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もっと前へ:MotoGPトップエンジニアに技術関連の質問をしてみた

他のサイトとはひと味違うネタいつもが楽しみなPecinoGPより、各社のトップエンジニアとのQ&Aを。レギュレーションに対する考え方がメーカーを問わずエンジニア魂です。
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シーズンが終わる度ににMotoGPマシンを作るメーカーのレース部門のエンジニアは毎年厳しくなる技術制限に対抗しながらさらなる開発を行いマシンを進化させようと苦闘している。今回、各社の技術部門トップに対してMotoGPどちらの方向に進むべきか5つの質問を投げかけてみた。MotoGPプロジェクトの責任者の地位に就いている才能あるエンジニア、ヤマハの辻幸一、ホンダの桑田哲宏、ドゥカティのジジ・ダリーニャ、スズキの河内健、アプリリアのロマーノ・アルベシアーノ、KTMのセバスチャン・リッセの5人だ。

質問1:ウイング禁止規定ができた今、空力開発はどういった方向に進むのでしょうか?

辻幸一(Y):開発部門はまだ空力でなんとかできないか開発を続けています。方向性が見えたらそれを伸ばしていくことになりますね。去年ウイングが登場した時と同じことが起こっているわけです。いま取り組んでいる開発の方向性はシンプルです。後方乱気流を減らして操縦性を良くすることですね。

桑田哲宏(H):いわゆるダウンフォースがうちのマシンのパフォーマンスにも影響が出ますね。みんなどうやったら失われてしまった空力効果を復活させるかについて考えているところです。ウイングがだめってなると厳しいですけど、私たちエンジニアはその解決策を探るのが仕事ですから。いつでも何かしら挑戦したいですし、今回のはかなりの大きなハードルですね。

ジジ・ダリーニャ(D):ウイングがないときついですね。うちにとっては同じ空力効果を得ることはもう不可能です。ウイング付きと同じバランスを取り戻そうとしていますけど、今のところ安定性が失われたのは間違いないです。なんとか上手いやり方をみつけようとしているところです。今シーズンは2016年型カウルからウイングをはずしたもので始めることになるでしょうね。セパンからテストしてるやつです。

河内健(S):ウイングがどれほどの空力効果をもたらしてくれてたかは誰もがわかっているところですし、今は失われたダウンフォースをとりもどす方法を創り出そうとしているところです。ウイングがもたらしてくれたものを再び取り戻すのが難しいのは間違いないです。でもレギュレーションの範囲で最高の性能を出していかなきゃならないんです。マシンの運動性と操縦性についてはウイングがなくてもスズキのマシンの挙動にはほとんど影響しないですね。

ロマーノ・アルベシアーノ(A):ウイングについてはいろいろ言われてますよね。少なくとも安定性が稼げたことは誰も否定できないはずです。うちとしては使い続けたかったんですが。でもウイングの効果が強調されすぎてたってのもあると思いますよ。実際アレイシがヴァレンシアでウイング無しのうちのマシンをテストしたときもすぐに良いタイムが出せましたからね。ダウンフォースを得られるカウルデザインを検討しているメーカーもありますけど、その優先順位を高くしていないメーカーもありますし…。

セバスチャン・リッセ(K):うちはウイングは使ってませんから。研究は始めたんですけどすぐに禁止されちゃったんで、それ以上何もやってないんです。ダウンフォースがなくなってライバル社が何を開発してくるかは興味がありますね。みんな何か考えはあるようですし、でもサーキットによってどんな風に空力の効果の現れるかわからないのに新しい空力パーツを導入してタイトルを争いをしようなんてとこがあるんですかね?すこしずつ変えていくって今年はできなくて、一回しかシーズン中に変更できないんですよ。失敗のリスクは誰も犯したくないでしょ?


質問2:エンジンパワーについては何を優先して開発をしているのでしょうか?

辻幸一(Y):パワーというのは永遠の課題ですね。でも使いこなせなければ意味はありませんし、だからうちはマシンをうまく走らせるための最適な特性を探っているんです。うちにとってエンジンはシャーシの構成要素のひとつなんです。

桑田哲宏(H):わかったところで楽になるわけではないですけど、エンジン開発って結果が数字ででるのでわかりやすいですよね。うちはできる限りのパワーを出そうとしているのは間違いないです。エンジンがパワフルなら加速は良くなりますしストレートでも速くなる。サーキットでラップタイムを出す一番良い方法のひとつなんですよ。もちろんパワーは使いこなせなければならないし、だからこそ電子制御でコントロールしてるわけです。あとパワーにシャーシが負けるようではだめですね。そのバランスをとれるように開発を進めているところです。

