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ストーブリーグ表2017(最終版)

すっかり忘れてましたが、一応ファイナル版を。

Stove_2017_final

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セパン・プレテストまとめ:何が入ってるのジジ

30日からの公式プレシーズンテストに先駆けて行われたテストライダーによるセパンテストのまとめをMotoMatters.comより。
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ワークスチームが増えたということはワークスチームのテストが増えるということを意味している。これまでならIRTA(国際レーシングチーム協会)主催の年初のMotoGP公式テストの前には1回か2回のシェイクダウンが行われただけだったのが、今年はそれ以上のものとなっている。MotoGPに参戦する6メーカーすべてがテストライダーを連れてやってきたのだ。アプリリア、ドゥカティ、ホンダ、KTM、スズキ、ヤマハ。さらに2メーカーは2017年シーズン開幕に向けてスーパーバイクマシンも持ち込んでいた。その理由?参加メーカーが増えれば1メーカー当たりのサーキット使用料が少なくて済むのだ。そして来週の公式テストに向けての準備の時間も稼ぐことができるのである。

時間も必要だった。天候は味方をしてくれなかった。3日間とも大雨に見舞われ路面が乾くことがなかった。10月のレースでも路面の乾きが悪いことが問題になったが、今回の問題も原因は同じようなものだった。コースは過去10年にわたって蓄積されたデータに基づき再舗装されたのだが、これは気温30℃から40℃、路面温度40℃から60℃を想定したものである。しかしマレーシアの気温はこのところもっと低く(35℃というより25℃に近い)、路面温度は35℃を超えることはほとんどない。これに100%近い湿度が加わるとほとんど蒸発が期待できないことになる。こうした想定外の状況に対応するには路面の下を通って排水するための工事が必要となるだろう。

そんなわけで今回のプレテストはかなり不満の残るものとなってしまった。ドゥカティ・コルセのボス、ジジ・ダリーニャはGPOne.comに対して、こんなコンディションのセパンではほとんどテストはできないと語っている。レインタイヤで濡れたコースを走ってもマシン開発には役に立たない。「どこか他の場所でテストしなきゃならないですね」とダリーニャは言っている。

空力パーツはひとつではない

路面が濡れていようがいまいが、マシンは走っていた。ケイシー・ストーナーは木曜に何周かドライで走ることができたが、金曜はほとんど何もできなかった。コンディションがウェットすぎたのだ。しかしミケーレ・ピッロは忙しかった。ウェットでもドライでもドゥカティは様々なアイディアを試していたのである。最もわかりやすいパーツはピロが前回のテストで試していたホイールカバーだ。スモセディチのフロントホイールは完全に覆われている一方、リアについてはスポーク幅が広く、リムの内側がディスク状になっていた。

カバー付きホイールは自転車のタイムトライアルで使われることがある。目的は空力の改善だ。ドゥカティの目的も同じである。カバー付きホイールのデメリットは横風の影響を受けやすくなるという点だが、これは6kgしかない競技用自転車の方が157kgもあるフルフェアリングのMotGPマシンに比べてはるかに大きな影響を受けることになる。

ドゥカティのテストプログラムは他のメーカーと比べて何をやっているのかわかりやすかった。彼らは光学センサーでマシンと地面の距離を測っていたのである。アンダーカウルの下側とスイングアーム後ろ側、そしてスイングアーム後方に伸びる巨大な延長部分にライトを付けたデスモセディチがピットから出て行った。ドゥカティの実験はリアがちゃんと接地しているかどうか、そして加速時、減速時のマシンの挙動を調べるためのものだろう。

箱の中身は?

今回のテスト最大のミステリーはドゥカティのテールカウルについている箱である。ドゥカティのテスト用マシンにはすべでこの箱がついていた。そして写真でははっきりしないが、カーボンファイバー製で中に電子機器が入っているように見える。電子機器だろうと疑わせるもうひとつの理由は右側に貼られたステッカーだ。曲がりくねったエキゾーストパイプの横に貼ってあるそれは、ツイッターで何人かが指摘してくれたのだが、温度を測定するためのもののようだ。電子機器は温度管理が重要で、高温になると機能しなくなるのである。

それがケイシー・ストーナーが木曜にコース途中で二回も立ち往生した理由かもしれない。しかしドゥカティが燃費を測るためにガス欠テストをやっていた可能性もある。一定量のガソリンを入れてどこまで走れるかを正確に把握するためだ。

