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ダニ・ペドロサへのインタビュー:マスコミとの関係、そして990から800、1000への変化

なんか今シーズンは勝者が多かった割に穏やかなシーズンでしたねえ、というわけでもう最終戦です。
このタイミングでMotoMatters.comが(苦悩の人)ダニ・ペドロサへのインタビューを掲載しているので訳出。
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ダニ・ペドロサは今年でMotoGPの11シーズン目となる。その間に彼は様々な変化を目にしてきた。990の最後の1年を走り、800時代を経験し、今は1000ccに戻っている。多種多様なマシンで彼より長くMotoGPクラスにいてレースをして、勝てる力を持ち続けているのはヴァレンティーノ・ロッシだけだ。

ペドロサは次世代を担うライダーとしてMotoGPにやってきた。打倒ヴァレンティーノ・ロッシの最有力候補としてだ。そして昇格初年度から勝利を重ねるという見事なスタートを切り、力のあるところを見せつけた。しかし2年目、皆が注目したのは250cc時代のライバル、ケイシー・ストーナーだ。2007年、彼はワークスドゥカティを駆り、その結果に誰もが驚くこととなった。

2008年にはホルヘ・ロレンソがMotoGPの頂点の一人となる。「4人のエイリアン」という言葉もその頃からだ。ストーナーが2012年にヘルメットを置くと、こんどはマルク・マルケスがやってきて戦いのレベルを引き上げることになった。

これほどまでにレベルが上がったことでペドロサが成し遂げた驚くべき記録が霞んでしまったのだ。彼はMotoGPの11シーズンで29勝を挙げている。歴代8位の記録である。今シーズン、散々苦しんだ末にミザノで勝利をもぎ取ったことで、彼のモチベーションも力量もいささかも失われていないということが明らかになった。ペドロサは今でも優勝候補の一人なのである。

このインタビューはミザノで行ったものだ。これまでのMotoGPでの経験を振り返り、何が変わってきたのかを知りたかったのである。しかし結果は予想していたものとは少し異なるものとなった。会話の中でペドロサはマスコミとの関係、そしてそれがMotoGP時代の自分にどう影響したかを話してくれたのだ。彼は話しやすいライダーというわけではない。質問に対して、ただ首を縦に振ったり横に振ったりするだけで答えることもある。他のライダーだったら微に入り細にわたって説明してくれるようなことなのにだ。しかし彼が口を開くときは耳を傾ける価値があるのは間違いない。

Q:今年でMotoGPは11年目になりますがいろいろな変化を目にしてきたかと思います。最初にMotoGPに参戦したとき、予想通りのものでしたか?MotoGP初年度にはどんなことを感じたんでしょうか?

ペドロサ:250や125に比べるとメディアの力が桁違いに大きいって思ったのを覚えています。メディアの興味の大きさも違いますし、影響も違う。下のクラスでずっとトップにいたとしても全然違ってましたね。


Q:びっくりしました?

ペドロサ:ええ。悪い意味でね。メディアに対応する義務とかじゃなくて、気持ちの問題としてですけど。

Q:例えば批判とかですか?

ペドロサ:そうじゃないんです。バイクに乗りたいとか速く走りたいとかって情熱は125でもMotoGPでも変わらない。この場で自分を表現することの喜びは同じなんです。でも他の人に対してはそうじゃないんだってのにがっかりしたんです。みんな大きいクラスのことばかり気にしている。まあ仕方ないんですけどね。日曜の3レースの中ではいちばん目立つわけですし。

Q:125や250で成し遂げたことの価値が下がってしまったような気がしたんですか?

ペドロサ:そうじゃないですね。世界チャンピオンになれたってのはすごく大きいことだったし、1年に一人しかなれない。でも当時はみんなも同じようにかんがえているんだと思ってたんです。でもクラスを上がってみたらそうじゃないって感じたんです。
 125や250の時は僕が経験してきたメディアまわりのことって普通のことだって思ってたんです。でもMotoGPに上がってみたら、全然違っていた。対応範囲がものすごく広がったんです。そこで違いを認識したんです。自分がやってきたのはほんの数%分にすぎないってね。

Q:英語では「小さい池の大きな魚(訳注:井の中の蛙)」って言い方がありますが、自分がいたのが小さい池だったって突然気付いたということですか?それで気を散らされたりしました?そのせいでMotoGPへの適応に集中できなくなったとか?

ペドロサ:そんなことはないです。話す言葉のひと言づつに気を遣わなきゃいけないってのは楽じゃないですけど。発言をねじ曲げて伝えることで金を稼ごうとしている人はいつだっていますからね。最初はいろいろ失敗しますよ。人のことを疑わないですからね。

Q:つまり毎年少しずつメディアに対しての発言に気を付けるようになってきたってことですか?

