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新年:MotoGP2018年シーズンについて三つの予言

そんなわけでとりあえずMotoMatters.comのDavid Emmett氏による今シーズンの予想です。当たるも八卦当たらぬも八卦。
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年が改まり新たなチャンスもやってくる。なにもかも白紙状態からのスタートだ。未来のことはわからない。だからこそ予想を立てるには最高の時期である。乱暴で根拠のない予想もあれば、先を見通した確固たる予測もある。もちろんこれから語る予想がどちらになるのか私たちにもわかっていないのだが、それもまた予想の楽しみの一部なのだ。

2018年もまたバイクレースの歴史に残る素晴らしい年になりそうだ。そう楽観するのにはそれなりの理由がある。MotoGPがこれほど接戦となっていたことはかつてないし、多くの才能溢れたライダーがいる。そしてマシンの性能も接近している。さらに今年はMoto2とMoto3からフレッシュな若手もやってくる。彼らは古株どもを横に押しやろうとやる気満々だ。そしてワールドスーパーバイクで導入された新ルールのおかげでトップを走るライダーたちとそれを追いかけるライダーたちとの不平等が解消できそうだ。

新シーズンは私たちが望んだとおりになるのだろうか?レースでは何が起こっても不思議ではない。しかし2018年の重要なポイントについて3つほど予想を立ててみよう。

1.マルク・マルケスは7つめのタイトルに向けて自分らしく勝利を重ねる

「良い気分ですね」。ヴァレンシアで2018年型ホンダRC218Vの初テストを終えたマルク・マルケスは私たちに向けてそう言った。「良い気分なのはセッティングのパラメーターがちゃんと感じられるエンジンに出会ったのが初めてだからなんです。わかります?」

比較のために2016年のテストでのコメントをみてみよう。「現時点ではまだエンジンに電子制御をあわせていかないといけない状況ですね…トルクのマッピングもエンブレのマッピングも2016年仕様なんで。でも何もかも調整し直しですよ。それでみんなやらなきゃいけないことがたくさんあって、だから今日は長い1日でしたね」

2015年はどうだっただろうか?その時ホンダが持ち込んだ2016年の新型エンジンはどうだっただろう?「エンジン特性については上手く言えないですね。電子制御がまだまだなんです。かなり気を遣わないといけない。まだかなりアグレッシブなんですよ。それを電子制御で何とかしようとしてるところです。去年の段階でエンジンはかなりアグレッシブでしたけど、マニエッティ・マレリだとさらにアグレッシブになっちゃうんです」

2016年、2017年の両年、マルク・マルケスは大幅な変更が施されたエンジンでシーズンをスタートしている。まずはクランクシャフトの回転方向を変更し、1年後にはスクリーマーからビッグバンエンジンに変えた。そしてそのせいで戦闘力を増すためにかなりの労力を割くこととなってしまった。それでも彼は世界タイトルを獲得している。両年ともシーズン序盤は不安定な成績だったにもかかわらずだ。そして2016年の5勝、2017の6勝は他のホンダライダーに大きな差をつける成績であった。

時間を2017年11月のヴァレンシアまで進めよう。テストを終えたマルケスはここ数年なかったほどRC213Vの完成度を感じていた。おそらくHRCがマニエッティ・マレリ社の電子制御に関するデータをこの2年間蓄積してきたおかげだろう。そしてさらに確実に言えるのはこれがHRCがマニエッティ・マレリで働いていたエンジニアを去年から雇っているおかげだということだ。ミシュランの方向性も2018年に向けて固まっており、ほとんど変更すべき点はないようだ。

2018年、マルケスはこれまでとは異なりあまり手を入れなくてよい、そしてあまり問題を抱えていないマシンでスタートを切ることになる。もちろんRC213Vは完成形とは程遠い。しかし開発の焦点はエンジンからシャーシに移りつつある。本来はもっと早くそちらに移行したかったのは確かだが、今シーズンは問題の少ない、しかも強いマシンでスタートが切れるのだ。つまりマルケスに勝つのはかなり難しいということである。2018年、彼は多くの勝利を重ねるだろう。私は19戦中8勝か9勝はするのではないかとにらんでいる。タイトル争いに勝利するというのはつまりはレースに勝ち続けるということなのである。