もしこのテールカウルの箱が電子機器を搭載しているのなら何らの理由があるのだろう。電子制御ユニットやその他の電子機器は比較的軽量なのでテールに移動させたのではないか。あまりテールに重量物を載せたくはないのだが、他のパーツよりは問題は少ないはずだ。そして電子機器あった場所に何かもっと重いものを搭載することが可能となる。電子機器の箱の跡地にはガソリンタンクがくるのかもしれない。例えば少し前よりにするということだ。それとももう少し大きいか、動く機械パーツでも来るのだろうか。

ウイング、エンジン、天候

ストーナーとピッロはウイングの有無による影響を把握するためにウイング無しバージョンとありバージョンを交互に試していた。彼らだけではない。中須賀克行もウイングありと無しのヤマハM1をテストしていたのである。ウイングは全メーカーが揃う来週もまた登場しそうだ。少なくともドゥカティはテストに使用するだろう。

パンドラの箱が完全に開いてしまったせいで空力分野に興味が集中しているが、バイクは一組のウイングなど問題にならないくらい動的な存在だということも忘れてはならない。例えばアプリリアは新型エンジンをセパンでテストしながらアレイシ・エスパルガロとサム・ロウズを迎える準備をしている。プレスリリースでアプリリアのボス、ロマーノ・アルベシアーノは新型エンジンは低〜中回転域でのトルクが増大し、しかもトップエンドのパワーは維持している言っている。去年のRS-GPはコーナリングにも問題を抱えていたが、それ以上に加速でかなり置いて行かれていた。今年のマシンはより軽量で剛性と重量配分は全面にわたって見直されているということだ。

どのMotoGPチームも気にしているのは天候が今週と同じようなもになりそうだということである。現時点の天気予報によれば少しは晴れそうで、火曜と水曜の午前中にはドライで走れそうな様子である。しかし気温は相変わらず熱帯というよりヨーロッパ風で、つまりはコース上の水分はなかなか消えないということだ。ライダーとしては走行マシンが増えることで少しでも早く路面が乾くことを期待することしかできない状態だ。
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盛り上がってきましたね!

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クラッチローにさらなる銀器コレクション

先日、バイクがらみでは英国最高の賞を授与されたクラッチローですが、来年の契約間近なんだそうで。Mat Oxley氏の記事をMotor Sport Magazineより。
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MotoGPのプレシーズンテストを来週に控えた今、大変身を遂げたカル・クラッチローほどセパンのピットから走り出すのを楽しみにしているライダーはいないだろう。

去年初優勝を遂げたのはクラッチローだけではない。しかしマーヴェリック・ヴィニャーレス、アンドレア・イアンノーネ、ジャック・ミラー以上に彼は初優勝の影響を受けている。

自分ではそう思っていなかったかもしれないがヴィニャーレスの勝利は誰もが予想していたことだ。イアンノーネについては我々が予想していなかったとしても彼自身が勝利を予感していた。ミラーについては彼自身も我々も2016年と同じような活躍ができるかどうかは確信を持ってはいない。

ブルノとフィリップアイランドまではクラッチローはMotoGP界の等外馬だった。最高峰クラスで97レースを走って表彰台はそれまでの2年間でわずか3回。能力のピークは過ぎているように見えたし、結局「もうちょっとで成功できた」口の悪い男に終わってしまうところだった。

今の彼はそうではない。クラッチロー自身は常に自分がMotoGPで勝てると考えていたかもしれないが、その正しさは今になって初めて証明されたのである。そしてそのことが彼の心理状態に大きな違いを及ぼすことになった。

だからといって彼が再び勝てるというわけではない。世界最高のライダーを打ち倒すのに必要な心理状態というのは簡単に失われてしまうのだ。レーサーなら誰でもこうした心理状態を日曜ごとに持ち続けたいと考えている。しかしそう簡単にはみつけられるものではないのだ。毎週そうした気持ちになれるライダーもいれば、ある週にはできても別の週にはできないというライダーもいる。この心理状態は「ゾーン」と呼ばれているもので、レースに置いてはエンジンやタイヤやその他のなによりも重要なものなのである。

クラッチローは昨日はロンドンにいた。彼の体からは世界最速のバイクレーサーを倒すことができるという自身がにじみ出ていた。つまり彼はこれまでとは違うということである。しかし彼は相変わらず彼である。いたずら好きで、周囲の喧噪に邪魔されることなく集中力を維持できる男で、そして獲物を仕留める野獣の目を持っている。ありがたいことだ。

