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ドイツGP:ヴィニャーレス、ヤマハ、そして2種類のフレームの物語

新型フレームがどうもタイヤと相性が合わないのかうまいこといっていないヤマハワークスですが、ロッシとヴィニャーレスのエース争いもからんでたいへん面白いことになっているようです。CRASH.netよりNeil Morrison氏の記事を。
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マーヴェリック・ヴィニャーレスはヤマハがアッセン以前に使用していた新型フレームについて、チームメイトは気に入っているようだが自分のスタイルには合わなかったと考えている。

ムジェロの有名な赤い門を車で通り抜ける。暖かい6月の日曜の夕方である。マーヴェリック・ヴィニャーレスにとって世界は完璧だった。イタリアGPの2位という結果は望んだものではなかったが、それでも最終ラップの段階でその結果を受け入れたというのは、彼が成熟したことを物語っていた。そしてそれこそがチャンピオンのために必要なことなのである。

その結果として彼は2位に26ポイント差をつけてランキングトップに立っていた。ヴァレンティーノ・ロッシとマルク・マルケスとの差はそれぞれ30ポイントと37ポイント。かなりの差だ。ヴィニャーレスに対するレース後のインタビューでは今後いかにしてこれだけの差を保っていくかという気の早い質問まで飛び出している。

しかしそれ以降、22歳のチャンピオン候補は苦労に見舞われ続けている。彼は地元GPであるモンメロでは10位という不満の残る結果となってしまった。それだけではない。ヤマハは気温が高くグリップが低い状況での17年型M1の絶望的なパフォーマンスを改善しようとしてはいるが、それはチームメイトの役に立ってはいても自分には恩恵をもたらしてくれるようには見えないのだ。

カタルニアでの2日間のレース後テストでは磐田からはヴィニャーレスとロッシのために2種類のフレームが持ち込まれた。そしてイタリア人のベテランは即座に一方を選択した一方、ヴィニャーレスははっきりしたことを語らなかった上に、確信がもてないようだった。「良くはなってますけど思ったのとは違いましたね」。月曜に新型フレームのひとつを試した彼はそんな謎めいた言い方をしているのだ。

アッセンでも流れは変わらなかった。彼もロッシも使ったのは新型フレームとシーズン当初に導入された17年型フレームの両方を使用している。そしてFP2でトップタイムを出して優勝候補と目されたマルク・マルケスを上回って見せたものの、雨に見舞われた予選では散々な結果となってしまった。

レースも散々だった。最低でも表彰台を狙える速さを見せたものの26周のレースの中盤、トップグループとの3秒の差を詰めようとしたところで転倒してしまっている。「人生最大のクラッシュでしたね」と彼はレース後に語っている。少々困惑していたようにも見えた。そして彼はこう続けている。「限界を超えちゃったんですね」。リアが空転を始めてシケインでマシンが彼を投げ飛ばした時の話だ。

興味深いことにオランダでマスコミに対応する彼は終始不満そうにしていた。午後のセッションでは完璧な強さを見せた金曜ですらそうだったのだ。そして使っているフレームについて尋ねられると、さらにガードが堅くなっていた。「ヤマハにしゃべっちゃだめだって言われてるんです。だからその質問には答えられないんですよ。じゃなきゃもちろん教えますよ」

彼はロッシに流れが向いてきたことに怒っていたのだろうか?ロッシは日曜に115回目の優勝を飾っている。それともヤマハがロッシの要求に応えたことが気に入らないのだろうか?ランキングトップに立っていたのは自分なのに。もちろん想像に過ぎない。しかしどうやら彼に逆風が吹いているようだ。

ロッシが開発の方向性について再び実権を握ったのは間違いないだろう。ヴィニャーレスがチームのナンバー1でないことに慣れていない(ルーキーだった’15年を除けばだが)のはこの際関係ない。ヴィニャーレスは油断していたのだろうか?

