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MotoGPよしなしごと:アメリカズGP

重鎮Mat Oxley氏によるMotor Sport Magazineのコラム。これシリーズ化してくれないかしらん。
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ヤマハ復活の理由

ヤマハのワークスマシンが2台ともトップ4でゴールしたのは昨年10月のフィリップアイランド以来である。ここまでくればヤマハとしてもずっと悩まされてきた問題が解決したと思ってもいいだろう。2位でゴールしたマーヴェリック・ヴィニャーレスはこう言っている。「帰ってきたよ!」。

何があったのだろう?答えは二つある。一つは少しだけ手を入れた2016年型フレームに戻したこと。そしてもう一つは統一ソフトウェアに対するアプローチの変化だ。

「去年の最大の問題はシーズン後半になってホンダとドゥカティが電子制御で大進歩を遂げたことなんですよ」とロッシは言っている。「統一電子制御ユニットはそもそも性能を落とすためだったのに、ヤマハと比べるとドゥカティもホンダも良い方向にもっていくための知見があった。ドゥカティもホンダもかなりの資金と多くの電子制御がらみの人員を投入したんです。ヤマハはそこまでやってなかったんですよ。だから遅れをとったんです。でもやっとうちも電子制御に力を入れるようになったんですよ」

ヤマハのレース開発部門のトップ、辻幸一も、電子制御スタッフがM1のトラクションコントロールやウィリーコントロールなどのプログラミングについてアプローチを変えたと認めている。

辻はこう語っている。「うちのアプローチって、ライダーの乗りやすさを優先してマシンが過剰にアグレッシブにならないようにしてたんです、たぶん。可能な限りスムーズに乗れるマシンにしてたんです。でもそれが行きすぎて、加速性能に影響していたんですね」

ヴィニャーレスのコーチ、ウィルコ・ジーレンベルグは、パワーのコントロールをライダーに任せる方向にヤマハが転換したと明かしている。この10年か、それ以上の間ヤマハがMotoGPマシン最高の電子制御を作ることができた理由がそれだと言う。

「パワー制御をやりすぎたんです。今はもっと自由度が増してますよ」とGPの250クラスで勝利経験のある彼は語る。「マーヴェリックもヴァレンティーノも好きなようにタイヤを空転させることができる。そのおかげで自分の判断で状況に対応できるようになったんです。あと2018年型フレーム(実質的には2016年型)もバランスがいいんですよ。それで電子制御の介入も減らせるし、マシンを乗りこなすこともできるようになったんです」

昨年8月のシルバーストン以来の最高の結果を残したビニャーレスは新たなセットアップに相当満足しているようだ。「これまでより少しだけですけどアグレッシブに走れるようになったんです。去年の序盤みたいな感じでね。だから前より攻めた走りができるようになった」

これほどまでにヤマハが苦しんだのはドゥカティやホンダと異なりマニエッティ・マレリからトップのスタッフを確保できなかったというのもある。

辻はこう言っている。「予めわかっていたらこんなことはやらなかったですね。とらえるべき機会を逃しちゃったんです!でも、ソフトはマニエッティが作ってるとは言っても、彼らがうちのマシンを速くするノウハウを持っているかどうかはわからないって当時は思ってたんですよ。マシン開発とソフトウェア開発は別々に進められるものでしたからね」

昨年の冬にマニエッティはヤマハに対して援助を申し出たのだが、ヤマハはそれを受けなかった。電子制御については社内で学習し改善していきたかったのである。ドゥカティとホンダがマニエッティのスタッフと契約しているし、スズキとKTMはミラノ近郊のマニエッティの本社に電子制御スタッフを派遣して教育を受けさせている。

COTAでロッシはミディアムのフロントスリックがソフト過ぎると気付いていたが、彼はレース用にはミディアムを選んでいる。ハードではまともに走れなかったのだ。何度かフロントをスライドさせた結果、彼はアンドレア・イアンノーネを追走するのをあきらめて4位を確保することにしている。

なぜブーイングに意味がないのか?

