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2017年カタールMotoGPテスト日曜まとめ:すぐに真実は明らかになるから

ほほほ、ホルヘとダニが上がってきて喜んでいますよ。MotoMatters.comより。
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テストは終わった。MotoGPにとってこの日曜が2017年シーズン開幕に向けての最後の準備となった。最後の一ひねりも調整も実験もすべて終わりだ。次にマシンがコースに出るのは2週間後。そこではプライドもわずかな心理的優位性も問題にはならない。もう何も隠すものはないのだ。

テストの最終日はいつでも大忙しだが、ロサイル国際サーキットの場合、前日までとわずかに違うだけだ。最初の2時間はせいぜい 日が沈んで路面温度がテストができるくらいまで下がるのを待っている ライダーやメカニックやカメラマンが退屈そうにおしゃべりをする程度だ。そしてテストが始まればライダーはとにかくラップを重ねようとする。
午後11時、気温が下がって露が降りるともう走れる状態ではなくなってしまう。ウェットパッチにのってクラッシュするリスクがあるのだ。

クラッシュに向けてまっしぐら

とは言えライダーがウェットパッチをクラッシュの言い訳にすることはない。コースが使える5時間の間にトータル14回のクラッシュが起こっている。しかも特定のライダーに偏っていたのだ。サム・ロウズは2回、マルク・マルケスは1日で3回も路面に叩きつけられている。マルケスはその原因をわかっているようだ。「最初から最後まで限界で攻めてましたからね。1分55秒台で走ろうとしてたんです。でもそのためにはリスクを冒さなきゃならなかった。」。マルケスはその代償を払ったということだ。そして1回はテストしていたあるパーツの問題だとも言って理由が、これについては何かは明言しなかった。

マルケスがレースシミュレーションをできなかったのはクラッシュのせいかもしれない。そしてクラッシュのせいで彼はいいラップタイムを記録できなかった可能性もある。そういうわけで彼は日曜を10位で終え、3日間のトータルでも11位に終わってしまったのだろう。今年行われた2回のテストでは信じられないほど良いタイムを記録したがここでは苦労したようだ。とは言え彼の自信は失われてはいない。テストでのタイムはともかく彼のレースペースは悪くないのだ。

見えてきたチャンピオン候補

とは言えちょっとした問題もある。「タイムについて言うと、まあ一人だけ抜きんでてますよね」とマルケスは言う。そのライダーとはマーヴェリック・ヴィニャーレスのことdあ。彼はシーズン最後となる4回目のテストでトップタイムを記録している。つまり4回のテストすべてをトップで終えているということだ。モヴィスター・ヤマハのヴィニャーレスの速さに疑問をもっていたとしても、一発の出しでもレースシミュレーションでも素晴らしい走りを見せた彼のパフォーマンスの前には誰もが納得することになったろう。

彼のメディア対応にもそれは表れている。発言はポジティブな言葉で満ちていたのだ。「良い仕事ができました…すごく自信が持てましたね…本当にいい感じで仕事ができてます…めっちゃ良い気持ちですね…乗っていて気持ちいいんです…」。ことほどさように自信の満ちた言葉で埋め尽くされているのだ。そしてこのことはライバルに恐怖心を植え付けることになる。スズキを去ってモヴィスター・ヤマハに加入したヴィニャーレスの目標はMotoGPタイトルだ。初挑戦でそれを実現しようとしているのだ。

ヴィニャーレスはそれが簡単でないことはわかっている。「今年はたいへんだと思いますよ。でも強さは維持したいし、頭も使っていきたいですね」。最大のライバルはマルク・マルケスだろうとヴィニャーレスは言う。「彼はいつでもトップにいますからね。どんなレースでもそうなんです。本当に安定してますから、でもヴァレンティーノもね。ヴァレンティーノは本当にうまくレースをマネジメントしますから」。そこがチームメイトから学びたいことだと彼は言っている。

シムピープル

ヴィニャーレスのレースシミュレーションは実に印象的だった。ピットを出てから23ラップ(これは実際のレースより1周多い)、そして1分55秒台前半から中盤で走り続けたのである。CRASH.netがロングランの速さについてわかりやすいグラフを作ってくれている(訳注:表はこちら)。数字の上ではヴィニャーレスはアンドレア・ドヴィツィオーゾより少しだけ遅い。しかしこれはヴィニャーレスの1分57秒台のラップが3周含まれているためである。


このラップは他のライダーをリスクを冒さず抜かなければなかったためだと彼は言う。シーズン開幕を目前に馬鹿げたクラッシュで怪我をしたいライダーはいないだろう。そんなわけでタイムを落としながらも遅いライダーを抜いた次のラップでは1分55秒台に戻しているのも好材料だ。シーズン前に良い準備になったろう。

