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クラッチローにさらなる銀器コレクション

先日、バイクがらみでは英国最高の賞を授与されたクラッチローですが、来年の契約間近なんだそうで。Mat Oxley氏の記事をMotor Sport Magazineより。
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MotoGPのプレシーズンテストを来週に控えた今、大変身を遂げたカル・クラッチローほどセパンのピットから走り出すのを楽しみにしているライダーはいないだろう。

去年初優勝を遂げたのはクラッチローだけではない。しかしマーヴェリック・ヴィニャーレス、アンドレア・イアンノーネ、ジャック・ミラー以上に彼は初優勝の影響を受けている。

自分ではそう思っていなかったかもしれないがヴィニャーレスの勝利は誰もが予想していたことだ。イアンノーネについては我々が予想していなかったとしても彼自身が勝利を予感していた。ミラーについては彼自身も我々も2016年と同じような活躍ができるかどうかは確信を持ってはいない。

ブルノとフィリップアイランドまではクラッチローはMotoGP界の等外馬だった。最高峰クラスで97レースを走って表彰台はそれまでの2年間でわずか3回。能力のピークは過ぎているように見えたし、結局「もうちょっとで成功できた」口の悪い男に終わってしまうところだった。

今の彼はそうではない。クラッチロー自身は常に自分がMotoGPで勝てると考えていたかもしれないが、その正しさは今になって初めて証明されたのである。そしてそのことが彼の心理状態に大きな違いを及ぼすことになった。

だからといって彼が再び勝てるというわけではない。世界最高のライダーを打ち倒すのに必要な心理状態というのは簡単に失われてしまうのだ。レーサーなら誰でもこうした心理状態を日曜ごとに持ち続けたいと考えている。しかしそう簡単にはみつけられるものではないのだ。毎週そうした気持ちになれるライダーもいれば、ある週にはできても別の週にはできないというライダーもいる。この心理状態は「ゾーン」と呼ばれているもので、レースに置いてはエンジンやタイヤやその他のなによりも重要なものなのである。

クラッチローは昨日はロンドンにいた。彼の体からは世界最速のバイクレーサーを倒すことができるという自身がにじみ出ていた。つまり彼はこれまでとは違うということである。しかし彼は相変わらず彼である。いたずら好きで、周囲の喧噪に邪魔されることなく集中力を維持できる男で、そして獲物を仕留める野獣の目を持っている。ありがたいことだ。

これからマレーシアに飛ぼうというときに彼がロンドンにやってきたのはバッキンガム宮殿ほど近いペルメル通りにあるエドワード朝時代の素晴らしい建物にある王立自動車クラブ(RAC)の最高賞であるトレンス賞を受賞するためだ。

バイクレーサーがこうした貴族的な場所で賞を受けるのは珍しいことである。たいていのバイク関係の賞の授賞式は国立展示場のバーといったもっと下世話な場所で行われるからだ。クラッチローはこれまでのトレンス賞の受賞者と同様、大英帝国絶頂期の偉容に気圧されているようだった。

「賞がほしくてレースをしたことはないですよ。大好きだから走ってるだけなんです。でもこれほどのクラブに表彰してもらえるってのは名誉なことですね」と彼は語る。「歴史の重みがあるし、自分がこれまで努力し続けてきたことで賞がもらえるのは本当に嬉しいです。こういうところにくると4輪は違う世界だってよくわかるけど、MotoGPも大きくなってきてるし、バイクレースがこういう風に認められるってのは凄いことですよね」

王立自動車クラブのメンバーの多くがMotoGPの大ファンで、フォーミュラ1よりMotoGPを見る方が楽しいと公言してはばからないということは言及しておくべきだろう。モータースポーツ界の有力者たちがこんな風に考えているというのは間違いなく大きな影響があるはずだ。

このクラブ(RACレスキューサービスとは無関係だ)はトレンス賞の復活以来バイク界との関係再構築に努力してきた。何十年も前、クラブはバイクレースの最初期の発展に貢献しているのだ。1905年にはマン島でレースを開催している。そしてこれが今のTTレースになるのだ。TTは継続して開催されているモータースポーツイベントとしては最も古いものとなる。同じころクラブは自動車の最高速度を時速23kmに制限していた1896年蒸気自動車法(the 1896 Locomotives on Highways Act)の廃止に向けて闘っていた。

