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重力の法則は破る。ママの言いつけは守る。

米国ではあんまりGPの人気は無いんですが、珍しくニューヨークタイムズがマルク・マルケスを記事にしてます。面白いので訳出。NYT2/7版より。
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スペイン、セルヴェラ発

マルク・マルケスはあるトラブルから逃れようともがいている。ただしこのトラブルはいつもとは違うものだ。

恐らく世界最高のライダーである彼はいつもはバイクで重力の法則と戦っている。しかし今回彼が挑戦するのは違う戦いだ。弟のアレックスと一緒に水泳でワークアウトし家に帰ってきた彼はママのルールに従わなければならないのである。

「濡れたタオルをバッグに入れっぱなしにするなんて許しませんよ」。息子たちが自分の命令に従ってヒーターにタオルを掛けたのを見届けたロゼール・アレンタは解説した。「あの子たちは世界チャンピオンでしょうけど、私の息子ですからね。うちでは私のルールに従ってもらいます」

マルケス兄弟のように世界チャンピオンになれば、普通はモナコやスイスといった贅沢のできる避難所に引っ越すものだ。しかしマルケス兄弟は相変わらず両親の目の届く場所、すなわち両親が今23歳のマルクが生まれる直前に手に入れたテラス付きの家にとどまっているのである。

つまり、マルケスが世界中を駆け巡ってファンの前でレースをし、ざっと1100万ドル(12億円)を稼いだ後、シーズンオフの間は昔のままの2段ベッドで子供の頃に集めたミニカーに囲まれて眠るということなのである。私たちが1月に彼を訪ねたときには彼の部屋の一角に未使用の服が山と積まれていた。スポンサーから送られてきたものの余りものだ。すぐに親戚の子供たちがこれに目をつけることになるのだろう。

「他のライダーが冬はモルジブとかで過ごしたいってのもわかりますよ。でも僕はここで育ったんだし、今でもここにいたいんです」とマルケスは語る。「もちろん昔と同じってわけじゃないですよ。でも僕の回りの人たち、家族や友達やマネジャーは全く変わってないんです。それにここなら一番の親友である弟とトレーニングができますからね」

マルケスの家族が住む家には兄弟が子供の頃に獲得したトロフィーでいっぱいの部屋がある(バイクや、もっと重要なトロフィーはこの小さな町の博物館だ)。マルクの寝室にはFCバルセロナのディフェンダー、ジェラール・ピケのサッカーシューズ、F1ドライバーのフェルナンド・アロンソのヘルメットといった他のスポーツのチャンピオンからもらった大事なものが飾られている。自分がいかに早くいかに大きな記録を打ち立てたかを思い出させるようなものではないのだ。

2013年には最高峰クラスであるMotoGPに参戦し、そしてタイトル獲得の新記録となる20歳でチャンピオンとなっている。30年前にアメリカ人ライダー、フレディ・スペンサーが打ち立てた記録を破ったのである。

「自分が次の瞬間にどうすべきかを察知するマルクの能力は誰にも真似ができないんですよ」とスペンサーは電話インタビューに答えてこう言っている。「もし自分の記録が破られるなら、誰かそのスポーツのレベルを変えてしまうような人に破ってほしいですよね。彼を負かすにはさらに一生懸命やらないといけないって誰の目にも明らかになるような、そういう相手ですね」

マルケスは2014年に再度チャンピオンになっているが、このときは弟のアレックスもMoto3クラスでタイトルを獲得している。世界GPの歴史において初めての兄弟チャンピオンだ。マルクは去年3度目のMotoGPタイトルを獲得し、勝利数も5つ積み上げた。これで通算29勝。既に歴代トップ10に名を連ねている。リンク先PDF)

世界GPはヨーロッパでは大人気だ。サーキットによっては週末のプラクティスから予選、レースで20万人を集める場所もある。そしてマルケスはレース中の最高速も記録している。時速350km、すなわち時速217マイルだ。

これまでに挙げた成績と同じくらいマルケスの乗りこなし方も革命的だ。あらゆるコーナーで大きくバンクするせいで膝だけではなく肘まで地面に接している。これでマシンを安定させているのだ。

GPを走り始めた頃、体格に恵まれた他のライダーに対抗するために彼は独自のライディングスタイルを生み出して自分の体には大きすぎるマシンをコントロールしていた。そう語るのは父のフリアだ。「マルクが大人の体格になったのは18か19歳になってからなんです」と身長170cm、体重64kgの息子について教えてくれた。

世界参戦を始めたのは15歳のときだ。マルケスはまだ小さく、レギュレーションに合わせるためにマシンにはかなりのおもりが積まれることになった。そんなわけで彼は自分のエンブレムに蟻を選んだのである。蟻が自分の重さの数倍のものを持ち上げられるのにちなんでのことだ。

