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コースサイド…テレメトリーでもテレビでもわからないこと

これだけテレメトリーが発達してもやっぱりプラクティスではコースサイドからスタッフがライダーを観察しています。その理由をPecinoGPより。
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多くの機材を駆使したテレビ中継に加えてMotoGP関連ウェブサイトが溢れかえっているおかげで山ほどの映像やレポートが手に入るようになった。そして現地からの距離が500マイルだろうが1000マイルだろうが10000マイルだろうが、コースにいるのと同じ情報が得られた気になってしまう。しかしそれは間違いだ。同じなわけがないのだ。

現地で実際の場面に立ち会っていなければ見えないことや理解できないことはとてもたくさんある。それだけではない。マシンに搭載された最先端のデータ収集システムでもわからないことはあるのだ。だからこそアドバイザーたちがコースサイドに張りついているのだ。ルカ・カダローラもウィルコ・ツィーレンベルグもダヴィデ・タルドッツィもそうなのだ。MotoGPのように技術が飽和状態に達している世界で人間の観察が何を付け加えることができるのか?最先端のコンピュータプログラムが全てを計測し分析しているのに、たかが人間に何ができるというのだろうか?

とは言え、コースサイドに人をやって何が起こっているか目で見て耳で聞くことが実はこうした最先端技術から最大の情報を得るための重要な要素であるというのが何よりの証拠だ。この事実にエンジニアは頭が上がらないのである。そういう意味でセパンのコースサイドから観察するマシンごとに異なる挙動やライダーのボディランゲージから見て取れることがたくさんある。いくつか例を挙げていこう。

セパンのコースサイドに立っているとホルヘ・ロレンソが新たなマシンに日々進化しているのがよくわかる。初日の惨憺たる結果を受けて彼は立ち止まり何が起きているのかを分析したのだ。ミケーレ・ピッロとケイシー・ストーナーの助けも残り二日間の彼の変容に力を貸しただろう。

2日目、明らかに彼は様々な方法を試し始めていた。マシンの上でいろいろなポジションを試し、コースに出るたびに違う体の動かし方をする。ドゥカティの優位性をどうやって引き出すかを少しずつ試し、そしてデスモセディチへの理解を深めていった。もっとアグレッシブに乗る必要があったのだ。8年間のヤマハ時代に慣れ親しんだ早めのブレーキングと半径の大きいきれいなコーナリングラインという自分のライディングスタイルを根本から直さなければならなかったのである。

それほど難しい話ではない…理論的には。ホルヘはデスモセディチの最大の強みであるエンジンパワーを最大限引き出せばいいのである。どうやって?簡単だ。コーナリングの時間を短くするだけである。ドゥカティのエンジンがMotoGPで一番パワフルかつ速いのであれば、できるだけ長くエンジンに仕事をさせてやればいいだけだ。
コースサイドから見ればロレンソがどのように新しいマシンで自分のライディングスタイルを進化させていったのかが手に取るようにわかる。3日目のコーナー入り口の乗り方は初日とは全く違っていたのだ。しかし以降のコーナー進入、クリッピングを探りながら直立状態から最大アングルまで倒し込んでいく様はまだ自然なものではなかった。ヤマハでは本能的にできたことがドゥカティでは考えながらやらなければいけないのだ。

彼のボディランゲージはマシンについてどう感じているかを雄弁に物語っていた。まだそのやり方はうまくっていないと考えているのがにじみ出ていたのだ。しかし彼がピットを出るごとに進化していったことはわかるだろう。ホルヘは自分の仕事をよくわかっているのだ。

何時間もセパンの灼熱の太陽の下で立ち続けているのは楽しいことではない。しかしそこでしかわからないことがあるのだ。例えば二人のルーキー、ザルコとフォルガーがなぜ調子が良かったのかといったことだ。自信の有無ということではない。もちろん二人とも11月にもヤマハで走っているが、それが彼らの調子の良さの理由ではないのだ。11月の3日間のテストを終えてどのチームもセッティングをする時間が充分あったというのがその理由なのだ。それだけではない。コースサイドで見ていると、どうもヤマハM1にはライダーが合わせやすいという何かがありそうなのだ。

これはヤマハが元々ブレーキングや加速でマシンが暴れないということもあるだろう。前後のホイールが同一軸上に揃っているおかげで、その2か所のマシンの接地点が同じ方向に向けて機能できるのである。おわかり頂けるだろうか?HRC製のRCVを思い起こしてみてほしい。M1とは正反対のマシンだ。

マルク・マルケスがコーナー進入であらぬ方向にリアタイヤを向けているのはお馴染みの光景だ。ブレーキングといった大事な瞬間に「あらぬ方向」に向くというのはつまりRCVの前後タイヤが一直線上にないということである。マルケスとロッシのブレーキングの差を思い浮かべれば私が何を言いたいのかわかってもらえるだろう。

