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MotoGP:ロレンソがドゥカティについて語る

いつも素晴らしいインタビューを記事にしているManuel Pecino氏がこんどはロレンソにインタビューしてるので訳出。SportRider.comより。
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5つの世界タイトルを手にしたホルヘ・ロレンソは今ふたたびバイクの乗り方をイチから学び直している。フラストレーションで一杯に違いない彼が自分のライディングの問題について語ってくれた。

ホルヘ・ロレンソもドゥカティもこんなシーズン序盤を夢見ていたわけではなかったはずだ。目標が達成できないどころか、むしろ状況は悪くなる方向に向かっているのではないかと思わせる時さえある。プレッシャーも大きい。オースチンでのアメリカズGPの散々な結果を受けて、普段は温厚なアンドレア・ドヴィツィオーゾの口からも厳しい言葉が飛び出す始末だ。ドゥカティのピットでは組織が混乱に陥っており、すべてが崩壊寸前だと言うのだ。皮肉なことにこれほどの混乱の中、唯一自分自身に全ての注意を注いでいるのが、普段は最も要求の多いホルヘ・ロレンソである。

Sport Rider:あなたはいつでも非常に思慮深いライダーですよね。いまのような厳しい状況の中でどうやって感情をコントロールしているんですか?誰かに話をするとか、助けを求めるとかするんですか?

ロレンソ:いいえ、全部自分で処理してますよ。精神分析も受けてないですしね。誰にも頼ってません。いろいろ経験を積んでわかったんです。これは、そうですねぇ、いろんな理由でうまくいかないことがあるスポーツなんだってことですね。今回については理由ははっきりしてますよ。マシンの変更が自分が思っていたより難しかったってことです。


Sport Rider:繰り返しになって申し訳ないんですけど、きつい状況の時に気持ちを分かち合う相手がいないってのは辛いんじゃないですか?普通は自分を助けてくれる人がいて、それはプロフェッショナルだったり身近な人だったりですね。特にエリート選手の場合はそうだと思うんですが、あなたの今の人生にそういう人がいないってのは驚きなんですが。

ロレンソ:それがいないんですよ。自分の問題は自分で吸収するのになれているし、忘れなきゃならないことは忘れられる。考えない方がいいことがあれば別のことを考えられる。そしてその問題を分析すべき時が来たら分析する。その時がきたらパズルのピースがきちんとはまるんです。そしたら仕事に取りかかれる。突然上手く行き始めるってもんじゃないこともはっきりわかってます。そうじゃなくて、十分の一とか0.5とか、そうやってすこしずつ良くなっていくんです。そうやって自分の目指すところに少しずつ近づいていく。


Sport Rider:2年前の2015年もひどいスタートを切りましたよね。でもその後ヘレスで優勝したとき、あなたはそれまでのレースとの違いについて「本能に従って乗る」ことに決めたことだとコメントしてます。今年はそれと比べてどうなんですか?同じようなやり方でなんとかなりそうです?なすがままにまかせて余り考えすぎないってやり方ですけど。

ロレンソ:本能に従ったらヤマハのときみたいな走りになっちゃいますね。ヤマハだと攻めすぎると遅くなるんです。みんな見てるでしょ。(ベン)スピーズは最初は良かったですけど後から苦労するようになったし、(ポル)エスパルガロはすごくアグレッシブなライダーで、それで速く走れなかった。ヤマハで速かったのは技巧派ライダーなんです。(コーリン)エドワーズとかヴァレンティーノとか僕とかね。ヤマハでは最初はゆっくりいくんです。ブレーキングがアグレッシブだったり突っ込み過ぎたりするとだめなんです。早めのブレーキでスロットルも早めに開ける。これがドゥカティだと真反対ですね。とにかくブレーキは遅らせて、あと強く掛ける。そうやって荷重移動を大きくするように心がけてます。あとリアブレーキも使わなきゃならないんです。ヤマハの時は全然使ってなかったんですよ。リアホイールをスライドさせて減速するんです。ヤマハとは逆ですね。あと空転もちょっと多めになる。スロットルをアグレッシブに開けてコーナー中盤でスライドさせるんです。ヤマハでそれをやったら全然ダメですから…違う世界ですね。すごく攻撃的なサッカーリーグでやっていたのに突然イタリアに移籍してディフェンシブに戦わなきゃならなくなったみたいな感じですよ。