しかしマルケスは最初からプロとしての能力に恵まれていた。カタルニアのジュニアモトクロスチャンピオンとして滑りやすい泥の上で磨き抜いてきた反射神経である。

「モトクロスはアドリブが求められるんです。予想もできない穴ぼこや轍に反応しなきゃならない。平らな路面しか走ってない連中には学ぶこともできないことですよ」。元世界チャンピオンのスペイン人で、12歳の時からマルケスの天才を見出したエミリオ・アルサモラはそう語る。以来彼はマルケスのマネジャーだ。

3月には4回目のMotoGPタイトルを目指した戦いが始まる。現在バイクレースを支配するのはスペインの無敵艦隊だ。全18戦の内4戦がスペインで開催され、そしてシリーズの商業権を持つのはスペイン企業のドルナなのだ。

2013年にマルケスがレプソル・ホンダチームで走るために、MotoGP参戦初年度はワークスチームで走れないというルールを取り下げたのもドルナである(レプソルもスペインの石油会社だ)。しかし彼がスペインのレース界と関係を持ったのはそのずっと前からである。

幼い頃はボランティアで週末のモトクロスレースを主催していた父と叔父に連れられてレースに参加していたマルケスが自分のバイクを欲しがったのは4歳のときのことだ。両親は彼に中古の白と赤紫に塗り分けられたバイクを与えたが、最初の頃は転ばないように補助輪がついていた。

「マルクはスポンジのように何でも吸収していきました。あの年の子供でそれほどのことができた子はいませんでしたね」と叔父のラモン・マルケスは語る。本当はオフロードが好きだったマルケスは、それでもカタルニア政府が初めて乗る子供たちのために装備を買い与えるというシリーズを始めると渋々ながらもオンロードに転向していった。

建設機械のオペレータの父親と秘書の母親の給料で二人の子供のレース資金をまかなうのに苦労していた彼らにとっては願ってもない話だったのだ。マルクが成長し始めると両親は最初に手に入れたツナギに革のはぎれを足して対応していた。新しいものは買えなかったのだ。そしてそのツナギは3歳下で兄より3インチ背の高い弟のアレックスに受け継がれていった。

「子供たちにブーツを買ってあげるために外食をあきらめたこともあるんです」と母は語る。「皆さん、今のマルクとアレックスしか知らないでしょうけど、ここまで来るまでにみんないろんなことを我慢してきたんです」

実際、両親共に先般のスペインの経済危機のあおりで仕事を失っている。以来父のフリアは息子について世界を回っている。そのせいで彼は、息子のレースを人生を通じて見続けたおかげで培った危険を冒して勝利を目指すというレースに付きものの決断を重んじる気持ちと、父親としての心配な気持ちの間で揺れ動くこととなっているのだ。

「マルクがとんでもなくアグレッシブに走っているのを見て、本当にそこまでしなきゃならないのかって問い詰めることもあるんです」とフリアは言う。「マルクの答えはいつでも同じです。そこまでやらないと限界がわからないんだって言うんですよ」

そのアプローチのせいでマルケスは何回かの骨折を経験している。しかし今日まで大けがを免れてもいるのだ。最も長戦線から離脱したのは5か月間。2011年のマレーシアで頭部を打って目の手術をしたときのことだ。

マルケスの成功と独特なライディングスタイルのせいで頭にきている先輩ライダーたちもいる(リンク先youtube)。特に9回もタイトルを獲得しているイタリア人ヴァレンティーノ・ロッシはそうだ。

「僕がMotoGPに参戦してからずっといろいろ非難されてますね。アグレッシブ過ぎるとかリスクを冒しすぎるとか。でも今ではみんな僕と同じように走ってますから」とマルケスは言う。

バイクレースは危険なコンタクトスポーツだと彼は主張する。つまりテニスプレイヤー同士のライバル心とは違うということだ。「もし速さだけの問題で接触がないなら、きっとみんな友達になれてますよ」と彼は言った。

マルケスはどこまでいけるだろうか?2014年に彼のチームのディレクターであるリヴィオ・スッポは、最終的にはロッシの9回のタイトルを超えるだろうと言っている。今回のインタビューでも彼はそれを否定するようなことは言っていない。

そしてセルヴェラを去るという予定はないのと同じように、2012年、27歳で突然引退してマルケスにホンダのワークスの座を譲ったオーストラリア人チャンピオン、ケイシー・ストーナーと同じことをするつもりもないようだ。

「もし僕からバイクをとったら、僕の人生の半分を取り去るようなものですから」
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そっかー、そのマルクの二段ベッドの部屋にロッシのポスターがあったんだねー。そう思うとおととしのいざこざも味わい深いですね。

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コメント

マルクは家族との絆が強いんでしょうね。
良いことだと思います。
GPキャリア4年で3回のチャンプ!
そんな彼も意図したもので、あれ外的要因であれ、いずれは新たな転機が訪れるのではないでしょうか。
個人的にはホンダ以外のマシンを駆るマルケスの姿も見てみたいなとは思います。
今年もチャンプ獲ったら、そうしてくれないかなぁw

投稿: motobeatle | 2017/02/09 17:03

>motobeatleさん
 KTM?アプリリア?百歩譲ってスズキでも可!!

投稿: とみなが | 2017/02/09 21:37

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