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カタールGP:クラッチロー、転倒2回はタイヤ選択の失敗

上位ライダーはほっといて、クラッチローもいきますよ。CRASH.netより。
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開幕戦カタール。カル・クラッチローは本来であればトップ5を狙えたと考えている。スタート直前にグリッドでフロントタイヤを交換しなければ良かったと後悔しているのだ。

結局彼は2度の転倒を喫し、痣だらけのシーズンスタートを切ることになってしまった。序盤でフロントタイヤに熱が入りすぎてしまったためだ。最初の転倒は最終コーナー。2番目は再スタート後に13コーナーでスロットルが開きっぱなしになってしまったためである。

やはりホンダに乗るマルク・マルケスと同様、クラッチローは21時スタートに向けてハードコンパウンドのフロントタイヤを選択していた。RC213Vはこの週末を通して加速に苦しみ、ライダーはブレーキングを遅らせることでタイムを稼がざるを得なかったのだ。

しかしスタートが遅れたことで20周に減算されたレースは気温が下がり湿度が上がる時間帯に突入することになる。そして彼はハードタイヤは適していないと言われたのだ。「それで手放しちゃったんですよ」と彼は言う。

「グリッドでフロントタイヤを交換したんです。マルクと同じようにね。そして僕らは二人とも失敗した」。2度の転倒を喫しはしたが概ね彼は大丈夫なようだ。「ミディアムタイヤはうちのフロントには使えないってわかってたんです。柔らかすぎる。でも半ば無理矢理タイヤを替えさせられた。
 レースが遅れたんで露が降りるのが心配だとかなんとかいろいろいろ言われてね。でも僕にとってもマルクにとっても間違った決断でしたよ。でも僕に決定権はなかったんです。
 こういうことはほとんどないし、あってはならないと思いますよ。最初はよかったんですよ。いいポジションで走れた。ヴァレンティーノと接触しちゃったけど、レースではあることですしね。彼に気付いてなかったし彼も僕に気付いてなかった。僕も全く見えてなかった。
 でも他のやつらの後ろで走っている内にだめになってきたんです。フロントタイヤが熱くなりすぎたんです。ラインを少し外して、それで最終コーナーで転倒した。それからまた走り出したんだけど、やめればよかったですね。スロットルが全開のまま固定されてたんですよ。
 ハンドルが曲がってグリップが泥まみれになってたんです。ピットに入ることだけ考えればよかった。でもピットにたどり着くこともできなかったんですけどね。ピットに戻ってエアコンプレッサーでグリップについたクソみたいな泥をふっとばしたかったんです。それができてたら少なくとも完走はできたでしょうね。でもそこまで行けなかった。
 マシンが加速し続けたんですよ。それでスロットルを閉じたんですけど今度は曲がらない。それで思いっきりフロントブレーキを握って飛び降りたんです。チームには申し訳なかったけど、まあ僕が絶対あきらめないのをみんなもわかってくれてるし、僕もその時点では完走できると思ってたんです。でも2回目のクラッシュはハンドルが曲がってたせいなんです。
 とにかくこのファッキンな状況をとっととなんとかしないと。それに痛いんですよ!どっちも大したことないって転倒じゃなかったですからね。でもまあこれもレース。去年も同じポジションから始まってますし。でも今日はいい結果が残せるチャンスだったんですけどね。グリッドでつまらない決断をしちゃった」

クラッチローがクラッシュしたのは10位に上がろうとスコット・レディングの後ろを走っていた4周目のことだ。彼にとってはかなり悔しい転倒になったようだ。レプソル・ホンダの2台について行けたと思っているのだ。

「正直いい結果が残せる自信はあったんですよ。状況がどうあれね。完全ドライなコンディションでも5位にはなれたはずなんです。ドライとウェットが混ざってるような悪い状況でもやっぱり5位に入れたはずですよ。
 うすぼんやりマシンにまたがってるだけでもやっぱり5位になれた、と思う。マルクについていけたはずだし、一緒に走ることもできたはず。どちらもフロントタイヤに問題を抱えていて、それ以外は完璧だったんです。
 でもその時は前の連中を抜けなかったんです。だから持久戦に持ち込むことにした。ダニがやってたことですね。そして彼はマルクに追いついた。ペースがそれほど速くなくて、フロントがミディアムでもその程度のペースなら行けたと思うんです。
 最終コーナーでラインをちょっとだけ外してしまったのは、ちょっとだけインをカットしてストレートでスコットに追いつこうとしたからなんです。でラインを外れたとたんに転倒した」

「でもそれは完全に僕のミスでした」と彼は渋々認めた。「それに再スタートしたのも完全に僕のミスですよ」

クラッチローの話を聴く限り、ミディアムフロントタイヤを使うというのは提案ではなく強制だったようだ。コンディションのひどさが理由である。

「タイヤチョイスがギャンブルだったなんて考えたことはないですよ。いつも自分のやることには自信をもっている。でも今日は選ばせてもらえなかったんです。で、結局それは間違った選択だった。
 それに、やっぱり元に戻そうとしたときにはもう交換が終わっていて戻せなかったんです。時間が足りなかった。マルクも無理矢理タイヤを替えさせられてましたね。
 それが僕とマルクがレースを優位に運ぶ鍵だったと思いますよ。誤解しないで欲しいんですけど、別にホンダが他のメーカーのマシンが強いんだって言ってるわけじゃないんです。でもマルクについて言えば、フロントタイヤさえ良ければもっと戦えたと思いますよ」
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へー、ライダーの意志より優先されるってのは、要するにミシュランの「要請」ってことなんでしょうね。

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カタールGP:エスパルガロ(兄)「アプリリアにとってこれは始まりにすぎないんだ!」

いやー、今回いちばんかっこよかったのは兄パルガロでしたね!ピットも優勝したかのように喜んでました。というわけでまずはアレイシのコメントをCRASH.netより。
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アドレナリンがまだおさまらないアレイシ・エスパルガロはカタールでの6位という素晴らしい結果について、MotoGPのトップを目指すアプリリアにとっては「始まりに過ぎない」と力強く宣言してみせた。アプリリアでのデビュー戦で周りの期待をはるかに上回る結果を出したのだ。

エスパルガロの今回の走りはキャリア最高とも言えるものだった。トップ10フィニッシュというレース前の目標を上回る6位、優勝したヴィニャーレスからは7秒遅れ、そしてホンダの最上位マルク・マルケスからはわずか1秒遅れだったのである。

スタートは決して良くはなかったが、レース中のラップタイムでは3番手のタイムを記録しているエスパルガロは終盤のRS-GPのタイムと安定性に満足している。彼が言うにはトラクションのおかげでダニ・ペドロサのRC213Vと互角に戦えたのだそうだ。

「ゴール時点でのマルクやダニとの差は1秒もなかったですからね」と彼は切り出した。彼の順位はアプリリアにとって4ストMotoGP時代のタイ記録である。

「こんな成績をまた記録するのはかんたんじゃないことはわかってますよ。マシンは最高でしたし、本当に『決勝仕様』になってましたからね。アプリリアのおかげでトラクション(訳注:文脈的にはグリップ)が落ちてきたあたりで素晴らしい走りができたんです。
 つまりどのサーキットでも凄く暑くなって誰もソフトタイヤが使えないときでも僕はソフトで行けるってことなんです。これはうちのいいところですね。トラクションが本当にいいマシンなんです。
 予選でのスピードには改善の余地はありますけど、冬期テストでもユーズドタイヤでいい走りができてましたからね。正直トップ6なんて考えてもいませんでした。トップ10は視野に入れてましたけどね。
 ダニをストレートで抜けたのも嬉しかったです。夢みたいですね。こんなことやったことがなかったですから。うちのマシンは最終コーナーのトラクションでホンダに勝ってたからだと思います。
 加速で彼に接触しそうになったんですよ。それくらいスピードは出てたんです。でもタイヤが新しいときの加速は改善しないといけないですね。序盤の2〜3周は誰も抜けなかったんです。絶対無理って感じでしたね。
 みんなラインを塞いでけものみたいに加速していく。猿みたいっていうか。抜くなんて無理でしたね!でも8周目くらいからみんな普通の走りになって、それで僕も抜きながら前に行けたんです。
 エンジンですか…、まだ加速はなんとかしたいですね。でもトラクションはいいんでマシンはいい感じですよ」

ラップタイムの安定性には満足しつつも彼は一発出し用の最高のセッティングについては課題があると認識している。

「予選をなんとかしないといけませんね。今日も10位以内のところからスタートできてたら6位より上を狙えたかもしれません。
 予選を改善してトップ10をとりに行く。サテライトより前で走る。簡単ではないですけどうちのマシンは良いところもありますしね。もちろんがんばってかなきゃいけないですけど、今はハッピーですよ」

あるジャーナリストが冗談交じりに「評論家の言うとおりなら、あなたはスズキを出て弱小チームに加入したことになってるんですけど?」ときくとエスパルガロは見事にこう切り返した。

「まあしばらく待ってもらいたいですね。これはまだ始まりにすぎませんよ!必ずトップで走ってみせますから。絶対ですよ」
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いいなあ、かっこいいなあ。応援するよ!!

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公式リリース>カタールGP2017年

ヤマハドゥカティ(英語)ホンダアプリリア(英語)スズキ、KTM(まだみつかりません)。

去年のヤマハに続いてホンダのコメント翻訳もMotoGP公式病と言うかMIKIO病というか、なんかだめになってないか?

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公式プレビュー>カタールGP2017年

ホンダヤマハドゥカティ(英語)スズキ(英語)アプリリア(英語)、KTM(を見つけられない…)。

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生まれ変わったダニ・ペドロサ:白紙からやり直す年(パート2)

パート1で引っ張ってますが、パート2も早速。PecinoGPより。
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24時間前に公開した「生まれ変わったペドロサ」の記事ではスペイン生まれの彼が自分とそしてHRCのライダーがプレシーズンテストで味わった苦労について話してくれた。そうした苦労は革新的ライダーであるストーナーやマルケスそして彼自身が味わってきたものだ。そして彼がレースキャリアを通じて保ち続けているホンダへの忠誠心について語ってくれた。このパート2ではペドロサの内面について知ることになる。常にファンやジャーナリストとうまくいっていたわけではないこと、翌週からの新シーズンへの抱負について、そして自分で選んだ2017年に向けての大変革について語ってくれた。これからお読みになる内容は本当に、本当に読み応えがあると我ながら思う。

今シーズン、ダニ・ペドロサは自分を取り巻く環境を大幅に変えている。彼は自分のレースアプローチ自体を思い切って刺激しようとしているようにも私には見えるのだ。マネジャーを替え、チーフメカを替え、メカニックも替え、アシスタントも替え、そしてセテ・ジベルノーをコースアドアイザーとして招いている。明らかにペドロサはこれまでやってきたこととは違うことをやろうとしているのだ。
「こうやっていろいろ変えたのは経験を積んで、時間を経るに従って物事は変わって、だから自分を作りかえなきゃならないとわかったからなんです。時代の変化にどうやって自分を合わせていくか見つけないといけない。ライディングスタイルも自分を取り巻く環境も変えなきゃならないんです。トレーニングを積んで肉体的にも時代についていかなきゃならないのはもちろんです。でもそれだけで全てはカバーできない。何かを見落とすんです。だから大事なのは自分ひとりでは完璧にカバーできない部分を理解した上でそこを作り変えていくことなんです。今回は自分でいろいろ変えたんですけど、満足していますよ」

「よくわかってますね」。それが”新しい人生”を作り出した背景にはモチベーションの維持という目的があったのかという質問への彼の答えだ。「経験を積むことで自分がうまくできないことはわかるんです。そういうのとか、自分でバランスをとろうとしているのにバランスがとれない部分とかはわかる。バイクに乗ることや楽しむことや関係ないことに邪魔されないこととかですね。若かった頃と今とでは全然違うんです。色んなことを学んで色んなことに目配りができるようになった。でも基本に立ち返ることにしたんです。レースとバイクのことだけに集中するんです。そこに集中することが大事なんですよ」

ドゥカティにいたイタリア人を新チーフメカに迎えたということは、これからメカニックとライダーの関係を構築し直すということである。これはおわかりいただけるだろう。どちらも相手が言っている意味をきちんと理解しなければならないのだ。「マシンが曲がらない」というとき、ホンダのライダーであるペドロサと元ドゥカティのエンジニアで同じことを言っているのだろうか?共通言語を創り出すところから始めざるを得ないということだ。「彼が僕に何か言って僕が彼を黙って見つめ返すってことが何度もありましたね。彼が言ってることは僕が思ってるのと同じことなのかとか、あと、こっちから質問すると「それ私にきいてます?」とかね。僕はイタリア語は少ししか話せないんですけど、そういうレベルの話じゃないんです。ピンとこない単語があるんですよ。まあそれほど大きな問題じゃないんですけどね。確かに昔の僕なら問題になったかもしれないですよ。たぶんね。あの頃は知らないことも多かったし、でも今はここまで経験を積んだんで、「待って、もう一回言って、何言ってるかわかんなかった」って言えるんです。

モチベーション、経験

私がペドロサのようなベテランライダーにインタビューするときにはいつも同じ質問をすることにしている。レースに対する情熱についてだ。MotoGPレベルでレースを続けるというのは非常に厳しいことだし、楽しいからやっていたのにいつの間にか仕事になってしまっているのはどういう気持ちだろうと思うのだ。「ああ、確かに楽しめない時期もありましたね。環境は最高だったのに、勝てるチームにいて子供の頃からの夢をかなえて…、でもいつでも幸せにいるってのは難しいんです。怪我もなんどもしたし、うまくいなかったこともあったし、個人的な部分でも…。どれがどうってはっきり言うことはできないですけどね。自分が夢見ていた人生を送っているんだけど、だからといっていつもハッピーだったわけじゃないんです」

いちばん楽しくなさそうな話題は最後までとっておくことにした。おそらくダニを不快にさせるだろうと思ったからだ。ファンや世間やジャーナリストに対する彼の態度についてだ。かつて彼に、ペドロサが最高のレースをできるとしたら観客がいない、そしてジャーナリストがいないレースではないかと言ったことがある。それを再び持ち出すことにしたのだ。もちろん彼の態度はずいぶん変化している…いい方にだ。ダニは私の厳しい質問を笑顔で受け止めた。

「昔はとにかく最善を尽くしたくて、すごく高いレベルで集中しなきゃならなかったんです。そもそも僕は内気なタイプだし当時は若かったし…、いろんなことをうまく扱えなかったんです。たくさんの人に囲まれて、みんなが僕に触ろうとして、写真を撮ろうと腕を回してきて」。ダニは少し間を置いてこう言った。「小さな町で生まれ育ったんです。部屋に入ったらみんなが僕の方を向くなんてなかった。もともと自分では人目を引くような性格じゃないと思ってるし、僕の態度も、まああなたも言うほど距離を感じていないようにも見えるけど、あんまり人当たりが良くはないですよね。そういう外のいろんなことにわずらわされずに静かにしていたいんです。すごくショックだったし良い気持ちにはなれなかった。今は経験も積んで違う見方ができるようになりました。わかったんです。子供だったんですよ。僕についてきてくれる人たちにどんなことをしてたかってわかったんです。みんなが僕をテレビで見ていて、僕と写真を撮るのがみんなにとってどんな意味を持つのがわかったんですよ。そうやって見えてきたおかげで僕は変わったんです。違う見方ができるようになった。もう僕は前みたいにこうしたことが自分を安全な場所から遠ざけるようなものだとは思わなくなったんです」

2017年に向けての抱負

そろそろわかってもらえたことだろう。2017年のペドロサは新しい一歩を踏み出したのだ。経験を積んできたおかげで彼は地に足のついた人物となった。大言壮語はなし。大声でなにかを言うこともない。「今年は最高の自分をあらゆる場面で出していかなきゃって、はっきり見えてるんです。僕のやりたいことや、モチベーションを最大限に発揮する。これまでの経験やチームをそのために使っていく。全てを活かすのは最高にたいへんですけど、それが今僕のやっていることなんです。それが僕の目標です。もし全てが上手くかみ合えば数字はついてくるはずです。見ていてください」

このダニとの会話はカタールテストの2日目に行われたものだ。24時間後、ペドロサは最後のプレシーズンテストで3番手のタイムを叩き出した。チームメイトのマルケスがほんの数日前に警告していたことだ。「ダニには気を付けた方がいい。僕はピットにいるから彼がどれほどやっているか知ってるんだ。バン!HRCにはみんな忘れてるけどすごいライダーがいるんだ」。

「僕は自分の最高を追求してきた。それでどんな結果を出せるかはわからないけど、すごくわくわくしているし、努力をするのが楽しいんだ。そのおかげで言えるんですよ。ここまでがんばってきたんです、でももっとやれるし、それを自分でも楽しみにしてるってね。それが僕のモチベーションなんです」
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をー!!!訳してて泣きそうになったのは久しぶりだ!!!
記事では「大言壮語はなし」ってなってますが、こんなに自信に満ちたダニは見たことないよ!!!

