところのマシンのトラクションコントロールがライバルよりうまく作動するようにできるのだ。

これがMotoGPで電子制御に苦労しているチームとそうでないチームの差が出ている理由なのだろうか?モヴィスター・ヤマハのヴァレンティーノ・ロッシとマーヴェリック・ヴィニャーレスは悪夢のようなトラクションコントロールシステムに悩まされている。しかしこれは別の理由によるものだろう。

事情通なら誰でも、IMUでごまかしていないところはひとつもないと思っている。レースというのはそういうものだ。自社製電子制御ユニットとソフトを禁止したにもかかわらず自社専用IMU(自社製か他社製かを問わず)を許可するというのは、当然のごとくIMUでどう差をつけるかという競争に直結するのである。

モヴィスターに対する他社の優位性はどちらかというとドルナが供給するマニエッティ・マレリ社製ソフトウェアに対する知見の差だろう。システムのマップやアルゴリズムに関する複雑な数字を効果的に組み合わせるには深い知見が必要なのだ。他社は元マニエッティのスタッフを雇用したり、マニエッティと緊密な関係を築いていたりする。ヤマハだけが自分の力でシステムの秘密を解き明かそうと決意しているように見えるのだ。そのやり方にも意味はある。ヤマハの電子制御エンジニアはこれを通じて多くを学ぶことができるのだ。現代のレースでは非常に重要な要素である。しかしそのせいでロッシとヴィニャーレスが結果を出せないでいるのも事実だ。

もちろん統一IMUがどんな結果をレースにもたらすのかは誰にもわからない。しかし自社専用IMUの禁止は合理的な判断である。電子制御ユニットとソフトウェアを統一したにもかかわらず自分のところのIMUでごまかせるとしたらどうだろう?

最もありそうなのは統一IMUのおかげで異なるマシン同士の性能差はさらに小さくなるということだ。これは良いことである。性能差が小さければレースも接戦になり見応えが増すからだ。ファンにとっては素晴らしいことだし、ひいてはドルナにとってもパドック全体にとっても素晴らしい結果をもたらすことになるだろう。とは言えレースが接戦になるということはアグレッシブさも増し、接触も増え、転倒も増えるということも覚えておこう。これは最近になって顕著になっているのだ。
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もう少し付け加えると、IMUで実際の数値から得られるものとは異なる計算結果を意図的に電子制御ユニットに送ることで、電子制御ユニットからの介入方法をドルナ/マニエッティ・マレリの想定とは異なる方法でやらせてるってことみたいですね。こういうのも面白いんですが。

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公式プレビュー>フランスGP2018

ホンダヤマハドゥカティ(英語)、スズキ(未)、KTM(英語)(未)、アプリリア(英語)

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MotoGPよしなしごと:ヘレス

前回アメリカズGPに続いてってことはおそらくシリーズ化されるんですね。ってなわけでMotor Sport MagazineよりMat Oxley氏が語ります。
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多重クラッシュ-責任は誰に?

MotoGP界で最も肘出し上等な2人がアルゼンチンで激突してから1か月後のヘレス。こんどは最も行儀の良い3人が絡み合って転倒してしまった。

今回悪いのは誰だろう?ドヴィツィオーゾはブレーキングでロレンソの前に出て少しだけワイドにはらむ。そこをすかさずロレンソがインに入り、ペドロサと衝突。3人がそれぞれ事故の原因を作ってはいるが、行動が違ったら今回の事故は避けられたというライダーを一人だけ挙げるとすればそれはロレンソだ。彼は自分が3人の集団の中にいることを(ピットボードの「G3」という表示で)知っていたのだ。つまり彼は縁石に向けてカットインする自分の後ろに誰かがいることを知っていたということである。

「MotoGPでも最もクリーンな3人のライダーなんですよ。だからみんなが転倒してしまったのは運がなかったんです。」。これがロレンソの言い分だ。彼はマルケスに抜かれるまで7周にわたってトップを走っている。「何もかもがあっという間でしたね。僕はインにカットインして最大加速で行った。そしたらダニがそこにいたんです。ドミノ倒しみたいでしたね。本当に運が悪かった。特にタイトル争いをしているアンドレアにとってはね。でも頭の後ろに目は付いていないわけですから」

これまでも自分から議論を巻き起こすような走りは決してしなかったドヴィツィオーゾはチームメイト、そしてペドロサのせいだと言っている。「ダニとホルヘがミスをしたのは間違いないですね。ダニは3人の中で一番後ろを走っていて、後ろを走ってるってことは状況を一番うまくコントロールできるはずなんです。彼は通常通りのラインを走っていたけど、でもいつもよりスピードは出ていた。もう一人を負かしたかったからですよ。一方ホルヘも見てなかった。彼は自分の後ろのライダーのことを考えてないまま、とにかく早くコーナーを立ち上がろうとして速すぎるスピードでカットインした。誰かがペナルティを受けるべきだとは言ってないですよ。でもノーポイントでうちに帰る羽目になってしまったんです」

ホルヘはインを閉めるためにスピードを落としていた

ドヴィツィオーゾは他のことでもロレンソを責めている。そしてドゥカティのピット内には徐々に亀裂が入り始めるとほのめかしているのだ。

最初は2017年のヴァレンシアだ。ロレンソはタイトル争いの渦中にあるチームメイトに道を譲り損なっている。もちろんその時チームは冷静さを保っていると主張してはいたが、それ以降ドゥカティのダヴィデ・タルドッツィやパオロ・チアバッティ、クラウディオ・ドメニカリといった幹部たちがこれまでで最も高い契約金を払っているライダーに対して向ける視線が冷ややかになっているのには誰もが気付くようになっているのだ。そしてロレンソは、ドヴィツィオーゾがドゥカティでの自分の立場を貶めていると最近になって言い始めている。そして日曜にはドヴィツィオーゾはヘレスでのロレンソの走りについて不満の意を評している。もちろんチームオーダーを出すような時期ではないのだが。

「誰もがフロントには限界まで仕事をさせていたんです。だからみんなフロントから転けてたんです」。1周目の8位から前に上がっていった彼はこう言っている。「もしマルケスがトップに立った時点でホルヘの位置にいたなら彼についていけた可能性もあった。マルクは速かったけど不可能ではなかったと思います。
 ホルヘの後ろでかなりロスしちゃったんですよ。彼は速かったけど、コーナー中盤ですごく遅かったんです。それにフロント周りにかなり手こずっていた。彼も僕に抜かせたくなかったんですよ。だからマルクに離されてしまった。彼はコーナー中盤でかなりスピードを落としてコーナーでインを閉めてたんです。だから彼を抜くのに10ラップも使っちゃったんです。ミスは犯したくなかったですからね。僕も限界で走っていて、フロントは何度もロックしましたしコーナー中盤でも2回ばかりフロントからいきそうになった。とにかくホルヘを抜きたかったんです。1周もあれば彼を離せるってわかってたんですよ。ダニも限界でしたしね」

イアンノーネのスズキ残留可能性は30%

パドックにおいて、誰がどこに行くというネタを追いかけることほど時間の無駄はない。何百万ユーロとライダーの実績とメーカーの評判が鍵なのだが、ではサイン済みの契約が固まった上で取り交わされるまで誰もジャーナリストに真実を教えてくれないのは何故なのだろうか?契約発表まではライダーもメーカーのスタッフもライダーのマネジャーも、誰が話したことであれ全く価値はないのだ。

とは言え耳を傾けるべきマネジャーが一人だけいる。常に真実を語っているとは限らないとしてもだ。それはマックス・ビアッジ、ロリス・カピロッシ、マルコ・シモンチェリのマネジャーを歴任し、今はアンドレア・イアンノーネの面倒を見ているカルロ・ペルナートである。

来年の契約はほぼ決まってきた今、注目を集めているのはイアンノーネとロレンソだ。2016年を最後に勝利がない二人は自分の価値を上げようと必死である。しかし2019年のワークスシートはかなりの速さでなくなりつつある。ロレンソもイアンノーネもスズキの可能性がある。有力なのはロレンソの方だ。しかしイアンノーネがCOTAとヘレスで表彰台にのったことで状況が変わってきたようだ。

「スズキとアンドレアについて話し合いをする前にもう1~2レース良い結果を挙げたいところです。ムジェロとかでね」とペルナートは言う。「スズキは調子を上げてきていて、現時点ではアンドレのスズキ入りの可能性は30%というところですね。でもスズキはロレンソをどうしてもほしいというわけではないと思いますよ。
 もうワークスシートはそれほどもう残ってません。ドゥカティに一つ、スズキに一つ、アプリリアに一つ。あとプラマックにワークスマシンが一つありますね。ロレンソがドゥカティに残るとは思えないですね。ドゥカティはジャック・ミラーがほしいんですよ。そうなるとプラマックに一つ空くことになる。(ペッコ)バニャイアが来るでしょうね。あと(ダニオ)ペトルッチはそれほど良い状況にはない。彼はアプリリアに行くことになるでしょう。そうなるとスズキはアンドレアとロレンソを秤にかけることができる。スズキは自分たちが有利になるまで待つんでしょう。スズキに来たいの?じゃあうちの言う条件で、ってね。
 ホンダがもう1年ペドロサでいくのは間違いないですよ。マルクにとっては最高のチームメイトですからね。ホンダは(去年のMoto3チャンピオンのホアン)ミルを待ってるんですよ。ドヴィツィオーゾはドゥカティで決まりですね。彼は良くある駆け引きをしてるだけですよ。それで他のメーカーと話をしてるだけです。あとKTMがザルコと契約したのは去年の12月ですよ。いいクリスマスプレゼントですね」

イアンノーネの大躍進の要因はスズキの頑張りだけではないというのがペルナートの考えである。「この何戦かアンドレアはライディングスタイルを変えてるんです。ドゥカティの乗り方ではスズキを走らせられないんですよ。ぎりぎりまでブレーキングを我慢するとかじゃね。彼はブリーラムとカタールのテストでライディングスタイルを変えようとし始めたんです。ずいぶん前に彼には言ってるんです。アンドレア、マシンが望むような乗り方をしなきゃだめだよってね」

ドヴィツィオーゾのマネジャー、シモーネ・バッティステラは2013年以来走っているメーカーとサインする直前まで来ていると認めている。「他とは交渉はしてませんよ」と彼はヘレスで言っている。

ドゥカティはミラーの時間?