アメリカでの12連勝を飾ったマルケスは毎度のことながら冴えないブーイングを浴びることになった。しかし彼は全く気にしていない。アルゼンチンでの混乱を教訓に彼は序盤から逃げに掛かり、最終ラップ前には8秒差をつけて文句なしの優勝を飾っている。

「アルゼンチンの反省から戦略を変えることにしたんです。1周目から攻めてギャップを広げるようにしました」と彼は言っている。

さて、ブーイングは彼のパフォーマンスにどう影響したのだろうか?「モチベーションが増しましたね」と彼はにやりと笑いながら言った。つまり、気にくわない奴だからと世界チャンピオンにブーイングした人々は彼の勝利を後押ししたということである。まあ、彼らはその程度の考え無しということなのだ。

ドヴィツィオーゾのコーナー進入の秘密

MotoGPはこれまでになく予測不可能になっている。アンドレア・ドヴィツィオーゾが優勝、6位、5位ときてランキングトップに立っているが、マルケスとはわずか1ポイント差だ。

にもかかわらずドヴィツィオーゾがそれほど心配していないように見えるのは直近2戦がドゥカティが不得意なコースだからだろう。デスモセディチのライダーは全員リアブレーキを活用してコーナリングを行っているのだが、中でもドヴィツィオーゾはマシンを曲げるためにより過激なリアブレーキの使い方をしている。彼はブレーキングでマシンを少々乱暴に扱ってリアをアウトに振り出し、そこからマシンをインに切り込ませて曲がっていくのだ。

「うちにとってCOTAの厳しいところはブレーキをリリースしちゃうとマシンが曲がらないってところなんです。ブレーキを掛けてないと方向が全然定まらないんです」というのが彼の説明だ。

ドヴィツィオーゾは昨シーズン序盤にこのテクニックを完成されている。チーフメカのアルベルト・ジリブオラがリアホイールをアウトに振り出してコーナー進入をうまくやれるようなセッティングをみつけたのだ。

ヘレスでのドゥカティは強さをみせるだろうか?おそらくそうはならないだろう。昨年ドヴィツィオーゾがいいとこなしだったフィリップアイランドに似た高速コーナーのあるコースなのだ。高速コーナーではリアを振り出してコーナーに突っ込んでいくことはできないのだ。

「ヘレスは去年みたいになると思いますよ。マシンはそれほど変わってないですからね。でも舗装が新しくなったんで少しはいいかもしれません」と彼は言っている。

COTA:MotoGPの究極のテスト

パドックではブルノの最終の登りストレートがMotoGPにとって最高のパワーテストだと言われることがある。惜しいが正解ではない。GPのコースで最長で、しかも1速のコーナーに突っ込んでいくCOTAのバックストレートの登りこそがエンジンパワー、出力特性、電子制御、空力全てを試すことができる最高の場所なのだ。

週末を通じて最速だったのはダニオ・ペトルッチ(ドゥカティ)とカル・クラッチロー(ホンダ)で、どちらも347.9km/hを記録している。スズキ最速はアレックス・リンスの343.1km/h。ヤマハ最速はロッシの342.4km/hだった。ポル・エスパルガロがKTM最速で342.3km/h、
アプリリア最速はアレイシ・エスパルガロの341.0km/hである。興味深いことにマルケスの出した最高速は341.6km/hに留まっている。

ブラッド・ビンダーのKTMがMoto2では最速で284.8km/hだった。これにロマーノ・フェナティの284.5km/hが続く。Moto3ではトニー・アルボリーノのホンダが238.7km/hで最速。KTMの最速タイムはリヴィオ・ロイの238.3km/hだった。

ドゥカティ:空力は安全性確保のための重要なパーツ

MSMA(モータースポーツ製造者協会:GPマシンを作っているメーカーの集まり)はMotoGPの豪奢な空力パーツを禁止することを検討中のようだ。しかしメーカーのレース部門では引き続き開発が行われている。