数字をざっと見ただけでもビニャーレスが良いペースを刻んでいたのは明らかだ。彼は2分を切るラップを44周刻んでいる。その内70%にあたる31周が1分55秒台以内である。それを上回ったのはアンドレア・ドヴィツィオーゾだけだが、それでも数周だけだ。ワークスドゥカティに乗るドヴィツィオーゾが2分を切ったのは28周に過ぎないが、86%は1分56秒を切っている。

ダークホースとしてのドゥカティ

ドヴィツィオーゾはカタールでの優勝を視野に入れ始めている。この2年間は2位フィニッシュ。優勝したのはどちらもヤマハのヴァレンティーノ・ロッシとホルヘ・ロレンソだ。そして彼は再びヤマハライダーの後ろでゴールするはめになるかもしれない。今年前でゴールするのはヴィニャーレスだ。「彼は誰よりも速いですからね。まだ速くなると思ってますよ」と彼はイタリアのメディアに語っている。しかしカタールは彼の得意なサーキットだ。そしてドゥカティもここを得意としている。

これはホルヘ・ロレンソにとってもいい話だ。フィリップアイランドで散々苦労した彼はカタールで速さを取り戻したのだ。デスモセディチの速さと、そして彼が正しい乗り方を見出したおかげで自信を取り戻すことができたのだ。ロレンソはレースシミュレーションを早々に切り上げているが、これは自分が選んだフロントタイヤが間違っていることに気付いたからだ。ソフトのリアにフロントもソフトで合わせたのだがそれが機能しなかったのである。

これもまたマシンに慣れていくための試練の一つである。ヤマハではいつでもフロントにソフトを選んでいたのだ。彼にとってはそれが最高に機能したのである。終盤までコーナリングスピードを稼ぐことができたのだ。しかもブレーキングでタイヤを消耗することもなかった。しかしドゥカティはそういう走りを許容しないのである。ドゥカティに乗るならブレーキングを遅らせて、しかもコーナ-奥まで突っ込む必要があるのだ。そうやってフロントに荷重を掛けるのである。つまりミディアムやハードタイヤの方がうまく機能するのだ。

時間は掛かったがロレンソはその領域にたどり着きつつある。「このバイクは独特なんですよ。パワフルだけど神経質なんです。それに難しいし体力的にもきつい。でも今日はなんとなくセッティングが見えてきましたね。体が楽だし僕も慣れてきたんです。それと体力もマシンについてこられるようになってきた。だから少しずつ乗りやすくなってるんです」

変わらないこと

皮肉なことにロレンソの元チームメイトは去年と同じメーカーにもかかわらず 新型ヤマハに適応するのに苦労していた。土曜は良いタイムを出せたのだがコースコンディションが変化した日曜には前日のセッティングが全く役に立たなかったのである。「マシンのポテンシャルはあると思うんです。ヴィニャーレスはめちゃめちゃ速いですからね」とロッシは言う。「でも彼も彼のスタッフもマシンのポテンシャルを引き出すのが早かったですね。僕らはちょっと遅れをとっている」

様々な問題に直面しているせいでロッシはレースシミュレーションもできなかった。「速さがないのはわかってますけど、上手く乗れないんですよ」と彼は言う。このままだと2週間後のレースではちょっとした奇跡が必要になるだろう。ヤマハYZR-M1は2016年型とは大きく行っており、彼もスタッフもまだ性能を引き出せていないのである。

チャンピオン候補として耳目を集めるライダーがいる一方で、視野から外れてしまったライダーもいる。ダニ・ペドロサは今回のテストで3番手タイムを出している。しかも初日から1.4秒もタイムを縮めている。彼はレースシミュレーション的なことはやっていないがロングランでも1分55秒中盤で走れるところを見せている。ペドロサは見た目より早いのだ。そしてホンダのピットからのレポートでは彼はチームと一緒に見つけたセッティングに喜んでいるとのことだ。

歴史から学ばない者たちへ

「ニッキー・ヘイデン勤勉労働者賞」は日曜のカル・クラッチローに与えよう。LCRホンダの彼は70周を走っているが、これは他のライダーを10%以上上回っているのだ。さらに」彼は16周のレースシミュレーションをこなしているが、そのほとんどで1分55秒台中盤から後半のタイムを出している。さらに詳細に分析してみれば彼のペースの安定感もよくわかるはずだ。2分を切るラップの67%が1分55秒台か、それ以上のタイムなのだ。

クラッチローがこれほどがんばったのはHRCに仕事を与えられていたということもある。名目上はサテライトのライダーで彼の給料はルーチョ・チェッキネロのLCRホンダから出ているとは言えクラッチローにはレプソル・ホンダのためのテストライダーという仕事も課せられているのだ。彼もその役割を喜んで受け入れている。マルク・マルケスとダニ・ペドロサが去年の轍を踏まないための仕事だ。去年はアグレッシブ過ぎるエンジンに苦労したが、これは充分なテストと評価が行われなかったためである。クラッチローはそうならないために仕事をしているのだ。