ドゥカティがロレンソと折り合えないとしても、彼らは生まれ変わったオージー、ジャック・ミラーとの交渉を有利に進めることができる立場にある。

ドゥカティの今日の大成功にも貢献している元レーサーのタルドッツィはミラーのことをかなり買っている。しかしあまり早い内からプレッシャーを掛けたくはないとも思っているようだ。

「ジャックはまだまだ成長の過程にあるんです。MotoGPに参戦してまだそれほど良い状況に恵まれたわけではないですからね。だからまだまだ彼は伸びると思いますよ」とタルドッツィは言っている。「まず彼には安定性を求めたいですね。そうなれば速く走るための努力に取りかかることができる。彼はそういう段階にあるんです。でもうちとしてはじっくり待って、彼にプレッシャーを掛けないようにしたい。彼についてはもう少し時間が必要です。たぶんもう1年ってところでしょうか。ことによったら2年かもしれません。でも彼には速いドゥカティライダーになる素質はあると信じています。彼の乗り方はうちのマシンに完璧にマッチしてるんです。マシンが曲がらなくても彼は曲げられるんですよ!」

ドゥカティの最高のライダーが皆ダートトラック育ちのオーストラリア人であるというのは偶然ではない。ケイシー・ストーナー、トロイ・ベイリス、そしておそらくミラー。ダートトラッカーは常にリアブレーキを使ってマシンをコントロールする。つまりミラーにとってそれはスロットルを開けるのと同じくらい自然なことなのである。一方ドヴィツィオーゾもロレンソもペトルッチもこの技術をデスモセディチに乗ってから学ばなければならなかったのだ。

「自分のリアブレーキ温度とか見たくも無いですよ」。ニヤリと笑ってミラーはこう言った。ヘレスでのことだ。ここはいくつもの高速コーナーがあるため彼の右足は大忙しなのである。「リアブレーキは踏みっぱなしですね。他のマシンじゃ考えられないんじゃないでしょうか。ホンダでもリアブレーキは使ってましたがマシンを止めたりウィリーをおさめたりするためでしたからね。このマシンだと曲げるために使うんです」

ミラーは2019年に向けての噂については一笑に付している。「ドゥカティとの間にオプション条項があるんですけど、行使するかどうかは向こうが決めることですよ」

さよならウイング

ヘレスの土曜、MSMA(モーターサイクル・スポーツ製造者協会)がGPコミッションに対して今シーズンを最後に空力付加物を禁止してはどうかと提案している。つまり最終戦ヴァレンシアGP後に行われる2019年に向けてのMotoGPテストでは昔のボディワークが復活するだろうということだ、ウイング無し、整流板無し、その他の空力付加物も無しだ。

この決定の背景にあるのは主としてコストの問題である。とは言えMSMAが合意に達したというのは驚きだ。全会一致でないとこうした規制の変更はできないことになっているからだ。ほとんどのメーカーは空力パーツの禁止を喜んでいるだろう。しかしドゥカティはそうではない。となれば別のところで何らかの譲歩があったと見るべきだろう。

「メーカーの皆さんがこちらに来て言ったんです。もう戦争みたいになっていてコストをなんとかしなきゃいけないってね」そう語るのはMotoGPのテクニカル・ディレクター、ダニー・アルドリッジだ。「彼らはカタール、アルゼンチン、テキサスと会議をやって、ここで2019年に向けての提案を持ってきたんです。まだ決定ではないですけどこれまでのようなデザインに戻りたいということでした。ここでいちばん大事なポイントはカウルは二重にはしないということですね。なのでダクトやら箱やらそういう付加物はなしってことです」

ロッシ:「ヤマハはがんばってくれないと」

ヘレスでもヤマハは相変わらずもがいていたが、これまたいつも通り大した成果は得られなかった。ヴァレンティーノ・ロッシはトップからは8秒遅れの5位、マーヴェリック・ヴィニャーレスはさらにそこから7秒遅れの7位だった。

マシンの安定性とトラクションが最大の問題である。超高速コーナーではマシンがタイヤのエッジぎりぎりで走る時間が長くなる。それでヤマハの弱点が際立ってしまうのである。

「コーナー脱出でスピードがのらないんですよ」とロッシは言う。「メカニカルグリップとかの問題かもですね。チーム内では別の考えもあるんですが、僕が思うに電子制御の問題ですね。他のメーカーはこのところ電制制御分野ですごく前に言っている。現時点では答えは見つかってません。ヤマハには頑張ってもらわないと。土曜のプラクティスでザルコを追いかけてたんですよ。彼のライディングだとタイヤにそれほど荷重は掛けてないように見える。あとマシンに乗ってる彼は小さく軽く見えるんです」

ヴィニャーレスはそれ以上に混乱しているようだ。

「メカニカルグリップの問題を抱えてるんです。でも電子制御じゃどうにもならない。むしろ問題が大きくなってるんです」と彼は言う。「オースチンではすごくいい感じで、かなり良くなったんです。でもここでは去年より遅くなってる。難しいのはサーキットによってマシンの感触が違うことなんですよ。だからコースによって乗り方を変えてるんです。オースチンではいつもの自分のライディングができたんですよ。ちょっとアグレッシブでブレーキングを遅らせてコーナーで攻める。ここではそれができないんです。だからマシンをカバーするためにいつもよりスムーズに走ろうとしてるんです」

ロッシもヴィニャーレスもザルコのデータとの比較を行っている。しかし今のところそれも効果が出ていない。ヴィニャーレスはこう言っている。「難しいですね。マシンがいいときは凄く速く走れるんですけどね。でもマシンがダメなときは問題だらけになるんです。だから比較するのも難しい。それにザルコの乗り方は僕とは全然違いますしね」

マルクVDSのトラブル

注意深く見ていればパドックにはいつでも何かのトラブルが現在進行形で転がっているのが見つかるだろう。バイクレーサーというのは走り続けるために常に金を稼ごうとするものなのだ。

ヘレスでは来年のMotoGPに向けてスズキとGSX-RRを走らせる交渉をしているマルクVDSのMotoGP及びMoto2チームに関する噂が飛び交っていた。チームオーナーはビール長者のミハエル・ヴァン・デル・ストラテン伯爵で、運営は元ワールドスーパースポーツチームのオーナーでカワサキのMotoGPチームのマネジャーも務めたことのあるミハエル・バルトロミーだ。二人は仲違いをしているのだが、これは不適切な会計処理が原因だという話である。バルトロミーは何も問題になるような行為は行っていないと主張しているがヴァン・デル・ストラテンは争いを法廷に持ち込みたいと考えている。

そして以前バルトロミーのチームコーディネーターで彼にクビにされたマリーナ・ロッシが臨時でチームリーダーを務めるとのことだ。Moto2を走るサム・ロウズは彼女のボーイフレンドである。

今シーズンはもう走らないのではないかという噂はヴァン・デル・ストラテンが公式に否定している。彼によればマルクVDSは少なくとも2021年まで走るということである。

クラッチロー:速いのだけど結局転倒

不適切な会計処理(という噂)の一方で、ヘレスのポールシッター、カル・クラッチローはインサイダー取引を疑われないようスーパーバイクレースでの賭を禁じられている。

彼は言う。「インターネットの賭けサイトに行ったんですよ。ボクシングの試合に賭けようと思ってね。bet365(訳注:スポーツ関係の英国の公認賭けサイト)のアカウントを取得して、それでスーパーバイクで賭をやろうと思ったんです。ってったって大した額じゃなくて5ポンド(約750円)くらいですよ。そしたら翌日e-mailが来たんですよ。「あなたはバイクレースへの賭を禁じられてます」って。なんで?レースで何が起こるかなんてわかるわけないじゃないですか!秘密の情報でも持ってると思ったんですかねぇ」

クラッチローはヘレスでもその速さを見せつけた。彼は金曜のプラクティスをリードし、そして土曜にはポールを獲得したのだ。わずか数週間前にここでテストをしているレプソルのライダーより速いラップタイムを出したのである。

悲しいことにレースでは全てがまずい方向に転がってしまった。スタートを失敗し、リアのトラクションに苦しみ、結局フロントから転倒しているのである。どうしてこんなことになったのだろうか?

「フロントタイヤをオーバーヒートさせちゃったんです。リアのグリップに苦しんでたんでコーナー進入でカバーしようとしたんですよ」というのが彼の説明である。
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ミラーがワークス説かー。

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MotoGP:電子制御と加速

昨日訳したMotoMatters.comでもロッシが「うちの問題はマシン自体より電子制御。割合で言えばマシン25、電子制御75」って言ってましたが、そこをさらに掘り下げたPeter McLaren氏の記事をCRASH.netより。
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冬期テストの頃からヴァレンティーノ・ロッシが繰り返し強く主張していたのは、ヤマハは電子制御に手を入れて加速を改善すべきだということである。

「ドゥカティはみんな加速がいい。それは彼らがうちより電子制御でかなり前に言ってるからなんですよ」。これは彼が2月に言っていたことである。「MotoGPが統一電子制御になってから問題が出始めたんです。ホンダとドゥカティは僕らが知らないことを知っている」

別の場面ではこうも言っている。「去年ホンダとドゥカティは電子制御分野に資金も人員も投入したんですよ。ヤマハはそこが充分じゃなかったんでしょう。それで遅れをとって…。
 がっかりですよ。だってその他の部分では良くなってるんですから。僕の理解では電子制御をなんとかするのって時間が掛かるんです。ブラックボックスが相手ですから」

先週末は滑りやすいスペインの路面で苦労続きだったロッシはM1の問題は25%程度が機械的なもので75%が電子制御の問題だと指摘している。

そして月曜のテストを終えた彼はこう言っている。「加速については少しは前進しましたね。でも最初の一歩を踏み出したに過ぎない。バルセロナ以来、やっと重要な部分に手を着けられたってことだといいんですが」

しかし電子制御はソフトもハードも共通である。ではメーカーはどうやって電子制御から加速力を引き出すことができるのだろうか?