これまで空力について常にリードしてきたのがドゥカティ・コルセであることを思えば、MotoGPで空力パーツを減らすことで危険性が増すとドゥカティのMotoGP車両動態及び設計責任者のリカルド・サヴィンが考えているのも驚くにはあたらない。

「COTAの10コーナー(坂の頂上に向けた左超高速コーナー)のことを考えてみましょう。途中から路面が正キャンバーから逆キャンバーになるんですけど、そういうところではスタビリティが肝になるんです。そこで空力があればフロント荷重を10キロとか増やせる。フロントタイヤが路面にぎりぎりで接触してるあたりから浮き始めて、また路面に接地してまた浮く。マシンが不安定になってコントロールが難しくなるんです。
 空力パーツはブレーキングに効くんです。マシンの安定性を高めて、空気抵抗も大きくなってマシンが止めやすくなる。さらにフロント荷重も高めるのにリア荷重は減らない。それでブレーキングの問題全てに効果があるんです」

空力では最先端を行くドゥカティですら、極めて初期段階の理解しか得ていないというのも事実である。今シーズンの序盤、最新の空力カウルはGP18では役に立っていない。おそらく最新のデザインでダウンフォースが増したせいでコーナーで失速しフロントタイヤに荷重がかかりすぎているのだろう。だからホルヘ・ロレンソはプレシーズンテストでは通常のボディワークに戻しているのだ。

「ブリーアムでのテストではフロントが沈みすぎるって問題があったんです」。テストではトップから1秒近く遅れて16番手だった理由についてロレンソはそう説明している。「2017年ベースのセッティングのまま新型カウルで走ってたんですが、それだとコーナー中盤で問題が起きて、だからウイングを外したんです。セッティングを変えたらその感覚はなくなったんで新型カウルのポテンシャルを完全に引き出せるようになりましたね。僕はフロントタイヤの接地感がないとだめなんで、他のライダーよりウイングの効果はあるんだと思います。でもまだやることは残ってますね。2018年型はバンプに対して前より神経質でウィリーもしやすい。でも良くなってきてますし、マシンのポテンシャルはかなりあると思えてきましたね」

つまりロレンソはウイングを守るために懸命に戦うことになるだろうということだ。

サヴィンと仲間の技術者たちは流体力学計算用ソフトを中心に開発を行い、時には実際に実物大の風洞テストもやっているとのことだ。

「現時点ではまだストレートでの挙動を把握し始めたってところですね。それが80%くらいわかってきたらコーナリングのことを考え始めることになるでしょう。ライダーがブレーキをかけ始めて身体を起こして、膝を出してマシンを減速しながら曲げていく。その全ての場面で何もかもが変化し続けるんです。うちの空力パーツのよい部分のせいでコーナリングに問題が出ているのかどうかはまだわからないんです。そこまで理解が深まってないんですよ。今わかっているのはコーナリング時のスピードはストレートより遅い分だけコーナーでは空力の及ぼす効果が極めて少ないってことくらいですね」

ロレンソもドヴィツィオーゾもCOTAで初めて2018年型空力パーツを使用したというのは象徴的なことではないか。昨年のドヴィツィオーゾがウイングを使ったのは2回だけだが、その2回共に彼は優勝している。しかしそれはなによりコースレイアウトによるところが大きい。レッドブルリングともてぎはどちらもストレートに続く低速コーナーが多く、ウィリー抑止のためにもウイングが効果的なのだ。ドヴィツィオーゾは基本的にウイング無しの方が好きなのである。

「常に妥協点をさぐらないといけないんです」とサヴィンは言っている。「アンドレアにデータをみせてウイングの効果を説明するんですけどコーナリングでマシンが重く感じるみたいですね。乗るのはライダーなんだから選ぶのもライダーでなきゃいけないんですよ」

ルールはそのまま、ペナルティは厳しく

当然のことだが金曜の安全委員会はいささか白熱したものとなった。ヴァレンティーノ・ロッシとマルク・マルケスがテルマスでのバトルを受けて言葉を投げつけあったのである。