Sport Rider:ブレーキング、コーナリング、加速とコーナーでは三つのことをやるわけですが、あなたはその内後者の二つで飛び抜けていました。そしてそれがあなたのライディングの強みだった。ドゥカティでは逆にコーナリングを犠牲にしてブレーキングを良くしなければいけないように見えますがそれで合ってます?コーナーを犠牲にしてブレーキングを改善する。

ロレンソ:人によるんだと思います。(アルヴァロ)バウティスタなんかはコーナリングで強いでしょ。ドヴィツィオーゾはブレーキングだけでコーナリングは全然ですし。ブレーキングと加速でもうちょっとアグレッシブにするってくらいの話なんです。あとリアブレーキを多用すると。基本的にコーナー進入をなめらかにしてスピードを保つ。でコーナーに入ってからのスピードは追求しない。コーナーを上手く走れれば2km/hくらいスピードが稼げるんです。僕はまだヤマハの時ほどのコーナリングレベルに達していない。5km/hくらいコーナリングは遅いんです。でも他の部分でカバーできる。加速とかですね。エンジンパワーとうちが上手くやれてるアンチ・ウィリーシステムを最大限に活用しないといけない。あとブレーキングでの安定性を活かしてブレーキを遅らせる…。コーナー中盤での遅れをブレーキングを遅らせて早めに加速することでカバーしたいんです。


Sport Rider:ヤマハからドゥカティに移籍した最近の例ではロッシ、ドヴィツィオーゾ、あとカル・クラッチローがいますけど。結果を見るとみんな適応するのに苦労している。彼らと自分の状況が似ていて心配になりませんか?

ロレンソ:ロッシの結果と僕の結果を比べると判断を間違えると思いますよ。2010年には速いマシンは4台しかなかった。他のライダーは何光年も離れていて、トップと45秒差でも5位か6位にはなれたんです。今はもしそれほど話されたら15位ですよ。速いマシンも増えているし、レベルも似ている。一方で今のドゥカティはロッシの頃より完成している。でも、繰り返しになりますけどワークスのいいマシンも前より増えているんです。


Sport Rider:ドゥカティのライダーはみんなデスモセディチが非常に体力的に厳しいマシンだと言っています。どういうことか説明していただけますか?なぜドゥカティは他のマシンより疲れるんでしょう?どこがいちばん辛いんですか?

ロレンソ:今のマシンはブレーキレバーを引いても止まらないんです。だからドゥカティのライダーはレバーを引くのに力を入れすぎて腕が疲れちゃうとかないようにリアブレーキを使っている。結構腕にくるんですよ。で、エンジンはすごく神経質で、特にスピードが出てるときがひどいんです。だからマシンを大人しくさせるためにリアブレーキを使わなきゃならないコーナーもあるんですよ。その二つ、ブレーキングとハイスピードでの加速のせいで、かなり体力的には厳しいですね。そのかわりストレートではすごく安定してるんです。あんまりぐらつかないんで、そこでは少しは息をつける…。でもそうですね、全体的にはこれまでより疲れるマシンだし、心拍数も上がりますね。


Sport Rider:このために体力トレーニングの方法を変えたりしてるんですか?

ロレンソ:ええ。前より筋肉がつきました。前より強くなってますね。


Sport Rider:5回も、しかもその内3回はMotoGPでタイトルを獲った乗り方が通用しないってのを受け入れるのは精神的にきついに違いないと思いますが、やっぱり簡単じゃないんですよね。

ロレンソ:もともとかなり高い目標だとは覚悟してました。これまで(ケイシー)ストーナーしか達成できてないことですからね。それにあの時のマシンはすごくわかりにくくてしかもヤマハやホンダに比べて馬力でもそれほど勝っていたわけじゃなかった、それに彼が使っていたのはブリヂストンで、ミシュランとはかなり、特にフロントが違った。2008年に何回か勝ってますし、2009年にもちょっとは勝っている。2010年も勝ってる。、でも2007年程じゃ結局なかった。ストーナーだけがいつも勝ち続けて、そしてドゥカティ唯一のタイトルを獲得している。ええ、今の段階ではバウティスタはすごくうまくマシンに適応しているし、ドヴィツィオーゾも僕より早いし、(ダニオ)ペトルッチも(スコット)レディングも他のライダーも速い。でもぴったりはまれば誰よりも高いレベルで走れると思ってますよ。そうならなきゃいけないんです。だってドゥカティはそのために僕と契約したんですからね!これまで乗ってきたマシンを理解してきたように、今回もどうやってこのマシンで速く走れるか理解できれば他のライダーより一歩先に行けるって自信は持ってます。


