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2017年カタールMotoGPテスト金曜メモ:問題だらけのコース、そしてHRCのほっぺ

なかなか不思議な結果のカタールテストの初日でしたね。MotoMatters.comより。
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セパンで行われたシェイクダウンのためのテストの最中、天候の回復を待ちながらドゥカティのボス、ジジ・ダリーニャはこう言っている。「路面が乾かないならセパンをテストに使う意味なんてないですよ。おそらく他の場所でテストしなきゃなりませんね」

そんなわけでMotoGPは別のサーキットにやって来た。カタールだ。雨のを気にする必要は全くなく(いや、まあ、ほとんどってくらいだが)、チームはコースがいつ乾くかを心配しなくても済む。しかしことによったら雨が降ったセパンよりカタールの方がコースを使える時間が短いということもあるのだ。テストは午後4時から。その時点ではアラブ特有の強い日射しがまだコースを照らしている。日が暮れるのは2時間後だ。そしてレースと同じ路面温度に冷えるまでにはさらに待たなければならない。

日が暮れれば路面温度は最適だ。少なくとも2〜3時間の話だが。午後10時を回り、テスト終了の1時間ほど前になると露が降り始める。その時間は一定ではなく気温と湿度に依存する。とは言え午後11時前ということはほとんどない。コース上の見えないウェットパッチが意味するところは前兆無しのクラッシュだ。慎重なライダーはツキのない誰かがクラッシュするのを待ち、それを確認するとピットにさっさと戻って店じまいするのである。

金に物を言わせて

つまり7時間のテストの内、コースが使えるのは実質4時間ということだ。しかしこれはコースコンディションを考慮に入れない場合の話だ。砂と塵がコースを取り囲む砂漠からやってくる。コースは汚れグリップは失われる。ラインを外したらなおさらだ。コーナーをワイドに回りかけて無理に戻そうとするとクラッシュすることになるのだ。

要するにセパンに輪をかけてテストには向かないサーキットだということだ。机上の計算では期待できたはずのものもカタールは提供してくれない。レイアウトが素晴らしいのは間違いない。しかし立地もMotoGPが開催される時期も、そして昼ではなく夜に走るという設定も全て間違っているおかげでMotoGPのテストにもレースにも向かないサーキットになってしまっているのだ。開幕戦という栄誉のためにロサイルサーキットが支払っている莫大な金(パドックの噂では、遠方でのレースのための1年分の輸送費に相当する額)のことを考えなければ、カタールこそ最もMotoGPが避けるべきサーキットだろう。

そして露がこの金曜も多くのライダーを犠牲にした。マルク・マルケスもその一人だ。彼はこれを「このコースでは良くあるやつで、テストが終わりかけてコンディションが悪くなったときに起こるんですよ」と言っている。見えないウェットパッチはカタールに仕込まれた罠であり、マルケスもその犠牲となったのである。

ホンダのほっぺ

それが彼の2度目のクラッシュの理由だ。しかし最初のクラッシュはホンダが今回のテストで初めて導入した空力対策付き新型カウルが理由のようだ。HRCの空力対策はヤマハ的というよりスズキ的であり、去年、自社が使っていたウイングをベースとしているのは明らかだ。RC213Vのノーズには左右にほっぺたが鎮座し、その中にダウンフォースを稼ぐための整流板が突いている。マルケスのスタッフが新型カウルのをうまく使いこなせなかったせいでフォークが底付きしてしまったのだ。逆に言えばこのカウルは実に効果があるということでもある。

MotoGPのテクニカルディレクターはヘレスのMoto2テストにのためにカタールのMotoGPテストは欠席している。私はヘレスでウイングについて彼にたずねてみた。ウイングを格納するカバーについてどこまで許容されるのか、そしてどこからがアウトなのかを長時間にわたってインタビューを行った。ざっくり言うとウイングがカバーに覆われていて不自然に突き出ていなければ、そしてカウルの他の部分と一体になっているのであれば問題はないということである。

しかしここでの「ざっくり」はダニー・アルドリッジの考える「ざっくり」である。ルールを解釈するのは彼なのだ。「今年はみんなに嫌われることになるでしょうね」と冗談めかして彼は言う。こうしたルールの適用には常に困難が伴うということだ。とは言え一人の判断に任せてしまう方がエンジニアの奔放な創造力をコントロールするより現実的だろう。そうでもしなければ複雑怪奇な空力パーツが出来上がることはフォーミュラ1が証明している。

私の目にはホンダの空力対策はルールのぎりぎりを突いているように見える。カウルの横にしつらえられたダクトは明らかに後付けである。もちろんこれはカラーリングの問題もあるだろう。空力対策で付けられた膨らみが無塗装の黒いカーボンファイバーで、それがレプソルカラーのカウルに取り付けられているのだ。そのせいで後付け感が増しているし、実際以上にそう見える。しかしそういう問題ではないというのが私の考えだ。ダニー・アルドリッジが決めることだ。カタールでの彼の判断を待とう。

