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2017年カタールMotoGPテスト土曜メモ:未来を垣間見る

満を持して登場したドゥカティのウイング付きカウルが想像の以上のなりふり構わなさで本気に勝ちに来ているのがよくわかりますね。

ってなわけでMotoMatters.comより土曜日のまとめです。
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ベテランMotoGPジャーナリストのデニス・ノイスが土曜の夜遅くにツイッターで指摘していた通り、日曜にはそれぞれの本当の立ち位置がわかりはじめるだろう。日曜はMotoGPにとってレースシミュレーションをフルに行う最後のチャンスなのだ。冬期テストで得た経験や知識の総まとめなのである。カタールテストの最終日は本番直前の通し稽古というわけだ。

しかし土曜の段階でもそれぞれの手の内が見え始めている。仕事の内容は改造というより調整であり、真の速さが現れ出している。土曜終わりのタイムシートが全てを物語っているわけではないが大まかな構図が見えてきた。2017年のMotoGPのタイトル争いがマーヴェリック・ヴィニャーレスとマルク・マルケスの間で行われることがますます濃厚になっている。そしてお互いに対する意識が高まる一方でヴァレンティーノ・ロッシを筆頭に他のライダーも虎視眈々と舞台袖で攻撃の時を待っている。

ドゥカティが手の内を見せる

土曜のカタールでは大改造というものはほとんど見られなかったが、しかしドゥカティがついに新型空力対策を披露している。とは言え他の4メーカーが出してきた代替品とは違うものだ。カウルの上半分はこれまでとは違い、非常に細いノーズと左右に配置された一組の巨大なダクトから構成されている。ダクトの形状も位置も(下の写真参照)表面積を稼ぐことで強大なダウンフォースを発生するように作られている。

「新型カウルはいい感じですよ、効果もわかるし。良いカウルになるまですごくたいへんだったんです。今年のルールに合わせたカウルで去年と同じくらいのダウンフォースを出すのがね」とテスト後にアンドレア・ドヴィツィオーゾは言っている。「うちのエンジニアが良い仕事をしてくれました」。彼によれば新型カウルの生み出すダウンフォースは「まだ同じとまでは言えないですが、かなり近い」とのことだ。土曜に新型カウルをテストしたのはドヴィツィオーゾだけで、ホルヘ・ロレンソは日曜にテストする予定となっている。

新型カウル抜きでもドゥカティは既に充分速かった。この日ホルヘ・ロレンソがマークした最高速はコース新記録となる351.8km/hだ。ムジェロでアンドレア・イアンノーネが記録した355km/hというとんでもないスピードには及ばないものの、大した記録である。ドゥカティに慣れてきたのかロレンソは明るい表情だ。タイムシートでは8番手だが彼はマルク・マルケスと同様ソフトタイヤを使っていなかったのだ。彼によればタイムは硬いレースタイヤで出したもので、最速ラップもユーズドタイヤで出したものだそうだ。

それこそロレンソが集中して取り組んだことだ。マシンのセッティングを決めてそれを好みの方向にもっていく。そしてブレーキング、特にコーナー進入を改善する。楽な仕事ではないと彼は言う、「でもこの先報われるはずですから」。日曜にはロレンソはソフトタイヤを使うだろうと予想されている。レースシミュレーションを行い、さらに新型カウルも試す。ソフトタイヤをレースで使う可能性もあると彼は言っているが、レースシミュレーションでタイヤが保つことが確認できるのが前提とのことだ。

ヤマハが覇権を握る

ロレンソがカタールを得意としている上に、歴史が物語る通りカタールのレイアウトがドゥカティ向きというものドゥカティ好調の理由だ。しかしトップ3を独占したのはヤマハだった。マーヴェリック・ヴィニャーレスがヴァレンティーノ・ロッシを従えてトップタイムを出し、そして驚くべきことにサテライトチームであるテック3のヨナス・フォルガーが3番手に入ったのだ。

これでヴィニャーレスはマルク・マルケスに並ぶチャンピオン候補の座を確固たるものとした。彼のラップの出し方がそれを証明している。ヴィニャーレスは1分54秒台に3度もいれ、しかもその内1回は去年のホルヘ・ロレンソのポールタイムを上回るものだった。さらに重要なことは1分55秒台を何度も出せたことだ。その数16周。その内12周は1分55秒2から1分55秒7の間に収まっている。これほどまでに安定したタイムで走れたのは他にはマルク・マルケスだけで、彼は1分55秒台を14回出している。しかしそのほとんどは1分55秒8から55秒9といったところだ。その次に安定していたのがヨナス・フォルガーで、1分55秒台が9回、それもマルケスと同等のペースで走っている。

それとは対照的にヴァレンティーノ・ロッシは1分54秒台をチームメイトに並ぶ3回出しているものの、1分55秒台は2回しか出せなかった。とは言え彼のタイムは目くらましである。そもそも彼はヴィニャーレスが49周も走っているのに37周しか走っていないのだ。しかもさらに重要なのは、新しいセッティングを試していたせいでタイムアタックはテスト終盤でしかやっていないのである。

「ヤマハ時代でここまでプレシーズンで苦労したなんて覚えがないですね」と彼はプレスに語っている。フィリップアイランドのテストはチームメイトに差をつけられて終わっている。しかし状況を変えられることを彼のスタッフが疑うことはなく、テストの終わり時間間際に大きくセッティングを変更したおかげでコーナー進入がかなり改善された。そして彼はすぐさまタイムを縮め始め、一発で1分54秒台を叩き出したのだ。

君は空飛ぶフォルガーを目撃したか?