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生まれ変わったダニ・ペドロサ:「なんで教えてくれなかったの」は無しで(パート1)

ファンもファンじゃない人も幸せを祈ってやまないダニ・ペドロサですが、今年はくるよ!知らなかったってシーズン終わりに言ってもだめだからね!って記事をPecinoGPより。
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いつもの彼のスタイルだースポットライトの当たらないところで黙々と働くーダニ・ペドロサは2017年のプレシーズンテストを非常に良い形で終えた。31歳になるカタルニア出身の彼は冬期テストを表彰台に値する3番手で終えたのである。その上にいたのは素晴らしい走りを見せたマーヴェリック・ヴィニャーレスと常に安定した走りを見せるアンドレア・ドヴィツィオーゾだ。見出しを飾るのは他のライダーかもしれないが、最後に3番手の座を勝ち取ったのはダニなのである。

2017年はペドロサにとって12年目のMotoGPシーズンとなる。既にヴァレンティーノ・ロッシに次ぐベテランライダーになってしまった。この12年間、常にホンダワークスであるHRCに所属している。そしてそこまで長くトップチームで走っているにもかかわらず一度もタイトルを獲得していないことでライダーとしてのダニへの信頼は年々失われてきた。しかし2017年が彼のキャリアの新たな一歩となる予兆があるのだ。

我々がダニ・ペドロサが新たに契約したマネジメント会社であるアメリカ・ワッセルマンにインタビューを申し込む際にサーキット以外のリラックスできる場所でのインタビューを依頼した。サーキットにいるライダーは本人の考えとは関係なく「レースモード」に入ってしまうのだ。私たちはもっとプレッシャーのかからない雰囲気の仲で我々の直感、つまり「新型ペドロサ」が本当かどうか確かめたかったのだ。ダニが私たちの前に現れたとき、彼は心地よさそうにリラックスしていた。そして30分間にわたる会話はインタビューと言うよりおしゃべりという感じで進んでいったのだ。

ホンダ「ファミリー」の一人として長い間過ごしてきたペドロサは様々な状況をHRCのピット内で経験している。つまり2017年のエンジンがなかなか決まらないという今年の混乱もいつものことだということだし特に心配するほどのことではないのだ。あと2週間もしない内に開幕という今、すでにそれは問題ではないという…。

「今のところそれはOKですね。これから予想もしなかったことが起こらなければですけど。でもいずれにせよこれはホンダではよくあることで、耐久性や他のチームへの供給やそういういろんなことも考えなきゃならないですからね。変なことが起こらなければもうこれで決まりでしょう」。ダニはプレシーズンテストの序盤は上手くいかなかったと正直に語っているが、既に1月下旬辺りからホンダは確実に前に進めるようになってきたという。特に電子制御分野だ。「セパンからオーストラリア、そしてヘレスへとどんどん良くなってきてますね」

アグレッシブなエンジンかスムーズなエンジンか、ボトムエンドのパワーを犠牲にするのかトップエンドを犠牲にするのか…?ペドロサにどちらのタイプのエンジンが好きなのかたずねてみた。去年のある時期、彼はマルク・マルケスの希望を優先してホンダが選択したエンジンは自分なら選ばないと言っていたからだ。「いろんなのに乗ってるんです。例えば125ccはピーキーで、だからすごくアグレッシブで、でも同時にパワーは全然なかった。ある意味スムーズでスロットル全開でいけたんです。250ccも同じ感じで、でもトルクはありました。だから125より楽しかったし難しくもあった。それから(MotoGP)でV5に乗った。エンジンは静かなバイク(訳注:quieter bike と言ってるんですがV4のことでしょうか?)と同じ感じで、でも重くてコーナーでのコントロールが難しかった。それからスクリーマーに乗りましたね。全然気持ち良くなかった。たいてい僕はコースを走ることに集中できて安定して出せるマシンが好きなんです。セッティングも安定性重視で不安定なマシンにはしない。例えば僕らの最大のライバルのヤマハはずっとある意味僕らの「正反対」ですよね。そして僕らはいつでもライバルの弱みをつけるようにマシンを開発していくんです」

ペドロサは数週間前PecinoGPで書いたこと(訳注:おそらくこれ)についても同意してくれた。ホンダRCVが「マシンの挙動に合わせなければならないバイク」であるということだ。ライダーがマシンに合わせて動かなければならないということだ。先にペドロサが言及したヤマハはライダーがマシンをコントロールできるバイクだ。「直感的に反応しなきゃならないし、馬の背中でゆっくり考えてるみたいなわけにはいかないんですよ」とダニは言う。「例えばあるラップで完璧にコーナーをこなしても次のコーナーでは3回も動いて修正しないといけなかったりして、そういう何があるかわからない場所もある。そういうのはいいんです。例えば普段は挙動が穏やかなんだけどあるコーナーで一回挙動があるとしますよね。そうなったら普通は次のラップでも同じように乗ってれば同じことが起こると思うのが普通です。でもホンダはそうじゃないことがある。あるラップではOKでも次のラップではだめ。それでマシンの挙動に反応しなきゃならない」

テクニック重視の他のMotoGPライダーと同様にペドロサは神経質なフレームより安定感のあるフレームを好んでいる。「ある程度は挙動重視のマシンと安定性のあるマシンのどちらかに持っていくことはできるんです。リンクを変更したり、トレールを変更したり、あれやこれやいじるところはある」。ダニは加速に移ってから、そしてコーナー中盤の方がブレーキングより得意だとも告白している。そして同時に自分よりそれが得意なライダーもいることを認めてもいる。

革命的ライダーたち

10年以上MotoGPにいるペドロサは多くのライダーがやって来て、そして去って行くのを観ている。あらゆる時代のMotoGPマシンを経験しており、それぞれが異なるテクニックとライディングスタイルを要求していた。レース界というのは忘れっぽいところだ。しかしケイシー・ストーナーとマルク・マルケスと同じくらいダニも革命的なライダーだったのだ。トラクションを少しでも多く得るべくタイヤの接地面を大きくするためにコーナー出口に向けてマシンを立てるやり方は彼ならではのものだったのだ。これに関して彼はおもしろいことを言っている。「こういうのは世代が変わる度に多かれ少なかれ起こっていることなんです。ルーキーは優勝ライダーをずっと観察して、まずはそのライダーの真似をするんです。お手本にして…それで自分なりの方法をライディングやマシンコントロールに付け加えていくんです」彼はストーナーやマルケスを引き合いにしながらそう言った。

「誰かが自分はやってないことをやってるって気付いたら、自分を作りかえなきゃならないんです。ライバルが自分を上回ることをやってるんだから自分も新しいことに適応していかなきゃならない。でもこういう進化ってのはタイヤが変わったりしても起こるんです。それでライディングも変わるわけですからね。例えばミシュランからブリヂストンに代わって(原注:2009年のこと)コーナーでのバンク角がとんでもなく深くなったしブレーキングもかなり突っ込むようになったしコーナー進入がアグレッシブになったし、こういうこと全てがライディングスタイルの変化につながっているんです」

再びミシュランになったことでかつてのスタイルをリサイクルする必要があるようだ。「ライダーとしてはミシュランに戻ったせいでマシンを少し変更しなきゃならなかったですし、ライディングスタイルも変化させました。前と同じではないでしょうけどね。タイヤも進化したスピードやマシンからの要求に応えなきゃならないわけですから」

ホンダへの忠誠について

既にペドロサとホンダの蜜月がMotoGP時代の全てを通じて続いていることについては言及した。彼はホンダの125ccでGPデビューを飾りNSR250で2度のタイトルを獲得している。しかしペドロサがHRCのエンジニアが作ってくれたマシン以外に興味や好奇心を持たなかったはずはないのだ。

「もちろんこれだけ長いことライバルのことを見てきて、自分たちの弱みも見えていて、強みも見えていて、だからいつでもなんで自分はホンダにいるのかについては問い続けていますよ。いろんなバイクには乗ってますけど全部ホンダですからね。公道用のバイクもスクーターもホンダはホンダなんですよ。なんて言ったらいいのかわかんないですけど…。ホンダはいつでもちゃんと走るでしょ?ぱっと乗れるし乗りやすい。例えばドゥカティには乗ったことないですけど、乗ったことのあるライダーを見てるとホンダとは全然違うのは明らかですよね。直感的に乗れない感じだし、でもすごくいいところもある。あと、例えば友達とスーパーモタードのトレーニングに言って、僕はホンダに乗って友達がKTMに乗って、そういうときは他のバイクがどんな感じか気になりますよね」

白紙からやり直す年

今シーズン、ダニ・ペドロサは自分を取り巻く環境を大幅に変えている。彼は自分のレースアプローチ自体を思い切って刺激しようとしているようにも私には見えるのだ。マネジャーを替え、チーフメカを替え、メカニックも替え、アシスタントも替え、そしてセテ・ジベルノーをコースアドアイザーとして招いている。明らかにペドロサはこれまでやってきたこととは違うことをやろうとしているのだ。

「こうやっていろいろ変えた理由は…(続く)」
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続きは明日!

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MotoGPのアンチジャークはどのように機能しているのか

Mat Oxley氏による電子制御解説の最後となる5回目はアンチジャークと呼ばれるシステム。スロットル開閉時のショックを軽減するやつですね。ジャーク(jerk)ってのは、ぐいっと押すとか、ぴくってなる感じです。Motor Sport Magazineより。
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MotoGPのライダー支援システムの謎に迫るシリーズの最終回

はい、もう馬鹿にしたように笑うのはやめよう。神経質なプリマドンナであるMotoGPのトップライダーのためにマシンを作り上げなければならなくていらいらしているエンジニアたちを助けるために作られたこのコンピュータプログラムは確かに賢くはない。しかし統一ソフトウェアの降臨以来、実はその重要性はますます高まっているのだ。

アンチジャークはライダーが閉じたスロットルをコーナー途中で開けていく際に支援を行うシステムである。コーナー進入ではスロットルは全閉となる。そしてその時が来たらライダーはそっとスロットルを開け始める。この時バックトルクを発生していたエンジンは進行方向のトルクに移行する。ここでトランスミッションに負荷がかかりエンジン内にジャーク(突発的力)が発生するのである。この瞬間のリーンアングルは非常に深く、発生するトルクは大きい、つまり悲惨な結果が起こり得るということである。オーバーランすることになるか、自分ではどうにもできないスライドに陥ってしまうかだ。

アンチジャークは数ミリ秒の間、最大100%のトルクを削減することでこうした問題を回避するものだ。

このグラフはあるライダー(マニエッティ・マレリが秘密としているため名前は不明)がヘレスの8コーナー(130km/hで回る左コーナーでかの有名なスタジアムセクションに入っていくところ)を駆け抜ける様子である。

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いつもの通りこのデータ分析グラフではちょっと見にはわかりにくいくねった線は無視して数字と解説に集中してほしい。

(1)白い線はスロットル開度。オレンジの点線は開度ゼロ

このライダーは垂直から60°ほどのフルバンクからスロットルを開け始める最初の段階に入ろうとしている。


(2)白い線は回転数。緑の線はリアホイールで測定した速度

回転数とリアホイールで測定した速度が急激に上がっている。300回転/6km/h程度だ。エンジンがスロットルオフからスロットルオンに移行するのに合わせてトランスミッションが前に向かって駆動をかけ始める瞬間だ。これがジャークである。そしてアンチジャークはこの部分にさようするのだ。とは言えこのケースではシステムのセッティング変更が必要なようだ。ここまでショックが大きいとライダーはスロットルを開けられなくなるのだ(上記(1)参照)。


(3)白い線はライダーが要求するトルク。緑の線はアンチジャークが要求するトルク削減量。赤い線はリアホイールに伝わるエンジントルク

赤い線と白い線は10〜30ミリ秒ほどを除いては一致している。これはアンチジャークがジャークを感知してトルクを削減している部分だ。ここでは瞬間的に大きなトルク削減が必要となるので点火を遅らせるか点火をカットするかで対応している。通常のトラクションコントロールのようにスロットルバタフライを閉じるのではない。こうした状況ではアンチジャークはトルクをほぼ100%カットすることもある。


(3)ブラッドリー・スミスがアンチジャークについて語る

以前よりアンチジャークには頼るようになってますね。昔はトラクションコントロールがやってくれてたんです。スロットルの開け始めのところでパワーをスムーズにして使い易くするためにアンチジャークがあるんです。もし最初の開け始めのところでタイヤがスピンし始めたらどうにもできないですからね。タイヤのスピンはフルバンクからずっと続くんでトラクションを掛けている間ずっと妥協し続けることになるんですよ。もし最初の開け始めでグリップを保つことができればトラクションを掛け続けられるんです。どのコーナーでもバイク半分くらい頭に出られますね。スムーズであればあるほどうまくできるんです。でも同時にちょっとだけショックも必要なんですよ。ここでマシンの向きを変えるためにね。

グラフ作成:ダン・ヒリャール
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コーナーでスロットル全閉から加速に移行するのは普通のバイクでも気を遣いますよね。私はそこを気持ち良くしたくてスロットルの遊びをチマチマと調整したりしてましたが、おそらくそんな感じで電制のセッティングをしてるのかしらん。

さて、いよいよ今週末は開幕戦ですよ!!

