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猿でもわかるMotoGPガイド by カル・クラッチロー

イギリスのGQ誌のサイトに去年の9月記事ですがおもしろいのがあったので訳出。クラッチローがMotoGPのなんたるかについて解説してくれます。
ちなみにGQってのは男性向けファッション・カルチャー誌で、まあブルータスとレオンを足して2で割りつつもブルータスに寄せたような感じかな?
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ヴァレンティーノ・ロッシと聞いて、どこの洋服ブランド?と思うようなあなたのための記事である。MotoGPは最高峰のバイクレースのカテゴリーで今週もまた多くのファンが熱狂するのだ。というわけでニースライダーからハイサイドにいたるまで、それがどんなものかを教えることにしよう。教えてくれるのはBTスポーツの大使でLCRホンダのMotoGPライダーであるカル・クラッチローだ。35年ぶりに最高峰クラスで優勝した英国人である彼が時速300kmを越える戦いについて解説してくれる。

MotoGPマシンは買えません

 公道用バイクってのがフォードのフォーカスだとするとMotoGPマシンはルイス・ハミルトンのF1みたいなものですね。普通は僕らが乗ってるマシンを買うことはできないんです。何もかも秘密に覆われていて、何もかも特注品で何もかも完璧に組み合わさってる。あらゆるパーツがレゴみたいにかっちりはまるんです。値段は付けられないですよ。もしホンダに「このマシンはいくらするの?」って尋ねても彼らも答えられないんです。だって研究とか開発のコストも含まれてますからね。


MotoGPの速さは凄いけど自分ではわからない

 スピードはねえ、気にしないですね。テスト初日だと冬にがっつり休むんで「うっわ、神様!すっげー速ぇえ!」って思いますけど、半日もすると、もっとパワーをってなるんですよ。スピードなんてすぐになれちゃうんです。230km/h越えちゃうとあとは同じですね。そこまでいっちゃとワープする感じで視界がめっちゃ狭くなるんです。でも230km/hから350km/hまでは全然違いがわからないですね。


ニースライダーだけじゃなくてエルボースライダーのことも忘れないで

 ライダーが膝を地面に着けるようになったのはずいぶん前ですね。マシンが寝かせられるようになったからなんです。今ぼくらが膝を着くのは別の理由ですね。センサーとして使ってるんです。どれくらい寝てるかどうかを探るためですよ。そして今は肘まで接地するようになってるんです。これはマシンをどんどん寝かせるようになったからなんです。マシンの方向を変えたければ寝かせればいいんです。寝かせれば寝かせるほど体が地面に近づいていく。そうやって物理の法則に対抗してるんです。


タイヤは間違えないよう

 タイヤで地面に接しているんで、だからタイヤ選択は完璧じゃないといけない。ドライタイヤというのはつるつるで、表面に溝がないんです。なんでかって言うと単純な話で、熱を持ちにくくてグリップがいいんです。インターミディエイトはドライタイヤに似てますけど少し溝を切ってある。そうやって冷えた路面でも熱を持たせることができるんです。
 ウェットタイヤは全然違いますね。できるだけたくさん溝を掘って排水するようにできている。溝が多ければそれだけ水を排出できますからね。その分だけグリップが増す。スリックで雨の中を走ったらピットレーンを出たとたんに転んじゃいますよ。全然グリップしないんです。ウェットタイヤでドライ路面を走ることもできますけど、めっちゃめちゃ熱くなっちゃいますね。


ハイサイドは怪我をしがちなクラッシュ

 ハイサイドというのはマシンの上に飛ばされる感じなんですが、リアタイヤが滑るときに起こるんです。普通はアクセルを開けすぎたり、アクセルの開け方に対してグリップが少なすぎたりするときにでるものですね。それでリアタイヤが滑り出しちゃうんです。で突然またグリップする。そうすると自分が上にとばされちゃうんです。それでハイサイドって言うんですよ。実際それで怪我することは多いですね。


ローサイドはもう少しエレガント

 ローサイド(訳注:日本ではフロントからの転倒)はただ転ぶって感じです。たいていはマシンの内側に体がいっちゃいますね。これはいろんな原因があるんですが、普通はブレーキをかけすぎて、その時のマシンの傾きやスピードも合わせるとフロントタイヤが強いブレーキに耐えられなくなって起こっちゃうんです。よくあるんですけど、フロントタイヤが根を上げちゃうからなんですね。あとフロントの方が小さいんです(訳注:接地面が)。フロントからクラッシュすると地面をマシンと滑っていくんですけど、まあ実に優美な感じですね。


マシンから投げ出されたら?目をつぶるんです

 中には腕を折りたたんで腕や鎖骨を骨折しないようにとかするライダーもいますけど、僕はそうなったら目をつぶった方がいいですね。もう地面に横たわってるんだから眠った方がいいってことですよ。まあ姿勢を変えることもできたりしますけどそんなのは10回に1回くらいですよ。


謎の足出しブレーキングについて

 ドクターズ・ダングル(訳注:ドクター風ぶらぶら足)ってのは(ドクターというニックネームの)ヴァレンティーノロッシが始めたやり方で、足を出すんですよ。彼が最初かどうかは知らないですけどね。「ブレーキングが楽になるし、マシンの向きを変えやすいし、あれとかこれとかに効く」ってみんな言いますけど、まあクソですね。子供の時にモトクロス用自転車に乗って止まれないって思ったことあるでしょ?そうなるとまずは足が出る。僕らはブレーキングゾーンでも限界ぎりぎりで走ってるんです。いつでも止まれないと思いながら走ってる。そうなると足をステップに戻せないんです。まあ違う理由を挙げる人もいますけど、僕の説ではみんな子供なんですよ、止まれないーってなってるだけなんです。


