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MotoGPのアンチジャークはどのように機能しているのか

Mat Oxley氏による電子制御解説の最後となる5回目はアンチジャークと呼ばれるシステム。スロットル開閉時のショックを軽減するやつですね。ジャーク(jerk)ってのは、ぐいっと押すとか、ぴくってなる感じです。Motor Sport Magazineより。
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MotoGPのライダー支援システムの謎に迫るシリーズの最終回

はい、もう馬鹿にしたように笑うのはやめよう。神経質なプリマドンナであるMotoGPのトップライダーのためにマシンを作り上げなければならなくていらいらしているエンジニアたちを助けるために作られたこのコンピュータプログラムは確かに賢くはない。しかし統一ソフトウェアの降臨以来、実はその重要性はますます高まっているのだ。

アンチジャークはライダーが閉じたスロットルをコーナー途中で開けていく際に支援を行うシステムである。コーナー進入ではスロットルは全閉となる。そしてその時が来たらライダーはそっとスロットルを開け始める。この時バックトルクを発生していたエンジンは進行方向のトルクに移行する。ここでトランスミッションに負荷がかかりエンジン内にジャーク(突発的力)が発生するのである。この瞬間のリーンアングルは非常に深く、発生するトルクは大きい、つまり悲惨な結果が起こり得るということである。オーバーランすることになるか、自分ではどうにもできないスライドに陥ってしまうかだ。

アンチジャークは数ミリ秒の間、最大100%のトルクを削減することでこうした問題を回避するものだ。

このグラフはあるライダー(マニエッティ・マレリが秘密としているため名前は不明)がヘレスの8コーナー(130km/hで回る左コーナーでかの有名なスタジアムセクションに入っていくところ)を駆け抜ける様子である。

Motor_sport_blog_28_february_2017_a

いつもの通りこのデータ分析グラフではちょっと見にはわかりにくいくねった線は無視して数字と解説に集中してほしい。

(1)白い線はスロットル開度。オレンジの点線は開度ゼロ

このライダーは垂直から60°ほどのフルバンクからスロットルを開け始める最初の段階に入ろうとしている。


(2)白い線は回転数。緑の線はリアホイールで測定した速度

回転数とリアホイールで測定した速度が急激に上がっている。300回転/6km/h程度だ。エンジンがスロットルオフからスロットルオンに移行するのに合わせてトランスミッションが前に向かって駆動をかけ始める瞬間だ。これがジャークである。そしてアンチジャークはこの部分にさようするのだ。とは言えこのケースではシステムのセッティング変更が必要なようだ。ここまでショックが大きいとライダーはスロットルを開けられなくなるのだ(上記(1)参照)。


(3)白い線はライダーが要求するトルク。緑の線はアンチジャークが要求するトルク削減量。赤い線はリアホイールに伝わるエンジントルク

赤い線と白い線は10〜30ミリ秒ほどを除いては一致している。これはアンチジャークがジャークを感知してトルクを削減している部分だ。ここでは瞬間的に大きなトルク削減が必要となるので点火を遅らせるか点火をカットするかで対応している。通常のトラクションコントロールのようにスロットルバタフライを閉じるのではない。こうした状況ではアンチジャークはトルクをほぼ100%カットすることもある。


(3)ブラッドリー・スミスがアンチジャークについて語る

以前よりアンチジャークには頼るようになってますね。昔はトラクションコントロールがやってくれてたんです。スロットルの開け始めのところでパワーをスムーズにして使い易くするためにアンチジャークがあるんです。もし最初の開け始めのところでタイヤがスピンし始めたらどうにもできないですからね。タイヤのスピンはフルバンクからずっと続くんでトラクションを掛けている間ずっと妥協し続けることになるんですよ。もし最初の開け始めでグリップを保つことができればトラクションを掛け続けられるんです。どのコーナーでもバイク半分くらい頭に出られますね。スムーズであればあるほどうまくできるんです。でも同時にちょっとだけショックも必要なんですよ。ここでマシンの向きを変えるためにね。

グラフ作成:ダン・ヒリャール
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コーナーでスロットル全閉から加速に移行するのは普通のバイクでも気を遣いますよね。私はそこを気持ち良くしたくてスロットルの遊びをチマチマと調整したりしてましたが、おそらくそんな感じで電制のセッティングをしてるのかしらん。

さて、いよいよ今週末は開幕戦ですよ!!

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コメント

技術的には後退してしまったのかも知れませんが
下位のワークスチームやサテライトチームのチャンスが広がった事や、新規のワークスの参入に繋がったりと、結果的に成功だったんだと思いますね。

マレリとの繋がりでドカティだけが得をする為に導入させたと思っている人もいたみたいですが、結果良ければ全て良し。で良かったんじゃないですかね。

ライダーの腕の差が出る余地が有るってのはスポーツとして見応えが有りますよね。

投稿: bb | 2017/03/20 18:56

>bbさん
 私もそう思います。まあドゥカティが一歩先行していたのは否めないでしょうけど、結局うまいこといきましたからね。

投稿: とみなが | 2017/03/20 19:23

今回も大変興味深い記事の紹介ありがとうございました!
少し後戻りしたとはいえ現代の電子制御化されたGPマシンというのは、一般人が走らせたら一体どういう風に感じるんでしょうかね?
技術の進歩に感動して走るのが楽しく感じるか?
市販バイクとは全く異なる不思議さを感じるか?
電子制御が作動する領域まで持って行くことが出来ないで終わるのが関の山ですかねw
凄いマシン、凄い世界だというのは間違いないですね。

さあ、金曜日から楽しみです!

投稿: motobeatle | 2017/03/20 22:54

「神経質なプリマドンナ」ってオックスレイ氏が書くと、どぉ~~もシニカルに聞こえてしまうのは私だけ?笑
 まぁそれはさておき、当初は色々と危ぶまれたECU統一でしたけど。
bbさんも書かれているとおり結果オーライで着地したんではないでしょうか(赤ホルヘにはどうなのか?怖)
もちろん水面下では多少の動きもありましょうし、メーカー同士でキリキリしたりさせられたりなんだろうけれど、それも含めてファンは楽しませてもらってますね。
ライダーやエンジニアはもとより、チーム関係者全ての方にエールを送りたいです。
 さていよいよ2017シーズンのブラックアウト!GPフリークスもローンチコントロールをばっちり調整しときましょうね~

投稿: りゅ | 2017/03/21 13:58

>motobeatleさん
 その内市販車にもフィードバックされますよ。それが楽しいかどうかは別問題ですけど。なんか勝ちを優先したら乗り物としてはつまらなくなりそうな気も…。

投稿: とみなが | 2017/03/22 02:11

>りゅさん
 プリマドンナ、は笑いましたね。ブラックスワンな感じかもですよ。そして明後日には!!

投稿: とみなが | 2017/03/22 02:12

>とみながさま
そうなんですよ~
Oh!Mate!うまいこというじゃないの!って、はからずも苦笑
そういわれるとホルヘとギエムさまがどこかかぶるような気が。

投稿: りゅ | 2017/03/23 13:34

>りゅさん
 世界中でプリマドンナって高慢ちきで扱いにくいってことかとw。

投稿: とみなが | 2017/03/23 16:50

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