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MotoGPのローンチコントロールはどのように機能しているのか

Mat Oxley氏による電子制御解説の4回目はローンチコントロールと呼ばれるスタート時の制御です。Motor Sport Magazineより。
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ローンチコントロールはレースのスタート時にグリッドからロケットのようにスタートするためのライダー支援システムである。今日はこれについて解説しよう。

MotoGPにおいてレース中に相手を抜くのはますます難しくなっているが、これには多くの理由がある。カーボンブレーキのおかげでブレーキング区間が短くなったという細かい話からマシンそのもののパフォーマンスが似通ってきたという大きな話まで実に様々だ。

そのせいでスタートの重要性はかつてないほど高まってきた。これがローンチコントロールが開発された理由である。ローンチコントロールのプログラムの目的はライダーがクラッチを260馬力に繋いだときに最大加速を得られるようにすることである。しかしMotoGPの他のライダー支援システムと同様、先にドルナが導入した統一ソフトウェアはMotoGPが始まって10年以上使われてきたメーカー製ソフトウェアと比較すると賢さにおいて遥かに劣るのである。

ドルナの考えはこうしたライダー支援技術をその原点に戻すことである。パフォーマンスを伸ばすことではなく安全性を改善することだ。マニエッティ・マレリは他の4つのライダー支援、トラクションコントロールウィリー制御エンジンブレーキ制御、アンチ・ジャークと同様にローンチコントロールにもドルナの考えを反映させている。

ワークス製電子制御時代のローンチコントロールは非常に効果的で、赤いスタートシグナルが消えると同時にライダーはスロットルを全開にし、クラッチもいきなり繋ぐことができた。ライダー支援システムがなければこうした動作は瞬時に最悪の事態を招くはずだ。確実に宙返りすることになる。しかしワークス製ソフトウェアは非常に賢く、常に状況を支配下に置くことができた。そしてリアタイヤに最適な大きさのパワーを供給する。おかげでライダーはフロントホイールを5cmも浮かすことなく最初のコーナーに向けて突撃していけたのだ。

最終的にほとんどのメーカーのローンチコントロールの効果に差がなくなってしまい、ローンチコントロールが安全性に寄与しているかどうかについても議論されるようになった。全てのライダーが同じタイミングで1コーナーに入っていくことになったからだ。

今はライダーは自分でほとんどのことをこなさなければならない。つまり誰もが考えるあるべき姿が到来したということだ。技量のあるライダーが報われるのである。

レースのスタートでは多くのライダーがリアを滑らせるのに気付いているだろう。ローンチコントロールがあるにもかかわらずだ。実はローンチコントロールはトラクションコントロールシステムを起動させないのだ。単にウィリー制御を行っているだけなのである。
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これまでと同様、データ分析グラフを見るときにはのたくる線の洪水に惑わされてはいけない。番号とこれに対応する解説をお読みいただきたい。

(1)白い四角形はローンチコントロールの発動

これはライダーが左のハンドルバーにあるボタンを押してローンチコントロールモードを発動させたことを示している。ライダーが1コーナーに向けて減速を始めるとシステムはローンチコントロールモードを解除する。またローンチコントロールはライダーがオーバーレブを心配することなくスロットルを全開にできるようレブリミッターも調整している。このおかげでライダーはスロットルとクラッチのバランスだけに集中できることになる。


(2)赤い線はスロットル開度

多くのライダーがレーススタートを告げる赤ライト消灯の前にブリッピングをするが、これには特に意味はない。神経質なライダーほどガス遊びをしたくなるようだ。


(3)白い線はマシンの速度。赤い線はリアホイールの回転から測定した速度。緑の線はフロントホイールで測定した速度

このライダーは上手くスタートしている。フロントホイールがすぐに浮くことはなく、ホイールスピンも最小に抑えている。しかしそれも長くは続かなかった。フロントホイールがわずかに浮いたためにフロントで測定している速度はすぐに落ちている。これに合わせてライダーはスロットルをわずかに戻す(最上段を参照)。ホイールは一瞬接地するがライダーが2速に入れると今度はさらにおおきくフロントが浮いている。一方赤い線は常に白い線の上方で推移している。ホイールスピンのためだ。シフトアップに応じて一瞬だけ尖った線が表れ、1コーナーに向けて減速を始めるまでスピンは継続している。ローンチコントロールにはトラクションコントロール機能はない。どんな場面でも選択できるシステム設定は少ない方が良いという考えに基づくものである。加えてストレートでのホイールスピンはそれほどMotoGPライダーを危険にさらさないということもある。自分の右手で調整すれば済むのである。


(4)白い線はライダーが要求するトルク。緑の線はエンジンが供給するトルク。赤い線は計算上のウィリーの限界

緑の線が下向きに突出しているところはウィリー制御システムが極端にエンジントルクを絞ってウィリーを減らしているところだ。ここはライダーが2速、3速、4速とシフトアップしている瞬間だ。


ブラッドリー・スミスがローンチコントロールについて語る

去年はうまくスタートするってのがいちばん難しかったですね。統一ソフトウェアが入る前の2015年は前回にしてクラッチをがつんと繋いでマシンが発進できた。ローンチコントロールが何もかも上手くまとめてくれてたんです。今はフルパワーを使えない。だから、そうですね、スタートでは75%くらいで、だからクラッチを繋いだ瞬間のトルクは少なくなってます。そのあとフルスロットルまでもってくときもクラッチを使うんです。でないとウィリー制御が入っちゃってスロットルバタフライがいきなり開いたり閉じたりするんで揺り木馬に乗ってるみたいな感じになるんです。もし誰かがパワーリフトをやってるとしてもそれは自分でコントロールしてるんであって電子制御がやってるんじゃないんです。たいへんですよ。去年の最初の2レースはスタートで完全に横を向いちゃって、だから一から慣れていかなきゃならなかったんです。

グラフ作成:ダン・ヒリャール
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ライダーの技量が出るのはとてもいいことだし、スタートも見応えがあるし、そんなんでもロン・ハスラムなら速かったんでしょうか。

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MotoGPのエンジンブレーキ制御はどのように機能しているのか

Mat Oxley氏による電子制御解説の3回目はエンブレ制御です。Motor Sport Magazineより。
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ハイパフォーマンスなMotoGPエンジンは過剰なバックトルクも生み出している。これを調整するのがエンジンブレーキ制御の役割だ。このシステムはバックトルクをどの程度リアホイールに伝えるかを決めているのだ。

もし990cc時代の初頭からMotoGPを観ているのならライダーがハードブレーキングでリアホイールを左右にうねらせながらコーナーに飛び込んでいくのを楽しく眺めたことを覚えているだろう。

エンブレ制御システムの黎明期の話だ。ハードウェアもソフトウェアも未熟で過剰なバックトルクをうまく削ることができなかった。その結果エンジンがリアホイールをロックさせたのだ。ライダーはそれに対応するために全力を尽くしていた。

その後数年でエンブレ制御ソフトが劇的に進化している。そもそもリアを左右にホッピングさせながら横向きでコーナーに入っていくのは最速のやり方ではないからだ。見応えがあったのは確かだが。どんなライダーでもコーナーに向けて減速するために多少のエンブレを必要としている。しかしどれくらいエンブレに依存しているかは完全に個人のライディングスタイルの差によって異なっている。ホルヘ・ロレンソは前後のホイールが完全にライン上にあるのが好みだが、一方でマルク・マルケスのようにリアホイールが1インチくらいラインの外側にある方が曲がりやすいというライダーもいる。しかし過剰なエンブレを要求するようなライディングスタイルのライダーなどいないのである。

エンブレ制御はシリンダー内の燃料をカットすると共にスロットルバタフライを動かしてライダーが要求する丁度良いバックトルクを生み出している。メーカー独自ソフトウェアの時代にはソフトウェアは実に精緻でひとつひとつのスロットルバタフライをコントロールしていた。しかしドルナ供給のマニエッティ・マレリ製統一ソフトウェアは基本的なことしかできないようになっている。

エンブレ制御にとって最も厳しかったのは2年ほど前だ。MotoGPのレギュレーションで使用できるガソリンの量が馬鹿馬鹿しいほど少ない20Lに制限されていた時代のことである。マシンをゴールさせるためにエンジニアはあらゆる場面で燃料を節約しなければならなかった。馬力を削るわけにはいかない。となればコーナー進入時に燃料を節約することになるのは必然だった。

最後の一滴までも節約しようという涙ぐましい努力の結果、ほとんどのシリンダーに対してガソリン供給がカットされ、その結果リアホイールは突然ロックしライダーを地面に叩きつけることになった。多くのマシンがスクラップと化し、折れた骨も数知れない。それもこれも燃料を数cc節約するためだった。去年のMotoGPの燃料制限は24Lまで緩和された。その結果エンジニアはこれまでほど燃費を気にする必要がなくなっている。

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上図は例によってMotoGPマシンのライダー支援システムの気狂いじみた七色の線である。これが示しているのは(誰だかはわからないが)ライダーがヘレスの5コーナー(シト・ポンスコーナー)に進入している様子だ。ラップ開始後30秒のところに引かれた縦の点線はライダーがブレーキをかけ始める瞬間で同時に3速にシフトダウンしている。ここで電子制御ユニットはエンブレモードに入り、マシンの減速にもエンジンを役立てている。

これまでと同様、このカラフルでのたくった線に惑わされないようにしよう。図中に記載した数字に合わせて下の解説をお読みいただけば理解していただけるだろう。

(1)最上段:赤い線はスロットル開度。青い線はギアポジション

ライダーはスロットルを閉じシフトダウンしているのを感知してシステムがエンブレモードに入る。


(2)2段目:白い線は回転数。緑の線はマシンのリーンアングル

ライダーが4速から3速にシフトダウンすると回転数が上がり、一方で左の4コーナーから立ち上がり5コーナーに向けてのブレーキングに向けてマシンは起きていく。


(3)3段目:赤と青の線はリアの荷重。赤い点線は荷重ゼロ

ライダーがフロントブレーキに10kg重/平方センチ(1,000kPa)の圧力をかけマシンはフロントタイヤ方面に傾き、リアタイヤの荷重が劇的に減少する。リアタイヤにかかる荷重は使えるグリップの多い差を意味しており、これに合わせてエンブレ制御システムがマシン減速のためにどこまでエンブレをかけるのかを決める。

リア荷重の線が2種類あるのはそれぞれ異なる方法で測定されているからだ。ほとんどのエンジニアは大きい方を採用している。この場合は最小で30kg程度だ。他の全てのことと同様にどこまでリアに荷重を掛けたいかはライダーによって異なっている。例えばマルケスのようにホイールが浮くようなブレーキングテクニックであれば荷重はブレーキング中のある時点でゼロまで減少する。


(4)3段目:黄色い線はフロントブレーキにかかる圧力。緑の線はリアブレーキにかかる圧力

こbのライダーはかなり強くフロントブレーキをかけている一方リアブレーキは徐々に強くしている。線が細かく震えているのは振動のせいだ。このため電子制御エンジニアはそれぞれの線について平均をとったよりスムーズな曲線を使用することになる。このライダーはマシンがフルバンクに達してもフロントブレーキを使っているのが興味深い。


(5)最下段:白い線はエンブレモード

白い線は、システムがエンブレ制御モードに入った後にライダーがスロットルを開け始めるとモードが終了していることを表示している。


(6)最下段:赤い線と緑の線はそれぞれのスロットルボディのバタフライ開度

ライダーが完全にスロットルを閉じるとどちらのスロットルボディもバタフライが閉じてリアホイールへの荷重を初めとする数値から導き出されたバックトルクを生み出す。ライダーはスロットルを完全に閉じてはいるがどちらのスロットルボディのバタフライも完全には閉じていない。こうやってリアホイールを回し続けることで完全にロックするのを防いでいるのだ。ブレーキングが緩くなってリアホイールにかかる荷重が増えればさらにバタフライは閉じていき、エンブレモードの最終段階ではほぼ完全に閉じられることになる。こうした制御はすべてライダーの好みに応じてセッティングを施される。マルケスのホンダのスロットルボディはおそらくロレンソのヤマハより閉じているだろう。マルケスがバックトルクを積極的に使うためであるが、これはMoto2(エンブレ制御がない)で学んだことだろう。一方ロレンソはホイールが抵抗なく回るのが好みなのだが、これは彼が2スト250に乗っていたときのやり方である。


(7)最下段:赤いセント緑の線はスロットルボディ開度。黄色、青、オレンジ、紫は各シリンダーの燃焼効率

エンブレモードの間、4本の線の内3本はフルバンクに達するまで同じ波形である(各シリンダーの空燃比から計算した燃焼効率)。別の言い方をするならこの3つのシリンダーには燃料が供給されておらず燃焼していないということである。つまりエンジンはほぼ停止してバックトルクを生み出しているということだ。一つのシリンダーは燃焼を続けリアホイールがロックするのを防いでいる。しかしこのシリンダーの燃焼はリアホイールの加重が増えるにつれてさらなるエンブレを生み出すため薄く(弱く)なっていく。ライダーがスロットルをひねり始めると「死んでいた」3本のシリンダーは順番に目を醒ましていく。3本同時に目を醒ますとリアタイヤへのトルクが一気に増えすぎるためである。


ブラッドリー・スミスがエンブレ制御について語る

統一ソフトウェア導入前はあらゆる変数をいじれたんです。4つのバタフライを別々にセッティングできたんで、6速から2速までそれぞれのシフトダウンについて個々のバタフライをひとついひとつどう閉じるか設定できたんです。統一ソフトウェアだと2個1セットでバタフライを動かさなきゃならない。それにいじれる数字もかなり簡略になっている。だからマシンのエンブレ制御は前ほど精密ではなくなってます。まあ他のすべてと同じ感じですね。前よりライダーがマシンをコントロールしなきゃならないんです。

グラフ作成:ダン・ヒリャール
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私は割とエンブレに頼る派でしたね。コーナー進入で駆動が切れるのって怖かったので…。

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MotoGPのウィリー制御はどのように機能しているのか

前回に引き続きMat Oxley氏による電子制御解説。今回はウィリー制御です。Motor Sport Magazineより。
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MotoGPにおけるライダー支援システム解説の2回目はウィリー制御についてだ。260馬力を股の下で扱うには必須のアイテムである。

2016年シーズン、MotoGPでこれほどまでにウイングが重要になったのかその理由をご存じだろうか?ドルナが供給する統一ソフトウェアにおいてはウィリー制御プログラムが最も弱い部分だったからだ。それでウイングでダウンフォースを稼いで加速中にフロントホイールが浮かないようにしたのである。

MotoGPマシンのトルクはとんでもないレベルで(エンジニアはいつもトルクの話ばかりで馬力の話はほとんどしない)、何速だろうがフロントホイールが持ち上がるほどだ。そしてホイールが上がりすぎればライダーはスロットルを戻すはめになる。つまり加速が鈍るということだ。2016年になるまではワークスが自分たちのために電子制御によるウィリー制御を作っていたが、これは最先端をいっていたものだ。このプログラムはフロントホイールが浮く前にウィリー制御を発動させるのである。フロントサスのストロークの加速度を検知するセンサーに基づきからウィリーを予測するようなものだったのだ。電子制御ユニットにスロットルボディを1つか2つ閉じるように命令するのだ。ウィリー制御がうまくセッティングれきれば、激しいウィリーを防止するぎりぎりのところでトルクを削ることができ、加速をそれほど犠牲にしないのである。

ドルナはこうした状況を変えたかったのだ。ドルナの統一ソフトウェアの根本にあるのは安全性である。パフォーマンスの向上ではない。トラクションコントロールは安全性に大いに寄与するがウィリー制御についてはそれほどではない。だからこそドルナはウィリー制御を基本的なものに留めているのだ。今やライダーはウィリーとをし過ぎないよう、しかも加速を殺しすぎないようにするために自らのスロットルコントロールに頼らなければならなくなっているというわけだ。

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上図はあるMotoGPライダー(名前はトップシークレットということで我々にはわかない)がヘレスの5コーナー(シト・ポンスコーナー)から立ち上がっていくときのものだ。このコーナーは3速の右コーナーで麦ストレートにつながっている。ここでコースが急激に下っていくためウィリーが大きな問題となる場所でもある。

41秒の所に入っている縦の点線がコーナー出口であり、この時点でライダーはスロットルを全開にし、フロントホイールが浮き始めている。ウィリー制御システムが機能し始める直前である。

のたくった7色の線を理解するために、まずは1~5までふってある数字に注目してほしい。それぞれについて以下に解説しよう。

(1)上から2段目:赤い線はマシンの速度。白い線がフロントホイールで計測した速度。黄色い線がフロントサスの縮み量

マシンは強烈に加速しリアに加重が掛かると共にフロントホイールが浮き始めている。ホイールがアスファルトから離れると回転が減っていくためホイール回転数から計測した速度を表す白い線が実際のマシンの速度である赤い線を下回るようになる。同時にフロントフォークは伸びきって黄色い線は0を表示している。こうした情報が入るとウィリー制御システムはマシンがウィリーに入ったと判断する。この時点でマシンの実際の速度とフロントホイールで計測した速度は30km/h程度になっている。ウィリーが長く続く場合は速度差は100km/h近くまで達することもある。


(2)上から3段目:緑の線はマシンの前後のピッチング量。赤い線は前後のピッチング速度。点線はピッチング速度0の状態、つまりマシンが前後にバランスしている状態

マシンがウィリーを始めると後ろ側に傾いていくことになる。ピッチング量とピッチング速度によりウィリー制御システムはウィリーの大きさを把握する。3°程度の傾きであれば通常は問題はないが、急激に3°まで上がるとシステムはウィリーが許容範囲を超えており何らかの介入が必要だと判断する。


(3)最下段:白い線はライダーがスロットル開度に合わせて要求しているトルク。赤い線はウィリー制御システムがウィリー量に合わせて要求しているトルク。緑の線はシステムが削ったトルク