ジジ・ダリーニャ(D):エンジン開発が止まることはないですね。私たちの目標は、強みであるパワーを維持しながら使い易くしていくことです。

河内健(S):去年からは低回転からのリカバリーがうまくいくようになってきました。うちのエンジンは使いこなせるし、使い易いんで、その特性は維持したいですね。同時に中高速でのパワーも改善したいと考えています。これはバランスの問題で、低回転のパワーを挙げすぎるとスライドが激しくなるし、トラクションコントロールにも負荷をかけることになる。それは避けたいんです。低回転域から中回転域のパワーの繋がりがすごく大事なんですよ。

ロマーノ・アルベシアーノ(A):うちのを良いエンジンにするにはトルクカーブの改善が必要ですね。どんな場合でも他のライダーと競っているときにはパワーが決め手だってのはわかってます。ストレートで速ければ速いほどいいんですよ。

セバスチャン・リッセ(K):パワーは出てるんですよ。使いやすさという意味では去年うちのマシンにのってくれたライダーたちからいろいろフィードバックをもらってます。今年のうちのライダーはどちらもMotoGPではヤマハしか乗ってないんですよね。M1はパワーカーブがいいって言われていて、使いやすいらしい。二人にはV4の特性になれてもらわないといけません。こちらとしては開発を続けるだけです。11月にポルとブラッドリーがスロットルとトルクカーブについて初めてフィードバックをくれたときからかなりのことをやってきました。そこそこ悪くはないマシンになってきてると思いますけどね…。


質問3:去年から統一電子制御ソフトウェアが義務づけられました。ソフトはどこれくらい使いこなしていて、開発についてはどんなところまで進んでいるのでしょうか?

辻幸一(Y):パフォーマンスの観点からはこれ以上はそれほど伸びないと考えています。一方で安全に関してはもっとやれることがあるはずです。

桑田哲宏(H):まだ100%じゃないですね。とは言え90%くらいまでは使えているんで、これからもうまく使えるように努力は続けますよ。

ジジ・ダリーニャ(D):これ以上は性能を引き出せないですね。もうみんな同じレベルまできてると思いますよ。

河内健(S):これは終わりがないですね。今のところうちは70%か80%ってところでしょうか。つまりあと20%は改良の余地があるってことですね。

ロマーノ・アルベシアーノ(A):私に言わせればまだ進歩の余地がありますね。ソフトのあらゆる可能性を引き出せるところまではわかっていないんです。考慮しなければならないパラメータが何千もある。私の考えでは全部を理解するには5年くらいはかかりますね。

セバスチャン・リッセ(K):このソフトは巨大な工具箱みたいなものなんです。自分たちなら入れなかった工具もあるし、全然使えない工具もある。逆に足りない工具もある。でもみんな同じものを使っている。だから使えるパラメータを最適化して正しい手順で間違いなくセットするところからですね。統一ソフトとは言え、すごく複雑なんです。ことによったら各社が自分のところのソフトを使うよりめんどくさいかもしれない。まあベストを尽くすのがベストということですから。


質問4:シャーシについてですが、ブリヂストンからミシュランへの移行には対応できたんですか?バランスという意味ですが。

辻幸一(Y):バイクをタイヤに合わせていくための開発には終わりはないんです。目材しているのは異なるサーキットに合わせてタイヤを使いこなしながらパフォーマンスを最適化することですからね。

桑田哲宏(H):タイヤに散々苦労させられましたね。どのメーカーもタイヤメーカーが変わったことにはある程度対応できてると思います。うちもライダーからタイヤに関してマシンの挙動について文句は言われてませんし。

ジジ・ダリーニャ(D):私たちはあらゆる分野で前に進もうとしています。ウイングは禁止されたんでマシンの安定性を確保するために何らかの策をみつけなければならないですけど、今の状況には満足していますよ。

河内健(S):タイヤメーカーの変更はうちにはほとんど影響していませんね。MotoGPに復帰してからずっとコーナリングスピードについてはいいパフォーマンスを出せてましたし。でもコーナー出口には少し問題を抱えていますね。そこも改良は進んでいますけど、まあタイヤの変更とは関係ないんです。

ロマーノ・アルベシアーノ(A):前に使っていた基本セッティングとあんまり違わないところで良いバランスを見つけられてますね。タイヤの変更って、結局のところマシンのセッティングの問題じゃなくてライダーのフィーリングの問題なんです。

セバスチャン・リッセ(K):ずっとミシュランとやってきてるんです。だからうちにとっては新しいメーカーに対応するって話じゃないんです。うちのマシンはミシュランで開発してきましたから。去年もミシュランと密接にやりとりしながらマシンの方向性や開発で何をやるべきかを決めてきました。必ずしもGPで使われるとは限らないタイヤでテストをするのは楽なことばかりではなかったですね。でも最終的に今の状況には満足しています。


質問4:技術的な面での規制がどんどん厳しくなっていますが、それでも他メーカーとの違いを出せるんでしょうか?エンジニアとしてどうお考えですか?