これからマレーシアに飛ぼうというときに彼がロンドンにやってきたのはバッキンガム宮殿ほど近いペルメル通りにあるエドワード朝時代の素晴らしい建物にある王立自動車クラブ(RAC)の最高賞であるトレンス賞を受賞するためだ。

バイクレーサーがこうした貴族的な場所で賞を受けるのは珍しいことである。たいていのバイク関係の賞の授賞式は国立展示場のバーといったもっと下世話な場所で行われるからだ。クラッチローはこれまでのトレンス賞の受賞者と同様、大英帝国絶頂期の偉容に気圧されているようだった。

「賞がほしくてレースをしたことはないですよ。大好きだから走ってるだけなんです。でもこれほどのクラブに表彰してもらえるってのは名誉なことですね」と彼は語る。「歴史の重みがあるし、自分がこれまで努力し続けてきたことで賞がもらえるのは本当に嬉しいです。こういうところにくると4輪は違う世界だってよくわかるけど、MotoGPも大きくなってきてるし、バイクレースがこういう風に認められるってのは凄いことですよね」

王立自動車クラブのメンバーの多くがMotoGPの大ファンで、フォーミュラ1よりMotoGPを見る方が楽しいと公言してはばからないということは言及しておくべきだろう。モータースポーツ界の有力者たちがこんな風に考えているというのは間違いなく大きな影響があるはずだ。

このクラブ(RACレスキューサービスとは無関係だ)はトレンス賞の復活以来バイク界との関係再構築に努力してきた。何十年も前、クラブはバイクレースの最初期の発展に貢献しているのだ。1905年にはマン島でレースを開催している。そしてこれが今のTTレースになるのだ。TTは継続して開催されているモータースポーツイベントとしては最も古いものとなる。同じころクラブは自動車の最高速度を時速23kmに制限していた1896年蒸気自動車法(the 1896 Locomotives on Highways Act)の廃止に向けて闘っていた。

至る所に歴史を感じることができる。金と銀で作られたメルクリウスをかたどったトロフィーもそうだ。これは世界的に知られているTTのトロフィーの原型で、バイクレースを愛する親英派のフランス人貴族が創ったものである。

トレンス賞の巨大なトロフィーは1920年代から50年代にかけてモーターサイクル誌の編集長だったアーサー・ボーンを記念して作られたもので、前年度にめざましい活躍をして最高の成績を収めた英国人ライダーに毎年与えられている。

受賞者は委員会が決定する。まさか私がその一員になることはないだろうと思っていたのだが、実は私も委員である。会議への出席にはスーツの着用が義務づけられている。なんといっても王立自動車クラブは頑なに伝統を重んじるところなのだ。2年ほど前のことだ。私は適切な服装でなかったというミスを犯したために壮麗な建物から出るときには出入り商人用出口から帰らなければならなかった。クラッチローも月曜夜にクラブに泊まった際には同じようなドレスコードの問題にぶちあたることになった。ポロシャツでは朝食にふさわしくなかったのである。

通常であればトレンス賞の受賞者を決定するための議論にはそれなりの時間がかかるものだ。去年は奇跡の男イアン・ハッチンソンとMoto3チャンピオンのダニー・ケントのどちらがふさわしいかについて何時間も議論がかわされ、最終的にハッチンソンが受賞することとなった。

今年の受賞者を決めるのは遥かに簡単だった。候補者はクラッチローの他、TTのヒーロー、マイケル・ダンロップ、2度目のワールドスーパーバイクタイトルを獲得したジョナサン・レイ。もちろんだれもが受賞にふさわしい成績を挙げている。しかし受賞者は全会一致で瞬く間に決まったのだ。こんなことは初めてである。おかげでこれまでになく早くバーに駆け込むことができた。ありがとうカル!

