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MotoGPのウィリー制御はどのように機能しているのか

前回に引き続きMat Oxley氏による電子制御解説。今回はウィリー制御です。Motor Sport Magazineより。
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MotoGPにおけるライダー支援システム解説の2回目はウィリー制御についてだ。260馬力を股の下で扱うには必須のアイテムである。

2016年シーズン、MotoGPでこれほどまでにウイングが重要になったのかその理由をご存じだろうか?ドルナが供給する統一ソフトウェアにおいてはウィリー制御プログラムが最も弱い部分だったからだ。それでウイングでダウンフォースを稼いで加速中にフロントホイールが浮かないようにしたのである。

MotoGPマシンのトルクはとんでもないレベルで(エンジニアはいつもトルクの話ばかりで馬力の話はほとんどしない)、何速だろうがフロントホイールが持ち上がるほどだ。そしてホイールが上がりすぎればライダーはスロットルを戻すはめになる。つまり加速が鈍るということだ。2016年になるまではワークスが自分たちのために電子制御によるウィリー制御を作っていたが、これは最先端をいっていたものだ。このプログラムはフロントホイールが浮く前にウィリー制御を発動させるのである。フロントサスのストロークの加速度を検知するセンサーに基づきからウィリーを予測するようなものだったのだ。電子制御ユニットにスロットルボディを1つか2つ閉じるように命令するのだ。ウィリー制御がうまくセッティングれきれば、激しいウィリーを防止するぎりぎりのところでトルクを削ることができ、加速をそれほど犠牲にしないのである。

ドルナはこうした状況を変えたかったのだ。ドルナの統一ソフトウェアの根本にあるのは安全性である。パフォーマンスの向上ではない。トラクションコントロールは安全性に大いに寄与するがウィリー制御についてはそれほどではない。だからこそドルナはウィリー制御を基本的なものに留めているのだ。今やライダーはウィリーとをし過ぎないよう、しかも加速を殺しすぎないようにするために自らのスロットルコントロールに頼らなければならなくなっているというわけだ。

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上図はあるMotoGPライダー(名前はトップシークレットということで我々にはわかない)がヘレスの5コーナー(シト・ポンスコーナー)から立ち上がっていくときのものだ。このコーナーは3速の右コーナーで麦ストレートにつながっている。ここでコースが急激に下っていくためウィリーが大きな問題となる場所でもある。

41秒の所に入っている縦の点線がコーナー出口であり、この時点でライダーはスロットルを全開にし、フロントホイールが浮き始めている。ウィリー制御システムが機能し始める直前である。

のたくった7色の線を理解するために、まずは1~5までふってある数字に注目してほしい。それぞれについて以下に解説しよう。

(1)上から2段目:赤い線はマシンの速度。白い線がフロントホイールで計測した速度。黄色い線がフロントサスの縮み量

マシンは強烈に加速しリアに加重が掛かると共にフロントホイールが浮き始めている。ホイールがアスファルトから離れると回転が減っていくためホイール回転数から計測した速度を表す白い線が実際のマシンの速度である赤い線を下回るようになる。同時にフロントフォークは伸びきって黄色い線は0を表示している。こうした情報が入るとウィリー制御システムはマシンがウィリーに入ったと判断する。この時点でマシンの実際の速度とフロントホイールで計測した速度は30km/h程度になっている。ウィリーが長く続く場合は速度差は100km/h近くまで達することもある。


(2)上から3段目:緑の線はマシンの前後のピッチング量。赤い線は前後のピッチング速度。点線はピッチング速度0の状態、つまりマシンが前後にバランスしている状態

マシンがウィリーを始めると後ろ側に傾いていくことになる。ピッチング量とピッチング速度によりウィリー制御システムはウィリーの大きさを把握する。3°程度の傾きであれば通常は問題はないが、急激に3°まで上がるとシステムはウィリーが許容範囲を超えており何らかの介入が必要だと判断する。


(3)最下段:白い線はライダーがスロットル開度に合わせて要求しているトルク。赤い線はウィリー制御システムがウィリー量に合わせて要求しているトルク。緑の線はシステムが削ったトルク

ウィリー制御システムは基本的にトラクションコントロールシステムと同様、リアホイールに伝わるトルクを減らすものである。白い線からはライダーがフロントホイールを浮かしながらも大きくスロットルを開けていることが見て取れる。赤い線は白い線より僅かに下をいっている。これはホイールの速度とフォークの縮み量と前後のピッチング速度のそれぞれのセンサーがウィリー制御システムに対してライダーが要求するよりもトルクを減らすよう要求しているからだ。緑の線がその結果として削られたトルクの量である。

42秒から43秒にかけての3つの山で表示されるトルクの減少は再びフロントホイールが浮いたためである。2段目に表示されるフロントホイールの速度の減少と3段目で表示されるピッチの増加でもそれは明らかだ。

ウィリー制御システムはトラクションコントロールシステムと比べものにならないほどトルクを削るようにできている。これはマシンがそれほど危険な状態ではないからだ。5コーナー立ち上がりではエンジンが200馬力を出しているときにウィリー制御システムが200馬力まるごと削ってしまう場合もあり得るのだ。


(4)上から3段目:赤い線は前後のピッチング速度。点線はピッチング速度0の状態

ピッチング速度がゼロになることは決してないことにも注目したい。これはコース上のマシンは常に細かく前後にピッチングを繰り返しているからだ。


(5)最上段:白い線はマシンのスピード。緑の線はスロットル開度。赤い点線はスロットル開度100%

ライダーはホイールスピンを感じてもウィリーを感じてもスロットルを緩めることになる。つまりタイムをロスするということだ。これは電子制御担当エンジニアがシステムをうまくセッティングできなかったということでもある。そうなると次にライダーがピットに帰ってきたらチームがシステムの制御マップに新しい数字を打ち込みその辺りでのトルクを減らすようにする。そうすればライダーはスロットルを戻さなくて済むのである。


ブラッドリー・スミスがウィリー制御について語る

2015年と比較して一番性能が落ちたのがウィリー制御システムでしょうね。今ではフォークが伸びきったときしか介入しないんです。去年まではウィリー制御のタイミングを前倒しにできたんでフォークが伸びきる前に介入させられたんです。ウィリーになることを予測してくれた。そういう意味では凄く進化したシステムでしたし、おかげでいい感じでフロントを浮かすことができた。今はフォークが伸びきるまで介入しないし、介入するとバタフライを閉じて完全にパワーを切りにかかるんです。そうなると自分でスロットルを戻すことになる。でないとパワーが減り過ぎちゃうんです。で、スロットルを戻すとバタフライが開いてフロントが設置して、ってのの繰り返しですね。だから自分でスロットルをコントロールした方がいいんですよ。

ウィリー制御システムを使いこなすには自分でパワーを制限することですね。例えば3速で60%のトルクくらいから初めて4足入れて75%のトルクを出してって具合にね。そうやってフルパワーの回転数にもっていくんです。

グラフ作成:ダン・ヒリャール
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へー、ウィリー制御はほぼ1-0で動いてるんですね。まあ細かくコントロールしなくても危険はないということなんでしょう。そりゃスタートたいへんだわ。ってドゥカティみたいにパワフルなマシンはどうやってるんでしょうねえ。

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