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深層探求:ブラッドリー・スミス、MotoGPの電子制御を語る(その2)

さっきパート1はアップしましたが、気持ちが途切れない内にパート2も。MotoMatters.comより。
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MotoGPにおける電子制御は実に複雑で、しかも魅力的な話題である。この電子制御に対する理解を深めるためにブラッドリー・スミスがモンスター・テック3・ヤマハM1に搭載する選ばなければならない電子制御の様々な選択肢について語ってもらった。

昨日掲載したパート1ではプラクティスやレースで使う様々な電子制御セッティングについて語ってもらった。このパート2ではスミス、そしてチームがチーフメカのギ・クーロンに導かれながら、どうやってセッティングを見つけるのかについて語ってもらう。彼が教えてくれたのは、どんなセッティングが可能なのか、そしてレースに向けてどのようにセッティングを決めていくのかについてだ。

Q:右側のボタンはピット用と停止用ですね?
Bradleysmithelectronics0010m

スミス:ピットとストップって書いてある通りですね。停止は停止ですしピットリミッターはピットリミッターです。ピットリミッターが効いているとそれがインパネに表示されます。回転数は自分で時速60km以上にならないようにセッティングされてます。もちろん回転数はギアによって違いますけどね。だからある程度セッティングしなきゃならないんです。レインタイヤとインターミディではタイヤの周長が違うんですよ。フラッグ・トゥ・フラッグでも大丈夫なように、一番スピードがでるところで制限しているんです。

それに週末を通して気を遣わなきゃいけないんですよ。制限を超えないようにね。だって時速1kmの違いでもホームストレート全体にしたらそれなりになりますからね。だから本当にぎりぎりになるようにしっかり管理してるんです。あとレーダーガンとか、その他のあれやこれやの誤差も考慮にいれないとならないんです。ルールのぎりぎりを突こうとはしてますけど、ストップ・アンド・ゴーペナルティはごめんですからね。だから制限範囲内で収めなきゃいけない。自分で行けると思った範囲でしか行けないってことですね。


Q:フラッグ・トゥ・フラッグ用の電子制御マップもあるんですか?

スミス:普通はそのための緊急用セッティングを入れますね。スイッチ3とかに入れとくんです。緊急用セッティングは、例えばスリックで走っている最中に雨になって、でも走り続けなきゃ行けない時用ですね。そういう時は本当に必要になるんで使うことになります。(2015年の)ミザノでも入れていたんですけど、結局使いませんでした。スリックセッティングであとは右手頼りで走ったんです。まあその時のコースによりますね。どれくらい自信があるのかってことです。ミザノでは緊急用セッティングのことなんて考えもしませんでした。今そこで起こってることに集中してたんですよ。全然頭に浮かばなかったですね。転ばないようにするので精一杯だったんです。その瞬間の気持ちによるんでしょう。フラッグ・トゥ・フラッグなら普通はスリックでスタートするかどうかはわかっていて、スリックでスタートしたならスペアマシンはレインタイヤなわけですから電子制御マップもレインなわけです。レイン用電子制御セッティングというのは基本的にドライと同じように作ってありますから、僕の場合はまずはTCS(トラクションコントロール)を最大にしてスタートして、だんだん緩めていくって感じですね。


Q:TCS最大というのはどういう意味ですか?

スミス:最大に干渉させるってことです。TCSの干渉の仕方には2種類あるんです。強く干渉するか、こまめに干渉するかですね。だから干渉させるには二つの方法あるってことです。長く点火を切るか、こまめにたくさん切るかですね。一回ばつんと長く切ってもいいし、短時間、そのかわり何度も切るんでもいい。どちらにするかはライダーの好みやグリップやエンジンの特性にもよるんです。何をした以下によりますね。僕の場合は、TCSを最大に働かせるときには一回で長く点火をカットしてスライドを止める感じです。

そういう風にまずは強いところから初めて弱くしていくんです。そうすれば安全なセッティングでスタートしてグリップを確かめながら、これなら行けるとか判断しながら干渉を弱めていけますから。エンジンブレーキでも一番強いところから始めて、だんだん弱めていきます。スピードがのってきてコーナーでもどんどん傾けられるようになってきたときにエンブレが効いてスライドし始めたら最悪ですからね。

そこまでいったらあとはリーン角度とバンク角度ですね(訳注:ヘルプ!違いがわかりません!!)。ここでこの数値ならエンブレはこうで、もうすこし緩やかにして、この傾きならもう少し弱めにとか、この角度ならもっと強めにとかやっていくんです。本当に科学の世界なんです。


Q:そういういろんな要素が一つの電子制御マップに集約されて、その上でセッティングによってマップを変えていくんですか?