ウィリー制御システムは基本的にトラクションコントロールシステムと同様、リアホイールに伝わるトルクを減らすものである。白い線からはライダーがフロントホイールを浮かしながらも大きくスロットルを開けていることが見て取れる。赤い線は白い線より僅かに下をいっている。これはホイールの速度とフォークの縮み量と前後のピッチング速度のそれぞれのセンサーがウィリー制御システムに対してライダーが要求するよりもトルクを減らすよう要求しているからだ。緑の線がその結果として削られたトルクの量である。

42秒から43秒にかけての3つの山で表示されるトルクの減少は再びフロントホイールが浮いたためである。2段目に表示されるフロントホイールの速度の減少と3段目で表示されるピッチの増加でもそれは明らかだ。

ウィリー制御システムはトラクションコントロールシステムと比べものにならないほどトルクを削るようにできている。これはマシンがそれほど危険な状態ではないからだ。5コーナー立ち上がりではエンジンが200馬力を出しているときにウィリー制御システムが200馬力まるごと削ってしまう場合もあり得るのだ。


(4)上から3段目:赤い線は前後のピッチング速度。点線はピッチング速度0の状態

ピッチング速度がゼロになることは決してないことにも注目したい。これはコース上のマシンは常に細かく前後にピッチングを繰り返しているからだ。


(5)最上段:白い線はマシンのスピード。緑の線はスロットル開度。赤い点線はスロットル開度100%

ライダーはホイールスピンを感じてもウィリーを感じてもスロットルを緩めることになる。つまりタイムをロスするということだ。これは電子制御担当エンジニアがシステムをうまくセッティングできなかったということでもある。そうなると次にライダーがピットに帰ってきたらチームがシステムの制御マップに新しい数字を打ち込みその辺りでのトルクを減らすようにする。そうすればライダーはスロットルを戻さなくて済むのである。


ブラッドリー・スミスがウィリー制御について語る

2015年と比較して一番性能が落ちたのがウィリー制御システムでしょうね。今ではフォークが伸びきったときしか介入しないんです。去年まではウィリー制御のタイミングを前倒しにできたんでフォークが伸びきる前に介入させられたんです。ウィリーになることを予測してくれた。そういう意味では凄く進化したシステムでしたし、おかげでいい感じでフロントを浮かすことができた。今はフォークが伸びきるまで介入しないし、介入するとバタフライを閉じて完全にパワーを切りにかかるんです。そうなると自分でスロットルを戻すことになる。でないとパワーが減り過ぎちゃうんです。で、スロットルを戻すとバタフライが開いてフロントが設置して、ってのの繰り返しですね。だから自分でスロットルをコントロールした方がいいんですよ。

ウィリー制御システムを使いこなすには自分でパワーを制限することですね。例えば3速で60%のトルクくらいから初めて4足入れて75%のトルクを出してって具合にね。そうやってフルパワーの回転数にもっていくんです。

グラフ作成:ダン・ヒリャール
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へー、ウィリー制御はほぼ1-0で動いてるんですね。まあ細かくコントロールしなくても危険はないということなんでしょう。そりゃスタートたいへんだわ。ってドゥカティみたいにパワフルなマシンはどうやってるんでしょうねえ。

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MotoGPのトラクションコントロールはどのように機能しているのか?

昨年の記事なんですが、なかなか興味深い内容ですので訳出。全4回にわたって電子制御をMat Oxley氏が解説してくれてます。Motor Sport Magazineより。
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現代バイクレースの最大の謎のひとつ:どのようにトラクションコントロールは機能しているのだろうか。MotoGPに電子制御を供給するマニエッティ・マレリ社の協力を得ながら解説していこう。

昨シーズンまではMotoGPにおける電子的ライダー支援システムがどのように機能しているかは謎だった。メーカーがトップシークレット扱いとしていたからだ。しかし2016年からは統一ソフトウェアが導入されたおかげでその状況は一変することとなる。

この夏、私はマニエッティ・マレリのトラックを訪問しMotoGPにおけるトラクションコントロールやウィリー制御、エンジンブレーキ制御、そしてスタート制御がどのように機能しているかを理解するためにいくつかのデータを見せてもらった。マニエッティ・マレリのヴィンチェント・ペチュアン−ヴィラーとマウリツィオ・スリニャーリの二人が快く手伝ってくれたのだが、私は次から次へと素人臭い質問をして何時間も彼らの仕事の邪魔をしたので、その気持ちも消え失せてしまったかもしれない。

マニエッティの次はライダーの視点から見る必要があった。私が選んだのはブラッドリー・スミスだ。彼が英語を話せるというのも理由の一つだが、何より彼は自分の考えを整理して話すことが得意な、しかもそれに時間をかけることを厭わない数少ないライダーだからだ。

今回がこれら数週間にわたって連載する記事の一本目となる。一連の記事で各種のライダー支援システムがどのように機能しているかについて基礎的事項を解説する予定だ。こうした知識があればMotoGPをさらに楽しく観戦できるだろうと願っている。

下のグラフの(クリックで拡大)のたくった7色の線にパニックをおこさないでほしい。図中の数字と記事の数字を参照するだけで、その他のことは今のところ無視して構わない。それだけでも全てを理解できるはずだ。またこの図は実際に2016年のヘレスGPでのアタックラップを行った際のマニエッティ・マレリのデータだが、そのライダーが誰なのか、どのマシンなのかは教えてもらっていない。それはトップシークレットなのだ。

MotoGPの統一ソフトウェアについてまず最初に理解しておかなければならないのは2015年までのワークス電子制御と比べると遥かにローテクなものだということだ。ドルナの計画では電子制御にかかるコストを削減すると共にパフォーマンスを上げる効果も減らしたいのである。

そんなわけで以前と比べてライダーがバイクを操る部分が増えているのだ。スミスはこんな風に説明してくれた。「今では前よりたくさんのことをしなければならないですね。トラクションコントロールを使っていたときよりもスロットルでエンジンを抑えていかなければならなくなってます。統一ソフトウェアになるまでは電子制御の言うとおりにスロットルを開け閉めしてんたんですよ。自分にやらせてよ!って感じでしたね。今はちゃんとリアタイヤとつながっている感じがします。いいことですよ。電子制御ってのは安全のためのもので、そんなにパフォーマンスにかかわっちゃだめなんです」

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Jerez


ではグラフを読み取っていこう。これはヘレスの5コーナー、別名シト・ポンスコーナーだ。下りの中速右コーナーでバックストレッチにつながっている。このグラフの範囲はコースマップの黄色い部分をカバーしており、縦に引かれた点線は3速に入れた直後にやってくる130km/hのクリッピングに位置している。つまりライダーはスロットルを開けつつありホイールスピンが始まっている状態だ。次いで4速、5速とシフトアップし、ストレートを加速している。


(1)セクションA(1段目):緑の線はスロットル開度をパーセントで表示。水平の赤い点線が100%

 このライダーは段階的にスロットルを開けている:ガスをエンジンに送り込みながらリアタイヤのスピンを感じつつゆっくりと2〜10%程度ずつスロットルを開ける。タイヤがグリップを取り戻すとさらにスロットルを開け、再びゆっくりとスロットルを開ける。この繰り返しだ。去年のように進化したワークス製トラクションコントロールであればこのようなことをする必要はなかったのだが、今年はすべて自分でやっている。


(2)セクションB(2段目):赤い線は介入予定のスピン状況。黄色い線は現状のスピン。セクションCの白い線がリーンアングル

マシンがフルバンクから立ち上がっていくあたりではスピンが少なくても電子制御が介入するように設定されている:0〜2%(車体の速度より)速いあたりに設定されているが、これはライダーのパフォーマンスによって異なる。ライダーがマシンをコーナー脱出に向けて加速していくとスピンが多くならないと介入しない設定となってくる。これはリアタイヤもライダーもより多くのスピンに対応できるためである。ほとんどのライダーはコーナー出口でのトラクションコントロールの介入を12〜15%増(リアホイールの回転数が実際の車体の速度から予想されるより多い)あたりに設定している。


(3)セクションB(2段目):赤い線は介入予定のスピン状況。黄色い線は現状のスピン

リアホイールのスピンが一瞬突き出ている部分があるが、ここではライダーが思いきった加速をしてリアタイヤがライダーの想定以上にスピンしている。このような瞬間的変動にトラクションコントロールシステム(TCS)がどのように対応しているかは下記(5)(6)を参照されたい。


(4)セクションC(3段目):白い線はリーンアングル

瞬間的にホイールスピンが大きくなった結果、リーンアングルの回復が止まっているのに注目したい。スライド対応に対応するためにライダーはマシンを起こすのを一瞬だけやめているのだ。


(5)セクションD(4段目):白い線はライダーがスロットル開度に合わせて要求しているトルク。緑の線はTCSがスピンに合わせて供給しているトルク。赤い線はTCSが減らしたトルク

白い線はライダーがスロットルを通じて要求しているトルクであり、これが(3)で述べた瞬間的なスピンの増大を招いている。ここでTCSが緊急的に作動しリアタイヤにかかるトルクを減らしている。緑の線は白い線から赤い線を引いた分で、実際に供給されるトルクとなっている。ここでライダーはスロットルを閉じていないことに注目したい。既にマシンは起きておりTCSが助けてくれるのをわかっているからだ。TCSはいくつかの変数に基づき、スロットルバタフライを閉じる、点火を遅らせる、1つか複数のシリンダーの点火をカットするという3種類の方法の組み合わせでホイールスピンを減少させている。TCSが最も介入するのはリーンアングルが60〜40°の範囲にあるときだ。


(6)セクションD(5段目):白い線は一方のスロットルバタフライ。緑の線はもう一方のスロットルバタフライ

ライダーが4速にシフトアップし2秒後に5速に上げている。回転数はシフトアップに応じて僅かに下がっている。


ブラッドリー・スミスがTCSについて語る

「今年のTCSは去年より基本的な部分に限定されていて、デフォルト設定値や決められてしまっている変数が増えてるんです。ですからTCSをコーナー毎介入度合いを変えるといったピンポイントの設定ができなくなりましたね。例えば去年だったらスロットルの最初の開け始めのところでいろいろできたんです。TCSの介入を5m遅らせることでスロットルを開けた瞬間リアタイヤを軸にマシンを曲げたりできたんですよ。今のTCSではそういう細かい設定ができないんです。スロットル開度30%〜全開という前の段階でTCSがすごく良くできていたんでいろんな問題を解決できてたってことです。今はもし全開にして最大トルクを引き出したりしたら横滑りしてしまう。TCSはやりすぎたときにだけ介入して転倒から救ってくれるんです。だからこのグラフのスロットルの線を見ればわかるようにライダーがトルクを引き出して、タイヤがスピンして、そこでスロットルを保持して、グリップが戻ってきたことを感じたらまたスロットルを開けるとなってるんです。つまり今はライダーがコントロールしていて、自分の技量でやってるんです。だからTCSは主に安全のために機能していて、パフォーマンスのためじゃないんですね」

グラフ作成:ダン・ヒリャール
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スミスって、時々速いけど主に中盤のライダーなんですよ。その彼にして解説の中にあるようなスロットルコントロールをやってるんです。そしてグラフのライダーもものすごい細かい、でも瞬時の反応をしていて、まあ天上の戦いですなあ。

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MotoGP:なぜドゥカティのカウルはルール違反では(たぶん)ないのか?

なりふり構わない感がさいこー!なドゥカティのエアロカウル。これも含めて2017年のカウル規定(変更は1回だけ、外部に付けられたウイングは禁止)について、判定を任されたただ一人であるテクニカル・ディレクターのダニー・アルドリッジ氏へのインタビューです。CRASH.netより。
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カタールテストではドゥカティがこれまでで最も過激な新世代カウルを導入している。外部に取り付けたウイング禁止という規定を受けてのことだ。

MotoGPのテクニカル・ディレクター、ダニー・アルドリッジは新型カウルがOKかどうかを判定するただ一人の人物だ。

「規定上では新型カウルを事前に見せる必要はないんです。カタールGPのときでOKなんですよ」とアルドリッジは以前語っている。「でも各メーカーには事前に見せてくれるように強く推奨してますよ。だってもしカタールで初めて見せてもらって、それを私がルール違反だと判断したらメーカーとしてはたいへんでしょ」

アルドリッジは今回のテストで登場したドゥカティのカウルを事前に見せられてはいなかった。その上彼はMoto2/Moto3公式テストのためにヘレスにいたのでカタールテストも不在だった。というわけでまだ最終的な判断はできない状況だ。しかしこれまでの情報から彼はドゥカティについても「特に問題はない」と考えている。

ドゥカティのカウルについて話してもらう前に2017年の新ルールでは何種類のカウルを使えるのかについてアルドリッジにたずねてみた。

CRASH.net:ダニー、カタールテストではホンダがカウルの横にウイングを内蔵してカウルと面一になるような後付けカバーを導入しました。その後付けカバーがなければ普通のカウルに見えますけど、レースではどちらも使っていいんですか?

ダニー・アルドリッジ:少しだけ時間を巻き戻しましょう。どのメーカーでもヴァレンシアでは2016年型カウルを登録して良かったんです。ウイング無しですけどね。その場合はGP用に装着されたウイングを除いて完全に同じものでないといけません。このルールはKTMには適用されません。新規加入メーカーなので2017年中のカウルの改良は制限なくできるんです。
 カタールでは木曜午後5時にテクニカル・コントロールが締め切られます。それまでに全メーカーは2017年型カウルを登録しなければなりません。メインのカウルとフロントフェンダーですね。
 フロントフェンダーは一体成形となりますがメインカウルはすきなだけ細かいパーツで構成することができます。ルールではカウルからパーツをはずすのは可能なので、一旦カウルを登録しても、そこからパーツをはずしたり、はずしたパーツを装着したりは自由なんです。

MotoGP技術規定:「登録した空力カウルから一部をはずすことは可能とする(例:雨天専用のハンドガード等)…その他の部品も空力カウルからはずすことが可能である(例:トリム、穴開け等)。この場合再登録は不要である。ただし新たなパーツの装着は禁止する。

 つまり2017年型カウルを取り外し可能なパーツ込みで構成していれば状況に応じて装着するかどうか決めることができるんです。同じことがハンドガード等の通常のパーツにも適用されます。
 例えばホンダがカタールでテストした中にウイングが入っている新型空力パーツはカウルの両側にボルト留めされてますよね。あれは簡単にはずせそうに見えます。


CRASH.net:ここまで導入された5種類のウイング内蔵カウルですけど、ホンダ以外に「後付け」で外せるものはありますか?スズキとヤマハはどうでしょう?

ダニー・アルドリッジ:私が見る限りですし、カタールの木曜午後5時まではどのカウルにするか決める必要がないのでまだ変更はあるという前提ですけど、ヤマハのカウルは一体に見えますね。ウイングが入ってる部分をはずせるとは思えないです。でも内側のウイングの形状も数も好きに変更できるんです。私が関与するのは外形だけですから。
 スズキについてはあの部分をどうやって取り付けているかによりますね。もし一体成形ならはずせない。カタールでは各メーカーにカウルのサンプルか設計図を提出してもらうことになります。それと写真も撮ることになります。
 なのでもし私がヤマハやスズキのピットに行って、カウルがカーボンファイバーの一体成形であることを確認したら、後からカウルにジョイントをつけて外せるようにしてもだめです。外形が全く同じでもね。カタールの段階で接着されている場合でも同じです。それをボルトオンにするのは無しです。
 カタールで「このパーツははずせる、こちらははずせない」となったら、そのままそれでシーズンを通してもらうことになりますね。


CRASH.net:来週木曜までは何も公式には決まってないということはさておき、現時点でどのメーカーのカウルがレギュレーションにあってるんでしょうか?