しかし今日の最大の驚きはヨナス・フォルガーだ。モヴィスター・テック3・ヤマハの彼の速さは一発出しではない。それなりのタイムで走り続けることができるのである。自分でも驚くようなペースだったと彼は地元ドイツのメディアに語っている。「僕がこんな順位を出せるなんて誰かに言われたら首を横に振ってたでしょうね」。しかし彼はブレーキングの改善でまだタイムを縮められると考えている。

カタールのテストが始まる前のヘレスで私がテック3のチームオーナー、エルヴェ・ポンシャラルに話を聴いたときのことだ。「ヨナスのおかげで僕が天才に見えますよね」と彼は言った。ポンシャラルは長いことドイツ人のフォルガーを追いかけており、やっと去年契約できたのだ。彼はフォルガーが所属するMoto2チームに声を掛けると、向こうは適切な環境を整えるのが難しいだろうと言ったそうだ。しかしポンシャラルには自信があった。そして今のところ事実がそれを裏付けている。「ヨナスに関してはチームはすごくいい雰囲気ですね」とポンシャラルは言う。「それこそがいちばん大事なことなんです」

アプリリア、おまえもか?

トップ3以外のも多くの驚きがあった。アレイシ・エスパルガロがアプリリアRS-GPをカル・クラッチローに次ぐ5番手まで上げてきたのだ。エスパルガロはそれほど多くのラップを重ねたわけではないが、速くなっているのは間違いない。パワーはまだ不足しているがアプリリアは去年より差を詰めてきている。アレイシ・エスパルガロのライディングスタイルのおかげもあるだろう。アプリリアのブレーキングとコーナー進入が彼の好みなのだ。もう一つのイタリアメーカーが表彰台にのぼるのも叶わぬ夢ではないということだ。

スズキではそれほど事は上手く運んでいなかった。アンドレア・イアンノーネはヴィニャーレスから2秒遅れの12番手に終わっている。彼は自分のライディングスタイルが去年までGSX-RRに乗っていたヴィニャーレスといかに異なっているかを滔々と語っている。ヴィニャーレスのスタイルはコーナーに向けて直立状態でブレーキングし、そこからマシンをリーンさせていくのだとイアンノーネは説明する。自分もそれをやろうとしたが簡単ではなかったのだそうだ。

イアンノーネがこれほど長く語るというのは珍しいことだ。普段の彼であればプレスには簡単にしか話さず、あまり情報を与えてくれない。彼がまだ英語がそれほど得意ではないというのもあるが、別にイタリア語でもそれほど社交的なタイプではないのだ。珍しく詳しい説明を英語でしたせいか、彼はかなり短気モードに入っていたようだ。続けて質問をしようとするジャーナリストを遮ってこう言ったのである。「質問が多すぎるよ!もう今日はしゃべりすぎた」

日曜にはいよいよ本当のことが明らかになる。本当のことがうっすら見えてくるくらいが正しい言い方かもしれない。レースシミュレーションと最後のアタックが見られるだろう。2週間後にやってくる開幕戦に向けてライダーとチームが最後の準備をするのだ。テストはいよいよ終わりを迎える。しかし2017年のMotoGPが相当楽しみなものになりそうなことを教えてくれた。
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美しいから速いんじゃない、速いから美しいんだ!ってのは実は必ずしも真実ではないですが、ドゥカティのダクトのようなバロックなのも実は嫌いじゃないです。

しかしこのツイート、当時は笑い話としてのネタだったんですけどねえ…。




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コメント

や、どこからどう見てもカッコ悪くしか見えないんですが・・・

これが勝ち続けたりしたらカッコ良く見えてくるんでしょうか?
今んとこ考えられないッス

投稿: bb | 2017/03/12 21:34

>bbさん
 修行が進むと一見醜いものの中の美しさが見えてくるのです(たぶん)。
 ほら、誰もがロッシファンではなくて、なんであの人が好きなの?とかいわれたりするライダーのファンがいるのと同じですね。古来から「蓼喰う虫も好きずき」と言いますしw。

投稿: とみなが | 2017/03/12 23:12

ここまでマーヴェリックが安定したタイムを何処でも出すと、逆にレースでトチるんでないかい?などと意地悪な気持ちになったりしましたが、やっぱりクルのでしょう。

ドカのカウルを他メーカーは、どう捉えたんでしょw
さすがに真似はしませんかねw

投稿: motobeatle | 2017/03/13 00:55

うーんさすがドゥカティ苦笑
こうもダイレクトに「空力ってこうじゃん?フェアリングってこうっしょ!」ってな具合にやられるとねぇ・・・
むしろ拍手喝采ブラヴォ!って言ってしまう( ̄ー ̄)ニヤリ
ホルヘもほんと表情が明るいし、楽しめてるなって感じ?
最終日の内容もいいし、前へ前へ進めてる。いいねぇ~

こりゃあ今シーズンも波乱必須!楽しめますよ~

投稿: りゅ | 2017/03/13 07:57

>motobeatleさん
 真似はできないでしょうね…。でもアウディの風洞でやった可能性もあるので、油断はできないです。

投稿: とみなが | 2017/03/15 00:07

>りゅさん
 でもよく見るとダクトの出口はグリップ直撃だったりして、心配になったりならなかったり。もちろん実験済みなんでしょうけど。
 そしてホルヘ!!!

投稿: とみなが | 2017/03/15 00:10

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