MotoGPの技術監督、コラード・チェッキネリによれば「参照用数値で決まる」のだそうだ。

説明しよう。電子制御ユニットの働き(つまり計算し、設定を入力し、その上で機能する)は同じである。各メーカーはそれぞれのマシンに合わせて「もしこうなったらこうしろ」と決めるための何千もの数値をシステムに入力するのだ。

この数値がチェッキネリが言う「参照用数値」である。

2006年から2010年までドゥカティのレース部門の副総監督だったチェッキネリはCRASH.netにこう語っている。

「いわゆる『シャーシ制御プログラム』と呼ばれるトラクションコントロールとウィリーコントロールは同じ機能を使ってるんです。つまり、センサーからの情報とインプットして、そのインプットに基づいてトルクを削るように命令を出すんです。
 この命令はもちろんマシンが限界に達していなければ「0」として出力されます。
 それぞれの機能が拮抗していて、だからウィリーじゃなくてリアが空転している時にはトラクションコントロールの方が優位になってトルク削減を最大にもっていく、つまり後輪に伝わるトルクは最小になるんです」

これはあくまで直線での加速の場合だ。

「通常機能するのはトラクションコントロールとウィリーコントロールなので、そのセッティングを行います。スタートにはローンチ・コントロールですね。
 ストレートで加速しているとトラクションコントロールとウィリーコントロールが並行して介入しています。どちらかがトルクを削らなければと判断すると、トルク削減の命令を出すわけです。
 一番わかりやすいのはドライコンディションでの直線加速ですね。その場合はウィリーの方が先に限界に来ます。
 そのときウィリーコントロールの参照用数値が低すぎたらどうなるでしょうか?マシンがウィリーする前にトルクを削りに掛かるかもしれないし、ウィリーが問題となるほどでない段階で削りに掛かってしまうかもしれない。そうなると加速が鈍るわけです。
 これは公道用の4輪でよくある話ですね。すぐにトラコンが介入するんで、それが無い方がうまく走れるってなったりしますよね。それが無い方がいいって思うでしょ。まあたいていは間違いなんですけどね。
 そんな感じでヤマハのライダーが、自分のマシンが本来ならもっと加速するはずだって思ったら、マシンのポテンシャルをフルに発揮できるようなセッティングをしろってエンジニアに要求するわけですよ。
 これって限界のこちら側にどう留まるかのせめぎ合いなんです。そしてぎりぎりまで限界に近づかないといけない」

ECUの参照用数値がどれほど重要かはわかったが、ではメーカーはどうやって適正な数値を見出すことができるのだろうか?

「主に計算なんですけど、試行錯誤も少しは必要ですね」というのがチェッキネリの返答だった。

「机上ですべてを計算し尽くすことはできないんです。だって実際にサーキットに来たら路面に埃は浮いているし、路面温度やタイヤもその時によってそれぞれですからね」

さらに面倒くさいことに、この参照用数値はサーキット毎に設定しなければならないのだ。

その設定値をできるだけ早く見出すために、特にサーキット入りしてからの数値変更のために、メーカーはシンプルなインターフェイスを用意してこうした数値をまとめていじれるようにしている。

「普通メーカーがやっているのはインターフェイスの開発ですね。自分たちで計算するためのツールと私たちが供給する参照用数値設定ツールの仲立ちをするものですね。それがあるとソフトウェアの使用している言語で参照用数値を設定しやすくなるんです。みんなそれぞれ自分専用のインターフェイスを作って参照用数値設定ツールをいじってるんです。
 例えば進角を1°進めるとトルクがどう減るかを理解するためにはエンジンの状況をかなり精密にシミュレートできないといけない。でもそれは別のプログラムの話なんです。そうやって参照用数値を設定していくんですよ」
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めんどくせー!(←シングルエンジンのキャブセッティングで気が狂ってた)

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2018ヘレスMotoGP日曜まとめ:クラッシュ、責任の所在、タイトル争い

いやはや、まれにみる多重クラッシュでしたね。でもまああれは誰かが悪いわけではない事故でした。そんなわけで日曜まとめをMotoMatters.comより。
あ、それからこれまでは日本語ではなじみがないのでincident(インシデント:重大事故につながるような小さな問題)もaccident(アクシデント:重大事故)もどちらもアクシデントと訳してきましたが、やっぱり区別をつけた方がわかりやすいかもと思い直して使い分けることにしました。
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レースにはドラマが付きものだ。24人のライダーを270馬力を誇る24台のMotoGPマシンに乗せるのだ。その結果を確実に予想できるわけはない。レースの前に頭の中で下書きしたありきたりのつまらないストーリーはフラッグが振り下ろされる頃にはたいてい煙となって消え失せる。レースが新しい現実を創り出すのだ。そしてその現実は驚くべきもので有り、予想だにしなかったものである。

だからといって我々はプラクティスの終わった後でレースがどんな風になるか予想せずにはいられない。ヘレスのようなタイトなコースでは追い抜きは難しい。だからこそホールショットを奪ったライダーは後続とのギャップを広げながら独走できるのだ。予選後、ワークス仕様のホンダの3人が最も強いことは明らかだった。レプソル・ホンダのマルク・マルケスとダニ・ペドロサ、そしてLCRホンダのカル・クラッチローが他のライダーから頭一つ抜きんでていたのだ。表彰台はRC213Vが独占するだろう。そして他のメーカーが残り物をめぐって争うことになる。ドゥカティはスズキと争い、ヤマハも最終的にはペースを取り戻し戦線に復帰するだろう。

しかし当然のように結果は大きく異なるものとなった。確かにホンダがレースを支配した。確かにドゥカティは2台のスズキとレース中にバトルをしている。ただし思っていたのとは別の場所だ。確かにヤマハはペースを取り戻したようだ。ウィルコ・ジーレンベルグがレース前に私に語ったところでは、日曜午前のウォームアップで少しだけグリップを取り戻したとのことだった。しかし私たちがスタート前に予想していたストーリーとは全く異なるレースだったのである。

ロケットマン

我々が思っていたようなレースにならないと予感させる最初の徴候はホルヘ・ロレンソのロケットスタートだった。グリッド4番手から一気に前に出てトップを奪ったのだ。ダニ・ペドロサとヨハン・ザルコがそれを追う。一方ポールシッターのカル・クラッチローのスタートはロレンソとは対照的で、彼は4位に落ちてしまう。その後ろではマルク・マルケスがトップに立つべく追走を開始する。

ロレンソは序盤の周回でリードを保つ。一瞬だけダニ・ペドロサにトップを明け渡すものの、すぐにまたトップに返り咲いた。ロレンソはブレーキでの強さを存分に発揮する。そしてドゥカティが最も得意とするコーナー立ち上がりでの加速も完璧に活かしきっていた。ペドロサには彼を抜くことは不可能だった。ペドロサにとってだけではない。ロレンソがポジションを守るためにあらゆる能力を駆使したことが結果としてタイトル争いに大きな混乱を巻き起こす悲劇につながるのだ。

しかしロレンソのディフェンスは後ろからやってくるマルク・マルケスからのアタックを防ぐことはできなかった。マルケスはカル・クラッチローとヨハン・ザルコを早々に片付けると次はロレンソに狙いを定め、そしてロレンソの名を冠した最終コーナーで非難の余地無くクリーンに彼を抜くのである。そして彼はペースを上げる。しかし彼の後に続く一団から逃げることはできなかった。この一団にいたのはホルヘ・ロレンソ、ダニ・ペドロサ、アンドレア・ドヴィツィオーゾ、カル・クラッチローだ。しかしクラッチローはグループに着いていこうと無理をした結果、フロントを滑らせて1コーナーで転倒してしまう。彼によればこれはリアのグリップ不足のせいだということだ(カーボンスイングアームでなかったというのが原因だと彼は考えているようだ)。それでプッシュしすぎてフロントに熱が入りすぎたのだそうだ。残ったロレンソ、ペドロサ、ドヴィツィオーゾがマルケスを追走し、マルケスはなんとか逃げようとする。

デスモの力

その中で最も強いのはアンドレア・ドヴィツィオーゾであることがすぐに明らかとなる。9周目、彼は最終コーナー進入でダニ・ペドロサから3位の座を奪い獲る。しかしドヴィツィオーゾはチームメイトにつかえてしまう。そして抜きあぐねる。一方マルケスは後ろの3人からの差をつけ始める。彼のペースはロレンソより0.1~0.2秒ほど速かったのだ。

ドヴィツィオーゾは懸命に抜こうとするが、しかし同時にこの位置につけているというだけでも随分な頑張りであることにも気付くのだった。この週末のスタートはもっと下位にいた。プラクティスを支配した3台のホンダからは大きく遅れ、改善は絶望的に思えていた。しかしデータを深く分析した結果、彼はウイング付きカウルを使うことを決意する。ヘレスでは当初使うつもりはなかったものだ。それが彼の未来を変えた。そして今彼は表彰台が狙える位置を走っている。

