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MotoGP史上初のホンダとドゥカティによるタイトル争い

ヤマハがほぼ脱落しかけてることでタイトル争いはホンダとドゥカティに絞られつつありますが、そう言われてみれば確かに史上初なんですね。Motor Sport MagazineよりMat Oxley氏の記事です。
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驚くべきことだが事実である。ホンダとドゥカティがグランプリのタイトルを巡って争うことはかつてなかった。ひとつには両メーカーの調子の良い年が一致することがなかったためである。今年になるまでは…。

2007年にケイシー・ストーナーがドゥカティに初のタイトルをもたらしたとき、ダニ・ペドロサがランキング2位に入っている。しかし彼はタイトル争いに絡んでいたわけではなく、最終的に125ポイントのもの差をつけられてしまっている。それ以前にドゥカティが世界GPのタイトルに近づいたのは1958年のことだ。ライダーはアルベルト・ガンドッシ。乗るのはファビオ・タリオーニ設計の初のデスモドロミックエンジンのマシンだ。この時は125ccクラスでランキング2位。MVアグスタに乗ってチャンピオンになったカルロ・ウビアーリとの差はわずか7ポイントだった。ホンダが世界GPに参戦を開始するのはこの数か月後のことである。

現代に戻ろう。2017年、残り7戦となったところでタイトル争いはホンダ対ドゥカティの様相を呈してきた。いつもならホンダ対ヤマハとなるところだ。それがこの35年間繰り返されてきたことである。

なぜこんなことが起こっているのだろうか?

もちろん理由は一つではない。しかしレース界ではよくあることだが、タイヤが大きな影響を与えているのは間違いない。その傾向はタイヤサプライヤが一社になってからさらに顕著となっている。統一タイヤルールが導入されてブリヂストンとなった最初の数年のことを覚えているだろうか?ホンダはRCVをタイヤに適応させるためにほぼ4シーズンを費やし、数知れないフレーム改良を行っている。ドゥカティは結局ブリヂストンの性能を引き出すことができなかった。少なくともオーストラリアの魔術師が彼らの下を去ってからはそうだ。ブリヂストンを最初から使いこなせていたのはヤマハだけだったのだ。

そして今はドゥカティとホンダがミシュランに上手く合わせこんできている。この6戦でドゥカティは3勝、ホンダは2勝、ヤマハは1勝しかしていない。

ドゥカティはタイヤ選択という迷路においても賢さを発揮している。ミシュランの謎を解く鍵を手にしているのである。土曜のオーストリアでフロントローを獲得したアンドレア・ドヴィツィオーゾはミディアムコンパウンドのリアを使っていた。しかし28周の決勝はソフトを使っていたのである。実に奇妙ではないか。

「ソフトとかミディアムとかハードとかって言わない方がいいと思うんです。ひとつのタイヤでも3種類か4種類のゴムが使われてるんですよ」とドヴィツィオーゾがレース後に説明してくれた。「どのタイヤもいろいろ混ざってるんです。だからどのゴムが、場合によってはケーシングのこともありますが、たいていはゴムが問題なんですが、どれが高い気温に適していてどれが低い気温に合っているかを理解しとかなきゃいけないんです。
 毎回タイヤが違うし、タイヤですごく違いが出る。だから昨日はソフトじゃうまくいかなくて今日はうまくいったりするんです。みんなハードリアで決勝を走ってましたけど僕はソフトを選びました。タイヤ同士の違いはすごく小さくて、だからみんな難しい選択を迫られてるんです。毎日状況は違うし気温が違うとグリップも変わる。だからタイトル争いがこんなに接近していて、だから毎週違う展開になるんですよ」

ドヴィウィオーゾの指摘が正しいことはマルケスがハードリアを選択していたことからもよくわかる。ゴール時点で二人の差はわずか0.176秒だった。F1マニアが歯がみしてうらやましがるような展開である。一方でヤマハは空気と化していた。ヴァレンティーノ・ロッシとチームメイトのマーヴェリック・ヴィニャーレスもトップから8秒差をつけられてのフィニッシュとなっている。