彼はカウルのテストもマルク・マルケスと同様に行っていた。この新型カウルは今回のテストでホンダが導入したカウルとは違いダウンフォースを稼ぐためのものであはない。ノーズ部分の形状が変わっており、フロントのエアインテークが長くなっているのだ、「このカウルの目的はトップスピードを稼ぐためですね」とマルケスは解説する。過去にはエアボックス内の圧力を高めるためにエアインテークを大きくしたこともあった。今回の形状変更がそれと同じことなのかはこれからわかるだろう。

地獄のロックライダー

印象に残ったサテライトライダーはクラッチローだけではない。アスパー・ドゥカティのアルヴァロ・バウティスタも一発の速さを見せたしレースシミュレーションも良いタイムを出している。GP16はいまだに戦闘力があるのだ。これは日曜テストが終わった時点でのスコット・レディングのタイムを見ても明らかである。しかし弱点があるのも否めない。バウティスタのテストタイムは5番手。ワークスGP17のホルヘ・ロレンソから0.2秒遅れだ。レースシミュレーションでは最初は1分54秒台と速さを見せた、55秒台も連続して出すことができたバウティスタだったが、周回を重ねタイヤが消耗すると共に急激にタイムを落として言った。20周のシミュレーションの最後には1分56秒台後半まで落ち、最後は1分56秒4となっている。去年も同じ問題が起こっていた。ドゥカティGP16はタイヤ消耗が激しいのだ。特にエッジ部分の消耗がひどいのである。バウティスタはレース序盤でトップ集団のライダーの悩みの種になるだろうが、レース後半では自分のタイヤのマネジメントで手一杯になるだろう。

もちろんここまでの話は推測に過ぎない。テストのデータを引っかき回して日曜のデータを6種類もの方法で眺めてみる。しかしこんな分析ではせいぜいざっくりした予想しか導き出せないのだ。真実はレースの決勝で明らかになる。ライダーが真剣勝負に臨む場だ。そしてそれはあと2週間待てばやってくるのだ。
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やってくるね!!

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コメント

開幕はドヴィツィオーゾが勝つと思うんですよね。
楽しみだなぁ

タイトルは多分ビニャーレスが取るんだろうな。
ロッシは1勝もできない気がします。
いたたわで数か月前にこれを書いた時カス扱いされましたけど・・

投稿: bb | 2017/03/15 13:01

以前、ヤマハのエンジニア曰く、
「ロッシはマシンに対して原理原則があり、絶対にブレない」
ロレンソについては
「一生懸命走りこんでタイムを出していく」
と言ってたと思います。
今回、ロッシが伸び悩んでいるのは、まだその点でM1を調教しきれてないのかな?というのと、
ロレンソは、来週のFPからガンガン周回を重ねるのではないかと感じました。
マルケスに関しては、どこまでやったらマシンが破綻するか?限界点はどこか?
そこを探っているような気がしました。
ド素人の勝手な憶測ですけどねw

カルは昨年以上の飛躍を望んでいるだろうし、バウティスタあたりも、かなり行けるような気がします。
そしてイアンノーネもですね。
スズキに移ってクレーバーさを身につけたようなコメントが見受けられます。
ドヴィさんは、ロレンソの存在に密かに燃えている気がするし、ペドロサは順調な仕上がりを出しています。
条件が整うことが彼は韋駄天になりますから、これは重要ですよね。
そして、これらのライダーすべてがマーヴェリックを視野に入れていると思います。
イヤー今年も楽しみです。
長々と失礼しましたw

投稿: motobeatle | 2017/03/15 13:23

キタキタきましたよジョルジョの足音が聞こえますよ
レースはスタートしてみないとわからないもんね~
開幕はドカ1・2だったりしてね~(自由思考万歳)


投稿: りゅ | 2017/03/15 13:32

>bbさん
 ふふふ、ロッシは勝てないかもですが、タイトルはダニですよ、ダニ。

投稿: とみなが | 2017/03/15 23:24

>motobeatleさん
 ヤマハがロッシのためにマシンを作ってないとだめってことかもですね。去年と同じくらい優勝者が割れて、しかもタイトル争いが混沌とすると楽しいし、例えダニが2勝でもチャンピオンになれるかもですよ!

投稿: とみなが | 2017/03/15 23:26

>りゅさん
 個人的にはホルヘvs.ダニが理想かなー。とりあえずカタールではドゥカだとMat Oxley御大も言ってますよ。
http://www.motorsportmagazine.com/opinion/motogp/why-ducati-so-fast-losail

投稿: とみなが | 2017/03/15 23:28

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