ダニー・アルドリッジ:ヤマハはもう確認しましたしスズキも確認済みです…、残念ながらMoto2、Moto3の最初のテストがヘレスであってそれがカタールのMotoGPテストと重なっちゃったんですよ。各クラスの初テストには行くようにしてるんです。そこでチームがいろいろ質問してくるんでね。
 ドゥカティのカウルはカタールが初めてだったんでまだ確認していません。以降ドゥカティとは連絡を取っていますし、先方も詳細を送ってくれてます。でもまだ公式にはOKを出していません。ここまで見てきたところは問題があるとは思いませんけどね。マイク・ウェッブ(レースディレクターで元テクニカル・ディレクター)にもカタールで確認してもらうよう頼んでありましたし。かなり話し合いは重ねているんです。
 今のところの私の認識ですが、ドゥカティのカウルを切り欠き部分も含めて見ても単に大きな膨らんだカウルにしか見えませんね。上側がかなり外側に膨らんでますけどまあカウルというのは手をカバーするために上の方で膨らんでるものですしね。単に普通より四角いってだけです。
 ですからドゥカティについても心配していません。問題はないと思ってますよ。そうはいってもかなり設計を変えてきましたね。ヤマハみたいにウイングを内蔵できなかったんですね。ことによったらホンダのように空力パーツを必要に応じて付けたりはずしたりするのかもしれません。ドゥカティのカウルは一体成形っぽいですけど。


CRASH.net:一般論として新型カウルについて判断する場合は、空隙とかは無視して面一の表面として見るんですか?

ダニー・アルドリッジ:ええ、ルールの文言でも「スクリーンを除く外形」についてしか判断しないことになっていますから。ですからテクニカル・ディレクターとしてはダクトや穴については制限できないわけです。ドゥカティのカウルの写真を見ても、黒いマジックでダクトを塗っちゃえば全然普通に見えますよね。私はそういう感じで確認してるんです。

MotoGP技術規定:「スクリーンを除く外形のみが本規定の対象となる。よって以下のパーツについては空力カウルの一部には含まれない:スクリーン、冷却用ダクト、カウルサポート、その他外形に覆われているすべてのパーツ」

CRASH.net:カタールでは2017年型カウルを使わないサテライトライダーもいるんですか?

ダニー・アルドリッジ:一番台数を出しているんでドゥカティを例に挙げますけど、2017年型カウルをワークスと例えばプラマック用に登録することもできます。その他のサテライトは2016年型カウルで開幕戦を戦って、カタール以降2017年型カウルを使うのであればそれは改良版と見なされることになります。2017年型を最初使っていなくてもね。
 ワークスチームについてはカタールでは2016年型と2017年型を出すんだと思っています。理論的にはメーカー毎ではなくライダー毎に判断するものなので、2017年型もペドロサ用とマルケス用とクラッチロー用に別のものを登録することも可能ですけど、まあ私はそんなことになるとは思っていませんね。


CRASH.net:ありがとう、ダニー。

以上のことを心にとどめつつ、シーズン途中で改良版カウルを導入したら各メーカーは(2016年型カウルを使わないことを前提とすれば)2017年型を2種類使うことができるのだが、その後はどんなことになるだろうか?

おそらくチームはドゥカティ風のダウンフォースが大きいカウルに移行していくことになるだろう。それまでは空力パーツをはずすことができるがダウンフォースが少ないホンダ/スズキ/ヤマハタイプを使うことになりそうだ。
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なかなか興味深いですね。いやぁ、へんなカウルがたくさん登場すると楽しいなあ。

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マイク・ウェッブ:ライダーからMotoGPレースディレクターへ

いろんなところでインタビューを受けているマイク・ウェッブ氏。レースディレクターってのはレースの運営に全責任を持っている人で、誰かにペナルティを科すとかってあたりはともかく、レースの中止まで責任を持っているわけで、つまりは世界中に中継されるテレビ放映のスポンサー料やら視聴者やら、現場の観客への払い戻しの保証やらにも全責任を持ななければならないような、とんでもなく痺れる仕事をしている人なのです。おそらく1レースあたり何億だか何十億円だかをどぶに捨てるかどうかの判断を任されている人ということ。そんな彼にCRASH.netがインタビューしています。
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どんな風にしてレースディレクターになったんですか?

2012年からその職に就いているマイク・ウェッブの場合は、まずニュージーランドでのレーサー時代から始まる。GPにはワイルドカードで参戦し、WCM時代にはウェイン・レイニーのヤマハチームのために働き、1シーズンをワールドスーパーバイクで過ごした後、GPで10年間テクニカルディレクターを勤めている。

CRASH.net:モータースポーツにかかわるようになったのはどうしてなんでしょうか?そしてどうやって今の仕事に就いたんでしょうか?

マイク・ウェッブ:30年前のことですが、ニュージーランドの国内クラブレースが最初ですね。あっちこっちで爆音をとどろかせて楽しかったですよ!あとバイク屋もやってましたね。
 ニュージーランドの国内チャンピオンを2回獲ってます。GP250クラスでチャンピオンになった年はバイクが壊れて1レースを落としただけで後は全部優勝しました。だから思ったんです。「おお、俺うまくやれるじゃん!」ってね。それで1989年のオーストラリアGPにワイルドカードで参戦したんです。フィリップアイランドは初めてでした。マシンはスタンダードの250でね…。だんとつでビリでしたよ!残り2周というところでマシンが壊れちゃったんです!
 そのころがもう終わりかけだったんですね。もういい年でしたし。でもまだすごく楽しめてはいたんです。だから「このまま続けていけるよな、まだいい走りができてるんだし」とも思ってたんです。でもわかったんですよ。ニュージーランドの国内レベルと世界GPでは月とすっぽんくらい違うってね。
 ワイルドカードで参戦できたのはすごく良い経験でしたけど、年齢のこともあったし、そもそも25歳まではバイクにのめり込んでいたわけじゃなかったし、当時もう35歳近かったしで、特に誘いもなかったので辞めることにしたんです。
 まあ今でもそう思ってるんですけど、大好きなレースでいい時代を過ごすことができて、でもその歳で世界チャンピオンになれるわけがなかった。だからレースから離れることにしたんです。
 で、1992年にピーター・クリフォードがチームを作ったんです。ドルナがGPを運営した最初の年ですね。ドルナが運営を始めるとすぐにレーシングチームの運営ができるようになったんです。商業的な意味でね。それまではとてもそんなことはできなかったんですよ。
 だからドルナが運営を始めてピーター・クリフォードとボブ・マクラーレンがWCMを立ち上げて、その時、ニュージーランドのレースのオフシーズンに僕は引退を決めた。
 最後のレースを終えて家に帰る途中でピーター・クリフォードに会いに行って言ったんです。「こんちは」ってね。お茶を飲みながら彼が「レースチームを始めるんだよ!ヨーロッパに来て手伝ってよ!」って。それで即座に「いいよ!」って答えたんです。
 そうやってヤマハの500ccチームのチーフメカを10年やったってわけなんです。


CRASH.net:すぐにチーフメカになったんですか?

マイク・ウェッブ:ええ。まあメカニックも2人しかいなかったんですけどね。だからあらゆる仕事を一緒にやっていたんです。でも誰かが僕にクリップボードを持つように言ったんですよ!(訳注:こういうやつを持ってるとチーフメカっぽく見えるってことかしらん?)プライベートチームではずいぶん楽しみましたね。
 2年ほどピーターとボブのWCMで過ごした後はスーパーバイクをやってました。親友のサイモン・クラファーがカワサキのワークスに入ったんです。「マイク、お願いだから助けに来てよ」って言ってもらったんです。だから1年だけ手伝ってすぐにGPに戻って、幸運なことにウェイン・レイニーのチームと契約できました。
 ウェインは怪我から立ち直ってヤマハのチームを運営していた。その最初からチーム・レイニーに加入して500ccの最後の年までつきあいました、ワークス・ヤマハのチーフメカもやったんです。


CRASH.net:ヤマハの時のライダーは誰だったんですか?

マイク・ウェッブ:ウェインのチームに入った時は阿部ノリックですね。その後ウェインがチームをヤマハに売り渡して地元に帰ってからはマルボロ・ヤマハになってヤマハの本社が運営するようになって、そこからはカルロス・チェカでした。だからワークスチームでは2人のライダーと働いたことになります。


CRASH.net:阿部、チェカ、レイニーとはどんな思い出がありますか?

マイク・ウェッブ:最初はウェインから始めましょうか。彼みたいな人と一緒にやれるのは本当に誇らしかったですね。伝説的なライダーで3度もチャンピオンになっていて知識もスキルもすごかってだけじゃなくて、本当にいい人でユーモアのセンスも凄かったんですよ。
 彼みたいな人がピットにいるとほんとにライダーの助けになるし、チームのみんなも気持ちが上向きになるんです。チームスピリットも素晴らしかったですよ。まだ彼とはやりとりしていますよ。彼は米国の国内選手権のモトアメリカを運営しているんです。相変わらずレースへの情熱を失っていないし、あらゆることをちゃんとこなそうとしていますね。
 ノリックはたぶん私が会ったバイクレーサーの中でいちばんいい人ですね。ほんとうにいい奴でしたよ。才能も信じられないほどだったんです。文字通り天才でしたよ、信じられないほどでした。でもいらいらすることもありましたね。すごい天才だってのにマシンを気持ち良く乗りこなせないこともよくありましたから。
 カルロスもやっぱりとんでもなくいい人でした。でも闘士の表情を見せることもあった。謂わば闘牛士ですね。トレーニングもハードにやってましたし、レースにも真剣に取り組んでいた。クラッシュしたくらいでアクセルを緩めることはなかった。マシンもうまく乗りこなしていたしコンディションが悪いときはいつでも最速ライダーの一人だった。ハーフウェットの難しいコンディションとかね。自分の才能を存分に引き出して自信を持って走っていたんです。
 彼が満足するマシンを作るのはたいへんでしたよ。でもいつでも彼は100%で走っていました。すべてがぴたりとはまったら最高でしたね。


CRASH.net:ヤマハを離れてからは?

マイク・ウェッブ:2002年に500ccがMotoGPになってヤマハのスタッフがかなり入れ替わったんです。マシンも新しくなったし何もかも変わったんです。それでヤマハが新しい一歩を踏みだしたと感じてたんです。そんな時にジャック・フィンドレイがテクニカル・ディレクターを辞めたんで、その後釜に納まりました。
 テクニカルディレクターを10年やって、そしてポール・バトラーがレース・ディレクターを辞めるときに、「次はマイク、君がレース・ディレクターだ」って言ったんですよ。


CRASH.net:これまでの経験やレーサーと魂が今の仕事に役立ってると思いますか?

マイク・ウェッブ:すごく役立ってますね。コースでライダーがどんな気持ちでいるかとか何をしようとしているかとか想像できますからね。でも私がレースをやっていたのは凄く昔なんでレース・コントロールではMotoGPのライディングについてロリス・カピロッシにかなり頼ってます。「あのライダーがこんなことをして次はこうやって」みたいなのが、わざとなのかそれとも自然な反応なのかとかですね。私にも考えはありますけど、ロリスがこう言うこともあるんです。「違うね、あの場所にいたらスロットルを戻さなきゃならないんだよ」って感じでね。
 実際に起こっていることに関してはロリスの詳細な解説が凄く助かっています。でもまあコースで起こっていることを大まかに把握したりレーサーが何をしようとしているのかについていは自分も経験してますからね。それにいろんなチームでの経験も役立ってます。運営側ではなかったですけど、パドックのほとんどの人と知り合いになれましたからね。
 みんな僕のことを知ってるし、僕もみんなのことを知ってる。お互いに尊敬し合っていて、それでかなり助かってるんです。


CRASH.net:チームがどんな情報を必要としているかわかってるんですね。で、チームがそれを必要としてる場合は…

マイク・ウェッブ:その通りです。チーフメカとしていつも思ってましたから。「レースコントロールのバカ共たちは何を考えてるんだ!」ってね。だから起こっていることについてはとにかく明解に、そしてきちんと説明できるようにしてるんです。例えばレースを中断させてリスタートするような時ですね。


CRASH.net:今でもバイクに乗ることはあるんですか?MotoGPのサーキット間を移動したりとか。

マイク・ウェッブ:うーん、ここんとこほとんど乗れてないですねぇ。レースはもちろんやってないですけど、たまにオフロードを走ったりしてますよ。僕の原点なんです。アンドラにある自分の家にトライアルバイクを持ってるんですけど、岩登りとか山登りとかができる最高の場所なんです。うちのすぐ近くにいいコースもあるんですよ。あとKTMのアドベンチャーバイクも持ってるんで山道とかヨーロッパ中の田舎道を走ったりもしますね。
 ニュージーランドにいる家族や友達に会いに行くと、友達がいつも夏にはオフロードアドベンチャーツアーを企画してくれるんです。次のシーズンに向けて頭を空っぽにするには最高ですね。実はロードはそれほど走らないんです。でも70年代の日本車を結構持っていて、レストアしてるんです。だからそういうのにも乗ってますよ。そうやってあの頃のマシンがどんなにひどかったか思い出すんです!


CRASH.net:ありがとうマイク。

マイク・ウェッブ:どういたしまして。
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レース愛あってこそ!

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2017年カタールMotoGPテスト日曜まとめ:すぐに真実は明らかになるから

ほほほ、ホルヘとダニが上がってきて喜んでいますよ。MotoMatters.comより。
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テストは終わった。MotoGPにとってこの日曜が2017年シーズン開幕に向けての最後の準備となった。最後の一ひねりも調整も実験もすべて終わりだ。次にマシンがコースに出るのは2週間後。そこではプライドもわずかな心理的優位性も問題にはならない。もう何も隠すものはないのだ。

テストの最終日はいつでも大忙しだが、ロサイル国際サーキットの場合、前日までとわずかに違うだけだ。最初の2時間はせいぜい 日が沈んで路面温度がテストができるくらいまで下がるのを待っている ライダーやメカニックやカメラマンが退屈そうにおしゃべりをする程度だ。そしてテストが始まればライダーはとにかくラップを重ねようとする。
午後11時、気温が下がって露が降りるともう走れる状態ではなくなってしまう。ウェットパッチにのってクラッシュするリスクがあるのだ。

クラッシュに向けてまっしぐら

とは言えライダーがウェットパッチをクラッシュの言い訳にすることはない。コースが使える5時間の間にトータル14回のクラッシュが起こっている。しかも特定のライダーに偏っていたのだ。サム・ロウズは2回、マルク・マルケスは1日で3回も路面に叩きつけられている。マルケスはその原因をわかっているようだ。「最初から最後まで限界で攻めてましたからね。1分55秒台で走ろうとしてたんです。でもそのためにはリスクを冒さなきゃならなかった。」。マルケスはその代償を払ったということだ。そして1回はテストしていたあるパーツの問題だとも言って理由が、これについては何かは明言しなかった。

マルケスがレースシミュレーションをできなかったのはクラッシュのせいかもしれない。そしてクラッシュのせいで彼はいいラップタイムを記録できなかった可能性もある。そういうわけで彼は日曜を10位で終え、3日間のトータルでも11位に終わってしまったのだろう。今年行われた2回のテストでは信じられないほど良いタイムを記録したがここでは苦労したようだ。とは言え彼の自信は失われてはいない。テストでのタイムはともかく彼のレースペースは悪くないのだ。

見えてきたチャンピオン候補

とは言えちょっとした問題もある。「タイムについて言うと、まあ一人だけ抜きんでてますよね」とマルケスは言う。そのライダーとはマーヴェリック・ヴィニャーレスのことdあ。彼はシーズン最後となる4回目のテストでトップタイムを記録している。つまり4回のテストすべてをトップで終えているということだ。モヴィスター・ヤマハのヴィニャーレスの速さに疑問をもっていたとしても、一発の出しでもレースシミュレーションでも素晴らしい走りを見せた彼のパフォーマンスの前には誰もが納得することになったろう。

彼のメディア対応にもそれは表れている。発言はポジティブな言葉で満ちていたのだ。「良い仕事ができました…すごく自信が持てましたね…本当にいい感じで仕事ができてます…めっちゃ良い気持ちですね…乗っていて気持ちいいんです…」。ことほどさように自信の満ちた言葉で埋め尽くされているのだ。そしてこのことはライバルに恐怖心を植え付けることになる。スズキを去ってモヴィスター・ヤマハに加入したヴィニャーレスの目標はMotoGPタイトルだ。初挑戦でそれを実現しようとしているのだ。

