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2017オーストリアMotoGP金曜まとめ:ロウズの旅路。目に見えないことも含めて。

アプリリアがロウズ放出を決めましたが、アレイシ・エスパルガロやカル・クラッチローがそのやり方に怒っている通り、ライダーとしてはやりきれないひどい切り方だった様子。とりあえずMotoMatters.comのまとめから。
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金曜は嵐の予報だったし、その通りになった。しかしやって来たのはメディアの嵐だ。実際の雷雨ではない。やっとライダーたちがアプリリアの状況については話ができるようになったのだ。もちろん天候は無視できるものではなかった。Moto2は雨に祟られコースは大混乱に陥っている。この件についてもアプリリアによるサム・ロウズ解雇と同じように様々なコメントが出されている。なんにせよ盛りだくさんな一日だった。

まずはアプリリアの話から始めよう。アプリリアは昨晩ついにサム・ロウズへの対応を決めた。1シーズン限りで解雇することにしたのだ。契約は2年まであったにもかかわらずである。実はこの動きはバルセロナテストから始まっていたのだ。このとき既にアプリリアのレース部門の責任者であるロマーノ・アルベシアーノがロウズ放出も考えていると口にしているのである。そんなわけでオーストリアでこれが発表されたことも特に驚きはなかった。ロウズの契約ではアプリリアは8月15日までに決定することとなっていたのも驚きが少ない理由である。

アプリリアの決定について驚くべきことはほとんどない。ルーキーイヤーのサム・ロウズとアレックス・リンスは同じルーキーのヨハン・ザルコとヨナス・フォルガーに大きく水を開けられている。リンスについては仕方のない面もある。MotoGP初年度のかなりの期間を怪我で棒に振っているからだ。一方ロウズについては外から見る限りそのような言い訳の余地はない。彼はワークスチームに所属していて、さらにチームメイトは彼をはるかに上回る結果を出している。アレイシ・エスパロガロはQ2の常連であり、トップ5を狙える走りを見せているのだ。ロウズがQ2に進出したのは1回のみ。そして稼いだポイントは僅か2ポイントである。

目に見えないこと

しかしこれで全てが説明されたわけではないのはもちろんだ。シーズンのほとんどをロウズはチームメイトと比べて性能の劣る機材で走っている。フレームやエンジンの主要アップグレードも無しだ。信頼性も問題だ。そのおかげでロウズはプラクティス中もピットにこもることになり、さらにレースもリタイヤに終わることがある。これはロウズに限った話ではない。アレイシ・エスパルガロはアプリリアRS-GPの設計ミスに起因するエンジントラブルに悩まされ、一度ならず良い結果を出すチャンスを棒に振っている。

しかし一方でロウズが期待されるほど早くは適応していないというのも事実ではある。ライディングスタイルをMotoGPマシンになかなか合わせられないのだ。コーナー立ち上がりでマシンを早めに起こしてスロットルを早く開ける、リーンアングルやコーナリングスピードを稼ぐのは二の次だということを理解するまでに数レースを費やしているのだ。ブレーキングにも苦労している。ロウズはいまだにスロットルを閉じてからブレーキングをするまでに一瞬の間があるのだ。Moto2時代に染みついてしまった習慣である。ホンダのMoto2エンジンには最新のエンブレ制御が組み込まれていないのである。この点についてはロウズはブルノでかなりの進化を見せている。レースでも進歩していたが主にテストでかなり良くなっている。オーストリアでもここが焦点となるだろう。

アプリリアがロウズを放出するというニュースが昨晩流れた時点で、ロウズや他のライダーがこの件について語り始めた。そしてロウズ側の意見に加えてロウズの友人の証言ややはり友人であるカル・クラッチローの発言をきくと、再び見方が変わってくる。ロウズの全発言和訳は「気になるバイクニュース」で)とクラッチローのコメントはCRASH.netで読むことができるが、はっきりわかるのはアプリリアはかなり以前から問題を抱えていたということである。

3レース目にして

「3レース目が終わったあたりからですね」とロウズは言う。「冬の間は旧型に乗ってたんです。カタールまではね」。遅れてやって来た新型のおかげで、ロウズはやっと手厚い支援を受けているチームメイトに近づけるようになった。しかしアプリリアはずっとロウズに代わるライダーを探し続けていた。本人は今日もそれを否定していたがスコット・レディングがロウズの代わりに加入すると目されている。彼は7月のザクセンリングでアプリリアと交渉しているのだ。アプリリアはそれ以前にもアルヴァロ・バウティスタやカル・クラッチローにも声を掛けている他、アンドレア・イアンノーネとも話をしていたという出所不明の噂もあった。