奇妙な日々

ライダーの話に戻ろう。タイムシートを見るといろいろ興味深いことが見て取れる。アンドレア・ドヴィツィオーゾが最速だったが、これまでもドゥカティがカタールで速かったことを思えば驚くにはあたらない。マーヴェリック。ヴィニャーレスが2番手で、これまで予想通りだ。モヴィスター・ヤマハに乗る彼は良いペースで走り続け1分55秒台のラップを誰よりもたくさん刻んでいた。

そこからはじき出されたのがマルク・マルケスだ。しかしレプソル・ホンダに乗る彼はクラッシュしたせいでチャンスを失っている。転倒で再びの脱臼を免れたのは幸いだった。そしてマルケスは新型エンジンを好意的に受け止めている。満足していると言ってもいいだろう。残りの数日で電子制御に取り組む予定だが、これまでホンダを悩ませ続けた加速も改善され、気持ちが楽になっているようだ。少なくとも過去数年よりは良くなっている。

カル・クラッチローが3位で1日を締めくくっている。LCRホンダの彼は最新型ホンダエンジンのセッティングに勤しんでいた。今年はホンダの全ライダーに新型エンジンが供給されるのだ。そして今日の最大の驚きは4番手のライダーだ。なんとカレル・アブラハムがアスパー・ドゥカティGP15で上がってきたのだ。旧型マシンもカタールではまだ戦闘力を発揮するというのが明らかになったのである。

アブラハムにはテストしなければならない項目が少なかったというのもあるだろう。チームメイトのアルヴァロ・バウティスタには2種類のGP16をテストするという課題が与えられていた。それでタイムを追求できなかったのだ。ダニオ・ペトルッチはGP17に慣れるのが精一杯でセッティングどころではなかった(ペトルッチに課せられたテストプログラムを見ると、プラマックの中でGP17を勝ち取ったのが良かったのか悪かったのか微妙である。ドゥカティのレース部門がペトルッチに開発の役割を与えたということでもあるのだ)。

問題は山積、でも解決策は一つではない

ホルヘ・ロレンソは速さを取り戻している。得意とするサーキットでこれまでよりもちゃんと走れているのだ。そしてこのコースはドゥカティ向きでもある。彼は自分の適応スピードに満足しているが、一方で今よりさらにブレーキングを遅らせるために多くの課題をこなさなければならないこともわかっている。完璧と言えるレベルまでに到達するにはシーズン中盤までかかるかもしれない。しかし現時点でのロレンソの適応の早さは良い徴候だと言えよう。

ヴァレンティーノ・ロッシはそれほど満足していないカタールではコーナー進入に苦労していたのだ。ペース自体は悪くはなかったし、まだ何か隠し球があるようにも思える。しかし彼は素晴らしい走りをみせたヨナス・フォルガーにも遅れをとっているのだ。フォルガーはフィリップアイランドでできなかった宿題をこなすことができたのである。モヴィスター・テック3・ヤマハの彼はプレシーズンテストを通じて良いところを見せており、すこしずつ注目を集め始めている。チームオーナーのエルヴェ・ポンシャラルにヘレスで話をきいたのだが、彼もフォルガーの才能を認めている。ポンシャラルがフォルガーと契約した時には多くの人が彼の正気を疑ったものだ。しかしその決断が天才的ひらめきに見え始めている。それもポンシャラルがフォルガーの周りに最良のスタッフを配しているからこそなのだ。

いまのところ新たな空力パーツをお目見えさせていないのはドゥカティだけだ。当初は今回のテストでデビューさせるものだと誰もが思っていたが、ドゥカティのレース部門は先延ばしすることにしたようだ。明日は皆がドゥカティのピットに注目することになるだろう。
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コメント

このプレーシーズン、テストを行う温暖な南半球のサーキットは、みんな問題があるっていうことですね。
モテギじゃ、まだ寒くて無理でしょうし。
シーズン中のプライベートテストが、より重要な割合を占めるということでしょうか。

そんな中でもマーヴェリックがいずれのサーキットでも最速をキープしてるのは、やっぱり凄いですね。
テストはレースと異なるとはいえ、やっぱりタイムは気になります。
ホルヘも着々とドカに順応してきているようで。
にしても昨日出してきたドカのフェアリングは凄かった!
まるでフォーミュラカーのノーズのよう!
スズキのを見た時は、鯉がナマズになったような印象でしたがww

投稿: motobeatle | 2017/03/12 12:55

>motobeatleさん
 ドゥカのカウル、実は好きw。

投稿: とみなが | 2017/03/12 17:05

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