最終コーナー縁石でスライドするという勇気あるチャレンジをみせたマルケスは、負けはしたがそれでもレプソル・ホンダはピットの誰より喜んでいただろう。去年のレッドブルリングではドゥカティに完膚なきまでに叩きのめされているからだ。マルケスはトップから11秒差の5位でゴールするのがやっとだったのである。

今年のレッドブルリングに向けてホンダは完璧に準備をしてきていた。その前の月曜にブルノで行われたレース後テストで、RCVのブリヂストン仕様からミシュラン仕様への転換を完了させたのである。2012年型、ホンダの最初の1000ccMotoGPマシンはブリヂストン用に設計されていた。フロントタイヤがコーナー進入で発揮する驚くべきグリップに合わせて設計することで、ブレーキを残したままコーナーに進入していくことができたのだ。そうやってマルケスはタイムを稼いでいたのだ。例の呆れるほどのコーナー進入である。フロントをスライドさせ、グリップしたと思ったらクリッピングめがけてマシンをとばす。

ミシュランではこんな風にはならない。タイムを稼ぐのはコーナー後半なのである。そのせいでRC213Vのバランスを取り直すための設計変更が必要となったのだ。HRCは加速でタイムを稼げるマシンにRCVを作りかえてきた。マシンのバランスを変更し、電子制御を調整し、そしてマルケス自身もライディングポジションやライディングテクニックを変化させている。

日曜にはそれが手に取るようにわかった。マルケスはコーナー進入でタイムを失っていた。リアが空転するのである。ブリヂストン時代には問題にならなかったことだ。こうした状況でもマシンはコントローラブルだったのだ。今はマシンの性質が変化している。マルケスがブレーキングでスライドを始めるとクリッピングにつけないままワイドにはらんでしまうのである。

「今年は去年と比べてブレーキングで苦労しましたね。だから安定して走るのがたいへんでした」とマルケスは日曜の午後に話している。「テレビで見ればわかると思いますけどリアをものすごく滑らせてるんです。でも加速で取り戻せてたんでなんとかできたんですよ。いい基本セッティングを見つかられたと思ってます。これからミザノでテストをして違うサーキットでも同じセッティングでいけるかどうか確認する予定です」

ドゥカティもやはりミシュランを使って自分たちの長所を伸ばして短所を消すのに時間が掛かっている。ミシュランのおかげでマシンが良くなったと言っているライダーは私が知る限りドヴィツィオーゾだけだ。だからこそ今ドゥカティが強いのだろう。これはマシンの違いというよりタイヤの違いに起因するのだろう。デスモセディチ自体はほとんど変化していないのだ。

ドヴィツィオーゾは最大バンク角でのリアのグリップ力はミシュランの方がブリヂストンより良いのだと言っている。そのおかげでマシンが良く曲がるのだ。ドゥカティが抱えていた曲がらない問題が目に見える形で改善されているのである。ドヴィツィオーゾの考えではホンダもヤマハもミシュランへの適応に苦労しているとのことだ。

少なくともモヴィスター・ヤマハについてはその通りだろう。1970年代から参戦しているワークスヤマハは今大きな問題を抱えている。ロッシもヴィニャーレスも今年の序盤はタイトル争いをリードしていた。しかしこの3レースでは1回の表彰台を獲得しているだけなのだ。

ヤマハのYZR-M1と言えばこれまでずっとコーナリングスピードが長所だった。そうやってレースに勝ってきたのだ。驚くようなブレーキングや加速性能で勝ってきたわけではない。ライダーがエッジグリップをしっかり感じることができれば高いコーナリングスピードを実現するのは難しいことではない。しかしエッジグリップがないと苦労が待っている。

私たちが日曜に目にしたのはまさしくこれだ。ロッシとヴィニャーレスはコーナリングスピードを稼ぐのに必要なエッジグリップがある間は戦うことができた。折り返し地点ではヴィニャーレスはトップから2秒差だったが、最終的にその差は7秒まで広がることになる。ロッシも同じだ。最初の14周でつけられた差は3.1秒だったのだが、後半14周ではさらに5.6秒の差をつけられているのだ。