もちろん2年間で2回のWSBKタイトルを獲得するのも、同じ週の内に2回もTTスーパーバイクで勝つのも楽なことではない。しかしヴァレンティーノ・ロッシ、マルク・マルケス、ホルヘ・ロレンソといったライダーたちを一度ならず二度までも打ち負かすことほど難しいことはない。それがクラッチローの受賞理由だ。

この二つの優勝はその後のクラッチローの人生とレースキャリアを変えてしまい、そして今でも変え続けているほど重要なものだった。トレンス賞の授賞式で彼は2018年の契約も間近であることを明かしている。「今新しい契約について話し合っていて、いい感じで進んでいるんですよ」とも彼は言っている。

その一方、LCRホンダのチームオーナーであるルーチョ・チェッキネロ(元125ccクラスの優勝経験者でことによったらMotoGPでいちばん人柄のいいチームオーナー)はロンドンでスポンサーと会合をもっていたのである。そして今頃はロンドンから日本に飛んでいる最中だ。セパンに行く前にHRCとのミーティングを行う予定となっているのだ。

2016年以上の結果を遺すためにクラッチローはこれまで以上に頑張らなければならないだろう。しかし再びトップに立つために必要な全てを手にしているように見える。今年も、そして来年以降にわたってもだ。
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王立自動車クラブの格調の高さはクラブのサイトからもうかがえますね。そりゃネクタイ必須だわ。

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ドゥカティMotoGPチーム発表会:新しいライダー、新しいエンジン、新しいV4スーパーバイク

うちらしいマシンにする!と原点回帰が強調されたヤマハの発表会に続いてドゥカティも発表会をしています。ホルヘがやってきてどうなるか楽しみなので翻訳。MotoMatters.comより。

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ひとつの発表が終わったと思ったらすぐ次の発表だ。モヴィスター・ヤマハの翌日がドゥカティ・ワークスの発表会だったこともあり、両者の違いがわかりやすく見て取れる。ヤマハに対するソーシャルメディアにおける非難の大部分はスペイン語オンリーでの発表だったことだ。せっかくのライブ中継がつまらないものになってしまったのだ。

その点ドゥカティはうまくやった。すべてイタリア語だったが生中継は同時通訳付きだったのだ。そんなわけでフォロワーも英語で聞くことができた。もちろん現地のホールで聞いていた我々には全く恩恵がなかったのだが、実は後になって同時通訳が聞けるヘッドセットも用意されていたことがわかった。なぜだか誰も教えてくれなかったのだ。とは言えMotoGPで働く誰もが必要に迫られて(スペイン語と同様に)レース用イタリア語については訓練を積んでいるのだった。

開催場所についてはほとんど文句はない。去年と同様に発表会はボローニャのすぐ西にあるボルゴ・パニガーレの ドゥカティ・ワークスで行われたのだ。会場となったホールについては大して報告するとはない。ステージが暗いホールに設置されているだけだ。しかしジャーナリストやゲストはドゥカティ博物館に招き入れられたのだ。ドゥカティの歴史的な市販車とレーシングマシンでいっぱいの場所だ。もしムジェロかミザノに行こうと思っているのであれば是非立ち寄ってほしい。

過去を見直し未来を変える

しかし私たちが見に来たのは新型マシンであり、それに乗るライダー(特に二人の内一人)の話を聞くためにここまで来たのである。私たちが知りたいのは2017年のドゥカティの計画であり、どうやって世界タイトルを獲得するつもりなのかを教えてもらいたいと考えているのだ。確かにいろいろなことを学んだが、そのために来たのではないのだ。

発表会ではドゥカティの幹部とアンドレア・ドヴィツィオーゾ、そしてホルヘ・ロレンソの二人のライダーへのインタビューが企画されていた。さらにドゥカティにとって輝かしい年となった去年の振り返りのための短いビデオも用意されていた。しかし輝かしい成功をクローズアップすることでかえって痛ましい歴史修正主義があらわになってしまったのも事実である。ドゥカティにとっては2010年以来の勝利となったオーストリアの映像では2台のマシンがゴールラインを横切っていたが、しかし表彰台の映像ではアンドレア・ドヴィツィオーゾしか映っていない。アンドレア・イアンノーネはドゥカティの歴史から実質的に修正液で消し去られてしまったのだ。ドヴィツィオーゾがヨセフ・スターリンでイアンノーネはレオン・トロツキーということである。

噂では今回ステージに上がるマシンは2017年型のモックアップで、実際にドヴィツィオーゾとロレンソが乗るものとは異なるということだったが、それは半分本当で半分間違いだった。マシンは2017年型だったが外装は禁止されてしまったウイングを取り除いた2016年型だったのだ。

新型カウル?