「表彰台が狙えるって言ってるときは、吹かしこいてるわけじゃないんですよ」とドヴィツィオーゾはメディアに対して上手い表現をしてみせた。「昨日の午後に話しましたけど、午前中から午後にかけてすごく改善できたんです。何が起きるかわからないってことですね。でも本当の速さが必要だった。最終的にはそれ以上でしたね。速いライダーがみんな限界で走っていて、しかもみんなミスをしてたんです。一方僕は周を重ねる毎に良いラインを走れるようになって、いい感じで走れるようになって、しかも安定した走りができて、速さもすごくあったんです」

問題は彼がグリッドの遙か後方からのスタートとなったことだ。そして彼はチームメイトに進路をふさがれていた。彼は探りを入れたりつついたりするが、どうしても抜くことができない。「ホルヘの後ろで時間を使いすぎましたね。彼は速かったけど、コーナー中盤ですごく遅かったんです。それにフロント周りにかなり手こずっていた。彼も僕に抜かせたくないだろうとは思いましたよ。彼はコーナー中盤でかなりスピードを落としていた。それでマルクとの差がついちゃったんです。彼は無理していて、しかもコーナーでインを閉めるためにスピードを落としていたんですよ。だから彼を抜くのに10ラップも使っちゃったんです。ミスは犯したくなかったですからね」

ペースは速かったのだ。ファステストラップは2017年より1秒近く速かったのである。そしてミスを犯す余地はほとんどなかった。「誰もがフロントには限界まで仕事をさせていたんです。だからあんなにクラッシュが多かったんですよ」とドヴィツィオーゾは言っている。カル・クラッチロー以外にもアレックス・リンスも転倒している。この4レースで3回目だ。カレル・アブラハムやトム・ルティも転倒組だ。彼らは皆ペースを維持しようとしてフロントの限界を超えてしまったのだ。「フロントにはぎりぎりまで仕事をさせていて、コーナー中盤でロックしたりしたんです」とドヴィツィオーゾは語っている。「3回くらいフロントから滑ってました。ミスはしたくなかったんです。マルクが逃げてしまったんでリスクを冒す必要なんてなかったでしょ?ホルヘを抜くだけで良かったんです。だってその時は僕の方が少しだけ速かったですからね。でもそこに持ち込めなかった。彼はコーナー中盤でスピードを殺して、完璧に加速してたんです。だから僕は彼を抜こうともできなかったんですよ」

衝突軌道

18周目、最大のチャンスを見出したと思ったドヴィツィオーゾはそれに賭ける。フィニッシュラインを通り過ぎ1コーナーでロレンソに近づきながら狙っていたチャンスだ。彼は5コーナーを素早く立ち上がってバックストレートでロレンソにピタリとつける。そして6コーナー、ドライサックへの突っ込みでいよいよ前に出られそうになる。しかしこのコーナーで抜くのは難しいのだ。今までもここでは深く突っ込んでコーナーを曲がりきってもワイドにはらんでしまうということがよくあった。ロレンソはドヴィツィオーゾのインに入って可能な限り鋭角にコーナーを曲がり、そしてドヴィツィオーゾの前に出ながら、次の左7コーナーに向けて備えを固める。

そこから全てが間違った方向に行ってしまう。ロレンソが選択したラインはダニ・ペドロサとの衝突軌道だったのだ。ペドロサはインにきっちりついて6コナーを曲がろうとしている。どちらも相手が見えないまま接触し、二人とも地面に投げ出されてしまう。より正確に言えば、地面に投げ出されたロレンソはそのままアンドレア・ドヴィツィオーゾをなぎ倒す。一方ペドロサが投げ出されたのは空中に向けてである。リアタイヤがグリップを取り戻した瞬間、マシンが彼を放り出したのだ。2レースで2回目のハイサイドだ(訳注:アメリカでは喰らっていないので3レースで2回が正解かと)。前回はアルゼンチンだ。この時はヨハン・ザルコに押し出されてスロットルを開けながら水たまりに突っ込んでいる。今回はその時に比べればマシな結果に終わっている。尻にひどい痣を作ったもののアルゼンチンで負った手首の怪我を悪化させずに済んだのだ。

この転倒劇は様々な方面に大きな影響を与えることとなった。まずマルク・マルケスが易々と勝利をもぎ取ることになった。彼はタイトル争いでも大きくリードを広げることになる。そしてヨハン・ザルコとアンドレア・イアンノーネに表彰台をもたらしている。とは言えイアンノーネはプラマック・ドゥカティに乗るダニオ・ペトルッチの猛攻を凌いでの表彰台獲得だ。ヤマハはこのクラッシュのおかげでそれほど恥ずかしい結果にはならずに済んでいる。ヴァレンティーノ・ロッシは本来の8位という残念な結果と比べれば望外とも言って良い5位に入ることができた(とは言えロッシは雇い主に対してはそれほど優しい言葉をかけることはなかった。結果が運であることを正確に指摘し大改良を求めている)。

そしてなにより今回のクラッシュで最も影響を受けたのは、かなりのポイントを失ったせいで人生が必要以上に厳しくなったアンドレア・ドヴィツィオーゾである。彼はマルケスに対してわずか1ポイントのリードでヘレス入りしている。ロレンソの後ろでゴールしていればマルケスを8ポイント差で追いかける形でスペインを後にできたはずだ。そしてもしロレンソを抜くことができたとしたらその差は4ポイントだったのである。しかし実際にはランキング5位に後退しマルケスには24ポイント差をつけられることとなった。せめてもの救いはドゥカティが不得意だったコースで速く走れたことだが、これほど大量のポイントを失った身には何の慰めにもならないだろう。

責任の押し付け合い

ではこのクラッシュの責めを負うべきは誰だろうか?レースディレクションはかなりの時間をかけて念入りにクラッシュに至った経緯を調べ、これをレーシングインシデントであると判断した。これは私が話を聞いた全てのライダーの意見と一致する。当事者も同じ意見だ。しかしこれまた現実は事前に想定した物語を裏切るという実例のひとつとなっている。1周目は別として、MotoGPで3人のライダーを巻き込むクラッシュはほとんど見られない。しかしその当事者が例えばマルク・マルケスとダニオ・ペトルッチだったとしたら誰も驚かないだろう。

しかし今回巻き込まれたのはグリッドでも最もクリーンな走りをする3人だ。これは私の言葉ではない。アンドレア・ドヴィツィオーゾ、ホルヘ・ロレンソ、ダニ・ペドロサの3人ともが別々に同じ言い方をしているのである。レースディレクターのマイク・ウェッブも我々に向かって同じ言葉を発している。ドヴィツィオーゾがペドロサを抜いたやり方がその典型だ。ロレンソに対するパッシングも、確かに野心的ではあったが危険とは程遠いものだった。ドライサックで抜かれたロレンソのカウンターも当然の動きである。インに入り込みクリッピングを奥にとる。ペドロサはそこに隙を見出し、ごく普通のイン側のラインを走っていく。こんな、運がなかったとしか言い様のない一連の流れについて、誰がどれくらい責めを負うべきかはとても判断できるものではないだろう。

これがレーシングインシデントかどうかはさておき、当事者たちは良い気持ちとは程遠い状態である。ペドロサがピットに戻って最初にしたのは怒りにまかせて叫ぶことだった。ドヴィツィオーゾは怒っていたしイライラもしていた。ロレンソも同じだ。3人とも誰かに責めを負わせまいと最大限努力してはいたが、それでも遠回しな批判は見て取れた。3人の一致した意見はドヴィツィオーゾの責任が最も軽いということである。接触したのはロレンソとペドロサであり、ドヴィツィオーゾはその結果としてはじき飛ばされたのである。しかしペドロサもロレンソも相手の方が自分より責任が重いと感じているようだ。

ロレンソの視点

「状況ははっきりしてますけど、正直これについては語りたくはないし、誰が悪いとか自分が悪いとかも言いたくないですね。だって僕らはGPの中でも一番クリーンな走りをする3人なんですよ。3人にとっては運がなかったとしか言い様のない出来事でした。3人とも転倒しちゃうなんて。僕らはこういうのとは無縁なはずなんです」。これがロレンソの言葉である。

ロレンソはペドロサがインに入ってくるのを見ていない。「全然見えてなかったです。何もかもがあっと言う間で、僕はいつもの通りピンポイントでマシンを向けてたんです。ちょっとワイドになると最高の加速ができるんですけど、そしたらいきなりダニがそこにいたんです。そしてクラッシュですよ。まるでドミノ倒しみたいだった」

彼はペドロサが自分の直後にいることすら気付いていなかったと言う。「今日は特にですけど、ピットボード担当のジュアニートに後ろのライダーだけ表示するように頼んでたんです。それでも、G3って、後ろに3台いるって意味なんですが、それがピットボードに出ても相手がどれくらい後ろにいるかはわからない。だから状況は3台目のライダーが一番見えてるんです。だって後ろに目は付いてないですからね。そりゃそうなりたいですよ、目が4つとかライダーとしてはいいですよね。でもそれは無理ですから。だから後ろのライダーが責任を持たなきゃいけない。まあそれがダニなんですけど、ダニと僕とドヴィと、みんなこんな風になるライダーじゃなかったし、だからこれがお前のせいだとか誰のせいだとか言いたくないんですよ。そんなの意味はないことです」

ペドロサの見方

ダニ・ペドロサは少し違った見方をしている。当たり前だ。彼はこう言っている。「あの時、ミスをしたのは彼らなんです。二人ともワイドにはらんでしまった。ええ、僕も彼らより速かったわけではない。でもあれに着いていったらラインをキープできなかった。僕はいつもの通りのラインを走ったんです。でも彼らはアウトにはらんだ分、タイムをロスしていたんです」