ヤマハの問題はミシュラン初年度と同じだ。リアタイヤの消耗が早すぎるのである。2017年型M1はこの問題を解決すべく設計されているが、そのせいでコーナリングが犠牲になってしまった。そこでヤマハは慌てて2017.2型フレームを創ってきた。コーナリングは改善しているが相変わらずリアタイヤにはかなり厳しいままだ。これは技術力の低さに起因するように見えるかもしれないが、それは間違いだ。こうした相反する要素を調整するのは綱渡りのようなものなのだ。レースもこのレベルになると、何も犠牲にしないである部分だけ改善することなど不可能なのだ。

ロッシはホンダとドゥカティがミシュラン向きのマシンをうまく作り込んできたことをわかっている。そしてさらに重要なのはミシュランという迷路を抜ける方法を見つけているということだろう。ヤマハが次にすべきはメカニカルグリップとトランクションコントロールとタイヤ選択の改善だ。「リアタイヤの消耗がうちの問題ですね」とロッシは日曜に語っている。「他のメーカーはうまい解決策を見つけてますし」

当初誰もが2017年は彼の年にとなると思っていたヴィニャーレスは、さらに辛い状況にいる。彼は若く経験もそれほどない。特にヤマハでの経験が少ないということで、彼は2017型と2017.2型フレームの間で混乱しているのだ。曲がりくねったタイヤ選択問題は言うに及ばずである。

ヴィニャーレスはここ最近のレースについてはかなり頭にきているようだ。自分にはタイトル争いに加わる才能があると知っていながらマルケスやドヴィツィオーゾに対抗できる武器を手に入れられていないのだ。

「気温が高くなると本当にまずいんですよ」と彼は言った。「タイヤの問題じゃないんです。だってテック3のマシンにはそういう問題は起こってないんですからね」

ではどちらのフレームをレースに使ってどちらのフレームが正しい方向なのだろうか?

「すみません」と彼はにやっと笑いながら言った。「フレームについては話さない方がいいですね…すみませんね。ミザノでテストもありますから。そこで何か変化がなかったらタイトル争いは終わりですね」

レッドブルリングでは多くの人がドヴィツィオーゾを祝福していた。彼はこれまでになかった攻撃性を得て、これまで冒すことのなかったリスクも冒すようになったように見えるということだ。ばかばかしい!31歳の彼は「考える人」だ。リスクを冒すタイプではない。彼の早さはこの何年ものたゆみない努力、そしてマシンとタイヤの性能をどうやって最大限に引き出すかを考え続けた結果だのだ。つまり彼はやっとマルケスと対等に戦うために必要な武器を全てを手にすることができただけなのだ。

おそらく今シーズンは史上初めてドゥカティとホンダの対決となるだろう。そしてシルバーストンではヤマハもミシュランの秘密を解き明かし、再びタイトル争いに絡んでくるかもしれない。
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はぁ、ヴィンテージとはこのことですなぁ。

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コメント

ドヴィさんのタイヤの説明、凄く分かり易いですね!
さすがです!
まだ七戦あるとはいえ、ヤマハはヨーロッパラウンド終了までに問題を解決したいでしょうね。
十月からのアジアオセアニア三週連戦では遅いと思います。
ホンダの進化!
アルゼンチンで転び、地面を蹴飛ばして悔しがっていたマルケスがだいぶ前の事のように思えます。
次戦シルバーストーンは、ブリティッシュウェーザーで雨が降ったらロッシが来そうな気もします。
いや、意外な人が勝つか?
やっぱりトントントンとチャンプが決まらないで、もつれて欲しいです(o^-^o)

投稿: motobeatle | 2017/08/19 19:43

>motobeatleさん
 やっぱ知性派ライダーですよね。こういう人がきちんと勝つととても面白いなあ。もてぎがますます楽しみになりますね!

投稿: とみなが | 2017/08/20 16:46

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