ドゥカテ・コルセのトップでありマシン設計の責任者であるジジ・ダリーニャはあまり2017年型について語ろうとはしなかった。「最終的なデザインではないですね。でも冬期テストの間に確実に進化してますよ。実は隠し球があるんです。まだはっきりはわからないですけど、改良できる部分があるんです。来週からそれを試す予定ですね」

行間から想像するに空力が改良されるのだろう。 とは言えまだ開発中のようだ。そしてドゥカティとしてはまだ手の内を見せるつもりはないようだ。しかしダリーニャはウイングの効果を取り戻すのは無理だろうとは考えているとのことだ。「これについては正直言って誰かが解決策を持っているとは思えませんね」と彼はウイングが禁止されたことについて語っている。「私に言わせればマシンの性能はウイング禁止で退化することになるんですよ。それは間違いないですね。だからみんなウイング無しでなんとかやっていく方法を見つけようとしているんです。でもウイングほどの効果が得られるわけがないんですよ」。ドゥカティはまだウイング禁止令に悩まされているようだ。しかし詳細はもう少し後になってみないとわからないということである。

新型エンジン

ダリーニャはチョッキのポケットにカードを隠したままだったがドゥカティのCEOであるクラウディオ・ドメニカリはもう少し優しく教えてくれた。2017年型は新型エンジンで「パフォーマンスが向上しているが、これはエンジンに対するアプローチを根幹から見直したからだ」ということである。

どういうことだろうか?推測するしかないが点火間隔の変更の可能性はある。とは言えヴァレンシアテストでのエンジン音は旧型と同じように思えたのだが。それよりありそうなのはエンジン内部に関する大改造である。最近登録された特許をさぐってみればわかるかもしれない。しかしドメニカリは本人は気付いていないかもしれないが大きなヒントを与えてくれているのだ。

ドゥカティの新型V4WSBKマシン

彼はドゥカティが次に繰り出すスーパーバイクマシンがV4だと認めたのだ。V2ではないのだ。そしてその新型エンジンににはMotoGPの技術がふんだんに盛り込まれているという。「MotoGPで成し遂げたエンジン開発は凄いものでした。非常に信頼性が高く、非常に軽くコンパクトで、しかも興味深い技術がたくさん盛り込まれている。これを技術開発の究極の商品として一般の人々に提供したいと真剣に考えるようになったんです」

これは以前発売されたドゥカティの公道用MotoGPマシンであるデスモセディチの後継機ではない。MotoGPで開発されたV4エンジンをベースに作られたプレミアムスポーツバイクである。値段も「それなりに高価だがとんでもないというわけではない価格」だそうだ。つまりパニガーレRと同程度ということだろう(訳注:400万円くらい)。つまりこれがドゥカティのWSBK用マシンとなるわけだ。

ドメニカリは発売時期までは言及しなかったし、この新型V4マシンがワールドスーパーバイク用だとも言ってはいない。これについてはドゥカティのスポーティング・ディレクターであるパオロ・チアベッティが少しヒントをくれた。これもわざと教えてくれたというより、つい口にしたということではあるが。「2017年と2018年はパニガーレで走ることが決まっていますね」。私たちがチアベッティにたずねると彼はこう答えたのだ。つまり2気筒の開発は続けるということである。チャズ・デイヴィスでタイトルを獲得するためだ。

こうした断片的な情報をまとめてみると一つの絵が浮かび上がってくる。ドゥカティはおそらく2018年にV4スーパーバイクをデビューさせるだろう。その2018年シーズンは国内選手権かスーパーストック1000で走ることで初期型につきものの問題をつぶしていくことになる。そして2019年シーズン、ドゥカティはV4でワールドスーパーバイクを闘うのだろう。もちろんこれはすべて推測にすぎない。しかし確固たる根拠がある推測なのだ。

コーナー中盤には改善の余地あり

MotoGPの話に戻ろう。新型マシンもまだまだやることがある。アンドレア・ドヴィツィオーゾもジジ・ダリーニャも2016年型の最大の問題を明確に理解している。コーナー中盤での向き変えである。特にスロットルが一定の時が最大の問題だったのだ。

他にもドゥカティが弱かったところはある。開け始めのスロットルレスポンスだ。ジジ・ダリーニャがこう説明してくれた。「スロットルの開け始めが問題だったのは間違いないですね。だから少しでも改善につながる何かを見つけなければなりません。あとはブレーキを完全にリリースしたときの向き変えですね。この二つが集中的に取り組まなければならない部分なんです」。解決の道は見つかったのかとたずねられたダリーニャは笑ってこう答えた。「まったくないですね。アイディアはたくさんあるんですけど」。結局のところ、解決につながったアイディアが見つかるまでは解決策はないということである。