「6月前に僕に声を掛けてきたんですよ」とカル・クラッチローは言っている。「でも誰の代わりかはわからなかった。誰が残留して誰が出るのか知らなかったし、サムの他に誰かを考えていることも知らなかった。それに僕にはその時点で仕事があったし、彼の仕事を奪うつもりも本当に全くなかったですよ」

クラッチローは今回のアプリリアのやり方を強く非難している。「ひどい話ですよ。他に言いようがない。MotoGPの初年度で、しかもヤマハとは全然違うレベルのパッケージに乗らせていったい何を期待してるんですかね。時間が必要なんですよ。そしたら来年はもっと速く走れるでしょう。ほとんどのサーキットでMotoGP初体験になるんです。それに僕のMotoGP初年度を比べてみればいい。僕の成績の方が悪かったですよ、きっと」。クラッチロー自身もMotoGP初年度にテック3を解雇されそうになっている。「エルヴェ(ポンシャラル)に言ったんですよ。僕だったらクビにするね」。彼は当時そう言っていてるのだ。

始まる前から呪われていた

さらにそれ以前からアプリリアがロウズをクビにしたがっていたという証拠がある。去年11月のヘレステストの時点でアプリリアがロウズに代わるライダーを物色していたという確度の高い噂があるのだ。ロウズはワールドスーパーバイクにスイッチさせるつもりだったようだ。つまりアプリリアがはしごを外すまでの2~3日分のテストしかロウズには実力を見せるチャンスがなかったと言うことである。

MotoGPルーキーに引導を渡すには正気とは思えない性急さだ。確かにもっと速く適応できるルーキーもいる。しかしそれはごく少数がたまに出現するだけだ。「サムは速いんですよ。まだ現時点では全てを理解してないってだけなんです」とクラッチローは言う。「でもMotoGPに飛び込んですぐに乗りこなせるなんて世界中探したって2~3人しかいないでしょ?」

問題はアプリリアの内部にあるようだ。ロマーノ・アルベシアーノもレース部門の責任者として結果を出さなければならない立場にある。そして彼が埋めなければならないのはジジ・ダリーニャがドゥカティに移籍してできた巨大な穴なのだ。親会社であるピアジオのトップ、ロベルト・コラニーノは短気な男だ。しかもアプリリアのMotoGPプロジェクトを2015年初めに立ち上げたときには実に野心的な目標をぶち上げている。このプロジェクトも今年で3年目だ。ここまでの結果は堅実だが見所は少ない。アルベシアーノが自分を守らざるを得ない立場に追い込まれている可能性はある。

コミュニケーションがすべて

ロウズはアルベシアーノとの関係構築がかなり難しかったとほのめかしている。「正直言って、彼と僕、そして僕のマネジメントサイドとの関係は良くなかったしプロフェッショナルなものでもなかったんです」とロウズは言う。「凄く難しかった。一緒に働くのがね。自分の役割を理解するのも難しかったんです」。この状況はピットでも同じだった。軽蔑するような態度で接するだけのスタッフも何人かいたのだ。「ピットには僕を信じてくれない人もいましたね。まあ最初から僕を信じる気なんて無かったんですよ。だから負け戦を戦っていたようなものなんです」

ロマーノ・アルベシアーノが公式なものとして語る理由は「もっとリスクの少ない選択肢が必要だった」ということだとロウズは言う。これに対するロウズのコメントは当然のように辛辣だ。「レースでリスクを冒したくないならやめればいいんですよ」。さらにロウズの代わりとして上がっているのはスコット・レディングである。ロウズと比較してレディングの方がリスクが少ないというのはとても納得できない話だ。もちろん彼は表彰台にも昇っているし、時々はそれなりの結果を出しているが、彼のリザルトは現在伸び悩んでいるようにも見えるのだ。

レディングが加入したとしても、それは他のライダーが断ったからだろう。「間違いなく世界中のライダーに声を掛けてるんですよ。でも誰も来てくれなかった」とロウズは言う。「彼女がいるのに、他の友達にもみんなに遊びに行こうって声を掛けるなんてあり得ないでしょ?これはそういう状況なんです。彼ははっきりとアプリリアがいろんな人に声を掛けてるって言ってますよね。カルか誰かが乗るんだったんなら少しは受け入れやすかったかもしれませんね」

レディングはロウズ以上の成績を挙げることができるだろうか?期待はしてもいいだろう。アルベシアーノのためを思うならそうあってほしいものだ。来年はレディングにとって5年目のMotoGPシーズンとなる。ホンダにもドゥカティにも乗って経験は充分だ。もし彼が結果を出せなければ今度首が飛ぶのはアルベシアーノ自身なのだ。

ロウズはどこへ?

