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MotoGPのローンチコントロールはどのように機能しているのか

Mat Oxley氏による電子制御解説の4回目はローンチコントロールと呼ばれるスタート時の制御です。Motor Sport Magazineより。
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ローンチコントロールはレースのスタート時にグリッドからロケットのようにスタートするためのライダー支援システムである。今日はこれについて解説しよう。

MotoGPにおいてレース中に相手を抜くのはますます難しくなっているが、これには多くの理由がある。カーボンブレーキのおかげでブレーキング区間が短くなったという細かい話からマシンそのもののパフォーマンスが似通ってきたという大きな話まで実に様々だ。

そのせいでスタートの重要性はかつてないほど高まってきた。これがローンチコントロールが開発された理由である。ローンチコントロールのプログラムの目的はライダーがクラッチを260馬力に繋いだときに最大加速を得られるようにすることである。しかしMotoGPの他のライダー支援システムと同様、先にドルナが導入した統一ソフトウェアはMotoGPが始まって10年以上使われてきたメーカー製ソフトウェアと比較すると賢さにおいて遥かに劣るのである。

ドルナの考えはこうしたライダー支援技術をその原点に戻すことである。パフォーマンスを伸ばすことではなく安全性を改善することだ。マニエッティ・マレリは他の4つのライダー支援、トラクションコントロールウィリー制御エンジンブレーキ制御、アンチ・ジャークと同様にローンチコントロールにもドルナの考えを反映させている。

ワークス製電子制御時代のローンチコントロールは非常に効果的で、赤いスタートシグナルが消えると同時にライダーはスロットルを全開にし、クラッチもいきなり繋ぐことができた。ライダー支援システムがなければこうした動作は瞬時に最悪の事態を招くはずだ。確実に宙返りすることになる。しかしワークス製ソフトウェアは非常に賢く、常に状況を支配下に置くことができた。そしてリアタイヤに最適な大きさのパワーを供給する。おかげでライダーはフロントホイールを5cmも浮かすことなく最初のコーナーに向けて突撃していけたのだ。

最終的にほとんどのメーカーのローンチコントロールの効果に差がなくなってしまい、ローンチコントロールが安全性に寄与しているかどうかについても議論されるようになった。全てのライダーが同じタイミングで1コーナーに入っていくことになったからだ。

今はライダーは自分でほとんどのことをこなさなければならない。つまり誰もが考えるあるべき姿が到来したということだ。技量のあるライダーが報われるのである。

レースのスタートでは多くのライダーがリアを滑らせるのに気付いているだろう。ローンチコントロールがあるにもかかわらずだ。実はローンチコントロールはトラクションコントロールシステムを起動させないのだ。単にウィリー制御を行っているだけなのである。
Motor_sport_blog_launch_control_gra

これまでと同様、データ分析グラフを見るときにはのたくる線の洪水に惑わされてはいけない。番号とこれに対応する解説をお読みいただきたい。

(1)白い四角形はローンチコントロールの発動

これはライダーが左のハンドルバーにあるボタンを押してローンチコントロールモードを発動させたことを示している。ライダーが1コーナーに向けて減速を始めるとシステムはローンチコントロールモードを解除する。またローンチコントロールはライダーがオーバーレブを心配することなくスロットルを全開にできるようレブリミッターも調整している。このおかげでライダーはスロットルとクラッチのバランスだけに集中できることになる。


(2)赤い線はスロットル開度

多くのライダーがレーススタートを告げる赤ライト消灯の前にブリッピングをするが、これには特に意味はない。神経質なライダーほどガス遊びをしたくなるようだ。


(3)白い線はマシンの速度。赤い線はリアホイールの回転から測定した速度。緑の線はフロントホイールで測定した速度

このライダーは上手くスタートしている。フロントホイールがすぐに浮くことはなく、ホイールスピンも最小に抑えている。しかしそれも長くは続かなかった。フロントホイールがわずかに浮いたためにフロントで測定している速度はすぐに落ちている。これに合わせてライダーはスロットルをわずかに戻す(最上段を参照)。ホイールは一瞬接地するがライダーが2速に入れると今度はさらにおおきくフロントが浮いている。一方赤い線は常に白い線の上方で推移している。ホイールスピンのためだ。シフトアップに応じて一瞬だけ尖った線が表れ、1コーナーに向けて減速を始めるまでスピンは継続している。ローンチコントロールにはトラクションコントロール機能はない。どんな場面でも選択できるシステム設定は少ない方が良いという考えに基づくものである。加えてストレートでのホイールスピンはそれほどMotoGPライダーを危険にさらさないということもある。自分の右手で調整すれば済むのである。


(4)白い線はライダーが要求するトルク。緑の線はエンジンが供給するトルク。赤い線は計算上のウィリーの限界

緑の線が下向きに突出しているところはウィリー制御システムが極端にエンジントルクを絞ってウィリーを減らしているところだ。ここはライダーが2速、3速、4速とシフトアップしている瞬間だ。


ブラッドリー・スミスがローンチコントロールについて語る

去年はうまくスタートするってのがいちばん難しかったですね。統一ソフトウェアが入る前の2015年は前回にしてクラッチをがつんと繋いでマシンが発進できた。ローンチコントロールが何もかも上手くまとめてくれてたんです。今はフルパワーを使えない。だから、そうですね、スタートでは75%くらいで、だからクラッチを繋いだ瞬間のトルクは少なくなってます。そのあとフルスロットルまでもってくときもクラッチを使うんです。でないとウィリー制御が入っちゃってスロットルバタフライがいきなり開いたり閉じたりするんで揺り木馬に乗ってるみたいな感じになるんです。もし誰かがパワーリフトをやってるとしてもそれは自分でコントロールしてるんであって電子制御がやってるんじゃないんです。たいへんですよ。去年の最初の2レースはスタートで完全に横を向いちゃって、だから一から慣れていかなきゃならなかったんです。

グラフ作成:ダン・ヒリャール
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ライダーの技量が出るのはとてもいいことだし、スタートも見応えがあるし、そんなんでもロン・ハスラムなら速かったんでしょうか。

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