ロッシは若きチームメイトに向けていくつか辛辣なコメントを発している。悪夢のような結果に終わったカタルニアGPの後、ナイフを突き刺すチャンスを目ざとく見出した彼はテストでも当然のように相手の急所を狙ってきた。「マーヴェリックはヤマハでの経験がありませんからね。彼が17年型フレームを選んだのも、それがヤマハらしいと思ったんでしょう。でも僕はマシンがどう変化してるかちゃんとわかってるんで、2017年型は何かを失ってるって思ったんですよ」

充分すぎるほどの真実だ。ロッシは17年型フレームについて2回目のプレシーズン終了後からずっと、コーナリングエントリーで自分が要求する速さが出せないとこぼしていたのだ。新型フレームは彼の不満を解消しつつあるようだ。アッセンでロッシのM1の後ろを走っただけのマルケスですらそれに気付いている。

「金曜にヴァレンティーノの後ろを走ったんですけど、彼は新型フレームを使ってましたね」とマルケスは語る。「コーナー進入で何か良くなってるんですよ。うちはそこで違いを出していたんですけど」。土曜と日曜の結果がそれを裏付けている。そしてロッシはレース後記者会見で新型フレームを褒めるのを忘れなかった。

3日と少しのアッセンでの出来事をじっくり振り返ってみよう。ヴィニャーレスは新型フレームに少しばかり助けられただけで、レースでは転倒。5月以来守ってきたランキングトップの座を明け渡しザクセンリングにやってくるという、浮き沈みの激しい2017年となっている。

彼もロッシもアッセンと同じようにやっていくことになるだろうと言っている。新型フレームと17年型フレームが1台ずつだ。ヴィニャーレスは正直でもあった。「前に言った通り、アッセンに持ち込んだ新型マシンはポテンシャルはかなりあるんですけど、僕のライディングスタイルに完璧に合っているわけじゃない。僕のライディングは元々はアグレッシブなんですよね」

「シーズン前半に使っていたフレームだと少し自信が持ててアグレッシブに走れたんです。特に向き変えのところですね。すごく安定していた。ですぐにスロットルを開けられたんです。おかげで良い気持ちで乗ることができた。いずれにせよ新型マシンでもいろんなところが改善されてますし、正しい選択をしないといけませんね」

なぜ彼がアッセンで転倒したのかということについても興味は尽きない。どちらのフレームを使っていたのかを知りたいのは言うまでもないが、彼のコメントにもヒントが隠されている。「分析はしてますよ。結局僕がマシンの性能を超えて向き変えを速くやろうとしすぎてパワーを欠けすぎたってことですね。攻めすぎたんですね。早いとこ差を詰めたかったんです。どんどん周回が過ぎていきましたからね」

「ご存じの通りスロットルを開けすぎたんですよ。まずは早めにウイリーに持ち込んで素早く向き変えをしようとした。マシンは向き変えに呈したバランスじゃなかったんです。正直こんなことは今までなかった。シケインでのクラッシュ、しかも出口でなんてね」

つまりヤマハの二人のワークスライダーは微妙に異なる方向性での開発を望んでいるということのようだ。破滅的なほど、というわけでは決してない。結局の所二つのフレームの差はわずかしかなさそうなのだ。

「両方のマシンからいいとこ取りをしようと頑張ってるところなんです。楽な話じゃないですよ。今年型のフレームはレース終盤までグリップが保つところなんですよ。そこは去年苦しんだところですね」とウィルコ・ツィーレンベルグがピーター・マクラーレンにアッセンで語っている。「どちらのフレームも同じに見えると思いますよ。でも剛性が違うんです」

自分より優れた能力を持つ相手がいるということを信じたがらないトップアスリートがいるというこも確かである。そういう意味では今週末の結果は大きな意味を持つだろう。今週のザクセンリングは単に、シリーズの中で最もタイトなこのサーキットで誰かが誰かに差をつけるということを意味するのではない。どちらのフレームが今シーズン後半を切り開いていくことになるのか判断できることになるのだ。そして二人のライダーの最近のコメントから考えるに、ここでの決断が最終戦ヴァレンシアでの運命を決めることになるだろう。
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ここでヴィニャーが反撃できたりすると、またロッシの心理戦が発動したりして楽しいのにナー。

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コメント

もしかして、このフレームの件は落ち着くことはないんじゃないですかね。
と、いうのも原因はタイヤの方が大きいような気がしまして。
そこに昨年型M1が速さを見せてることが、さらに状況判断を難しくしているような。
ロッシは今回のザクセンリンク予選にして「マシンやタイヤのフィーリングが、サーキットごとに大きく変わってしまう」という話や、マーベリックやライバルマルケスの転倒後の率直なコメントがそれを表していると思います。
今年も混戦模様で面白いけど、もしそういった問題が足かせになっているのなら、多少スポイルされるところはありますね。