とは言え状況はそれ以上悪くなることはなかったのは、おそらくジャック・ミラーのおかげである。自分のことをジャッカス(間抜けなロバ)と呼んでいる彼はしかしCOTAで理性の象徴であることを証明してみせたのだ。木曜、彼は関係者すべてに気付かせたのである。

「みんなには(2011年のセパンで死亡した)マルコ・シモンチェリと(テルマスでの1周目にヨハン・ザルコと接触して転倒し手首を骨折した)ダニ・ペドロサのことを思い出して欲しい」とミラーは語り始めた。「僕らは命を危険にさらしてここでレースをしてるんです。そしてファンはみんな自分の立場でお互いに論争を始めてる。ライダーもお互いにいがみ合ってる。こんなのバカみたいだし子供じみてると思うんです。ライダーはもうみんないい年なんだし、人生は短くて僕らは命を賭けてるってことを思い出さないと」

レースディレクターのマイク・ウェッブによれば、ルールに変更は無いが、攻撃的すぎるライディングを抑制すべきという声に応えてペナルティを科すことが増えるだろうということだ。

「コース上のアクシデントはそれぞれ様相が異なるので、個々に科学捜査的厳密さで検証する必要があるんです」。ニュージーランドの元250チャンピオンで2012年からレースディレクターの職にあるウェッブは語る。「常設審査委員会からはペナルティのレベルを上げるべきだという指示を受けています。以前はライダーを呼びつけて、ほら、ここでやかしてるんだけど、まあ初犯だし警告で済ませるから二度とやらないでよ、次はそれなりのペナルティを科すから、とかやってたんですけどね。今はもっと厳しくなっていて、一回目からペナルティを受けることになります。
 マルクとも話をして、彼には二度目はもっと厳しいペナルティになるということをわからせてます。(予選でヴィニャーレスを妨害したことに対する)今回のグリッド降格は前回のレースの件とは無関係です。どちらも無思慮なライディングですが、別々の違反なんです。接触してクラッシュさせるのと予選で他のライダーのアタックを邪魔するのは全然違う話ですからね。この数年、予選で誰かを妨害するのに対しては警告で済ませてきましたが、警告では効果がないんでペナルティを科すことにしたんです」

この何週間かの騒ぎによって、ペナルティ案件を担当するFIMの審議委員会の構成が変わる可能性がある。現在はマイク・ウェッブと二人のFIM審議委員で構成されているが、将来的には増員されることになるかもしれないとウェッブは言っている。

「継続性は大事だと思ってるんです。そのために常任の審査委員が必要であればそうすることもやぶさかではありません。既にビル・カンボウという常任のFIM審議委員がいて、その他には数人の審査委員がいるだけなので、毎レース概ね同じメンバーでやってるって言っても良いと思います。でもレースごとに持ち回りで違うメンバーになるってことは判断が安定しないってことなんです。ペナルティをうまく使うってのは実に繊細な気遣いが必要ですからね」

マイク・ウェッブがMotoGPに関するソーシャルメディア上での大騒ぎを無視していることについては驚くには当たらない。「ちゃんとした情報に基づかないおしゃべりには耳を塞ぐようにしています。話を聞くべきは何が起こってるのかわかっている、ちゃんと情報を持っている人たちだけですよ」

ミラー/ロレンソ問題:ただし接触は無し

COTAのMotoGPレースではあまり突発的なできごとはなかったが、アルゼンチンの後では、それこそがパドックの皆が望んでいることだった。レース後に何か語るようなアクシデントは唯一ワークス・ドゥカティのホルヘ・ロレンソがサテライト・ドゥカティのジャック・ミラーのアタックを受けている時にグリップを失ったことくらいである。

ミラーが1コーナーでロレンソのインにねじ込んで、ロレンソは接触を避けるためにGP18を起こしている。ロレンソはかなり不満だったようで、怒りを込めて頭を振りながらミラーが消えていくのを見守っていた。しかし実際にはミラーがそこでアタックを掛けたのは彼が大きな問題を抱えていたからだ。