こうした幾多のアイディアはセパンで試されることになる。もう一週間ほどで開催される今年最初のテストだ。アンドレア・ドヴィツィオーゾはこう語る。「マレーシアではマシンのあらゆる部分が新型パーツになっている予定です。でもとにかくコーナ−中盤のマシンの向き変えがもう少しだけ楽に、しかも速くなっているかを確認したいですね。それこそホルヘが求めているものだし、だからそうなっていたら僕も嬉しいですね」

ドゥカティのロレンソ

やっとロレンソが自由に話せるようになった。そして彼は新しいマシンについて情熱的に語ってくれた。ヴァレンシアで別れを告げたヤマハとはずいぶん違っているようだ。「2台は全然違う考え方で作られていますね。まずはエンジンから話しましょうか」とロレンソは切り出した。「ドゥカティは音が違うし、パワーの出方も違う。そしてシャーシもスイングアームからハンドルから空力から何もかもが違っている。自分がどこを走っているか理解できるようになるまでに何周か必要だったくらいです、一番びっくりしたのは初めて5速、6速で全開でストレートを走った時ですね、信じられない感覚でした。思わず笑っちゃいましたよ。最初の感覚がいつでも大事なんですけど、ドゥカティはとても良かったですね」

問題はロレンソがドゥカティに対応できるかということだ。世界タイトルを5つ持っている彼はしかし自分がこれまでも同じことをやってきたことを強調している。250クラスではホンダからアプリリアに移ったときにライディングスタイルを変えざるを得なかったと言う。「2種類の違うマシンに乗りましたからね。ホンダでは奥までブレーキングするんでコーナリングスピードは遅かったんです。アプリリアだと真逆でした。ブレーキングをそれほど奥まで引っ張れなかったんです」

ロレンソはドゥカティで同じようなアプローチを試みている。「ドゥカティでも同じ感じですね。エンジンも違う。ストレートでパワフルで安定性がある。もし安定性を犠牲にしないで前より速く走りたいとしても同じところでブレーキングすれば充分なんです」。とは言えロレンソは最終的に自分の強みを最大限に発揮したいと心に決めているようだ。「多かれ少なかれ前と同じDNAですよ。つまり正確さ、集中力、スムーズさ、コーナリングスピード。これをドゥカティで発揮したいんです」

ドヴィツィオーゾ−再び勝てるのか?

ホルヘ・ロレンソに皆の興味が集中しているとは言え、アンドレア・ドヴィツィオーゾも負けず劣らず興味を引く存在だ。中でもパオロ・チアベッティは彼を賞賛してやまない。「ドヴィは去年の終盤から、セパンで勝って、自分なりに答えを見つけたんですよ。自信がついたんです」。セパンでの勝利が彼を変えたということだ。強さを増したのである。

「レースに勝つということは、それがどんなレースであれ、しかもMotoGPとなったらとんでもない影響があるんです。でも勝ち方も大事なんですよ」とドヴィツィオーゾは語る。「もちろんウェットでしたけど、あのレースは勝ち方が良かった。すごく自信につながったんです。僕にとっては大事な一勝でした。気持ちの中で何かが変わったんです」。しかしもっと重要なことはシーズン終盤に向けて上り調子となったことである。ドヴィツィオーゾ自身、シーズン終盤にマシンが戦闘力を増したと考えている。もしマシンが序盤からあれほど完成度の高いものだったらこれほどの影響はなかっただろう。

最も気になるのはドヴィツィオーゾがロレンソとどんな関係を築くかである。ドヴィツィオーゾがロレンソに次ぐ第2ライダーなのは明らかだ。ドゥカティもロレンソの役割はレースに勝利してタイトルを獲得することだと明言している。しかしドヴィツィオーゾはむしろこの状況を楽しんでいるようだ。ロレンソを怖れてはいないし、コース上では二人ともお互いを尊重している。

ロレンソのようなライダーがチームメイトになるということはドヴィツィオーゾにとってはさらなる成長のチャンスであり、目標を高く持つことができるということのようだ。「わくわくしてますね。だってすごいチャレンジなのは間違いないですから」と彼は私たちに言ったのだ。自分よりロレンソが注目を集めているということは気にならないということである。ロレンソは確かに勝利数でもタイトル数でも上回っているが、彼にとってはいつものことなのである。