Sport Rider:これまでの説明からするとやるべきことはわかっていて、これを理論から実践に持っていこうとしている段階だってことですね。

ロレンソ:それがいちばん難しいんです!(笑)口だけなら誰でも勇敢になれる。でもそれを実行に移さなきゃならないんです。


Sport Rider:(チーフメカの)クリスチャン・ガバリーニとの関係はいかがです?これも新たな経験となるわけですが。

ロレンソ:最高ですね。すごくいいですよ。彼は最高に穏やかで、ここまで信頼できる人はいなかったですね。プロとしても最高だし、人間としても最高ですよ。


Sport Rider:イタリアのチームと働くのは日本のチームとはかなり違うものなんですか?キャラクターとか精神的なものとか、一番の違いはなんでしょうか?

ロレンソ:ドゥカティでは何かを試す時間が少ないですね。あんまりテストで距離を走らないんです。迅速でいいですけど、逆に壊れやすかったりはしますね。


Sport Rider:そこも慣れが必要なところですね。

ロレンソ:ええ。でも(ジジ)ダリーニャがいるんで、かなりうまくまとまっていますね。


Sport Rider:ドヴィツィオーゾがカタールとアルゼンチンでは前を走れたのはいい徴候ですよね?マシンのポテンシャルはあるってことです。

ロレンソ:ええ。ドヴィはカタールでは勝てそうだったし、バウティスタもアルゼンチンではヴィニャーレスから6秒遅れでフィニッシュしてます。25周で6秒というのは1周にすれば0.2〜0.3秒ですから。それほど大きくはない。うちのマシンもヤマハから0.2秒は離れてないってことなんです。


Sport Rider:ヤマハであなたがやっていなくてヴィニャーレスがやっているのは何だろうかとマルケスに尋ねてみたんですけど、ヴィニャーレスはブレーキを遅らせてるのにコーナリングスピードも犠牲にしてないというのが彼の答えでした。そいうことだと気付いていましたか?

ロレンソ:ブリヂストンのとき実は僕はすごく高いレベルに達していたんです。でもミシュランでは安定しなかった。タイヤやコースコンディションで成績が変わってしまってたんです。ブリヂストンのときほど安定した成績が出せなかった。一方ヴィニャーレスはどんなコースでも安定していて、あとリアブレーキの使い方を心得ているんです。ヤマハでは僕はリアブレーキを使っていなかったんです。ドゥカティほどは必要じゃなかった。でもヴィニャーレスは使っているし、それでフロントに荷重を掛けすぎないでいられるんです。フロントだけでブレーキングするのはすごく効率的で、例えばウェットだと前後ともにブレーキを掛けた方がいい。これがヤマハでできてれば良かったですね。ブレーキングを遅らせることもできたろうしあんな風にブレーキングで遅れをとることはなかったでしょう。実際去年はブレーキングでやられてましたから。マーヴェリックは現時点ではスタートに改善の余地ありですね。今は最初の何周かは前に追いつくために使ってしまっている。でも彼はすごいライダーですよ。特にリアブレーキのテクニックは凄い。それに去年の僕より完成度が高いですから。


Sport Rider:ヴァレンティーノが今年は誰よりも調子がいいですけど、アルゼンチンみたいにレースになると予選より0.7秒も速くなるのはなぜか説明していただけますか?

ロレンソ:(微笑みながら)わからないですね。みんなが知りたいのに彼にしか答えられない質問ですよ。
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なんだ冒頭の切ない話は…(TT)。

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コメント

>すべてが崩壊寸前
そんなことはないですよねwヽ(´▽`)/

端正で美しいライディングフォームと共に、このインタビューで答えている言葉。
これがホルヘの魅力だと思うんですよね。
現状で自分が苦戦していること。
同じドカに乗るドヴィツィオーゾやバウティスタ他の面々に比べて自分が遅いこと。
それをなんら色をつけず率直に言い表す。
自分の問題点と共に。
五回のワールドチャンピオンを取った人だったら、少しは色をつけたりしても悪くないかもしれません。
でも彼はそうじゃないんですよね。
そこに何かスポーツマンとしての清々しさを感じるんです。

ガンバってよ!ホルヘ
もう少し時間は掛かると思いますけどね。
サマーブレイク前後には絶対上がってきますよ!