2.ヴァレンティーノ・ロッシはヤマハとの契約を延長する

何年にもわたってヴァレンティーノ・ロッシが成し遂げてきたことを賞賛する理由はいくらでも挙げられる。しかし彼がその長い年月の間常にトップにいたことこそが最も賞賛に値するだろう。そしてこれは彼の業績の中でも最も評価されていないものである。38歳になっても戦闘力を維持していたライダーはほとんどいないし、彼ほど長いことトップに居続けたライダーに至っては皆無だ。彼の初勝利はアプリリアの125で挙げた1996年のブルノである。そして最も最近の勝利は2017年のアッセンで、これはヤマハのMotoGPマシンで記録したものだ。初勝利の20年10か月7日後のことである。そして4か月後のフィリップアイランドでは2位を獲得して再び表彰台に上がる。

2018年、彼は39歳になってシーズンをスタートすることになる。ほとんどのレーサーが引退を余儀なくされる年齢はとうに超えている。当然、今年の彼は同じ質問を受け続けることになるだろう。2018年いっぱいで引退するのか?と。

2017年の彼の答えは2015、2016の両年を通じて彼が答えていたものと同じだった。もし戦闘力があれば少なくとももう1年は走る。そして2018年で引退するのかという質問について考えるなら2017年の第16戦を思い出せばいい。彼は表彰台に立っているのだ。彼はたった2戦前に表彰台に乗っているのだから2018年に同じことができないと考える理由はない。そして彼が2018年も表彰台に昇れるなら2018年に勝利を挙げることもできるだろう。そして彼が2018年に勝利を挙げることができるのであれば2019年も相変わらず戦えるライダーのはずだ。

それが実現するかどうかのかなりの部分は今年のヤマハYZR-M1のできにかかっている。2017年はヤマハにとってここ数年で最悪の年となった。18レースでわずか4勝しかできなかったのだ。マーヴェリック・ヴィニャーレスはランキング3位に終わったが、これはヤマハとしては2007年以来のトップ2を逃す年となったということである。ロッシは5位。これまたヤマハに復帰した2013年以降最悪の成績だ。ヤマハは同じ轍を踏むわけにはいかないはずだ。ヴィニャーレスがヤマハ2年目となることを考慮すれば去年よりは2人のライダーからのフィードバックをうまく使うこともできるだろうし、開発の方向性もより簡単に定まるだろう。

ヴァレンティーノ・ロッシは最初の2〜3レースを走ってからヤマハとの契約延長について決めるというのが公式見解である。しかし1月末のセパンテストを終えた段階で決意するだろうというのがよりありそうなシナリオだ。セパンでマルケスやヴィニャーレスと一緒に走ってみて、戦える状態にあれば2018年、そしてそれ以降のタイトル争いも視野に入ってくるだろう。発表はシーズンも深まってからになるだろうが、私の中では来年もロッシが契約することは確定だ。そして延長オプション付きの1年契約となるのではないかというのが私の予想である。

もしヤマハの戦闘力が無い場合、ロッシはヤマハを離れて別のところに行くのだろうか?答えは間違いなくノーだ。2011年、2012年が悲惨な結果に終わったことを考えればドゥカティが彼の復帰を歓迎することはないだろう。いくら当時の関係者がほとんどいなくなっているとは言ってもだ。ロッシはホンダではいまだに出入禁止リストの中の一人である。2003年に彼に捨てられたことをホンダはまだ許してはいないのだ。一方ロッシとしてもKTMやアプリリア、スズキに賭けてみようという状況にはない。引退後もロッシはかなりヤマハとの強い関係を保つはずだ。VR46アカデミーはヤマハのサポートを受けているし、Sky VR46チームも最高峰クラスに上がったらヤマハM1を得るつもりでいるのだ。つまり彼が別メーカーに移っても良いことはひとつもないのである。ロッシとヤマハは強い絆で結ばれているのだ。特に彼の引退後はさらに強い関係となるだろう。しかしそれはまだしばらく先のことだ。