ウェットセッティングとドライセッティングの違いについて

 雨だとマシンを柔らかくしないといけないんです。マシンにかかる力もブレーキもグリップも全然少なくなりますからね。だからマシンを本当に柔らかくする。電子制御を変えて、スプリングを変えて、フロントとリアのスプリングですね。それからマシンを低くするんです。水が排出できるようにですね。


ドリフトはかっこいいけど速いとは限らない

 速くなるときとならないときがあるんです。リアを出口に向けてうまくスライドさせていけばマシンを曲げるのには役立ちますね。上手く曲げられなかったらもっとスロットルを開けてスピンさせるんです。でもそうするとハイサイドになる危険性が増すんです。だからきっちりリアでマシンを曲げていかなきゃいけない。コーナーに入っていくときにも同じですね。もしうまくコーナーに入れなければマシンをロックさせて行きたい方向にマシンを向ける。最高の乗り方とは言えないですね。でも格好いい。


腕上がりについて語る

 バイクに乗るのは肉体的に本当にめちゃきついんです。特にホンダは難しい。だから腕上がりになっちゃうんです。腕上がりって言うのは腕の力が出なくなることなんですけど、これは前腕の筋肉が大きくなりすぎるから起こるんです。筋肉は膜に覆われていて、膜に対して筋肉が大きくなりすぎると酸素が行き渡らなくなる。それでたくさんのライダーが腕にメスを入れるんです。僕も両腕やってます。腕を切り開いて、膜を切るんです。筋膜っていうんですけどね。そうやって酸素が行くようにする。そうしてからまた閉じる。僕は何回か手術してます。2006年と2011年と2014年ですね。まだ完全には治ってないですよ。腕ってのはやっかいなんです。
 背の高い連中には起こらないんですよね。奴らの筋繊維は長いんです。


他のライダーを転ばせようったって

 前を誰かが走っていたら抜かなきゃならない。もし誰かが後ろにいたら抜かせるわけにはいかない。そういうときにお互いが違うことを考えてることもあるんです。どこで抜くかとか、どこが弱いかとか、どこが強いかとか、相手が誰かとかね。
 シルバーストンではマルク(マルケス:同じホンダのライダーでメーカー直営のレプソルチームのライダー)を抜くのに躊躇はなかった。でも僕にお金を払ってるのはホンダで、彼はランキングトップだってことは気にはしますね。だから彼を抜くときには、彼が僕をぬくときより少しだけ気を遣ってますね。僕はライバルを尊敬してますよ。結果として誰かを転ばせたこともありますし、きっとまたやっちゃうと思いますけど、でもわざとやらなきゃならないなんてことは絶対ないんです。それは信じてますよ。


史上最高のライダーが今ここで走っている

 過去からずっと見てみればバリー・シーン(二回タイトルを獲得した英国人)やケヴィン・シュワンツ(1993年のチャンピオンの米国人)、ヴァレンティーノ・ロッシ(MotoGPタイトルを7回獲得しているイタリア人)、ランディ・マモラ(タイトルを獲得していない最も偉大なライダーの一人)がいる。もちろんほかにも10人くらいはいるはずですね。ミック・ドゥーハン(5回連続タイトルを獲得しているオーストラリア人)とか史上最高の一人ですよね。でも今はマルク・マルケス(二度のタイトルを獲得し、史上最年少のMotoGPチャンピオンのスペイン人)が最高ですね。彼はキャリア最高の時期を迎えている。マシンはライバルほど戦闘力はないんだけど、彼がまじすごいんですよ。あとホルヘ(ロレンソ。2015年のMotoGPチャンピオン)は3回タイトルを獲得している。だからほんとにめっちゃたくさんのすごいライダーが走ってるんです。
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ブレーキングでの足だし、こどもが「わーっ」ってなってるのと同じ説www。

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コメント

もうレース毎の解説も全部カル様で良いのでは無いかとw
マシンからリアルタイム実況もお願いしたいところですが
ピー音で埋め尽くされそうなので無理でしょうね…w

投稿: LOWER | 2017/04/03 07:05

「止まれないー!」の足出し走法、目からうろこです。
これまではっきりとした理由がわからずモヤモヤしてましたが、、、納得!
足を出さないホルヘは度胸と自信のある大人ってことでしょうか♪♪

なんにせよ、カル様の話はいつでも端的で明確で素晴らしいです☆また次回に期待!

投稿: たけちよ | 2017/04/03 13:50

>LOWERさん
 1日でクビかもw。

投稿: とみなが | 2017/04/03 20:37

>たけちよさん
 もう誰が足を出していてもヘルメットのなかで「わー、わー、わー!止まれない−」って叫んでる風にしか見えませんよね。
 真偽はさておき一番説得力のある意見です。

投稿: とみなが | 2017/04/03 20:38

良いですね!
分かりやすさと言葉の隅々に高い知性が感じられます。
もちろん好きで転んでるわけじゃないけど、今年は去年のように転ばないで!
それだけでカルは、かなり良いとこ行くと思います。

投稿: motobeatle | 2017/04/03 22:16

>motobeatleさん
 ライターさんの力もあるんでしょうけど、実に的確に言い表してますよね。
 そしてほんとに転ばないで!

投稿: とみなが | 2017/04/03 23:43

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