「坂から一番低いとこまで駆け下りて1コーナー手前でフロントがボトムし始めて、そしたら今度はフロントエンドが伸びてバンプストップに当たっちゃって、坂の上で完全にロックしちゃったんです」とミラーは説明している。「状況をなんとかしようとして、ワイドになるか、でも彼もワイドに走っていて、それでインに入ることにしたんです。ちょっと動きが遅れちゃって、でも彼のペースも落ちていたんです。レース後には謝りに言ってますけど、でも受け入れてもらえませんでしたね」

レース後ミラーは鎖骨にひびが入った状態でずっと走っていたと明かしている。マウンテンバイクでクラッシュして負った怪我だ。「理想的とは言えなかったですね」と彼は言っている。

再びダニがやってみせた

怪我を抱えて走っていたのはミラーだけではない。ダニ・ペドロサはテルマスで右手首を骨折し、地元で手術を行っており、COTAは欠場しテストライダーが代役を務めるものと思われていた。32歳になる彼は、しかし最後の最後になってテキサスに行くことを決断する。レースに出られるかどうか定かでなかったにもかかわらずだ。そして彼はレースに出る。結果は7位フィニッシュで前を行くドヴィツィオーゾとヨハンザルコからはわずか5秒差だった。驚くべき結果だ。彼は痛みを超えてバトルができる男なのだ。それにしても1周あたりコーナーが20、しかも向き変えも頻繁に行わなければならないコースだということを思い起こしてほしい。

「ウォームアップではかなり良くない感じでした」とペドロサは語っている。彼は痛み止めを服用した上、怪我のために支持具を装着して走っていたのだ。「レースではできるだけ痛みをコントロールしながらペースを保とうとしてました。このコースは身体的にもかなり厳しくて、だからドヴィとザルコについていくのはきつかったですね。近づいて、アタックをかけるのはかなり難しかったです。怪我をしていると正確性も欠いて、だからみんなにアタックを掛けられて抜かれちゃうんです」

スズキが大進化を遂げる

今年のホンダRC213Vはこの数年で最高の出来である。しかし2018年、最も進化を遂げたのはスズキだろう。ぱっとしない2017年を経た今年、アレックス・リンスとアンドレア・イアンノーネが最初の2戦で表彰台に昇っているのだ。フレーム変更、ブレーキングの安定性、改良されたエンジンスペック、そして少しだけ削られたクランクシャフト重量が今年のパフォーマンス向上に大きく寄与しているのだろう。

「2017年はエンジンにかなり手を入れたんです。加速性能を良くするためにね。それが効果を発揮したところと逆効果だったところがあるんです」。そういうのはスズキの技術責任者である河内健である。「今年はエンジン特性を見直したんです。それがかなり良かった。うちはいつでもエンジンを扱いやすくしようとしてるんです。ハンドリングもそうですね。去年はいろんなことを試しましたけど、やっとそれがまとまってきた。基本的にフレームは去年アラゴンでテストしたものです。あとクランクマスについても本当に微妙なんですけど変更を加えてます。それでやっといいバランスを見つけられたんですよ!」

そして河内はドゥカティやホンダと同じようにマニエッティ・マレリから人を雇うことも考えているようだ。「統一ソフトウェアの開発も重要だってわかってるんです。それで日本とヨーロッパのスタッフをマニエッティに派遣しました。現時点ではマニエッティのスタッフを雇ってはいませんが、将来的にはそれも考えてます」

「MotoGPのタイヤは本当に神経質なんです」

MotoGPを取材することに付随する面白さのひとつとして誰かとトラブルに陥ることを挙げてもいいだろう。時には私が間違いを犯し、ライダーやチームマネジャーやオフィシャルから厳しい叱責を受けることもある。何年か前、私より歳上のジャーナリストがこうした批判への対処方法を教えてくれた。「ん?じゃあ教えてほしいんだけど、ひとつのミスもないレースウィークっていつ以来です?」