投稿: motobeatle | 2017/07/02 17:01

ビニャーレスはコーナーリングで
クイッと曲げていくスタイル。
ロッシはブレーキングからの倒しこみで
曲げていくスタイル。
両者は全くスタイルが違うけど、ロッシは
ヤマハの経験が豊富だから、開発の方向性を
示せるけど、ビニャーレスは難しい。

ロッシの方に有利に物事が進むのは当然だと思う。

むしろ、その状態であれだけ速いビニャーレスは
驚異でしょうね。
MOTOGPに来たばかりの頃のマルケスを彷彿させます。

これで経験を積んだら、もっと凄いライダーになりそうですね。

投稿: ブラインドカーブ | 2017/07/03 09:29

>motobeatleさん
 ま、わたくし的には落ち着かない方がおもしろいなーって思いますw。
 タイヤについては、まああれは天気みたいなもので、自然災害っつーか、それも含めて環境っつーか、そういう感じで捉えています。

投稿: とみなが | 2017/07/03 19:39

>ブラインドカーブさん
 ヴィニャーはおそらく速さはあるし順応性もありそうなので、来年は大丈夫じゃないでしょうか。
 それよりヤマハとしては噂されている去年型フレームを導入しても改善が見られないってのが頭が痛そうですね。エンジンとの相性なのかもですが。

投稿: とみなが | 2017/07/03 19:40

??
ヤマハは去年型フレームの比較テストは
行いましたが、去年型フレームを
ワークスは使ってないハズですよ。

ザクセンは従来型フレームと改良型フレームの
2本立てだったはず。

むしろ、あれだけ天候不良の中でシャシーの
良し悪しがわかるところまでちゃんとセッティング
できたとは思いません。

投稿: ブラインドカーブ | 2017/07/03 21:12

タイヤが天気や自然災害ですか、的確かもしれませんね。
見てる分にはそれでいろんな選手にいろんなことが起きて飽きはしないのですが、タイヤ屋さんそれでいいんでしょうか・・・唯一路面に接地してる部分で、選手たちはそのクレジットカードサイズの面積に命預けてますからね。
世界最高峰のレースで工業製品としてそんなアヤフヤなもん作って・・・という気はしますのでミシュラン製品は買いませんね。

投稿: ぺこぽん | 2017/07/03 21:17

この内容こそが、ロレンソが出ていった理由なのかなと思いました。
自分がポイントリーダーなのに、チャンピオンなのに、ヤマハはロッシをナンバーワンとみなす…

ヤマハは二度とこの事で、最優秀ライダーを逃さないでほしいと思います。
まぁロッシは引退が近いでしょうし、ビニャーレスも待てないほど気が短くもないでしょうが。

投稿: エディー大好き | 2017/07/04 23:32

>ブラインドカーブさん
 真実はシーズン後にわかったりするんでしょうか…。

投稿: とみなが | 2017/07/05 23:14

>ぺこぽんさん
 でも転倒が多いわけではないですし、ブリヂストンと比べると唐突さはなさそうなので、むしろ民生用もそういう特性なら安心かもですよw。

投稿: とみなが | 2017/07/05 23:15

>エディー大好きさん
 ロッシはお金にはなりますからねぇ…。

投稿: とみなが | 2017/07/05 23:16

ヤマハのロッシ贔屓は有名ですし、まあチームとしては金になるわけだから当然と言えますよね。
ビニャはロレンソのように、実力で№1の座を勝ち取るしかないでしょう。彼ならきっとそれができると思いますが。
まだまだ伸びシロのある若いライダーですから、今後の成長が楽しみです。

ただ、ロッシはチャンピオンシップ上位にいる限り、必ず後半に心理戦をしかけてくるでしょうね☆

投稿: たけちよ | 2017/07/11 10:52

>たけちよさん
 うふふ、その心理戦を見ながら「ひっでーなー」ってdisりたいですw。

投稿: とみなが | 2017/07/13 00:11

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