ケイシー・ストーナー

ブランド大使であり、いまだに世界最速のテストライダーでもあるケイシー・ストーナーについての新たな情報もあった。彼は去年と同じ役割りを与えられているとのことだ。つまり重要なテストをに参加し、いくつかのレースでは現地に赴き支援を行うということである。1月25、26日の両日で行われる次のセパンテストが2017年のドゥカティでの初仕事となる。その後1月20日からの3日間のテストに帯同し助言を与えるのだそうだ。さらにテスト2日目には実際にマシンに乗るようである.最終日もそういうことになりそうだ。

ドゥカティにとってケイシー・ストーナーはどれほど重要な存在なのだろうか?「ケイシーはなくてはならない存在ですね」とジジ・ダリーニャは語ってくれた。ストーナーの貢献度をうまく言い表すことは難しいのだそうだ。「ケイシーは本当に…、普通に反していてもマシンの状態を本当に…、どう言ったらいいんだか…、彼の言葉を本当に理解できれば、コース上のマシンの状態を完璧に把握することができるんです。彼はマシンの問題を的確に表現できる数少ないライダーなんです。たぶん何を言っているかもわからないってこともあるんでしょうね。でもテストを重ねていくと少しずつ見えてきて、最終的に彼が最初から問題を指摘していたことに気付くんですよ」

相変わらずウイング禁止には不満

MotoGPクラスにおける2017年の最大の変更点はもちろんウイングの禁止である。ドゥカティは強固に反対していたし、2017年の発表会の場でもまだぼやいていた。ウイングのおかげで公道用市販マシンについても様々な知見が蓄積されたという。しかしその具体的内容についてはクラウディオ・ドメニカリは教えてくれなかった。「ウイングの開発は本当に有益でしたよ」と語るにとどめている。

「何が起こっているのかはっきり説明するのは難しいんです。マシンは確かに良くなる。安定性がすごく増しますしフロント荷重も高まって安全性も高まります…でも安全性を理由に禁止したんですよ!おかげで安全性の低いマシンをつくるはめになっている。安全性の観点からは禁止してはいけなかったんです。そういう意味では開発要素がまだあったんです。でも委員会は多数決ですし、ヨーロッパのメーカーは少数派で残りは全部日本のメーカーです。だからみんな自分の都合の良いようにウイング禁止の理由をでっちあげたんです」

アンドレア・ドヴィツィオーゾはこのドゥカティCEOの説明からさらに踏み込んだ発言をしている。「まあわからないこともないですけど安全性についてはずいぶん変わりましたね。この3年間、誰もがウイングでダウンフォースを得ることができた。何年もの間、一歩一歩開発を進めてきたんです。そうやって積み重ねてきたダウンフォースはかなりのものになっています。最初はコーナー脱出でグリップがなくなってましたね。最大の違いはリーンアングルが最大の状況でスロットルを開けるとウイリーしちゃうってことです。これはかなりの違いですね」

ドヴィツィオーゾによればヴァレンシアテストの段階でこの違いははっきりしていたということだ。「ヴァレンシアでは誰も言ってませんけど、テストではフィニッシュライン近くまでブラックマークがついていたんです。これってフロントタイヤが浮いて、また地面に着いてってなってたということなんです。最終コーナーからフィニッシュラインまではかなりの距離がありますよね。その間フロントに荷重がかかっていなくて、だから向き変えもできないってことなんです。テストのテレビ中継を見ればわかったでしょうけど、ウイング無しのライダーは違うラインで走ってましたね。フロント荷重が足りないせいで方向が変えられないってのは安全ではないですよ。その違いはコースによっては大きく出るでしょうね。そうでもないコースもあるでしょうけど」

ウイングを禁止したことでMotoGPの空力開発は終わってしまうのだろうか?「ここには創造性豊かで新しいことを思いつける人材がたくさんいますから」とクラウディオ・ドメニカリは言う。「毎年何かを禁止されてたら前には進めないですけど。でもうちにはジジをはじめとして新たな開発ができる人材がそろっているんです。チームスピリットってのはライダーだけの話ではないんです。技術開発についても同じことが言えるんです。そしてそれがドゥカティの市販車にも活かされていくんですよ。楽しみにしていてください」
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ドヴィにも幸せになってほしいなあ。

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明けましておめでとうございます。

今年の目標は「意見が分かれたら、まずはどこまでだったら合意できているのか確認。その後に異なる点とその理由についてお互いに合意する。議論はそこから」です(長い)。

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