ヴィニャーレスはそれが簡単でないことはわかっている。「今年はたいへんだと思いますよ。でも強さは維持したいし、頭も使っていきたいですね」。最大のライバルはマルク・マルケスだろうとヴィニャーレスは言う。「彼はいつでもトップにいますからね。どんなレースでもそうなんです。本当に安定してますから、でもヴァレンティーノもね。ヴァレンティーノは本当にうまくレースをマネジメントしますから」。そこがチームメイトから学びたいことだと彼は言っている。

シムピープル

ヴィニャーレスのレースシミュレーションは実に印象的だった。ピットを出てから23ラップ(これは実際のレースより1周多い)、そして1分55秒台前半から中盤で走り続けたのである。CRASH.netがロングランの速さについてわかりやすいグラフを作ってくれている(訳注:表はこちら)。数字の上ではヴィニャーレスはアンドレア・ドヴィツィオーゾより少しだけ遅い。しかしこれはヴィニャーレスの1分57秒台のラップが3周含まれているためである。


このラップは他のライダーをリスクを冒さず抜かなければなかったためだと彼は言う。シーズン開幕を目前に馬鹿げたクラッシュで怪我をしたいライダーはいないだろう。そんなわけでタイムを落としながらも遅いライダーを抜いた次のラップでは1分55秒台に戻しているのも好材料だ。シーズン前に良い準備になったろう。

数字をざっと見ただけでもビニャーレスが良いペースを刻んでいたのは明らかだ。彼は2分を切るラップを44周刻んでいる。その内70%にあたる31周が1分55秒台以内である。それを上回ったのはアンドレア・ドヴィツィオーゾだけだが、それでも数周だけだ。ワークスドゥカティに乗るドヴィツィオーゾが2分を切ったのは28周に過ぎないが、86%は1分56秒を切っている。

ダークホースとしてのドゥカティ

ドヴィツィオーゾはカタールでの優勝を視野に入れ始めている。この2年間は2位フィニッシュ。優勝したのはどちらもヤマハのヴァレンティーノ・ロッシとホルヘ・ロレンソだ。そして彼は再びヤマハライダーの後ろでゴールするはめになるかもしれない。今年前でゴールするのはヴィニャーレスだ。「彼は誰よりも速いですからね。まだ速くなると思ってますよ」と彼はイタリアのメディアに語っている。しかしカタールは彼の得意なサーキットだ。そしてドゥカティもここを得意としている。

これはホルヘ・ロレンソにとってもいい話だ。フィリップアイランドで散々苦労した彼はカタールで速さを取り戻したのだ。デスモセディチの速さと、そして彼が正しい乗り方を見出したおかげで自信を取り戻すことができたのだ。ロレンソはレースシミュレーションを早々に切り上げているが、これは自分が選んだフロントタイヤが間違っていることに気付いたからだ。ソフトのリアにフロントもソフトで合わせたのだがそれが機能しなかったのである。

これもまたマシンに慣れていくための試練の一つである。ヤマハではいつでもフロントにソフトを選んでいたのだ。彼にとってはそれが最高に機能したのである。終盤までコーナリングスピードを稼ぐことができたのだ。しかもブレーキングでタイヤを消耗することもなかった。しかしドゥカティはそういう走りを許容しないのである。ドゥカティに乗るならブレーキングを遅らせて、しかもコーナ-奥まで突っ込む必要があるのだ。そうやってフロントに荷重を掛けるのである。つまりミディアムやハードタイヤの方がうまく機能するのだ。

時間は掛かったがロレンソはその領域にたどり着きつつある。「このバイクは独特なんですよ。パワフルだけど神経質なんです。それに難しいし体力的にもきつい。でも今日はなんとなくセッティングが見えてきましたね。体が楽だし僕も慣れてきたんです。それと体力もマシンについてこられるようになってきた。だから少しずつ乗りやすくなってるんです」

変わらないこと

皮肉なことにロレンソの元チームメイトは去年と同じメーカーにもかかわらず 新型ヤマハに適応するのに苦労していた。土曜は良いタイムを出せたのだがコースコンディションが変化した日曜には前日のセッティングが全く役に立たなかったのである。「マシンのポテンシャルはあると思うんです。ヴィニャーレスはめちゃめちゃ速いですからね」とロッシは言う。「でも彼も彼のスタッフもマシンのポテンシャルを引き出すのが早かったですね。僕らはちょっと遅れをとっている」

様々な問題に直面しているせいでロッシはレースシミュレーションもできなかった。「速さがないのはわかってますけど、上手く乗れないんですよ」と彼は言う。このままだと2週間後のレースではちょっとした奇跡が必要になるだろう。ヤマハYZR-M1は2016年型とは大きく行っており、彼もスタッフもまだ性能を引き出せていないのである。

チャンピオン候補として耳目を集めるライダーがいる一方で、視野から外れてしまったライダーもいる。ダニ・ペドロサは今回のテストで3番手タイムを出している。しかも初日から1.4秒もタイムを縮めている。彼はレースシミュレーション的なことはやっていないがロングランでも1分55秒中盤で走れるところを見せている。ペドロサは見た目より早いのだ。そしてホンダのピットからのレポートでは彼はチームと一緒に見つけたセッティングに喜んでいるとのことだ。

歴史から学ばない者たちへ

「ニッキー・ヘイデン勤勉労働者賞」は日曜のカル・クラッチローに与えよう。LCRホンダの彼は70周を走っているが、これは他のライダーを10%以上上回っているのだ。さらに」彼は16周のレースシミュレーションをこなしているが、そのほとんどで1分55秒台中盤から後半のタイムを出している。さらに詳細に分析してみれば彼のペースの安定感もよくわかるはずだ。2分を切るラップの67%が1分55秒台か、それ以上のタイムなのだ。

クラッチローがこれほどがんばったのはHRCに仕事を与えられていたということもある。名目上はサテライトのライダーで彼の給料はルーチョ・チェッキネロのLCRホンダから出ているとは言えクラッチローにはレプソル・ホンダのためのテストライダーという仕事も課せられているのだ。彼もその役割を喜んで受け入れている。マルク・マルケスとダニ・ペドロサが去年の轍を踏まないための仕事だ。去年はアグレッシブ過ぎるエンジンに苦労したが、これは充分なテストと評価が行われなかったためである。クラッチローはそうならないために仕事をしているのだ。

彼はカウルのテストもマルク・マルケスと同様に行っていた。この新型カウルは今回のテストでホンダが導入したカウルとは違いダウンフォースを稼ぐためのものであはない。ノーズ部分の形状が変わっており、フロントのエアインテークが長くなっているのだ、「このカウルの目的はトップスピードを稼ぐためですね」とマルケスは解説する。過去にはエアボックス内の圧力を高めるためにエアインテークを大きくしたこともあった。今回の形状変更がそれと同じことなのかはこれからわかるだろう。

地獄のロックライダー

印象に残ったサテライトライダーはクラッチローだけではない。アスパー・ドゥカティのアルヴァロ・バウティスタも一発の速さを見せたしレースシミュレーションも良いタイムを出している。GP16はいまだに戦闘力があるのだ。これは日曜テストが終わった時点でのスコット・レディングのタイムを見ても明らかである。しかし弱点があるのも否めない。バウティスタのテストタイムは5番手。ワークスGP17のホルヘ・ロレンソから0.2秒遅れだ。レースシミュレーションでは最初は1分54秒台と速さを見せた、55秒台も連続して出すことができたバウティスタだったが、周回を重ねタイヤが消耗すると共に急激にタイムを落として言った。20周のシミュレーションの最後には1分56秒台後半まで落ち、最後は1分56秒4となっている。去年も同じ問題が起こっていた。ドゥカティGP16はタイヤ消耗が激しいのだ。特にエッジ部分の消耗がひどいのである。バウティスタはレース序盤でトップ集団のライダーの悩みの種になるだろうが、レース後半では自分のタイヤのマネジメントで手一杯になるだろう。

もちろんここまでの話は推測に過ぎない。テストのデータを引っかき回して日曜のデータを6種類もの方法で眺めてみる。しかしこんな分析ではせいぜいざっくりした予想しか導き出せないのだ。真実はレースの決勝で明らかになる。ライダーが真剣勝負に臨む場だ。そしてそれはあと2週間待てばやってくるのだ。
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やってくるね!!

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2017年カタールMotoGPテスト土曜メモ:未来を垣間見る

満を持して登場したドゥカティのウイング付きカウルが想像の以上のなりふり構わなさで本気に勝ちに来ているのがよくわかりますね。

ってなわけでMotoMatters.comより土曜日のまとめです。
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ベテランMotoGPジャーナリストのデニス・ノイスが土曜の夜遅くにツイッターで指摘していた通り、日曜にはそれぞれの本当の立ち位置がわかりはじめるだろう。日曜はMotoGPにとってレースシミュレーションをフルに行う最後のチャンスなのだ。冬期テストで得た経験や知識の総まとめなのである。カタールテストの最終日は本番直前の通し稽古というわけだ。

しかし土曜の段階でもそれぞれの手の内が見え始めている。仕事の内容は改造というより調整であり、真の速さが現れ出している。土曜終わりのタイムシートが全てを物語っているわけではないが大まかな構図が見えてきた。2017年のMotoGPのタイトル争いがマーヴェリック・ヴィニャーレスとマルク・マルケスの間で行われることがますます濃厚になっている。そしてお互いに対する意識が高まる一方でヴァレンティーノ・ロッシを筆頭に他のライダーも虎視眈々と舞台袖で攻撃の時を待っている。

ドゥカティが手の内を見せる

土曜のカタールでは大改造というものはほとんど見られなかったが、しかしドゥカティがついに新型空力対策を披露している。とは言え他の4メーカーが出してきた代替品とは違うものだ。カウルの上半分はこれまでとは違い、非常に細いノーズと左右に配置された一組の巨大なダクトから構成されている。ダクトの形状も位置も(下の写真参照)表面積を稼ぐことで強大なダウンフォースを発生するように作られている。

「新型カウルはいい感じですよ、効果もわかるし。良いカウルになるまですごくたいへんだったんです。今年のルールに合わせたカウルで去年と同じくらいのダウンフォースを出すのがね」とテスト後にアンドレア・ドヴィツィオーゾは言っている。「うちのエンジニアが良い仕事をしてくれました」。彼によれば新型カウルの生み出すダウンフォースは「まだ同じとまでは言えないですが、かなり近い」とのことだ。土曜に新型カウルをテストしたのはドヴィツィオーゾだけで、ホルヘ・ロレンソは日曜にテストする予定となっている。

新型カウル抜きでもドゥカティは既に充分速かった。この日ホルヘ・ロレンソがマークした最高速はコース新記録となる351.8km/hだ。ムジェロでアンドレア・イアンノーネが記録した355km/hというとんでもないスピードには及ばないものの、大した記録である。ドゥカティに慣れてきたのかロレンソは明るい表情だ。タイムシートでは8番手だが彼はマルク・マルケスと同様ソフトタイヤを使っていなかったのだ。彼によればタイムは硬いレースタイヤで出したもので、最速ラップもユーズドタイヤで出したものだそうだ。

それこそロレンソが集中して取り組んだことだ。マシンのセッティングを決めてそれを好みの方向にもっていく。そしてブレーキング、特にコーナー進入を改善する。楽な仕事ではないと彼は言う、「でもこの先報われるはずですから」。日曜にはロレンソはソフトタイヤを使うだろうと予想されている。レースシミュレーションを行い、さらに新型カウルも試す。ソフトタイヤをレースで使う可能性もあると彼は言っているが、レースシミュレーションでタイヤが保つことが確認できるのが前提とのことだ。

ヤマハが覇権を握る

ロレンソがカタールを得意としている上に、歴史が物語る通りカタールのレイアウトがドゥカティ向きというものドゥカティ好調の理由だ。しかしトップ3を独占したのはヤマハだった。マーヴェリック・ヴィニャーレスがヴァレンティーノ・ロッシを従えてトップタイムを出し、そして驚くべきことにサテライトチームであるテック3のヨナス・フォルガーが3番手に入ったのだ。

これでヴィニャーレスはマルク・マルケスに並ぶチャンピオン候補の座を確固たるものとした。彼のラップの出し方がそれを証明している。ヴィニャーレスは1分54秒台に3度もいれ、しかもその内1回は去年のホルヘ・ロレンソのポールタイムを上回るものだった。さらに重要なことは1分55秒台を何度も出せたことだ。その数16周。その内12周は1分55秒2から1分55秒7の間に収まっている。これほどまでに安定したタイムで走れたのは他にはマルク・マルケスだけで、彼は1分55秒台を14回出している。しかしそのほとんどは1分55秒8から55秒9といったところだ。その次に安定していたのがヨナス・フォルガーで、1分55秒台が9回、それもマルケスと同等のペースで走っている。

それとは対照的にヴァレンティーノ・ロッシは1分54秒台をチームメイトに並ぶ3回出しているものの、1分55秒台は2回しか出せなかった。とは言え彼のタイムは目くらましである。そもそも彼はヴィニャーレスが49周も走っているのに37周しか走っていないのだ。しかもさらに重要なのは、新しいセッティングを試していたせいでタイムアタックはテスト終盤でしかやっていないのである。

「ヤマハ時代でここまでプレシーズンで苦労したなんて覚えがないですね」と彼はプレスに語っている。フィリップアイランドのテストはチームメイトに差をつけられて終わっている。しかし状況を変えられることを彼のスタッフが疑うことはなく、テストの終わり時間間際に大きくセッティングを変更したおかげでコーナー進入がかなり改善された。そして彼はすぐさまタイムを縮め始め、一発で1分54秒台を叩き出したのだ。

君は空飛ぶフォルガーを目撃したか?

しかし今日の最大の驚きはヨナス・フォルガーだ。モヴィスター・テック3・ヤマハの彼の速さは一発出しではない。それなりのタイムで走り続けることができるのである。自分でも驚くようなペースだったと彼は地元ドイツのメディアに語っている。「僕がこんな順位を出せるなんて誰かに言われたら首を横に振ってたでしょうね」。しかし彼はブレーキングの改善でまだタイムを縮められると考えている。

カタールのテストが始まる前のヘレスで私がテック3のチームオーナー、エルヴェ・ポンシャラルに話を聴いたときのことだ。「ヨナスのおかげで僕が天才に見えますよね」と彼は言った。ポンシャラルは長いことドイツ人のフォルガーを追いかけており、やっと去年契約できたのだ。彼はフォルガーが所属するMoto2チームに声を掛けると、向こうは適切な環境を整えるのが難しいだろうと言ったそうだ。しかしポンシャラルには自信があった。そして今のところ事実がそれを裏付けている。「ヨナスに関してはチームはすごくいい雰囲気ですね」とポンシャラルは言う。「それこそがいちばん大事なことなんです」

アプリリア、おまえもか?