至る所に歴史を感じることができる。金と銀で作られたメルクリウスをかたどったトロフィーもそうだ。これは世界的に知られているTTのトロフィーの原型で、バイクレースを愛する親英派のフランス人貴族が創ったものである。

トレンス賞の巨大なトロフィーは1920年代から50年代にかけてモーターサイクル誌の編集長だったアーサー・ボーンを記念して作られたもので、前年度にめざましい活躍をして最高の成績を収めた英国人ライダーに毎年与えられている。

受賞者は委員会が決定する。まさか私がその一員になることはないだろうと思っていたのだが、実は私も委員である。会議への出席にはスーツの着用が義務づけられている。なんといっても王立自動車クラブは頑なに伝統を重んじるところなのだ。2年ほど前のことだ。私は適切な服装でなかったというミスを犯したために壮麗な建物から出るときには出入り商人用出口から帰らなければならなかった。クラッチローも月曜夜にクラブに泊まった際には同じようなドレスコードの問題にぶちあたることになった。ポロシャツでは朝食にふさわしくなかったのである。

通常であればトレンス賞の受賞者を決定するための議論にはそれなりの時間がかかるものだ。去年は奇跡の男イアン・ハッチンソンとMoto3チャンピオンのダニー・ケントのどちらがふさわしいかについて何時間も議論がかわされ、最終的にハッチンソンが受賞することとなった。

今年の受賞者を決めるのは遥かに簡単だった。候補者はクラッチローの他、TTのヒーロー、マイケル・ダンロップ、2度目のワールドスーパーバイクタイトルを獲得したジョナサン・レイ。もちろんだれもが受賞にふさわしい成績を挙げている。しかし受賞者は全会一致で瞬く間に決まったのだ。こんなことは初めてである。おかげでこれまでになく早くバーに駆け込むことができた。ありがとうカル!

もちろん2年間で2回のWSBKタイトルを獲得するのも、同じ週の内に2回もTTスーパーバイクで勝つのも楽なことではない。しかしヴァレンティーノ・ロッシ、マルク・マルケス、ホルヘ・ロレンソといったライダーたちを一度ならず二度までも打ち負かすことほど難しいことはない。それがクラッチローの受賞理由だ。

この二つの優勝はその後のクラッチローの人生とレースキャリアを変えてしまい、そして今でも変え続けているほど重要なものだった。トレンス賞の授賞式で彼は2018年の契約も間近であることを明かしている。「今新しい契約について話し合っていて、いい感じで進んでいるんですよ」とも彼は言っている。

その一方、LCRホンダのチームオーナーであるルーチョ・チェッキネロ(元125ccクラスの優勝経験者でことによったらMotoGPでいちばん人柄のいいチームオーナー)はロンドンでスポンサーと会合をもっていたのである。そして今頃はロンドンから日本に飛んでいる最中だ。セパンに行く前にHRCとのミーティングを行う予定となっているのだ。

2016年以上の結果を遺すためにクラッチローはこれまで以上に頑張らなければならないだろう。しかし再びトップに立つために必要な全てを手にしているように見える。今年も、そして来年以降にわたってもだ。
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王立自動車クラブの格調の高さはクラブのサイトからもうかがえますね。そりゃネクタイ必須だわ。

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コメント

カルの真価は、むしろ今年かもしれません。
昨年のような好調を維持し、また勝つことができるか?
ウィリアムズに入り突如覚醒したナイジェルマンセルのように。
それまでの長く暗いトンネルを抜け出し、別人の如くトラックを走るのか?
期待が彼に集まっていると思います。
特に英国人にとっては相当なものでしょう。

投稿: motobeatle | 2017/01/29 11:44

>motobeatleさん
 なんかカルが覚醒したらたいへんなことになりそうですね!バリー・シーン以来の英国人最高峰クラスチャンピオンになるとかっこいいなあ。

投稿: とみなが | 2017/01/29 18:59

茂木のパドックでみかけたカルはラフないでたちで、トップライダーのピリピリした雰囲気とは違い、気軽に微笑み返してくれました。

娘は、トップライダーと気付かず、ヒゲのスタッフと思ってたみたいでした(笑)

そんなカルの表彰台、今年はたくさん観たいですね。
セパンもビニャーレスのコンマ以下36差。期待してます(o^-^o)

投稿: もちょい | 2017/02/04 17:25

>もちょいさん
 なんかカルのよさってそういうのありますよね。そして萌ちゃんがスルーしていたのはもったいない!

投稿: とみなが | 2017/02/04 20:11

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