3.ストーブリーグはそれほど大したものにはならない

来年のMotoGPストーブリーグに向けて外野はもうかなり浮き足立っている。カル・クラッチロー、フランコ・モルビデリ、シャヴィエル・シメオンを除く全てのライダーが2018年で契約が切れるのだ。ワークスのシートは全て空くことになる。メーカー間で激しい契約金吊り上げ競争が始まるのをレースメディアの面々は舌なめずりしながら待っているということだ。

私は今年のストーブリーグが期待外れに終わるのではないかと懸念している。おそらくその名(訳注:英語ではSilly Season=ネタ枯れでバカバカしき記事が大きく取り上げられる夏場のこと)にふさわしいものにはならないだろう。最もありそうなのは、ほとんどのライダーが2019年も契約を延長するという、こちらとしては騙されたような結果だろう。今年のMotoGPのストーブリーグはかなり穏やかなものになりそうなのだ。

どうしてか?契約椅子取りゲームの中心にはいつも鍵になるライダーがいる。しかし2019年について言えば、中心にいるはずのライダーは誰もが移籍に興味がないのだ。マルク・マルケスはマシンの戦闘力がある限り喜んでホンダに留まるつもりだ。さらに重要なことは彼が自分のスタッフと一緒にやりたがっているということだ。友人のグループと言っても良い程のチームは彼にとって最も重要なものであり、成功の基盤なのである。ワークスチームは以前にも増して、ライダー交代に伴って全チームメンバーを雇い直すのを嫌うようになっている。エンジニアもメカニックも新型マシンについての経験が無く、そうこうしている内に新たなスタッフに道を譲っていなくなったスタッフが持っていたノウハウが失われてしまうのである。

ヤマハではヴァレンティーノ・ロッシはもう一年の契約を望んでいるし、マーヴェリック・ヴィニャーレスは自分がここでタイトルを獲れると信じて移籍してきた。もし彼が2018年の序盤で優勝するようなことがあれば移籍する動機は全くなくなることになる。ドゥカティのアンドレア・ドヴィツィオーゾは今もらっている契約金を遥かに変えた価値が自分にあることを証明しているし、彼にとってドゥカティ以外で唯一の現実的な選択肢はホンダしかない。ホルヘ・ロレンソは2017年後半に戦闘力のあるところを見せており、今年1年、彼の腕(そしてGP18のウイング)があれば2018年は充分戦えるはずだ。

ダニ・ペドロサのホンダのシートも安泰だろう(ドヴィツィオーゾがHRCと契約しない限り)。行く先の決まっていない中では彼は相変わらず最高のライダーなのだ。最近では最も過小評価されているライダーだがペドロサはこの16年毎年優勝している唯一のライダーであり、最高峰クラスの勝利数では歴代8位でケヴィン・シュワンツ、ウェイン・レイニー、ケニー・ロバーツといったライダーを上回り、エディ・ローソンと同じ成績なのだ。もし2018年型ホンダが良いマシンであれば彼はまた勝利を挙げるだろう。つまり戦闘力があるまだ32歳のライダーを置き換える意味がないということである。

ではスズキとアプリリアはどうだろうか?スズキの最大の失敗は2人とも新しいライダーで2017年のスタートを切ったことである。どちらも参照すべきデータを持っていなかったのだ。そのせいでアレックス・リンスもアンドレア・イアンノーネもシーズン前に間違ったエンジンを選んでしまうことになった。エンジンはシーズン中は変更できないのだ。スズキは二度と間違いは起こさないだろう。アプリリアは2017年からアレイシ・エスパルガロと共に歩を進めてきたが、彼らの抱えている問題はライダーを変えても解決するものではない。まず必要なのは良いマシンなのだ。

