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MotoGPはどうやってクラッシュの変化に対応しているのか

今年はタイヤも電子制御ソフトも変化した上に天候も荒れたのでクラッシュが多かったですね。そしてクラッシュと言えばこの人。怪我をしたライダーを魔法のように直してしまうミル医師へのインタビューです。Bike Sport Newsより。
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今年のMotoGPは昨年と比較して転倒が34%も増加したが、これはタイヤメーカーの変更と電子制御システムの統一がその原因だと言われている。

そして転倒の内容もハイサイドからフロントエンドが原因のものに変化しており、外傷対応チームもこれに合わせて2台目のドクターカーの導入やツナギへのエアバッグ義務づけ等を行っている。

クラッシュのデータも興味深い。2015年の215回から2016年は288回に増加しているが、これは1開催あたり12回が16回になっている計算だ。ちなみに10年前の最高峰クラスでの転倒は1シーズンでわずか98回だった。

しかしこれは最高峰クラスだけに限ったことではない。大きな変更のなかったMoto2やMoto3でも徐々にだが確実に転倒が増加している。今年のMoto2の転倒は364回、そして3クラスで最も多かったMoto3では410回の転倒が起こっているのだ。これは週末当たり23回に相当する回数である。去年はMoto2で235回、Moto3で314回(訳注:ここは数字の間違いで、おそらくMoto2:352回、Moto3:409回)、10年前は250ccでで235回、125ccで314回だった。

今シーズンの状況については天気も考慮に入れる必要があるだろう。オーストリア、オランダ、ドイツ、イギリス、チェコ、マレーシアでは複雑な天候だったのだ。とは言え最も転倒が多かったのはフィリップアイランド(90回)。次いで、もてぎ(84回)、ザクセンリング(81回)、セパン(69回)、シルバーストン(68回)となっている。クラッシュが最も少なかったのはムジェロの34回だ。

毎年マシンはどんどん速くなり、ラップレコードも更新され続けている。しかし2016年に関してはやはり統一電子制御とミシュランタイヤへの変更が転倒増加の原因なのだろうか?そしてクラッシュのあり様はどう変わってきたのだろうか?

我々はMotoGPの外傷専門家であり上肢外科手術の専門家であるザヴィエル・ミル医師に安全確保について、そしてコースの安全性増向上にドルナが果たす役割についてたずねてみた

まず最初にMotoGPにおける先生の役割を教えて頂けますか?

「私は整形外科の責任者で、内科系はアンヘル・チャルテ医師が責任者となっています。この仕事について5年になりますね。私のいちばんの専門は腕ですね。つまり鎖骨から手のひらまでということです。クラッシュで最も影響を受ける部位について調査したのですが、怪我の70%が上肢(鎖骨から手のひらの間)に集中していることがわかりました」

一番転倒が多かったのはどのサーキットですか?

「今年はフィリップアイランドの90回で、次がもてぎの84回、セパンの69回、シルバーストンの68回と続きます。フィリップアイランドセパン、シルバーストンについては天候が一番大きな原因ですね。でも統計的には深刻な怪我はドライで発生しています。実際ウェットでの転倒はきれいにすべっていきますからね」

いちばん転倒の多いのはコーナーはどこでしょうか?

「コンディションによりますね。今年のシルバーストンを例にとると、10コーナー(クラブコーナー)と12コーナー(ファームカーブ)で11回ずつとなっています。週末の天候がころころ変わっていたんですよね。例えばフィリップアイランドでも4コーナーで32回も転倒が起こっていますが、ここでも天候がドライとウェットが入り交じっていましたから」

去年と比較してクラッシュの有り様はどう変わりましたか?

「以前はハイサイドが多かったですけども、今年はフロントからの転倒が多かったですね。毎年スピードが上がっているのは間違いありませんし、骨折の状態も変化しています。例えばエアバッグが導入されても防護しにくい部位はあるんです。エアバッグのカバーできる範囲はライダーによって異なっているんです。それほどオーダーメイドに対応しているわけではないんですよ。これは大きな課題ですね。ロリス・バズは191cmあってダニ・ペドロサは160cmだってことを考えてもわかりますよね。なので今私たちはダイネーゼ及びアルパインスターズとともにこの重要な安全装備についての研究を進めているところです」

ペドロサについて話が出ましたけど、どうして彼は転倒のたびに怪我に苦しむことになるんですか?