トップ3以外のも多くの驚きがあった。アレイシ・エスパルガロがアプリリアRS-GPをカル・クラッチローに次ぐ5番手まで上げてきたのだ。エスパルガロはそれほど多くのラップを重ねたわけではないが、速くなっているのは間違いない。パワーはまだ不足しているがアプリリアは去年より差を詰めてきている。アレイシ・エスパルガロのライディングスタイルのおかげもあるだろう。アプリリアのブレーキングとコーナー進入が彼の好みなのだ。もう一つのイタリアメーカーが表彰台にのぼるのも叶わぬ夢ではないということだ。

スズキではそれほど事は上手く運んでいなかった。アンドレア・イアンノーネはヴィニャーレスから2秒遅れの12番手に終わっている。彼は自分のライディングスタイルが去年までGSX-RRに乗っていたヴィニャーレスといかに異なっているかを滔々と語っている。ヴィニャーレスのスタイルはコーナーに向けて直立状態でブレーキングし、そこからマシンをリーンさせていくのだとイアンノーネは説明する。自分もそれをやろうとしたが簡単ではなかったのだそうだ。

イアンノーネがこれほど長く語るというのは珍しいことだ。普段の彼であればプレスには簡単にしか話さず、あまり情報を与えてくれない。彼がまだ英語がそれほど得意ではないというのもあるが、別にイタリア語でもそれほど社交的なタイプではないのだ。珍しく詳しい説明を英語でしたせいか、彼はかなり短気モードに入っていたようだ。続けて質問をしようとするジャーナリストを遮ってこう言ったのである。「質問が多すぎるよ!もう今日はしゃべりすぎた」

日曜にはいよいよ本当のことが明らかになる。本当のことがうっすら見えてくるくらいが正しい言い方かもしれない。レースシミュレーションと最後のアタックが見られるだろう。2週間後にやってくる開幕戦に向けてライダーとチームが最後の準備をするのだ。テストはいよいよ終わりを迎える。しかし2017年のMotoGPが相当楽しみなものになりそうなことを教えてくれた。
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美しいから速いんじゃない、速いから美しいんだ!ってのは実は必ずしも真実ではないですが、ドゥカティのダクトのようなバロックなのも実は嫌いじゃないです。

しかしこのツイート、当時は笑い話としてのネタだったんですけどねえ…。




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2017年カタールMotoGPテスト金曜メモ:問題だらけのコース、そしてHRCのほっぺ

なかなか不思議な結果のカタールテストの初日でしたね。MotoMatters.comより。
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セパンで行われたシェイクダウンのためのテストの最中、天候の回復を待ちながらドゥカティのボス、ジジ・ダリーニャはこう言っている。「路面が乾かないならセパンをテストに使う意味なんてないですよ。おそらく他の場所でテストしなきゃなりませんね」

そんなわけでMotoGPは別のサーキットにやって来た。カタールだ。雨のを気にする必要は全くなく(いや、まあ、ほとんどってくらいだが)、チームはコースがいつ乾くかを心配しなくても済む。しかしことによったら雨が降ったセパンよりカタールの方がコースを使える時間が短いということもあるのだ。テストは午後4時から。その時点ではアラブ特有の強い日射しがまだコースを照らしている。日が暮れるのは2時間後だ。そしてレースと同じ路面温度に冷えるまでにはさらに待たなければならない。

日が暮れれば路面温度は最適だ。少なくとも2〜3時間の話だが。午後10時を回り、テスト終了の1時間ほど前になると露が降り始める。その時間は一定ではなく気温と湿度に依存する。とは言え午後11時前ということはほとんどない。コース上の見えないウェットパッチが意味するところは前兆無しのクラッシュだ。慎重なライダーはツキのない誰かがクラッシュするのを待ち、それを確認するとピットにさっさと戻って店じまいするのである。

金に物を言わせて

つまり7時間のテストの内、コースが使えるのは実質4時間ということだ。しかしこれはコースコンディションを考慮に入れない場合の話だ。砂と塵がコースを取り囲む砂漠からやってくる。コースは汚れグリップは失われる。ラインを外したらなおさらだ。コーナーをワイドに回りかけて無理に戻そうとするとクラッシュすることになるのだ。

要するにセパンに輪をかけてテストには向かないサーキットだということだ。机上の計算では期待できたはずのものもカタールは提供してくれない。レイアウトが素晴らしいのは間違いない。しかし立地もMotoGPが開催される時期も、そして昼ではなく夜に走るという設定も全て間違っているおかげでMotoGPのテストにもレースにも向かないサーキットになってしまっているのだ。開幕戦という栄誉のためにロサイルサーキットが支払っている莫大な金(パドックの噂では、遠方でのレースのための1年分の輸送費に相当する額)のことを考えなければ、カタールこそ最もMotoGPが避けるべきサーキットだろう。

そして露がこの金曜も多くのライダーを犠牲にした。マルク・マルケスもその一人だ。彼はこれを「このコースでは良くあるやつで、テストが終わりかけてコンディションが悪くなったときに起こるんですよ」と言っている。見えないウェットパッチはカタールに仕込まれた罠であり、マルケスもその犠牲となったのである。

ホンダのほっぺ

それが彼の2度目のクラッシュの理由だ。しかし最初のクラッシュはホンダが今回のテストで初めて導入した空力対策付き新型カウルが理由のようだ。HRCの空力対策はヤマハ的というよりスズキ的であり、去年、自社が使っていたウイングをベースとしているのは明らかだ。RC213Vのノーズには左右にほっぺたが鎮座し、その中にダウンフォースを稼ぐための整流板が突いている。マルケスのスタッフが新型カウルのをうまく使いこなせなかったせいでフォークが底付きしてしまったのだ。逆に言えばこのカウルは実に効果があるということでもある。

MotoGPのテクニカルディレクターはヘレスのMoto2テストにのためにカタールのMotoGPテストは欠席している。私はヘレスでウイングについて彼にたずねてみた。ウイングを格納するカバーについてどこまで許容されるのか、そしてどこからがアウトなのかを長時間にわたってインタビューを行った。ざっくり言うとウイングがカバーに覆われていて不自然に突き出ていなければ、そしてカウルの他の部分と一体になっているのであれば問題はないということである。

しかしここでの「ざっくり」はダニー・アルドリッジの考える「ざっくり」である。ルールを解釈するのは彼なのだ。「今年はみんなに嫌われることになるでしょうね」と冗談めかして彼は言う。こうしたルールの適用には常に困難が伴うということだ。とは言え一人の判断に任せてしまう方がエンジニアの奔放な創造力をコントロールするより現実的だろう。そうでもしなければ複雑怪奇な空力パーツが出来上がることはフォーミュラ1が証明している。

私の目にはホンダの空力対策はルールのぎりぎりを突いているように見える。カウルの横にしつらえられたダクトは明らかに後付けである。もちろんこれはカラーリングの問題もあるだろう。空力対策で付けられた膨らみが無塗装の黒いカーボンファイバーで、それがレプソルカラーのカウルに取り付けられているのだ。そのせいで後付け感が増しているし、実際以上にそう見える。しかしそういう問題ではないというのが私の考えだ。ダニー・アルドリッジが決めることだ。カタールでの彼の判断を待とう。

奇妙な日々

ライダーの話に戻ろう。タイムシートを見るといろいろ興味深いことが見て取れる。アンドレア・ドヴィツィオーゾが最速だったが、これまでもドゥカティがカタールで速かったことを思えば驚くにはあたらない。マーヴェリック。ヴィニャーレスが2番手で、これまで予想通りだ。モヴィスター・ヤマハに乗る彼は良いペースで走り続け1分55秒台のラップを誰よりもたくさん刻んでいた。

そこからはじき出されたのがマルク・マルケスだ。しかしレプソル・ホンダに乗る彼はクラッシュしたせいでチャンスを失っている。転倒で再びの脱臼を免れたのは幸いだった。そしてマルケスは新型エンジンを好意的に受け止めている。満足していると言ってもいいだろう。残りの数日で電子制御に取り組む予定だが、これまでホンダを悩ませ続けた加速も改善され、気持ちが楽になっているようだ。少なくとも過去数年よりは良くなっている。

カル・クラッチローが3位で1日を締めくくっている。LCRホンダの彼は最新型ホンダエンジンのセッティングに勤しんでいた。今年はホンダの全ライダーに新型エンジンが供給されるのだ。そして今日の最大の驚きは4番手のライダーだ。なんとカレル・アブラハムがアスパー・ドゥカティGP15で上がってきたのだ。旧型マシンもカタールではまだ戦闘力を発揮するというのが明らかになったのである。

アブラハムにはテストしなければならない項目が少なかったというのもあるだろう。チームメイトのアルヴァロ・バウティスタには2種類のGP16をテストするという課題が与えられていた。それでタイムを追求できなかったのだ。ダニオ・ペトルッチはGP17に慣れるのが精一杯でセッティングどころではなかった(ペトルッチに課せられたテストプログラムを見ると、プラマックの中でGP17を勝ち取ったのが良かったのか悪かったのか微妙である。ドゥカティのレース部門がペトルッチに開発の役割を与えたということでもあるのだ)。

問題は山積、でも解決策は一つではない

ホルヘ・ロレンソは速さを取り戻している。得意とするサーキットでこれまでよりもちゃんと走れているのだ。そしてこのコースはドゥカティ向きでもある。彼は自分の適応スピードに満足しているが、一方で今よりさらにブレーキングを遅らせるために多くの課題をこなさなければならないこともわかっている。完璧と言えるレベルまでに到達するにはシーズン中盤までかかるかもしれない。しかし現時点でのロレンソの適応の早さは良い徴候だと言えよう。

ヴァレンティーノ・ロッシはそれほど満足していないカタールではコーナー進入に苦労していたのだ。ペース自体は悪くはなかったし、まだ何か隠し球があるようにも思える。しかし彼は素晴らしい走りをみせたヨナス・フォルガーにも遅れをとっているのだ。フォルガーはフィリップアイランドでできなかった宿題をこなすことができたのである。モヴィスター・テック3・ヤマハの彼はプレシーズンテストを通じて良いところを見せており、すこしずつ注目を集め始めている。チームオーナーのエルヴェ・ポンシャラルにヘレスで話をきいたのだが、彼もフォルガーの才能を認めている。ポンシャラルがフォルガーと契約した時には多くの人が彼の正気を疑ったものだ。しかしその決断が天才的ひらめきに見え始めている。それもポンシャラルがフォルガーの周りに最良のスタッフを配しているからこそなのだ。

いまのところ新たな空力パーツをお目見えさせていないのはドゥカティだけだ。当初は今回のテストでデビューさせるものだと誰もが思っていたが、ドゥカティのレース部門は先延ばしすることにしたようだ。明日は皆がドゥカティのピットに注目することになるだろう。
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タイトルを獲ってないライダーの勝利数トップ10

私は真っ先にビアッジが思い浮かんじゃうんですが、ほかにもたくさんいるんですよダニとかダニとかダニとか。そんな切ないライダーたちに愛を込めてCRASH.netが書いてます。
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才能と不屈の精神がレースで成功するのに不可欠な要素なのは言うまでも無いが、全てのライダーにとって同じくらい重要なトッピングとなるのがキャリアを通して運に恵まれたかどうかということである。サイコロの目がどう出るかで偉大なレーサーの仲間入りができることもあれば、努力を続けレースに勝ってもいるのに暖炉の上にチャンピオントロフィーを飾ることができないままキャリアを終えることもあるのだ。

運というのは別の形で現れることもある。ここに挙げた10人のライダーより勝利数は劣るにもかかわらずタイトルを獲得して引退したライダーもいる。他のライダーの不運に恵まれたり、派手な優勝とリタイヤを繰り返すライダーを尻目に確実に表彰台に上がることができる能力を持っていたり、そうしたことでタイトルを手にすることができるのである。

もちろん怪我やさらに辛い悲劇のせいでキャリアをたたれたライダーについても疑問は尽きない。マルコ・シモンチェリはチャンピオンになれただろうか?加藤大治郎は日本人初の最高峰クラスタイトルを獲得できただろうか?誰にも答えられない疑問である。そこで今回は事実だけに基づいてトップ10リストを作ることにしよう。勝利数だ。500ccとMotoGPのタイトルを獲得していないライダーを最高峰クラスでの勝利数順に並べてみるのだ。


1位 ダニ・ペドロサ:29勝

ダニ・ペドロサは他のライダーをぶっちぎってトップに立っているだけではない。彼の凄いところはまだタイトル獲得の可能性があるということである。彼が唯一目指すのはMotoGPのチャンピオン。下のクラスでは既に記憶に残るスターの座は獲得しているのだ。125から250時代にかけて3連続タイトルをホンダで獲得し2006年には満を持してレプソルホンダのRC211V で最高峰クラスにデビューする。そしてたった4レースで表彰台の頂点を獲得し、小さい彼に重い4ストロークマシンを操る筋力があるのかという懸念を払拭したのである。彼はホンダに乗ることにこだわり続けデビュー以来の10年間、毎シーズン最低1勝はしている。そしてたいていのシーズンはそれ以上の勝利を飾っているのだ。ランキング2位は3回、3位も3回、4位も3回。最悪のランキングは5位で、それはデビューシーズンのことだった。それは仕方が無いことだろう。ではなぜ彼はまだタイトルを獲得していないのか?いくつかの理由がある。その理由はロッシと呼ばれていたり、ストーナーと呼ばれていたり、ロレンソと呼ばれていたり、マルケスと呼ばれていたりしている。そしてもうひとつ彼のタイトル争いを邪魔し続けていた腕上がりの問題がやっとなくなった今、彼はこのリストからはずれることができるのだろうか?もしできなければこれから数十年はタイトルを獲得していない最も成功したライダーでありつづけることになるだろう。


2位 マックス・ビアッジ:13勝

500ccGPマシンに乗る前からビアッジはスターの座を獲得していた。250ccで4連続タイトルを獲得した彼が1998年に500ccに昇格すると、当然かなりの期待を持って迎えられることとなった。そして素晴らしいデビューを果たす。マルボロ・ホンダに乗って彼は史上初となる500ccデビューウインを日本GPで飾ったのだ。もちろん無敵のミック・ドゥーハンがレースを途中リタイヤしたことも大きかったのは間違いない。それは98年に彼が挙げたもうひとつの勝利もドゥーハンがリタイヤしたレースであることが証明している。とは言えデビューシーズンに2勝、そして表彰台に何度ものぼったことで彼はその年ランキング2位を獲得しているのだ。タイトル獲得はそう遠くないだろうと思われたものだ。ヤマハに移籍した99年は1勝にとどまり、ランキングは4位。翌年2000年は2勝でランキングは3位。しかし2000年で注目すべきはケニー・ロバーツ・ジュニアにタイトルを奪われたことではない。ランキング2位をロッシという名の若造に奪われたことだった。ロッシとビアッジのライバル関係とこれに伴う心理戦はその後2年間続き、伝説となる。しかしロッシは勝ち続けビアッジの自信を奪っていった。2005年はレプソル・ホンダに乗ることができたにもかかわらずマックスはランキング5位がやっと。翌2006年は走る場所を失ってしまった。しかし後にアプリリアでワールドスーパーバイクのタイトルを獲得し、彼はまだ力を失っていないことを証明したのである。


3位 ランディ・マモラ:13勝
(訳注:なぜかコメントなし)

4位 セテ・ジベルノー:9勝

最初は目立たないスタートだったがキャリアのピークではここ最近で最も記憶に残る戦いを繰り広げることとなった。1997年にウェイン・レイニーのヤマハチームで最高峰クラスにデビューしたジベルノーは、当時手堅い走りが売り物の中位を走るライダーだと見なされていた。そして後にレプソル・ホンダに移籍する(とは言え乗っていたのは正統派V4ではなくVツインのNSR500Vだった)。そこでも相変わらず中位を走り続けたセテは2001年スズキの最後のRGV500で優勝して周りを驚かせる。当時のスズキのスポンサーであるモビスターは2003年ホンダにスイッチ。そして彼は突然才能を開花させるのだ。チームメイトの加藤大治郎が開幕戦の事故で亡くなったのち、ジベルノーは4勝を飾りランキング2位となった。その年、タイトルを獲ったロッシとの争いは実にスリリングだった。ロッシが乗っていたのはおそらくセテのマシンより速いワークス仕様のレプソルRC211Vだったにもかかわらずだ。二人の争いは2004年まで続く。ロッシはこの年にヤマハに移籍しタイトルを獲得。そしてジベルノーは4勝で再びランキング2位となる。しかしそれ以降彼はGPで勝利することはなかった。2005年は安定した成績を残せずわずかな数の表彰台を獲得しただけだった。そして2006年にはドゥカティに移籍したが結局デビュー当時と同じようなぱっとしない成績で終わってしまう。


5位 ロリス・カピロッシ:9勝

125ccと250ccでタイトルを獲得したカピロッシ。2000年に500ccに上がった彼はそのままタイトル候補になるだろうと期待されていた。そして彼は期待に応えてみせる。最高峰クラスに上がってわずか6レース目で優勝を飾るのだ。それも地元イタリアでヒーローとしての座を固めたのだ。しかし次の勝利は2003年まで待たなければならなかった。新たに参戦してきたドゥカティに移籍し、MotoGPでの初勝利をプレゼントしたのである。彼はそのままドゥカティに乗り続け通算6勝を挙げるが2007年にやってきたケイシー・ストーナーほどの成績は挙げられなかった。ストーナーの最高峰クラスデビューイヤーとなったその年、カピロッシはランキング7位に終わる。2008年にはスズキに移籍するが成績は奮わず表彰台は2008年ブルノの3位わずか1回。そしてそのまま2011年を最後に引退してしまった。