どちらもハードブレーキングを得意とするライダーだ(とは言えクラッチローのブレーキングが最もハードだろう)。しかしマルケスのブレーキングではリアホイールが左右に蛇行しているのに対してロッシのブレーキングではマシンはフロントホイールの方向にきっちり向いている。つまりマシンの接地点が同じい方向を向いているということだ。ザルコやフォルガーのような経験の浅いライダーでもマシンを制御しやすいのはそういうことなのである。

他にもコースサイドからわかる細かいことがある。こんどは音の話だ。加速でのエンジン特性の違いである。ホンダとスズキの違いはスロットルの開け始めに現れている。トラクションがかかるその瞬間だ。

アンドレア・イアンノーネのGSX-RRが全閉から20%ほどまでスロットルを開けたところを例に挙げてみよう。トラクションコントロールやウイリーコントロールが介入してパワーをカットするほどではない状態のところだ。これがホンダだと5%くらいの範囲しかないのである。どういうことか?スズキならちょっと開けすぎたくらいでも何も起こらないのだが、ホンダでこれをやるとすぐに加速が鈍ったりトラクションコントロールが介入し始めるのである。

こうしたことはコースサイドにいるからこそわかることだ。違うマシンが同じ場所を通り過ぎる音を繰り返して聴く。冒頭で述べたとおり、テレメトリーでもテレビ映像でもわからないことだ。そして同じことが他の場面でも起こっているのだ。それについて語ることにしよう。

ホンダとスズキのエンジンの比較の話をしたが、この特性の違いはマシンを自分で積極的に動かしていくのか、それともマシンの挙動に対して自分が反応していくかの違いに現れてくる。セパンではマルクのホンダは明らかにマシンの挙動に反応しなければならないタイプだった。マシンの挙動を常に修正し続けていかねばならないのだ。こういうマシンはライダーを疲労させる。肉体的にも精神的にもだ。そしてその結果としてアグレッシブなライダーに合うマシンとなるのだ。
ライダーが積極的に動かしていくタイプのマシンは当然ライダーが主導権を握ることになる。こうしたマシンならライダーのタイミングでマシンを好きなように動かすことができる。スズキもそうだがヤマハのM1こそがその代表である。マシンの挙動がつかみやすく限界で走らせることができ、ライダーの意のままに制御できる。マシンに合わせなければならないとなるとマルク・マルケスのような技術と決断力か、カル・クラッチローのような勇気が不可欠となるのだ。
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みんなサーキットに行こう!!

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コメント

イヤーこういう記事は凄く好きです。
確かに現場を生で見なければ分からない言ってありますよね。
ホルヘにしても中継映像だけでは、そこまで分かりませんもん。
市販車でも「ハンドリングのヤマハ」の言葉は有名ですからね。
誰であっても突つき易いのでしょう。
そういや、ドカはヤマハやスズキの様な対策用ウイングを出してきませんでしたね。
カタールで御披露目という形でしょうか。
今月号の二輪紙多くにRCVの特殊が組まれてますが、マルク車とダニ車では、やはり随分違いが見られました。
でも今回の記事と合わせるに、マルケススペシャルな車体になっているのかなぁ?と感じた次第です。
はてさて開幕戦がどうなるか?
本当に楽しみです!

投稿: motobeatle | 2017/02/18 23:27

オーストラリアテスト初日、絶望的なホルヘの順位を目の当たりにして、やっぱり乗りこなすにはまだまだ時間がかかるのか…、と悲嘆に暮れてましたが、この記事を読み、ホルヘの苦悩と努力と飽くなき挑戦が3日目の順位に結びついたんだ!と知り、感動しきりでした。
マルケスもビニャーレスも速く、強敵になることは間違いありませんが、できるなら開幕戦でホルヘの優勝する姿が見たい。頑張れ、ホルヘ!!(>△<)/

投稿: たけちよ | 2017/02/20 13:46

>motobeatleさん
 私も現地好きですが、どっちかって言うとライダーの観察より外での買い食いが楽しくってw。

投稿: とみなが | 2017/02/20 18:54

>たけちよさん
 もう少し!もう少しですよ!!

投稿: とみなが | 2017/02/20 18:54

ほんと、この通りですね!
サーキットが山奥だと(もてぎとか…)、いつも出発するときは行くのが面倒だなぁと憂鬱なのですが、
現地でライディングを間近で見たり、エギゾーストの迫力を体感すると、やっぱり来てよかった!と思います。
今はもうないですが、2st の排ガスの匂いが好きですw

投稿: nom | 2017/02/20 19:32

>nomさん
 私も2stのにおいが大好きです!!今でも自転車通勤中にちょっと前のスクーターに追い越されるとクンカクンカしてしまいますね。

投稿: とみなが | 2017/02/20 22:45

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