2週間ほど前、私はミシュランタイヤをルーレットのホイール並みの博打であるとした記事を書いている。何人かのライダーが同じスペックにもかかわらず性能が異なっておりタイヤの安定性がないのではないかと批判しているという記事だ。オースチンで私はミシュランのMotoGP部門の責任者であるピエロ・タラマッソの話を聞くことができた。

「MotoGPのタイヤは本当に神経質なんです。ラップタイムが0.2秒違うだけでタイヤの温度は15℃も変わるんですよ!つまりラップタイムというのが実に重要だってことなんです。2分10秒のラップタイムと2分11秒ではタイヤにとっては全く違うってことなんです。それに加えて路面温度が1℃か2℃違うだけでも影響がある。空気圧についても同じですね。2.15バールと2.17バールでは全然違うんですよ」

タイヤの性能を最大限に引き出すというのは厳密な科学の話だということだ。ライダーがどうウォームアップラップを走ったのかもタイヤの最高性能を発揮できるかどうかに重要なのである。

タイヤの輸送方法や保管方法によっても大きな違いが出る。「MotoGPタイヤにはすべてシリアルナンバーが振ってあるんです」とタラマッソは教えてくれた。「さらにトラックや飛行機や船で輸送する際には温度管理もやってるんです。常に20℃から22℃の範囲に収まるようにしてるんです。サーキットに入ったら全てのタイヤについて状況を把握していて、タイヤが装着されたら、どれくらいタイヤウォーマーがついていたか、温度の上下動が何回起こったかとかを追いかけてるんです。今のところ経験的に5回までなら温度が上下しても大丈夫だとわかってるんですが、それ以上になるともう使えないようにしてるんです」

ミシュランのMotoGPタイヤはある部分は大量生産の工程にのっていて、別の一部は手作業で製造されている。これは状況変化により迅速に対応して製造工程を変化させるためである。すべてのタイヤについて重要とバランスをチェックすることになっており、あらゆるコンパウンドもミシュランの実験室でチェックされている。サーキットでタイヤがホイールに装着されると5点レーザーでバランスに問題がないか測定される。もしタイヤ径に0.08mm以上の誤差があればそれは使用不可となるのだ。タイヤ温度はリアなら120℃、フロントなら100℃が標準である。

MotoGPの予算についてはミシュランは何も教えてくれない。しかしパドックで情報を集めた結果からは、リアタイヤは1本900ポンド(邦貨換算14万円)、フロントは450ポンド(同7万円)といったところのようだ。MotoGPライダー24人が1レースで200本のタイヤを使うのが普通である、つまり1レースにつき30万£(4500万円)、1シーズンでは570万ポンド(8億6千万円)が費やされている計算だ。しかもそこにはプレシーズンテストやシーズン中テストの分は含まれていないのである。スタッフの人件費や移動にかかる費用(ざっと250万ポンド:3.8億円)、そして船や飛行機での輸送費、研究開発費用など諸々を含めたらミシュランのMotoGP予算は1千万から1千5百万ポンド(15〜23億円)になるだろう。しかもドルナからはなんの財政支援もないのである。

バンプが動く?

今年のCOTAはいつも以上にバンプがひどかった。路面上で最もひどいバンプを削り取ったにもかかわらずだ。まあ、それはおそらく間違った判断だったのだろう。最も恐ろしいバンプは高速の10コーナーの頂上のものだったろう。ヒヤリとするような場面が何度もあった。最も印象的だったのはジャック・ミラーの場面である。バンプに乗り上げた彼はウォブルに見舞われ、それでブレーキパッドがキャリパーを限界まで押し下げてしまったのだ。そんなかれでヘアピンの11コーナーにはノーブレーキで突っ込む羽目になってしまう。

「あんな風に乗るのはきつかったですね。普通より限界が早くくるんです。それでちゃんと攻めることができなかった。スライドもさせられないし思った通りに曲がることもできなかった。これは優勝したマルク・マルケスの言葉だ。傍目にはとてもそうは見えなかったとしてもそういうことだったのだ。