「ダニはすごいライダーですね。ものすごい才能がある、でも彼の体格や筋組織は彼の弱点です。彼の筋肉はそれほど強くはないんですよ。それに、これは言っておかなければなりませんが、彼には不運がつきまとってるんです」

今年は椎骨を骨折したライダーの何人かいましたが…

「ええ、アンドレア・イアンノーネにジャック・ミラーに、フリアン・シモン…、これについてもエアバッグをもう少し長くできないか検討しているところです。もうひとつのポイントはエアバッグが機能し始めるのはライダーが接地する前からで、その短い間にライダーの体勢が大きく変わるんです。2018年からはエアバッグを義務化する予定でいます。そのためにはエアバッグ自体の改善も必要ですし、ライダーの体格に合わせてオーダーメイドできるようにする必要もあります」

最近導入された安全性向上策について教えてください。

「コース上でかなりの侵襲的な処置(訳注:切開とか気管挿管とか、人体を切ったり何かを入れたりする処置)ができる装備を搭載したドクターカーを2台配備したのは大きいですね。ライダーが意識を失っている場合はこの2台が出動します。レッドフラッグが出されてから1分以内に現場に到着することが可能で医師がコース上のライダーの診療にあたることができるんです。
 これはF1と同じやり方です。ここで一次処置を行ったらメディカルセンターに搬送するか、そうでなければいちばん近い病院にヘリコプター搬送します。最初の1周が事故のリスクが最も高いんです。ライダーが一団になってますからね。それでドクターカーが集団を追いかけて、さらに2台のドクターカーが複数の事故に備えていつでもコースに入れるように待機しています。それぞれのドクターカーにはプロのドライバーと医師が一人、救命士が一人乗っています。マルコ・シモンチェリの事故が起こったときにはまだこうした意識のないライダーをコース上で診療する機材を積んだドクターカーが配備されていませんでした。そのため当時はまずメディカルセンターや病院に搬送しなければいけなかったんです」

一番危ないのはどの瞬間ですか?

「スタートですね」

コースには何人のお医者さんがいるんですか?

「コースによって違うんです。コースレイアウトと長さによるんです。例えばヴァレンシアではコースサイドに医師21人、救命士21人が配置されています。その他に4人の医師と4人の救命士がドクターカーに、さらにメディカルセンターにもスタッフを配置しています。車に関しては7台の救急車がコースサイドに、2台がメディカルセンターに、さらに2機のヘリコプターも配備しています」
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エアバッグは規格品だったのかー。

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コメント

医療体制は、けっこうしっかりしてるんですね。
関心しました。
しかしGPだけで昨年より34%の転倒増というのは尋常じゃないですね。
とんでもない数字だと思います。
なにより気になるのが、この様なデーターにオーガナイザー側が如何に考えているかです。
来年もパワーダウンの規定はなされていないし不安は残ります。
またFPから転倒が立て続けに起こり、ライダー側からも苦情がある場合、勇気を持ってレースキャンセルをする。
それくらいの意識があって良いとも思います。

記事にもありますようにスーツのエアバックは、今後も更に開発研究されるべきですね。
確かロレンゾは、そのシステム500gの重さを嫌い外しているという記事を目にしたことがありますが、やはり絶対義務化するべきでしょう。
またエアバックのほかにダカールラリーなどで装着されていたと記憶していますがネックギア。
これもロード用に研究開発されたら良いと思います。

コースに話を戻すと、モテギがレースウィーク終始晴れであったのに転倒回数が二番目に多いというのは、ちょっと意外でした。
そして来年はミシュランタイヤが安定した物になることを願います。
とにもかくにも来年は更に「御安全に!」ということで。

投稿: motobeatle | 2016/12/13 21:02

>motobeatleさん
 ブリヂストンも相当改善しましたからミシュランにも期待はしたいですね。本当に。

投稿: とみなが | 2016/12/31 16:32

日本国内のサーキットは今後どうなのでしょう?GPSや赤外線カメラ等でオイルの有無・水深・路面温度を測りミューの急変があれば瞬時に警告、クラッシュパッド等を適切に稼働、電子制御の相互連動も技術的にはできる事は多々あると思います。
レイニー、ドゥーハンそして加藤、冨沢の不幸はもうもうもうもう全然要らない。
鈴鹿やSUGOを世界一安全なトラックにできればMOTOGP日本で3回開催?

投稿: kagawa hideo | 2017/01/10 20:20

>kagawa hideoさん
 おそらく転倒は防げないし防ぐべきでもないので、それを前提にどう怪我を防ぐかだと思うんです。クラッシュパッドに二重三重の安全性を備えさせることができれば…。

投稿: とみなが | 2017/01/23 23:13

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