クロスラインでインに入るというロレンソの決断がクラッシュを引き起こした。少なくともペドロサの意見ではそういうことになっている。「ホルヘがドヴィに抜かれた後にインに切り込んで順位を取り戻そうとして、でも彼は何故だかわからないけど僕が来ているとは思っていなかったみたいですね」。ペドロサが状況を目撃したのはここまでだ。その後は6コーナーに向けてマシンの内側に身体を入れたために、周りが見えなくなっている。「僕に言えるのはその時点で彼らがワイドにはらんだところまでは見ているということです。でもそこからはマシンを旋回させて完全にマシンの右側に身体が入ってるんで、そこで何が起こってるかは何も見えてないんです。見たくても身体がインに入ってるんで無理なんですよ」

身体は語る

マシンの右側に身体を入れていたロレンソには右側が見えていたはずなのだから、こちらが来るのも見えていていいんじゃないか、というのがペドロサの考えだ。「ロレンソはインに身体を入れてたんだから少しは僕のことが見えたはずなんです。それに自分がワイドにはらんで戻るんだったらちゃんとチェックしないといけないと思うんです。でも結局僕らは接触してまとめてクラッシュしてしまった。何もできなかったですね。こんな終わり方は望んでませんでしたよ。だって3人ともすごく良いレースをしていて、だから本当はいい順位でフィニッシュすべきだったんです」

現代風のライディングポジションはこの10年ほどでマシンから大きく身体を乗りだしイン側の肘を落として頭を低く、しかもできるだけ前に出すように大きく変化しているが、そのせいで今回のようなクラッシュを回避しにくくなっている可能性もある。マシンのアウト側が全く見えなくなってしまっているからだ。マイク・ウェッブによればこれもレースディレクションでの討議対象になったということだが、主にフラッグポストが見えるかどうかということが問題になっているのだそうだ。「あまりそういったことは考慮しないのですが、いくつかのインシデントではライダーにイエローフラッグが見えていたかどうかというようなことは話し合ったことがありますね。現代風のライディングポジションが討議対象となったんです。あそこではマシンから体を乗り出していたんでフラッグが見えなかったんだろう、とかね」。これがウェッブの説明である。

第三の視点

しかしアンドレア・ドヴィツィオーゾは視野についてはチームメイトの味方をしている。クリーンな追い抜きをするのは後ろのライダーの責任だと彼は言っているのだ。「通常より速いスピードでコーナーに進入して、前に誰かいたら、って実際僕らはダニの前にいたわけですし、前にいる方がラインを決めるんです。でしょ?僕らがラインを決める。前にいる方がラインを決めるのは当たり前なんです。ホルヘが僕みたいにチェックしてなかったのは間違いないです。だから前に言ったみたいに彼はインに向かって動いたんです。でも後ろにいたのはダニで、だから彼は状況を把握できたはずなんです。で、彼は他のラップより速いスピードでインに入っていった。それでクラッシュが起こったんですから、ミスをしたのは彼なんです。ホルヘとダニの責任割合なんて好きに配分すればいいんですよ。でも最初はそこから始まってるんです」

中立的な立場から見ても同じことが言えるようだ。スロヴェニアTVに対してヴァレンティーノ・ロッシはこう語っている。「僕から見ると、これについてはロレンソとペドロサのどちらが悪いとかいう感じじゃないですね。ロレンソは速く戻りすぎかもですけど、彼には内側のペドロサは見えなかった。ペドロサは充分スペースがあると思ったんでしょうね。でもそうじゃなかった。それで接触した。つまり半々ってことですね」

これこそがレースディレクションのたどり着いた結論である。マイク・ウェッブはこう説明する。「ロレンソに責の一部を負わせることもできますし、ペドロサに負わせることもできる。ロレンソは前にいましたけど通常とは異なるラインでインに切れ込んできた。ペドロサは内側が空いてるのを見てそこに突っ込んでいったけど、それほどスペースはなかった。それに後ろにいたのは彼です。こういう状況で誰を責めるんでしょう?彼らが転倒するに至った状況すべてを勘案すると、情状酌量の余地の無い無分別な走りは誰もしてないって思うんです。与えられた状況で二人のライダーがマシンをピンポイントで同じ場所に向けた。ダニは隙間を見つけ、そこにマシンを向けたけど、マシンがそこを通るときには隙間がなかったんです」

先例と類例

この状況は2012年のバルセロナのMoto2でのマルク・マルケスとポル・エスパルガロの接触を思い起こさせる。この時はラ・カイシャ・コーナーでアウトにはらんだマルケスがカットインしてタイトル争いをするライバルであるエスパルガロを転倒させている。マイク・ウェブが言う。「数年前に非常に良く似たインシデントがマルケスとエスパルガロの間で起こってます。一方がアウトにはらんで、また戻ってきた。当時私はレースディレクターではありませんでしたけど、でもあの時はペナルティが科せられたと記憶してます。で、その後FIMが公平ではないってそれを取り消しているんです。彼は前を走っていたってのが取り消しの理由ですね」

しかし、バルセロナのインシデントは良く似てはいるものの今回の判断の参考にしていないとウェッブは強調している。「繰り返しになりますが、インシデントというのはそれぞれ違っていて、だから私たちもそれぞれ独自の状況を勘案しています。でもあらゆる状況、コース上の位置取り、その時何が起こっていたかを勘案すると、二人のライダーが接触してかなりのインシデントになって、でもどちらも何か間違ったことを意図してやったわけではない。それがレースインシデントだと判断する理由なんです。状況によって判断は変わるんです」

自ら説明する

今回のインシデントはダニ・ペドロサのレースディレクションに対する苛立ちに油を注ぐことにもなった。彼は言う。「そうですね、もちろん、すごく大きなクラッシュを再びくらって転倒させられて、またレースインシデントってなって、もちろんそういう見方もありますよ。でもレースディレクションに話を聞きに言ったんです。彼らが何を考えているか理解したかったんです。アルゼンチンに関してはレースインシデントだと思ってます。マルクとヴァレの件じゃなくてザルコと僕のことですよ。マシンを起こしたせいでハイサイドを喰らってる。ザルコがコーナーに突っ込んできたのは彼のミスで、僕はスペースを開けようとして、結局病院送りになった。そして今回です。ええ、ロレンソは僕が見えてなかったかもしれない。見てなかったのか、僕がいるとは思わなかったのか、何でもいいですけど、彼はマシンを起こさなかった。それでバーン!クラッシュですよ。そして僕はまたハイサイド。そしてまた『レースインシデント』ですよ。
 だから僕は何がポイントで、どういう風に彼らが判断したか聞きに行ったんです。僕から見るとそれほど簡単なことじゃないからなんです。だから尋ねたんですよ。『どうやって判断したんですか?』ってね。僕には理解できなかったからです。そこから質問していった。『わかりましたけど、僕がインにいて、正しいラインを走っていた、そこはいいでしょ?彼らはアウト側にいてミスを取り返そうとして、それでコースの正しいラインに戻ろうとした。これもその通りでしょ?自分が正しいライン上を走っているときに優先権があるのはどっちです?インにいる方?それともアウトにいる方です?』インにいる方ですって?わかりました。じゃあ誰が悪いんですか?そしたら『もう決定したことだから』って。
 そして最後には、もし決定に不服なら、って実際そうなんですけど、抗議をしろって言うんですよ。でもそうなるとホルヘがペナルティを受けるべきだって言ってることになる。決定に不服だってのはそういうことになっちゃうんです。でも彼らにはホルヘにペナルティなんか与えて欲しいとは思ってないってわかってもらいたい。彼らにはコース上で何が起こったかを正確に把握してほしいってことなんです。だって今はそれができてないんですよ」

敬意と責任

レースディレクションが彼の見解を真剣に受け取っていないと感じたことでさらにペドロサの怒りは増すことになった。「何より問題なのは彼らが事態を直視しないことがあるってことなんです。僕が行くと、まともに歩けない状況でやっとのことで行ったのに、マイク・ウェッブさんは話し合いに出てこようともしなかった。彼は隣の部屋にいたんです。もう少し敬意を払ってもらってもいいと思うんですけどね」

ペドロサの言っていないことがある。彼がマイク・ウェッブに会いに行ったとき、ウェッブはレッドブル・ルーキーズ・レースの最中だったのだ。丁度その時、レースディレクターである彼はレースが安全に運営されているかを監督するという目の離せない仕事をしていたということである。そんなわけでマイク・ウェブと共にFIM審議委員会を構成する二人の審議委員がペドロサに対応することになったのだ。インシデントに裁定を下しペナルティを科すのが彼らの仕事である。

ウェッブは何があったかについてこう説明する。「丁度レースが行われている最中だったんです。MotoGPの次のルーキーズカップがまだ終わってなかったんですよ。私はそちらにも責任があるんです。FIMのMotoGP審議委員が裁定とペナルティに責任を持っています。3人で構成される委員会の一人が私で、だから彼らがやって来たときに、審議委員に、すみませんが彼らの話を聞いて、もし公式な聴聞とかになったら呼んでくださいって言ったんです。でも委員によると非公式な会合ってことだったんで、そのままにしたんです。だから別に彼と会うのを拒否したわけじゃないんです。他のことで忙しかっただけなんです」

文化の衝突

ライダーとレースディレクションの間で起こるトラブルは主に文化の違いに起因しているようだ。ライダーはインシデントを解決するのに非公式に上手くやるのに慣れている。かつてはそうだったのだ。しかしこの数年、特に2015年のセパン以来、ルールも規制も、そしてインシデントの扱い方も、どんどん堅苦しく、そしてルール至上主義的になってきている。スポーツの規模が大きくなり、関係者の財政規模もあらゆる方面で大きくなり、結果として運営母体の方もかつてとは異なる方法で対応せざるを得なくなっているのだ。さらにライダーの希望によりペナルティもより厳しくなると、審議には合理性と透明性がより求められるようになるのである。