マルケスはバンプについて興味深い理論を開陳している。「なんか地面の下で動いてるみたいなんです。コース事態が動いてるみたいな。普通じゃないですよね。何かがバンプの下で蠢いてる感じなんです。バンプを乗り越えるたびに違う感触なんです。コーナーに向けてバンクするときも毎回違う感じなんです」

最近起こった洪水のせいだろうか。それもと鉱山や水圧破砕に起因するこの地域特有の地殻変動のせいだろうか。大量のわき水を地中不覚から廃棄しているせいだ。そしてエルロイ油田はこのコースからわずか3kmのところにある。

マモラがMotoGP殿堂入り

500ccでランキング2位を4回も記録しているランディ・マモラがCOTAでMotoGPの殿堂入りを果たした。スペインに拠点を置くカリフォルニア生まれのマモラはGpで13勝を挙げ、1970年代、80年代、90年代の全てで表彰台に上がっている。カジバ、ホンダ、スズキのワークスで走った彼はこう言っている。「この分野で評価されるのは本当に名誉なことです」。そんな彼は慈善活動でも良く知られている(訳注:アフリカの医療環境改善のためにバイクで医療物資を運んだりするライダーズ・フォー・ヘルスとかですね)。

喧嘩をやめて

木曜のアメリカズGPはまるで犬が自分がゲロを吐いた場所にもどっていくような、そんな様相を呈していた。マルケスとロッシの囲み会見の生中継があったのだ。

どちらも記者やテレビカメラに囲まれていたが、特筆すべきことは何もなかった。マルケスはグリッドでのエンストについては語っている。プラクティスでも起こった電子制御の問題だったそうだ。

「最初は自分がミスをしたのかと思ったんです。だからそれ以上のことは考えなかった。グリッドでエンストしたら手を挙げなきゃいけないってのはわかってました。でも誰も来てくれなかったんでできるだけ早くピットレーンに戻ろうとしたんです。でもエンジンを再スタートしようとしたら掛かっちゃったんですよ。それでみんながめっちゃ混乱しちゃったってことですね」

ロッシはテルマスでの激しい言葉を撤回するつもりはなかったようだが、過去を振り返らず前に進もうとしていた。「レース後の自分の考えは今でもその通りだと思ってます。でも前を見るべきですよ」
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ミシュランの話、なかなか面白いですね。

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コメント

オクスレイさん、ドヴィさんの乗り方を曝露して大丈夫ですか?!w
これが事実だとドカを乗りこなすのは本当に大変でしょうね。
そしてホルヘがこれを乗りこなすのは、また大変!でしょう。
本当に特殊だし、そこに行きついたドヴィさんの努力はまたまた大変!!だったはず。

乗りやすさに気を使うばかり電子制御にハマったヤマハのマシン開発とは、思想そのものが大きく違いますね。
辻さんの言葉は力強い!
次戦、復活が間違いないことを早く確認したいです。
スズキも上がってきたし良い感じですね。
でも、なんとなくマルケスの独壇場になるような予感がする今日この頃です。

投稿: motobeatle | 2018/04/29 09:57

>motobeatleさん
 ふふふ、ヘレスでついにスズキが来たりするんですよ…きっと。

 んでドヴィの乗り方が正解だとするとホルヘに浮かぶ瀬は無し、でしょうねえ。

投稿: とみなが | 2018/04/29 10:43

「よしなしごと」とは名翻訳ですねぇ!さすがです。

でもアテクシ的には「ぶつぶつマットのMotoGPから騒ぎ」でシリーズ化してほしいですニヤリ✩

しかし取材には誰かとトラブルに陥るというオマケがついてくるってところは、リアリティ満載で面白いなぁ。
なんかだんだんオックスレイさん好きになってきたぞ笑

投稿: りゅ | 2018/04/29 19:35

>りゅさん
 ぶつぶつマットかー。ちょっと可愛いですね。
 そして英国人的シニカルなユーモアがいいですよね。

投稿: とみなが | 2018/04/29 20:09

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