辻幸一(Y):こうした技術的規制があってもやれることはたくさんありますよ。それどころか規制ってのは発明の母だと言ってもいいくらいです。いずれにせよ現在のレギュレーションには満足していますよ。

桑田哲宏(H):制限ってのはエンジニアにとってはいつでも挑戦の対象なんです。課せられた制限に対してどんな解決策を出していくかは私たちにかかっているんです。すごくおもしろい頭の体操ですね。もちろん先に進むにはもっと自由が合った方がいいですけど、コストのことも考えて現実的にならなければいけません。こういう規制があるから新たなメーカーが参戦してくるってのもありますしね。それも良い面の一つです。

ジジ・ダリーニャ(D):まだ開発する余地は残されてますよ。規制は厳しいですけど想像力や創造性は今でもこのスポーツでは大事なものなんです。とは言え新技術をどんどん規制していくようにならないといいですね。今の空力付加物の禁止とかですね。でもレースをやるのに過大な運営費用をかけずに開発ができるのはいいことですよ。

河内健(S):エンジニアとしてはレギュレーションは見直してほしいですね。特にシーズン中の開発凍結についてですね。予算を抑えることができるって言われてますけど、開幕したら開発できなくなったとしてもエンジニアの仕事が楽になるわけじゃないんです。それでもシーズン終わりに向けて準備をしなければならないし、それは簡単なことじゃないんです。あとテストの日数も増やしてほしいですね。トップ集団に追いつきたいしABSのテストもしたいし…(訳注:ABSってなんでしょう?アンチロックブレーキは禁止されてますよね?)。でもこれはエンジニアとしての気持ちでチームマネジャーとしての考えじゃないですよ。

ロマーノ・アルベシアーノ(A):空力付加物の話がそれですよね。エンジニアというのは新技術による解決策が規制されてしまうのが気にくわないものなんです。それでも規制ってのはコスト抑制と新技術開発の自由の間のどこかで妥協しなければならない。私は今の方針は悪くはないと思いますよ。規制はあっても革新的な何かを作る余地はあるんです。

セバスチャン・リッセ(K):今でもかなりの自由はあるんです。結局仕事の内容は変わってないんですよ。ルールを良く勉強してどこまでやれるかきちんと確認する。規制がエンジニアの創造性を奪うとは思わないですね。レギュレーションってのは単なる制約であって、それ以上のものじゃないんです。
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ヤマハの辻さんの「エンジンはシャーシの構成要素のひとつ」ってヤマハ的でおもしろいですね。そしてエンジニアの皆さんが「規制があればそれだけ燃える」ってなってるのもかっこいい。

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コメント

エンジンに関して辻さんと桑田さんとで、言うことが明確に違いますね。
そして、それこそがHONDAとYAMAHA 両社のフィロソフィーの違いそのものかなと

そしてミシュランに変更になった件もおもしろい。
ヤマハ 開発には終わりはない
ホンダ 散々苦労させられた
アプリリア マシンのセッティングの問題じゃなくてライダーのフィーリングの問題、、、(爆)

投稿: motobeatle | 2017/02/27 23:07

>motobeatleさん
 昨日4輪の方のビートに乗る機会があったんですが(ホンダ4輪は初)、ほんとにエンジンが気持ちいいんで、おそらく2輪もそういう方向なんでしょうね。そういえばCS90もNSR125Fも、そして始めて買ったバイクであるビートもシャーシの印象は薄くてエンジンが気持ちいいって感じでした。

投稿: とみなが | 2017/03/05 18:09

>とみながさん
僕は2stでしたが昔88年型NSR250Rに乗ってました。
低回転から高回転まで全域で本当にパワフルなエンジンで関心しきりでした。
さほどメンテもしてないのに、どこも不具合は出ず、そのままシャーシーダイナモに掛けたら後輪出力で68馬力出てました。
まさにpowered by HONDA でした。

投稿: motobeatle | 2017/03/06 17:54

>motobeatleさん
 をー88!!後輪で68ってクランクで75位出てたってことですかwww。ちょっと乗ってみたかったマシンのひとつですね。

投稿: とみなが | 2017/03/11 16:19

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