ある意味、Moto2とMoto3でのインシデントが環境が変化したことの先触れとなっている。アーロン・カネットとルカ・マリーニはそれぞれのクラスでインシデントに関与し、どちらもこれまで以上に厳しいペナルティを受けているのだ。カネットはルマンでグリッド最後尾からのスタート、マリーニは6グリッド降格である。これまでだったらこの程度のインシデントなら警告で済んだところだ。しかしもうそれでは済まなくなっている。

棚ぼた表彰台

3人の主要ライダーがいなくなったことでレースの方程式の答えが変化することになった。ヨハン・ザルコが表彰台に昇りランキングでもマルケスに12ポイント差の2位に上がる。アンドレア・イアンノーネが最後の一席を確保して彼にとっては2連続、スズキにとっては3連続の表彰台となった。これで優遇措置ポイントは3点。厳しい結果となった2017年を受けて与えられた優遇措置は6点になると翌シーズンからはなくなるので、その半分まで来たことになる。だからと言って彼らはこれを残念に思うことはないだろう。これは彼らが戦える位置まで戻ってきたことを意味するのだ。

ドゥカティとレプソルでトップ4を占めるはずだったのが、2台のワークスドゥカティとレプソル・ホンダのペドロサがリタイヤに終わったおかげで、頭を抱えるレベルのレースだったヤマハはその陰に隠れることができた。確かにヨハン・ザルコは2位でゴールしている。しかし彼はマルケスからは実質7秒遅れなのだ(彼がゴールラインをバカみたいな踊りを見せながら通過したせいでロスした2秒を差し引いている)。ワークスのモヴィスター・ヤマハにとってはさらに頭の痛い結果だ。前方でのクラッシュに救われなければ彼は8位だったはずで、マルケスからは12秒遅れ。そしてマーヴェリック・ヴィニャーレスは10位だったはずである。結局彼らは5位と7位という、それ自体はそう悪くは見えない結果に終わっている。

賭け金を上げる

ヴァレンティーノ・ロッシはヤマハがこの結果に喜ばないよう釘を刺している。ヤマハを名指しで非難しているのである。「冬期テストのスピードを考えたら5位という結果は悪くないし喜んでもいい。でも実際にはこんな結果に終わったレースを喜ぶなんていい話じゃないですよ。技術的な問題があるんです。それにコースによって結果が違う。すごく苦労するコースとそれほどでもないコースがあるんです。でも僕から見ると何をすべきかははっきりしている。時間がかかるのは間違いないです。でもできるだけ早くヤマハにはなんとかしてもらわないといけないですね。そうでなければ1シーズンまた棒に振ることになる。だからヤマハには戦闘力を取り戻すために全力で支援して欲しいですよ。こんなんじゃあ、マジで、今日みたいなんじゃ、僕は良いレースができたしペースも良かったけど、でも前でクラッシュがなければ8位だったんですよ」

問題は主として電子制御だ。マシンそれ自体ではないとロッシは指摘する。「個人的な見解ですけどメカ的な部分の問題は少なくて、主に電子制御ですね。25対75って感じでしょうか。明日は新パーツを試しますけど、それは25%分にしかならない。こんな風に氷山の上に出てる部分だけいじっても、水面下にはもっといろいろ隠れてるんです。がっかりですよ。だって僕が思うに今年のマシンはそれ以外は良くなってるんですよ。でも電子制御はなんとかしないと。ヤマハにはできるだけ早くこの問題を解決するために全力を尽くしてもらいたいですね」

日本のヤマハはマニエッティ・マレリに助力を求めることにもマレリからエンジニアを派遣してもらうことにも抵抗があるという噂だ。それより自分たちだけで統一電子制御を理解したいということだ。しかし事ここに至って彼らも外部の助力を求めることを検討し始めているようだ。しかしロッシにとってはそれでは遅すぎるようだ。「僕の理解ではこういうのって時間が掛かるんですよね。良くないことにね。でもいずれにせよ良い話もある。相手はブラックボックスだってことです。確かに始めてから時間が掛かるのは本当ですけど、でもとにかく取りかからないことには何レースも何ヶ月も何年も過ぎてしまう。そして問題は解決しないままです」

ソフトの力

ロッシの発言は驚きを持って迎えられた。いつもより歯に衣着せぬもの言いだったからだ。いつものロッシは過剰なほど如才なく、柔らかい言葉に実に上手に批判の意を込めることができるのだ。しかしこの発言はドゥカティ時代のようだ。今回もまた当時と同じように支援不足や開発遅れを公然と非難しているのだ。ロッシは自分に集まる注目を使えばメーカーにプレッシャーを掛けることができると実によくわかっている。しかしその力を発揮することはほとんどない。そして彼がその力を使うと決めたということは状況に対する欲求不満が見過ごせないほど溜まっていることを示しているのである。

マーヴェリック・ヴィニャーレスにはこうしたことができるほど注目を浴びているわけではないが、しかし全く同じように不満を抱えているようだ。「もう同じことを言い始めて10か月くらい経ちますね。グリップがない、グリップがないってね。ちょっと暑かったり路面が完璧じゃないだけでグリップがなくなってしまう。全然ダメなんです。アルヴァロとモルビデリの後ろを走ってましたけど、彼らは良いレースをしてた、でもそれでもうちの本来のペースじゃない。僕らは本当なら表彰台争いや、コースによっては優勝争いをするところで走るべきなんです。あぁ、もう…、うんざりしますよ。ひとつのレース週末の内で3回もライディングスタイルを変えて、でもどうにもならないんですよ。チームが言うようにロレンソスタイルで乗ったり、もっとアグレッシブに乗ったり、とにかく試せることは全部やって、でも問題は同じなんです。マシンが加速しない。つまりある一つのことが機能してないってことなんですよ」

その一つのこととはなんだろうか?「主な問題は電子制御みたいですね。まあうちが何か問題を抱えてることは確かですよ」というのがヴィニャーレスの答えだ。「今週はずっと嫌な感じだったんです。オースチンではいろいろ良くなって、やる気も上がって気分も良かったんですけどね。でもここでは現実を突きつけられた。うちのマシンはこんなもんだよってね。トップからは程遠い。今日は110%で走って、それで7位です。彼らがクラッシュしなければ10位だったんですよ!ちょっときついですね。何か秘策でもないと。本当に気分が悪いですよ」

ヤマハが直面してる問題は、彼らが得意とする、しかも去年の再舗装のおかげでさらに相性が良くなったはずのヘレスをこんな結果で終えてルマンに向かうということである。2週間後、昨年はマーヴェリック・ヴィニャーレスが優勝し、ヴァレンティーノ・ロッシが優勝を賭けて一か八かの勝負に出なければヤマハのダブル表彰台となっただろうルマンで良いレースができればヤマハのエンジニアは今回がたまたまダメだったと結論づけたくなるかもしれない。しかしそれこそロッシが彼の驚異的なPR力を駆使している理由なのである。

筋書きなんか破り捨てよう

ヘレスを経てMotoGPのタイトル争いは全く様相が変わってしまった。ドゥカティと相性の良いコースで力を発揮したアンドレア・ドヴィツィオーゾが過去最高の成績でスペイン入りしたのだが、今彼はマルク・マルケスから24ポイント差で、彼の前にはヨハン・ザルコ、マーヴェリック・ヴィニャーレス、アンドレア・イアンノーネがいる。

一方マルク・マルケスは連勝によってリードを広げている。彼の走りはこれまでにないほど冴え渡り、マシンもここ数年で最高のできだ。彼のタイトル獲得を阻むものはいないように思えるほどである。少なくともヘレスが終わった時点で私たちが描いているタイトル争いの筋書きはそうなっている。しかしMotoGPヘレスラウンドが教えてくれたことが一つある。現実がいつでも筋書きを狂わせるということだ。そして語り継がれる物語は思いも付かないものになる。2018年のMotoGPシーズな4レースが終わったかもしれないがまだ残りは15レースもある。たった4レースでこれだけのことが起こったのだ。残り15レースでどんなとんでもないことが待ち構えているのか想像してみよう。
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ドヴィは全く悪くないってのはまあそうかもなんですが、ツイッターでも書いたんですけど、今回のドヴィのラインって、いつもはマルケスがドヴィを抜くときの(やや)無理筋ラインで、ホルヘのクロスラインがいつもドヴィがマルケスを負かす時のラインっぽかったので、それだけドヴィはイライラして我慢できなかったんでしょうね。

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公式リリース>スペインGP2019

ホンダヤマハドゥカティ(英語)スズキKTM(英語)アプリリア(英語)

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ストーブリーグ表2019(2018.05.04時点)

エルヴェ・ポンシャラルがMotoGP公式のインタビューで「シャーリンとオリヴェイラが今考えてるラインナップ。ブラッドリー(スミス)はジュニアじゃないけど開発能力も経験もあるね。ま、うちはKTMのジュニアチームなのでいずれにせよKTMとも話し合って決めるんだけど」と言ってるのを受けて修正。

あとダニの居場所を作ってみた…けど、やっぱレプソルの一枠、他に入りそうな人はいないよなあ。でもダニはそろそろハンドリングの良いマシンに行った方がいいと思うの…って…ハッ!アンヘル・ニエートチームも空いてる!!