6位 ルカ・カダローラ:8勝

250のタイトルを2回獲得したカダローラの速さを疑う者はいなかった。そして彼は500cc2ストロークで8勝することでそれを証明する。エースライダー、ウェイン・レイニーのチームメイトとして1993年にマルボロ・ヤマハで素晴らしいデビューを飾った彼はあ、しかし最高峰クラスではそれほど輝くことはできなかった。レイニーがミザノでクラッシュし引退を余儀なくされると彼は自動的にエースライダーとなり1995年までチームのトップだったのだが、年に2勝ずつを挙げただけで終わってしまった。ランキングはそれなりに印象的だ。デビューイヤーは5位、翌年は2位、そして3位を。そしてアーヴ・カネモトのホンダチームに96年に移籍し再び3位を記録する。最高のライディングができるはずだった翌年、彼はヤマハと契約をするがチームが1997年の初めにレースから手を引いてしまう。それがけちのつき始めとなった。その年はWCMに救われたものの、以降彼のキャリアは切り貼り続きでフルシーズンを戦闘力のあるマシンで戦うことはなかった。


7位 アレックス・バロス:7勝

持続性という意味でアレックス・バロスに比肩するライダーはそうはいないだろう。最高峰クラスで18年間276レースを走っているのだ(2006年はワールドスーパーバイクで走っていたのでGPは1年休み)。その間、大した成績ではないシーズンも数多くあったが彼は500cc時代からMotoGP時代を通じて通算7勝(500では1990年から2001年の間に4勝、MotoGPでは2002年から2007年の間に3勝)を挙げている。勝率は良いとは言えないが、カジバでの3年間の低迷の後、1993年にスズキで開花してからのバロスの走りは常に注目すべきものだった。一瞬の輝きというような年はキャリアを通じて見られなかった。初優勝は93年。そして最後の優勝は12年後の2005年。シーズンに2勝以上したのは2000年と2002年の2回だけ。そして3勝以上を挙げたことはない。キャリア最高の勝利はMotoGPでの初勝利だろう。2002年のほとんどを旧型NSR500で走り、新型RC213Vについていくのがやっとだった彼はもてぎでついにホンダの990ccV5マシンを手に入れ、そしてワークスライダーのロッシを破って優勝したのだ。


8位 マルコ・メランドリ:5勝

何年もの間ぱっとしない日々が続くとマルコ・メランドリが小排気量時代には神童と呼ばれていたことを忘れてしまう。彼はロッシの次に来るライダーだと見なされていた。1998年に史上最年少(15歳)で125ccの優勝を飾ると、2002年には20歳でこれまた史上最年少のチャンピオンとなり、MotoGPに昇格する。だめなマシンと、おそらくあまりに早く昇格したせいで彼のヤマハの2年間は苦労続きだった。そして2005年、モヴィスター・ホンダに移籍してチャンスをつかむ。その年の最後の2戦で優勝し、ランキング2位に入ったのだ。翌年彼はグレジーニ・ホンダで3勝(ワークスマシンでないのに優勝できたのはいつのことか覚えてますか?)。その年のチャンピオンヘイデンより1勝多い成績だ。しかし彼のランキングは4位に留まってしまった。


9位 ウィル・ハルトフ:5勝

比較的短い最高峰でのキャリアで5勝しているにもかかわらずハルトフのランキング最高位は4位。勝つだけではシーズン終わりに成功を収めることはできないということを証明している。ハルトフは全ラウンドを走りきったシーズンがなく、数戦走り損なうこともまれではなかったのだ。初勝利は1977年だが、このときは4戦しか走っていない。最後の勝利は1980年で、この年も6戦走って3戦しかフィニッシュできていないのだ。


10位 岡田忠之:4勝

金太郎飴のように体のどこを切っても「ホンダ」と出てくる男が彼だ。彼よりもっと良い成績を挙げられたライダーがいるとけちをつける人はいくらでもいる。特に彼がレプソル・ホンダで走っていた1996年から2000年の間は喧しいことこの上なかった。しかし数字は嘘をつかない。彼は最高峰クラスで4勝を挙げているのだ。初優勝は1997年。表彰台の常連として2位に入り無敵のミック・ドゥーハンの援護という役割を見事に果たして見せた。1999年にはさらに3勝を挙げるが、激しいタイトル争いのせいで97年より多くのポイントを稼いだにもかかわらずランキングは3位に終わってしまった。ニッキー・ヘイデンは岡田より長くレプソル・ホンダで走っていたが2006年にタイトルを獲った時は2勝しかしていないこと(2位のロッシはその年5勝している)、通算でも3勝しかしていない、つまりロッシがその年にチャンピオンになっていたら彼はこのリストにさえ載らなかったことを覚えておいても良いだろう。
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ま、そうは言ってもタイトルはタイトル。
…なんか今年はダニが3勝でチャンピオンになるかもって思えてきたぞ。

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レースディレクター、マイク・ウェッブへのインタビュー

MotoGPのルール運用を任されているレースディレクション。その責任者であるマイク・ウェッブにCRASH.netが独占インタビューを行っているので訳出。賛否両論ある(私は「否」)メーターパネル経由のピットからのメッセージ表示についてです。
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今回のMotoGPのレースディレクター、マイク・ウェッブへの独占インタビューは導入が予定されている「バーチャルピットサイン技術」、つまりメーターパネルを通してチームがライダーにメッセージを出せるようにしようとする件について尋ねてみた。

これに加えて2017年シーズンからはカメラを使ってコース外に出たことを把握する他、メーターパネルにペナルティの可能性を表示するようになっている。

そんな中、レースコントロールは特に小排気量クラスでは目に余るほどとなっているプラクティスで誰かの後ろに張り付こうとペースを落とすライダーに対しては厳しくペナルティを科すようになった。しかし予選の方式を変えるという方法もあるのではないか。

CRASH.net:MotoGPでメーターパネルにメッセージを表示するシステムは今シーズンから導入されるですか?

マイク・ウェッブ:技術的には問題はありません。ただまだ全チームから同意を取り付けている最中なんです。ライダーの同意も込みでね。誰もが欲しがっている情報かつ技術的に可能な範囲ということですね。「いや、うちはいらない」と言っているチームやライダーもいますし、「ほしい。良いツールだし、やりましょう」と言っているところもある。だからまだ決定ではないんです。
 私に言えるのは、超短文のテキストメッセージシステムで、可能な限りわかりやすくシンプルなものとなります。今の提案は5〜6の決まったメッセージからチームが使いたいものを選ぶ感じですね。
 その5〜6のメッセージというのはこちらで設定することになります。ですから好きなことを書けるわけじゃないってことですね。少数のわかりやすくてシンプルなメッセージを発信するシステムということです。天候に合わせて何をするかを決めたり、ライダーにピットインを指示したり、そういうことですね。
 将来的にはもう少し進化したものになる可能性もあります。個人的にはライダーに好きなだけメッセージを出せるというのが良い考えかどうかはまだ自信がないですけどね。そういう意味では制限があった方がいいと思ってますし、まずはそこから始める予定です。


CRASH.net:予め決められたメッセージしか送れないということは戦術やチームオーダーについての発信も制限されるということですね。そこは多くのファンが心配しているところでしたが…。

マイク・ウェッブ:ええ、その通りですね。でもチームは今でもピットボードでライダーにメッセージを出せるってことは皆さん思い出して欲しいですね。順位を落とさせたかったりとかでピットボードに「P2」とか簡単に出せちゃうんですよ。
 それよりも安全面の方を重視してるんです。GPは耐久レースとは違ってスプリントなんです。
 ライダーとバイクだけがコース上にいてレースをしている。普通はピットストップはない。そしてどんな戦術を採るかはライダーがコース状況を見ながら自分で決めることになる。F1みたいにピットクルーがライダーの戦術を決めるわけではないんですよ。
 個人的にはこのバイクのスプリントレースに流れる哲学は守りたいと考えています。ライダーが自分で自分のやることを決めるということですね。

CRASH.net:カタールからメッセージシステムが導入される可能性はどれくらいありますか?

マイク・ウェッブ:私は難しいと思ってます。先ほど言った通り技術的には準備ができているんです。でも全チームが最新の統一ソフトウェアにアップデートしてないといけないんです。(MotoGPの技術ディレクター、コラード・チェッキネリによれば「そういう新バージョンのソフトはカタールテストでテストする予定」とのこと)
 もし全員から同意がとれて準備もできれば導入されることになります。メーターパネルにフラッグ・シグナルは表示できていますし、メッセージを送るのも同じ電装系を使うんです。ですからこちらとしてはいつでもOKですね。
 ドルナ、IRTA、チームの間で今いちばん議論されているのは、本当にそれがほしいのか?ということです。そして導入するならどんな形式にすべきかということです。そこはまだ決まっていないんです。
 でもカタールまでには何か展開があると思いますし、そのあたりはこちらとしては何の問題にもなりませんね。


CRASH.net:形式が決まってないというのは、自分たちで好きにメッセージを書きたいというチームがいるということですか?

マイク・ウェッブ:ああ、最初はほぼ全チームが自分たちにメッセージを書かせてくれって言ってきてました。私が最初にはっきりと拒否したのはそこなんです!どんなメッセージをメニューに載せるかについて考えてみて下さい。まず最も大事なのは安全性です。ですからメッセージは例えば「コンディションは○○○で、タイヤ変更が必須」とかですね。そんな感じです。なのでそういう意味ではこちらにとってメッセージを自由に作れるようにするのは優先順位が一番低いところなんです。


CRASH.net:GPの哲学ということをおっしゃいましたが、それもあってチームからライダーへのメッセージを自由に作るのに反対しているんですか?

マイク・ウェッブ:自由なメッセージどころか、チームからライダーへのメーターパネル経由のコミュニケーションの全面解禁も検討の余地はあると思ってますよ。でも安全性を考えるとそのためには本当にちゃんとしたアプリケーションが必要だと考えているんです。ですからまあ、とりあえず始めてみて経験を積みながら、より良い方向を探っていこうということですね。


CRASH.net:メッセージの他にも2017年に導入されるメーターパネル表示はあるんですか?

マイク・ウェッブ:メーターパネルも進化しているんで2つばかり検討しています。主にMoto3ですね。
 コースをはみ出したことを知らせる警告灯が導入されます。即ペナルティではないですけど、「これまでに2回コースをはみ出したことが確認された、ここまではミスだろうと認識してるが、ペナルティに向かっって一直線になっているので気を付けて」という意味ではあります。
 去年後半から既に手動でこの警告を出していました。チームにピットサインを出すように知らせていたんです。でも今年からはメーターパネルの警告灯も使います。ライトに加えて、そのメッセージが何を意味するのかを伝えるちょっとした文字も出すんです。
 もうひとつはブルーフラッグです。ラップ遅れになりそうなライダーに対して表示するものですね。予選やプラクティスについてはあまり気にしていませんが、レースでは絶対バックマーカーにトップがつっかえるなんてことがないようにしたいんです。それで警告灯を追加したんです。
 メーターパネル上の警告灯に加えてコースサイドのフラッグは継続します。
 ブルーフラッグ灯は自動ではありません。まだモニターを確認してレースディレクションから指示を出す必要があるんです。ですから信号を送るライダーとタイミングを決めるのと同時にマーシャルポストに「ブルーフラッグになりそうなので準備して下さい」と伝えるんです。


CRASH.net:コースをはみ出したのはどうやって確認するんですか?

マイク・ウェッブ:コースはみ出し問題は最近特に目に余るようになってますね。安全性の観点から人工芝をなくしてるからなんです。なのでこれは自動化しました。カメラを使ったシステムでホイールがコースを外に出るのを確認して私たちに知らせるようになっています。
 その後はまだこちらで再確認してペナルティ対象とするかどうか決める必要があります。でも運用スピードを上げてもいるんです。何人もの人手をかけてコースのカメラを見張るのではなく、自動的に「ここ注目」と教えてくれるようにしたんです。


CRASH.net:そのカメラシステムは去年から使っていたんですか?

マイク・ウェッブ:去年は初期段階のテストをしてはいましたけど、本格運用は今年からですね。


CRASH.net:カタールからちゃんと使う準備はできていると?

マイク・ウェッブ:大丈夫ですね。コースをはみ出したことを認識するソフトウェアはほんとにうまく機能していますし、まだうまくいかないところもどんどん改善されてきてますから。でも何よりいいのは問題がおきそうなところに最初から専用のカメラを設置できることですね。これまでは問題が起こった場所にたまたま設置されていたドルナのカメラ頼りだったんです。私にとっては自分たち専用カメラが手に入ったのが大きいですよ。これ専用なんです。他の場所に向ける必要もなく、コースの境目を見張るだけのカメラなんです。


CRASH.net:監視カメラみたいなものなんですか?

マイク・ウェッブ:その通りです。やりたければ動かすこともできますけど、大事なのは、はみ出しがちな場所はどのコースでもわかってるってことなんです。ありがたいことにそういう場所が全然ないサーキットもありますね。一方でシルバーストンみたいにたくさんあるコースもあります。まずはこうした問題箇所にカメラを設置することになります。一方、普段は起こらないところでコースはみ出しがたまたま起こった場合には従来通りマーシャルに頼ることになります。


CRASH.net:ライダーがコースを逸脱してからなんらかの決定が下されるまでの平均時間はどれくらいですか?

マイク・ウェッブ:場合によって全然違いますね。プラクティスは簡単なんです。その周のタイムを取り消せばいいだけですから。それは不正ラップだって言えば済むんです。ですからプラクティスはかなり自動化されますし比較的わかりやすいですね。うちのスタッフが確認してボタンを押すと、タイムキーパーが信号を受信してタイムを抹消する。
 レースの場合はかなり人間が介入することになります。たいていは「OK、彼はミスをしてコース外に出たが有利になってはいない」なのか「ちょっと同じミスをしすぎだね…」なのか「明らかに有利になったね」なのかを判断することになります。
 誰が見ても明らかな状況、例えばライダーがコースをはみ出してタイムを稼いだのが中継に映っているとか、そういう場合にはすぐペナルティが決まって1分以内にライダーには伝えられます。逆にライダーがはみ出したことをマーシャルが知らせてくる場合で、しかもそのライダーがトップ争いをしていなくてカメラに映っていないとなるとかなり時間が掛かることになりますね。
 そういう場合はそれが起こった時のビデオを探して、それから必要な場合はペナルティを出すことになるんです。そうすると最悪何周もしてからということもありますね。
 これまで認識のやり方自体がいろいろあったということですね。こんど導入されるカメラによる自動検知システムはコースの境目を検知するソフトウェアで、何かがその境を越えるとその時の画像を送ってきて、こちらですぐにチェックできるようになるんです。
 本当に違反しているかどうかについてはまだ人間が判断しなければなりませんが、少なくともマーシャルからの連絡を無線で待つとかはなくなりますからね。これまでは「前のラップの12コーナーを確認して下さい」とか無線がきてたんですから。最新技術を導入することでスピードアップしてるんですよ。


CRASH.net:Moto3の「スリップ待ち遅走り」の伝統も去年は頭痛の種でしたね。ペナルティが厳しくなったんでそちらの意図も浸透してきたんでしょうか?

マイク・ウェッブ:それはありますね。かなりライダーの取り組みが違ってきています。でもペナルティを科すようになった最初の頃は効果があったんですけど、またなし崩しになってきてると認識してます。最初の衝撃が薄れてきちゃってるんです。
 だから去年の終わりに「わかった、これに従わないなら深刻なペナルティを科すよ」って宣言したんです。そしたらまた予選の態度がちゃんとしてきましたね。なので去年の終盤と同じように運用していきます。ペナルティは容赦なしです。
 最悪予選のフォーマットを変更することも視野に入れていますが、そんなことはしたくないですね。だからそうならないようにいろんなことをしてるんです。その結果がどうなるかはこれからですね。
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ふむふむ。

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