スミス:そうです。だからセッションの後は大忙しなんです。ヴァレンティーノですらこれまでより忙しそうにしてるのはマッテオ(フラミニ:ロッシのデータエンジニア)のインスタグラムを見てもわかるでしょ。こういう話をずっとしてるんです。僕らがやってるのはこういうことなんです。セッティングについてなんて語ってるんじゃないんですよ。電制制御の数値設定の話をしてるんです。このレベルになるとそれが結果を分けるんです。

フレームとかそういったものは今でもチーフメカやエンジニアで差がつくんですけど、電子制御についてはライダーの能力も大事なんです。ややシステムが退化したとは言えね。というか電子制御が退化したせいで、逆にライダーやエンジニアの重要性が増えたんだと思いますね。システムがすごく進化していたときはむしろ楽だったんです。今年から簡単なシステムになって、より時間がかかるようになったし、精確さも求められるようになった。ピンポイントでセッティングしなきゃならないんですよ。

だからこそワークスチームが今年は優位性を発揮してるんだと思います。対応できる人材がたくさんいるんですから。ライダーとして僕にできるのは、走って、スタッフに説明して、あとはスタッフが1人で3人分働くんです。全部をシステムにぶちこんで、でも要求が多すぎてうまくいかないこともあったりね。

Q:マップの切り替えについて戻りますけど、ピットサインでマップを切り替えるように指示されることとかあるんですか?

スミス:プラクティスでライダーが忘れちゃって、思い出させなきゃってなればありますけどね。あとはピット側がどうしても試したくてライダーに絶対やってくれってなったときくらいですね。そういう時だけですよ。ピットではマシンがどういう感じなのかはわからないんだし、それはライダーにまかされてます。ホイールスピンをわざとさせたいことだってあるんです。そうやって前に進めることもあるんですよ。前を走るライダーのインにねじこみたくて空転させることもありますし。

あと忘れちゃいけないのは、やりすぎると限界で走ってしまうってことですね。ぎりぎりまで傾けてるとスロットルをちょっとひねっただけでTCSが干渉してくるんです。そうなるとマシンを曲げられなくなるし、何もできなくなる。マシンを起こすとやっとパワーが出てくるってことになるんです。だから右手は本当にがっつり固定しなきゃならないんですよ。


Q:つまりスピードはマシンに制限されていて、それ以上ライダーは何かできないってことなんですか?

スミス:そうなんです。自分のリズムを作れてるときは問題ないんですけどね。速いリズムで走ってるならいいんです。でもバトルになって、誰かのインにもぐりこみたいときに思うようにできないんです。普段より動きが制限されてる。バイクの言うとおりにしかできないんです。そこで相手が加速して逃げようとしても自分でできることがないんです。ライダーとしては同じラップタイムを刻んでいたとしても、自分で何かできることは必要ですよね。


Q:他にもボタンはあるんですか?

スミス:以前はライト用のボタンがありましたけど、大事なものなので、今はレイン用マップを電子制御ユニットが検知したら自動的にライトが点くようになってますね。


Q:このライトはなんなんですか?

スミス:これはシフトライトですね。あとこれはIRTA(国際レーシングチーム協会:チームの集まり)が設定したものです。赤旗(レース中断)とか黒旗(ピットインせよ)とか、そういうIRTAが出すものはここでわかるようになってます。今はそれだけですね。旗の色はLEDの色の違いでわかります。遅ければ青くなるってことですね(訳注:周遅れのライダーがトップに追いつかれると青旗がでます)。黒いライトはないですけど、代わりにオレンジに光ります。黒旗かオレンジボール(マシンに問題があるのでピットインせよ)を意味します。すごく良くできているというか、まあ実際に走る立場からすると個人的にはもっと少なくしてくれ!って思いますけどね。じゃないと混乱するばかりですから。
Bradleysmithelectronics0013m

でも赤旗はマジで大事ですよ。オーストリア(のFP1)でのダニのクラッシュみたいに本当に必要な時がある。区間タイムの問題じゃない。IRTAは4区間どころじゃなく細かく区切って管理してるんです。次のコーナーのこともわかるレベルなんです。次のコーナーで旗が出てるってわかるんですよ。だから赤旗が出るような事故が起こったら、それがわかるようにするのは本当に大事なことなんです。
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へぇー、走ってるとスイッチを忘れたりするんですね。おもしろい。

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コメント

楽しませてもらってます。
リーンは、マシンの倒れ角
バンクは、逆バンク等
コースの角度ですね。
たぶん。

投稿: 輝 | 2016/11/03 22:17

>輝さん
 をを!なるほど!!

投稿: とみなが | 2016/11/03 22:39

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