Stove_2019_180504

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MotoGP:スミス「チームからは離れるけど、この仕事から離れるわけじゃない」

ポル・エスパルガロとヨハン・ザルコがKTMワークスと契約したことで行き場のなくなったスミス和尚。でも未来に向けて気持ちは切れていないようです。CRASH.netよりNeil Morrison氏の記事を。
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ブラッドリー・スミスは2019年もKTMでMotoGPを戦うという希望は捨てていないという。とは言え来シーズンのライダーとしてヨハン・ザルコが選ばれたという事実を受け入れるには時間は掛かりそうだとも言っている。

2回のMoto2タイトルホルダーであるザルコがポル・エスパルガロのチームメイトとしてKTMワークスに2019年から加入することが金曜に発表された。つまりスミスはチームから出なければならないということである。とは言え彼によれば「グループから出て行く」ことを意味しているわけではないようだ。

かつてスミスが加入していたテック3が今シーズン終了後からはKTMを走らせるということは、サテライトチームにはシートが二つ空いていることを意味している。その一つが確保できれば引き続き最高峰クラスを走ることができると彼は考えているのだ。

彼はまずこう切り出した。「回りくどい言い方をするのはやめましょう。まだ仕事をやめたわけじゃないってことですよ。まあチームからは離れるわけですが。こういうことっていつでも最初は受け入れがたいことですけど、その可能性がないと思ってたなんて言ったら嘘になりますからね。
 KTMはいつでも隠し事なく正直に話してくれていて、トップライダーを探してることも知っていたからワークスのナンバー2の座を僕とポルで争うことになるのもわかってました。だからそうですね、去年は彼の方が僕より基本的にいい成績を挙げてるし、今年の序盤3戦はレースウィークを通じて歯車がかみ合ってないんで、レース自体について言えば良い結果とはとても言えませんね。
 だから合理的な判断ですよね。これまでのことを勘案すればこれでいいんです。この件で良かったのはKTMも同じように言うでしょうけど、今回の発表が僕がKTMと袂を分かつということを意味してるんじゃないってことです。単にワークスチームから抜けるってだけなんです。
 まだ2台分空きはありますからね。KTMも僕をその内の1台に乗せたいと思うかもしれない。少なくともどんなことをしたいのかじっくり考えることもできる。そこで僕のリザルトが検討するだけのものになってればね。でも現時点ではKTM全体としては僕にその選択肢が残されてるってのがポイントなんです。

2013年から2016年までの4シーズンにわたって所属したエルヴェ・ポンシャラルのチームに戻るのがどんな気分か聞かれて、彼は最近の結果を見ればサテライトマシンでもワークスに互して戦えるようになっているのがわかるんだと答えている。「全く問題はないですね」というのが彼の直接の答えだ。

「いろんなことをやらなきゃならないでしょうね。何か新しいパーツを試したり、改善度合いを把握したり、2019年型がどんな感じか確認したりとね。そもそもどんなパーツが試せるのかとかもありますし。まずは乗ってみて試すことになるんです。そうやって進捗を確認するんです。
 さらに、ワークスチームですべてがまとまったら、それをどうサテライトに供給するかを考えることになる。会社からの支援をどうするか、どこで線を引くのか、どんな方針にするのか、そういうことをKTMとしてどうしたいのかを決めないといけない。
 そういうことって考えたこともないし、話し合ったこともまだないです。だってKTMはまずはワークスチームを調えないといけなかったし、僕もこのチームで自分のことに集中してた。でもそういうことも喜んでやりますよ。
 ザルコがサテライトでどんな活躍をしているか、カルがサテライトでどんな活躍をしているか、去年のいくつかのレースでのペトルッチを見てもわかりますよね。今年の序盤でもそうですし、ジャックについても同じです。
 この2年くらいでサテライトマシンがすごく良くなってきていて、まだ進化している。ドルナの新ルールのおかげもかなりありますね。こういう流れは本当に面白い。あらゆることに耳をそばだてて、すべてについて心を開いておくんです」

ではテック3以外にはどんな選択肢があるのだろうか?「あらゆる選択肢を検討しますよ。マネジャーが今週来てくれてて、もちろん誰とでも話す予定です。彼は僕がどうしたいかとわかってくれてますし、優先順位もわかってます。でもあらゆる可能性を試さなければマネジャーの仕事なんてできないですからね。
 だからどんな相手とも交渉の席には着きますよ。その上で決めるべき時が来たら決めますから。でもすべては僕のリザルト次第です。良い結果が出せれば彼の仕事も楽になるし、いい話もやってくる。だからまずは自分が良い仕事をするために集中します。この何ヶ月か全力を尽くしてきましたし、これからも集中していきますよ」
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ちなみにエルヴェ・ポンシャラルはMotoGP公式のインタビュービデオで「うちはKTMのジュニアチームだからKTMと一緒に検討する必要はありますけど、現時点(ヘレスの木曜午後)で言えるのは、うちとしてはミゲール・オリヴェイラとハフィズ・シャーリンです。ブラッドリーはジュニアじゃないけど開発能力もあるし経験豊富ですがね」とのこと。和尚…。

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ストーブリーグ表2019(2018.05.03 18:41時点)

アップしたとたんにザルコがKTMと契約という公式発表が出てきたので慌てて更新。

さらに「ダニだから消すのをためらったけど、他のライダーならばっさりやるよなー」と思い返して(血反吐を吐きながら)レプソルホンダからも一旦消しました。復活はありかもですが。

Stove_2019_180503_2

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ストーブリーグ表2019(2018.05.03時点)

ポルをKTMで確定。併せてロレンソをドゥカから落としてスズキの確度を上げたりダニのKTM入りを(血の涙を流しながら)あきらめたり。

Stove_2019_180503

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ポル・エスパルガロがKTMと2年間の更新契約:ストーブリーグの新章開幕?

ポル・エスパルガロは予想通りの更改でしたが、これを期に、ばたばたと各社とも契約が進みそうです。んなわけでストーブリーグの状況についてMotoMatters.comより。
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MotoGPが次戦ヘレスを前にヨーロッパに戻って来るのと同時に契約発表の第一波がやって来ている。第二波もそう遠くはない。今回の最初のドミノはポル・エスパルガロだ。彼は2019、2020の2年間、引き続きKTMに留まることになった。2018年初の彼にとっての地元グランプリを前にKTMが今日公式に2年間の契約延長を発表したのである。

エスパルガロが契約更改するだろうことは誰もが予想していたことだ。彼はチームメイトのブラッドリー・スミスを遥かに上回る結果を出している上、KTMのMotoGPプロジェクトも開発段階から結果を出すべき段階に映りつつあることを考慮すれば、スミスではなくエスパルガロの方が適任だということだ。

ヘレスで契約更改が発表されるのはエスパルガロだけではないだろう。ヨハン・ザルコがもう一人のワークスKTMライダーとしてエスパルガロのチームメイトとなるのは確実視されている。ザルコはレプソル・ホンダのマルク・マルケスのチームメイトとしてHRCからもオファーを受けていたが、マルケス中心の開発が行われているマシンで戦うより異なるマシンでマルケスを倒す方が良いと考えたのだと信じられている。普通に考えればザルコの発表はルマンとなるだろう。しかしそこまで引っ張ることは難しいだろう。MotoGP界の情報ネットワークを考えたらそれほど長期間秘密を維持することは困難なのだ。

ヘレスはライダーのマネジャーにとって非常に忙しい週末となるに違いない。英国の雑誌MCNによれば、契約交渉には付きものの資金的な問題はあるものの、スズキとホルヘ・ロレンソも契約寸前の段階にあるのだという。ロレンソはドゥカティに残留しても契約金の減額に直面することになる。となれば自分のライディングスタイルに適したマシンに乗り換える気になるのも当然だろう。そして彼は自分向きのマシンであればライディングスタイルの変更に苦労することなくすぐに勝利できると考えているのだ。

ロレンソとの契約がヘレスで決まるかどうかは別として、スズキもヘレスで大忙しとなるはずだ。会社の幹部が3年間のサテライト契約についてマルクVDSチームと交渉するためにヘレスに飛んでくるのである。マルクVDSをサテライトに迎えることがスズキにとって助けになるのは明らかだ。開発面だけではない(スズキはサテライトにもほぼワークスと同スペックのマシンを供給することになりそうだ)。これに加えてライダー供給ルートとしても役立つはずである。MotoGPにおいてフランコ・モルビデリというのは素晴らしい資産である。彼のような若いライダーがスズキに乗るというのは、将来性のあるライダーをスズキも抱えることができるということを意味しているのだ。これにより2019年にはホアン・ミルもMotoGPに参戦することになる。スズキとの契約はヘレスで調印される見込みだ。マルクVDSにとっては来年に向けての準備期間をそれだけとれるということである。

ヘレスでは他にも契約交渉が佳境に入る。アンドレア・ドヴィツィオーゾはすでにドゥカティと交渉を始めていて、契約更改は時間の問題だろう。名目上はワークスシートに空きがあればダニオ・ペトルッチがその座につけるというオプション契約となっている。しかしオプションの行使権はペトルッチではなくドゥカティにあるのだ(訳注:リンク先のペトルッチへのインタビューでは「ドゥカティとの契約は2019年までで、彼らがそのつもりならワークスに入れられると言う契約なんで、ある意味自分のがんばりにかかってるんです」とのこと)。ドゥカティがペッコ・バニャイアをプラマック経由ではなく直接ワークスチームに引き入れてドヴィツィオーゾのチームメイトとする可能性もある。それとも行き場を失ったライダー、例えばレプソル・ホンダのシートを失うのは確実視されているダニ・ペドロサやアンドレア・イアンノーネを獲得するかもしれない。ただし、イアンノーネを引き戻すのにはかなり高いハードルが待ち構えている。彼はチームメイトだった時代にはドヴィツィオーゾと折り合いが悪く、ドヴィツィオーゾのパフォーマンスの高さを考えればドゥカティとしてはチームの雰囲気を悪くするかもしれない選択は採りにくいだろう。