ではサム・ロウズはどこへ行くのだろうか?次のシートを探さなければならない状態だ。マルクVDSにはシートが余っている。これが来年の選択肢としては最高だ。だが競争も激しい。トム・ルティ、ミカ・カリォといったライダーがこのシートを狙っているのだ。

コース上でも激しいバトルが繰り広げられた。それも驚きだ。雨で一日は台無しになったと思っていたのだが、一瞬だけ天気の神がMotoGPのパドックに微笑みかけたのだ。しかしそのままにするつもりはなかったようだ。Moto2のFP1が始まるとすぐに激しい雨が降り出してしまった。そしてこれが数多の転倒者を生むことになる。11人があまり普通ではない場所で転倒しているのだ。

クラッシュ大豊漁

ライダーが転倒したのは1コーナー、3コーナー、4コーナーのブレーキングである。ストレートのブレーキングでフロントからスリップダウンしているのだ。赤旗は出なかったものの懸念すべき状況であることは間違いない。多くのライダーがメディアに対して金曜夜の安全委員会の議題にすると言っていた。結論は出たようだ。金曜夕方遅くにFIMの安全委員のフランコ・ウンチーニが清掃スタッフと一緒にF1が路面につけたラバーの層を削っている。これがクラッシュの原因かどうかは全くわからない。だがそれはラバーをはがさないで良い理由にはならないのだ。

MotoGPクラスは最高のコンディションだった。FP1は気温が低くドライ。そしてFP2では気温が上がり、路面が濡れていたのも最初の10分程度で済んだ。その後はライダーに夜アタック合戦だ。慎重ではあったがそれでもアタックしていた。Q2入りのためのタイム出しだ。土曜に天候が悪化したときの保険である(おそらく大丈夫だろう。最悪の天候はもう過ぎ去ったようだ。まあ何があるかはわからないが)。

両セッションを制したのはアンドレア・ドヴィツィオーゾだ。ただしFP1の最速ラップはコースをはみ出したために取り消されている。このためタイムシートのトップはエクトル・バルベラが飾ることになった。ドヴィツィオーゾは午後にこれを取り戻してみせる。自らのベストタイムを0.6秒更新しドゥカティをトップの座に据えたのだ。1日目の終わりに本来座るべきところに位置を占めることになったとは言え、下位との差は思った以上に小さいことも忘れてはならない。

すべてが接戦

実際金曜には様々なライダーが輝きを見せたのだ。トップはドヴィツィオーゾのドゥカティだが、その後ろにはヤマハ、ホンダ、サテライトのヤマハ、ワークスドゥカティ、サテライトドゥカティ、レプソルホンダと続いている。実力は伯仲しており誰もが主役になる可能性がある。ヤマハは加速と電子制御を改良しマーヴェリック・ヴィニャーレスはどんどん気持ち良く乗れるようになってきている。ホンダはリアのグリップに関して1つか2つの改良を施してコーナー脱出加速を良くしてきた。これでマルク・マルケスとカル・クラッチローもトップに近づいている。

ビッグネームでここに挙がっていないのはヴァレンティーノ・ロッシだけだが、彼は先週からインフルエンザに苦しんでいて、全力で走れない状態だと明かしている。ロッシは土曜にはQ2争いができるくらい体力が回復するのを望んでいる。

ドヴィツィオーゾが頭一つ抜け出しているとは言え現時点ではオーストリアの勝者は全く予想できない。予報通り土曜が一日晴れていれば、予選終了時点でもう少し判断できるだろう。日曜の天気はもっと良さそうだ。しかしまだそこまでの道のりは長い。
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そりゃ怒るよねえ…。だったら最初からとらなきゃいいのに…。

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コメント

確かにアプリリアも強引ですな・・・
でも書類上では契約解除が可能な項目があって、ロウズもそれにサインしていたわけなので現在に至る、と。
わかっちゃいるけどやりきれない感はありますね。

スコットは今の段階では『ねぇよ』といってましたけどね。
カルもロウズもスコットも全員イングランド出身だし、関係ないとはいえちょっと気まずいのかな・・・
☆ハッ・・・いかんまた親戚叔母化に笑

なにはともあれ今日の決勝!
ホルヘ久々の1stロウ。
内なる”悪魔”を解放せよ!

投稿: りゅ | 2017/08/13 06:44

これはひどい・・・
こんなことなら最初からLCRみたいに(あそこは予算の都合もあったんでしょうが)、ライダー一人で浮いた分を開発費に回すだとか、テストライダー多めに抱えるとかできなかったんでしょうかねー

投稿: みくる | 2017/08/13 14:11

>りゅさん
 ま、イタリア人ならやるよね、と思わないでもないですw。

投稿: とみなが | 2017/08/17 21:57

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