投稿: motobeatle | 2017/04/29 00:22

モトビさん・・・( ´;ω;`)アリガト!

まさに『孤高』。
これぞホルヘ・ロレンソ。
超好きっすね こういうアスリート。
枠になんてはまって欲しくない!
いつだってオリジナルさ!

投稿: りゅ | 2017/04/29 12:35

りゅさん、こちらこそです!
ここまで正確かつ緻密に問題点を挙げていること。
なかなか出来ることじゃない。
そこにも彼の強さを自分は感じます。
やりますよ!彼は絶対!

投稿: motobeatle | 2017/04/29 18:41

>motobeatleさん
 なんか、そうやって「自分を冷静に見つめられる自分」を演じているのかもと、うがちすぎですけど心配になってしまうのです…。悩みの種は尽きないので、早いとこ速さを取り戻してほしいです!

投稿: とみなが | 2017/04/30 00:16

>りゅさん
 私はほんとにこれが無理してないならいいなあと…。

投稿: とみなが | 2017/04/30 00:17

>とみながさん
まだ三つ終わったばかりだし、個人的には、むしろマグレ的に早く勝ってしまってはいけない!と思ってます。
じっくり己とマシンの特性を掌握して満を持して勝つ!
それが真の進化だと考えますんで。

投稿: motobeatle | 2017/04/30 10:27

ホルヘ・ロレンソの魅力は、その誇り高き孤高と芯の通った男気です。
ヤマハのスタッフはイタリア人が多く、完全にロッシ贔屓のチームでしたが、上手くいかない時、勝てない時、ロレンソは決してチームやマシンの批判をしませんでした。
強烈な個性を持つ2人のチャンピオンライダーを抱えたヤマハがあれだけ長い間バランスを保てたのは、偏にロレンソの我慢に因るものだと言われています。
ロッシが人当たりも愛想も良く冗談好きなのに対し、無愛想で神経質で馬鹿真面目なロレンソはとても損をしてますね。
アンチロレンソが多いのも頷けます(笑
でもだからこそ私はそんなロレンソの魅力に惹きつけられてやみません。
拘りの男ロレンソですから、簡単ではなくとも時間をかけて必ず勝利を手にし、チャンピオンシップに戻ってくるでしょう。

ただ、ケーシーと同じように私も「ロレンソは勝っても勝てなくてもチャンピオンに相応しい人間だ」と思ってます☆

投稿: たけちよ | 2017/04/30 10:41

>motobeatleさん
 一日も早く勝たないと、メンタル面が心配で心配で、こっちのメンタルまでダメになりそうなんですよぉ。

投稿: とみなが | 2017/04/30 21:05

>たけちよさん
 わたしは今年は無理でも来年圧倒的強さで勝ちまくってほしいですね。ほんとに。

投稿: とみなが | 2017/04/30 21:06

なんか盛り上がってるんじゃないか~い?笑
ふふふ、ホルヘとて人間だもの(みつを)。
無理もあろうし演じてる部分も少なからずはありましょうとも。sun
繊細なトコもあるようですしね。
でもそれ以上になんだかんだとタフな男だと思いますよ~
でなければあそこにはいないもの。

今年はホルヘ本人だけじゃなくファンのメンタルも強靭さを要求される年ってことかな?(わ、割といつもか?)
とみながさまもがんばるのよ!upwardright(アレ?)

投稿: りゅ | 2017/04/30 22:19

とみながさん、モトビさん、りゅさんのホルヘ愛が心に沁みて泣けます!!
アメリカGPのホルヘのスタートは素晴らしかったですね。
進化し続けるホルヘをこの先もずっと見続けて行きたいです。
そして遠くない未来に必ず4度目のチャンピオンを獲ってくれると信じてます!

投稿: たけちよ | 2017/04/30 23:38

>りゅさん
 がんばるよ!

投稿: とみなが | 2017/05/01 22:21

>たけちよさん
 なんだなんだ、このホルヘファンの集い!www。

投稿: とみなが | 2017/05/01 22:22

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