2019年のすべての契約が締結されMotoGPのストーブリーグが集結するまでにはまだ長い道のりが残されている。ヤマハは一からサテライトチームを探さなければならない(訳注:日本語訳はこちら)。そしてMCNがこの件について興味深い話を紹介してくれている。サイモン・ペターソンの記事によれば、セパン・インターナショナル・サーキットがMotoGPの既存チームとのコラボレーションにより引き続き最高峰クラスでハフィズ・シャーリンを走らせようとしているというのだ。この話はサーキットのCEOであるラズラン・ラザリが今年初めにCRASH.netのピーター・マクラーレンに語っていた内容と平仄が合う。そこで彼はほとんど冗談だとしながらもその可能性を語っていたのである。今週末のヘレスではチームトラックの会議室は完全に埋まっていることだろう。

ポル・エスパルガロとの契約延長についてのKTMのプレスリリースは以下の通りである。
(以下略)
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そんなわけでストーブリーグ表を更新して次の記事にアップします。

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公式プレビュー>スペインGP2018

ホンダヤマハドゥカティ(英語)スズキ(英語)アプリリア(英語)、KTM(未)。

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ロッシが詩人ならマルケスはヘンドリックス

次戦はいよいよヘレス。ヨーロッパに戻って本格的なシーズン開幕となります。今回のMat Oxley氏はブーイングに怒ってます。そしてマルケスを倒すのはたいへんだと。例によってMotor Sport Magazineより。
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今MotoGPはその黄金期にある。レースが開催される週末に我々が目にするのは、おそらく史上最高の二人のライダーのバトルだ。そしてその二人が今週末はヘレスで激突する。そこで待つのは全身に鳥肌が立つような大群衆の熱狂である。

素晴らしい時代が訪れたのだ。今の私はシュワンツvsレイニー時代のように次のレースの取材に出かけるのが楽しみでしょうがない。あの頃もヘレスでは素晴らしいバトルが繰り広げられた。コース内外を問わずにだ。

当時ケヴィン・シュワンツとウェイン・レイニーの仲は悪かった。しかしチームスタッフはレース後には一緒に楽しい時間を過ごしていたのだ。シュワンツは後にこう回想している。「みんなが友達同士だったわけではないんだけど、日曜の夜にはみんな外に出てチームで夕食を一緒に食べてましたね。そうなるとチーム同士が同じ店に言ったりするんですよ。同じバーでビールを飲んでバトルについて語る。『来週は目にもの見せてやるよ!』『へー、やれると思ってるならやればいいじゃん!』ってな感じでね。
 ヘレスは昔からそうでしたね。近くに小さなレストラン(メゾン・ラ・クエヴァ)があって、ホンダはそこでパーティーをやってるんです。僕らは下の階でディナーを食べてる。レイニーのヤマハ・チームも同じで、だからヤマハのスタッフに声を掛けに行くんですよ。なぁ、ホンダの奴らをからかいに行こうぜってね。次はまあ、当然のようにひどいことになる。料理やら飲み物やらゴミ箱やらを投げ合って。もうそういうことってなくなっちゃいましたけどね…」

正しくその通り。レース界はこの25年ほどであらゆることが変化している。競争は激しくなり、アグレッシブになり、金回りは良くなり。組織化され、何もかも変わっている。そして良い変化もあれば悪い変化もある。

唯一本当にまずい方向に行っていると言えるのは一部のファンによるブーイングだ。ケイシー・ストーナーやマルコ・シモンチェリ、そしてマルク・マルケスはCOTAでまたブーイングを受けた。25年前、シュワンツのファンがレイニーにブーイングを浴びせることはなかったし、レイニーのファンもシュワンツに向かってブーイングをすることはなかった。誰もが驚異の走りに見惚れて、そして生涯忘れられない思い出を胸に家に帰ることができたのだ。

私はブーイングする気持ちが全くわからない。それどころか胸が悪くなるくらいだ。ピットレーンの誰もが同じようにむかついている。アプリリアのピットからスズキのピットまで全員がそうだ。このショウを実現するためにチームがどれほど努力をしたのか、そしてこのレースをどれほど心待ちにしていたのか。それはチームメンバーでない私たちと同じなのである。ブーイングのせいで彼らの努力が台無しになってしまうのだ。

ブーイングするような連中はファンというより狂信者だ。そういう連中はバイクレースがどれほど複雑かを理解しようともしないし、世界最高のライダーたちが物理の法則をねじ曲げるのを賞賛しようともしない。単に自分たちの鬱積を晴らしたいだけなのだ。つまらないレスリングの試合を見せられて怒っている老女のようなものなのである。その怒りは不誠実な政治家にでも向ければいいのだ。

マルケスはアルゼンチンで間違いを犯し、そして罰を与えられた。レースディレクションは次にやらかしたら、より厳しいペナルティを科すと彼に告げている。つまり今シーズンの残りは彼にとっては執行猶予期間ということである。実に正しいやり方だ。

とは言え、テルマスで科せられた「無分別なライディングにより相手をクラッシュさせた」を理由とするペナルティは、彼にとっては2013年のアラゴンでダニ・ペドロサに引っ掛けて彼のトラクションコントロール用のリアホイールスピードセンサーを壊したとき以来だということは思い出しても良いだろう。さらにその時には誰も彼に対してブーイングをしなかったこと、そして彼がこれまで犯した最も罪深い行為である2011年のラタパー・ウィライローをはじき飛ばした時にもブーイングを受けなかったことも思い出そう。

オースチンでの独走優勝はテルマスでの騒ぎに対する彼なりの答えである。自分の思いのままに操れるマシンを手に入れたのは2014年以来だ。彼はバトルが大好きなのだが、私が思うに、彼はそれの気持ちを一時的に押し殺し、そしてどれほど自分に力があるのかを見せつけることにしたのだろう。

気付いていないかもしれないがあなたが目にしているのはMotoGP界のアイルトン・セナなのだ。ライバルですらぽっかり口を開けて見てしまうような異次元の才能を持つ、しかし賛否両論あるレーサーだ。去年のことだが、ヴァレンティーノ・ロッシですらこう言っている。「マルケスは史上最高のライダーになれるだけの才能を持ってるんです。僕なんかよりずっと凄い」

ロッシの凄さは信じられないほどのものだ。最高の力を発揮している時の彼のレーシングライン上の詩人である。誰にもできないほど細部まで完璧さを貫いてマシンを操るのだ。

「自分はありったけの勇気を振り絞って彼の後ろに着いていこうとしてるのに彼は楽々と離れていくんですよ。少しずつね」。ヤマハでロッシのチームメイトだった時代のコーリン・エドワーズの言葉だ。「彼についてはコース上で何か一つが凄かったってわけじゃないんですよね…。全部が凄いんですよ。何もかもがね」

一旦それが決闘になると、つまり素手での殴り合いになると、いきなりリズムが変わるのである。衆目が注視する舌戦だろうと最終コーナーでの一か八かのアタックだろうと、変わらない。

エドワーズは続けてこう言ったのだ。「ヴァレンティーノは隠密野郎で狐のようにずる賢いんですよ。コース上での奴は本当に悪辣ですね」

マルケスも同じだ。みんな同じなのだ。バイクレースは先日私がコラムに書いた通り(訳注:翻訳はこちら)以前よりアグレッシブになっている。マルケスもヨハン・ザルコも接触上等の走りはMoto2で学んだのだ。実際ザルコは去年の記憶に残るフィリップアイランドのレースでマルケスのシートユニットを壊しているが、マルケスは文句を言っていない。

私はロッシのこともマルケスのことも好きだ。どちらも注目を浴びていないときには本当に良い人間である。そしてどちらも私が40年間でインタビューした中で最も知性に溢れたライダーである。しかし一旦マシンにまたがると、どちらも戦士に変貌する。

設計時に想定されていた限界を超えてマシンを走らせる戦士が私は大好きなのだ。誰もマルケスよりうまくマシンを乗りこなすことはできない。絶好調のときの彼は詩人というよりジミ・ヘンドリックスなのだ。歯でギターを演奏している。

もちろんそういうライダーは転倒もする。しかしそのクラッシュはたいていの場合ミスではない。彼らは限界を探っているのである。プラクティスではわざとフロントをロックさせて路面を擦る感触を確認する。そうやってレース中に(実際そうなるかどうかは別として)それが起こった時に備えるのだ。

COTAで勝利したことでマルケスの最高峰クラス勝利数はマイク・ヘイルウッドの記録にあと1勝、ケイシー・ストーナーの記録にあと2勝というところまで近づいた。残りはホルヘ・ロレンソ、ミック・ドゥーハン、ジャコモ・アゴスチーニ、そしてロッシだけだ。

統一電子制御とワンメイクのミシュランタイヤというMotoGP新時代では以前より結果を出し続けるのが難しくなっている。しかし彼が毎週末、正しいマシンとタイヤのコンビネーションを見出したとしたらCOTAの独走が2018年にはお馴染みの光景になることだろう。

そうなれば間違いなく愚鈍な牛のような群衆によるブーイングを耳にすることになるだろう(ブーイングの語源は牛の鳴き声)。彼らは派手なトップ争いが見たいのだ。頭の悪い連中を満足させるのは簡単ではないのだ。

もちろんすべてを解決する方法はある。みんなで彼を倒しにかかるのだ。不可能はことではない。どんなに追い詰められてもチャンスはあるのだ。去年のアンドレア・ドヴィツィオーゾは2回もそれを証明してみせた。とんでもなく速く、そしてとんでもなく賢ければいいだけだ。簡単な話である。
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ジミヘンの歯弾きはこちら(1分29秒あたり)。

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