一番大きな動きがありそうなのはKTMだ。なによりヨハン・ザルコがワークス2席の内、1席は確保したも同然だろう。2017年に覚醒したザルコは自らが特別なライダーであることを証明してみせた。ポル・エスパルガロもブラッドリー・スミスもRC16の開発には大きな貢献をしているのは確かだが(ただしスミスは開発モードの時間が長すぎてレースモードに入りきれなかった)、どちらも長期的視点からはタイトルを獲る力があるようには見えないのも事実だ。この二人のテック3初年度と比べればザルコが力量で勝っているのは明らかである。しかも去年の方が争いは厳しかったのだ。ザルコが加入し、おそらくスミスが抜けることになるだろう。

ストーブリーグで本当に興味深いのは実はライダーよりマシンである。KTMは2019年にサテライトチームを作りたいようだ。ミゲール・オリヴェイラとブラッド・ビンダーをそこに入れようというのだ。それはチームになるのだろうか?LCRは長いことホンダと一緒にやっていて、カル・クラッチローとHRCの契約も2019年まであるし、マルクVDSはフランコ・モルビデリとの契約が2019年まである。つまりKTMが走らせたい誰かのためにのシートは一つしかないということである。

最有力候補はアスパー改めアンヘル・ニエート・チームだろう。ホルヘ・マルチネスは既にMoto3でKTMを使っている。となればMotoGPでもKTMに鞍替えするのは自然なことだろう。

MotoGPで大きな動きがあるまでには後1〜2年は必要ではないだろうか。その頃になればMoto3やMoto2からの新しい血がその地歩を固めているはずだ。MotoGPのこれからの鍵はホアン・ミルになりそうだ。Moto3での驚くべき1年を終えた彼には多くの注目が集まっている。Moto2でどれほど成長するのだろうか。もし彼が2017年と同様の素晴らしい結果を残せたなら次の激しい競り合いは彼を巡ってのことになるはずだ。
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ふむ。穏やかなストーブリーグでありますよう。

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コメント

あけましておめでとうございます!
昨年も数々の素晴らしい記事の紹介、ありがとうございましたヽ(´▽`)/
今年の冬は例年になく寒く感じられますが、どうぞ風邪などを召しませぬように。

さて、このシーズン予想。
自分的には、今年も何が起こってもおかしくないような気がします。
誰かが独走するのか?それとも混戦を極めるのか?
どちらもあり得るような。
今年ファクトリーヤマハが復調するか否か?これが周囲にも重大な影響を及ぼす事柄だと思います。
マルケスもこれを注目しているのではないでしょうか?
ロッシはエメットさんの言う通り延長するでしょうね。
長期的に見てヤマハという会社組織が、ロッシとどういう風に関係をもっていくかも見てみたい。
一方でマーヴェリックは燃えているんじゃないでしょうか?
もう今年はチャンプを獲るのには機が熟しているというか、今年の活躍は彼のキャリアで非常に重要かと。
そしてホルヘ。
おそらく今年は勝ちチャンプ争いにも加わってくると思うけど、もしそうでない場合はシーズン中盤あたりから彼を震源としてストーブリーグは騒がしくなるような。
彼は二年契約で今年が二年目ですもんね。
あとミシュランが安定したタイヤを供給するか?
そしてマシンのパワーやトップスピードを抑制するような手立てを、そろそろしていかなきゃ駄目だと思いますね。
共通ソフトなんのといっても、毎年この点は見逃されてますからね。

年始早々ダラダラと失礼しましたw

投稿: motobeatle | 2018/01/09 09:33

あけましておめでとうございます
今年もちょろちょろっとコメントさせて頂きますね。

今年の予想。ズバリ
ドヴィツィオーゾがタイトルを取る。
これですよ。

それ以外には何もない。そんな一年

投稿: bb | 2018/01/09 21:53

>motobeatleさん
 今年も良い記事、良いレースに恵まれればと!できれば大混戦、ダニかドヴィがチャンピオンで!

投稿: とみなが | 2018/01/14 19:50

>bbさん
 をを!ズバリ、とは強気な!!楽しみにしましょう。

投稿: とみなが | 2018/01/14 19:51

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