ペドロサ:気を付けるっていうのとは少し違いますね。言いたいことを常に100%言えるわけじゃないってことですね。本当の気持ちとか真実がそこにあっても、その時点ですべてを誰かと共有できるわけではない。そういうことがだんだんわかってくるんです。

Q:そういうことにいらついたりはしませんか?確かに何か起こった後にインタビューすると「いや、本当はこうで、こういう理由でだからOKですよ」って言ってたのに、後になって「あの時は言えなかったけど本当はちょっと違ってたんです。でもシーズン途中だといろいろ影響するから言えなかったんですよ。シーズンが終わって振り返れば違うことも見えてくるし」って言うライダーもいますね。あなたもそうなんですか?気持ちをそのまま言えないことっていらっとしませんか?

ペドロサ:そういうこともありますね。状況によりますけど。でも確かにそういうこともあります。でもたいていは別に自分の気持ちや何かをわかってほしいと思ってるわけじゃないですから。だから実際は話せなくて苦労するってわけじゃないんです。

Q:話さなきゃならない方がいらいらすると。

ペドロサ:ですね!(笑)

Q:MotoGPでは990で走って、翌年は800になって、全然違うマシンになりました。たいへんでしたか?990から800、そして1000へと変化を体験してきていますし、今は統一電子制御となりました。それで苦労したのか、それとも楽できるようになったのかってことですが。

ペドロサ:もちろん苦労してますよ。990に乗り始めたときは本当にマシンがすごかった。またがってタイヤをはめてあとは走る。どうやって乗るかとかどうやって速く走るかとかは乗って学ぶしかなかった。
 でも突然すべてが変わったんです。MotoGPの経験がないというか、1年だけで、マシンの開発までしなきゃならなくなった。タイヤの開発もするし、しかも同時にレースもやらなきゃならない。それが2シーズン目なんです。全部がうまく開発できて、うまくはまればOKですけど、そうじゃなければまたいちからやり直しで問題を解決しなきゃならない。だから本当にたいへんなんです。もちろん990に乗り続けられれば最高でした。同じマシンで同じチームですから。それなら自分が一歩前に進むだけで済むんです。

Q:もう一回デビューするって感じだったんですか?

ペドロサ:当時ホンダは800をまともに走らせるのに苦労したましたからね。

Q:800は難しいマシンだったんですか?

ペドロサ:ええ。1年目と2年目はそうでしたね。

Q:ゼロからやり直す感じだったんですか?

ペドロサ:プロジェクトとしてはそうですね。

Q:おもしろさはどうでしたか?800は乗ってもつまらないマシンだったんですか?

ペドロサ:ちょっとつまらなかったですね。

Q:250みたいな感じだったんですか?それとも違う感じです?

ペドロサ:違いましたね。パワーは250とは比べものになりませんし、重さもかなりあった。まあはっきりしたことはわからないですけど、250とは違いましたね。

Q:今乗っている1000は前より排気量も大きくなってパワーも出るようになって、パワーの出方もスムーズです。そしてミシュランになりました。今の方が乗りやすいですか?800よりまた楽しくなってるんでしょうか?990に近いとか。それとも全然違います?

ペドロサ:いや、全然違いますね。今のマシンは全然違う。マシンの乗り方も変わっています。ほとんど全員ブリヂストンに慣れ親しんでいた時代は終わってしまいましたしね。だからタイヤもマシンもどちらもうまい方向にもっていきたい。
 ライダーもタイヤも僕がMotoGPに参戦した年の990とは全然変わっているし、ライディングスタイルも変わっています。990時代は序盤から攻めるなんてほとんどありませんでした。序盤は様子を見ながらタイヤを温めるんです。だから1周目はかなり慎重に走っていました。前には行きたい。ラインも確認したい、誰が速くて誰がそうでないかも観ておきたい。それがはっきりしたらブーン!って全開です。レース中盤か終盤でチャンスがあれば仕掛ける。でも最近、って言うか800になってからの戦略は「置いてきぼりはばーか」ですからね。

Q:ケイシー・ストーナーのせいだって言う人もいますが、ことによったらあなたのせいですか?

ペドロサ:ですね!990のときはプラクティスでもチャンスがあれば機会を逃さず全力で走ってました。みんなが気がついたときには僕はもう前に行ってる!昔からそうだったんです。

Q:あなたが勝つと、最初の1周目半で差をつけることができたからだって文句を言う人もいました。最近はそういう走りが見られませんが?

ペドロサ:最後にそういう勝ち方をしたのはセパンですね。

Q:今はそういう走りをするのが難しくなっているんですか?何かが変わったんでしょうか?

ペドロサ:そうじゃないですね。今は追いつかれないようにしたり、いいポジションを確保するのがもう難しいんです。みんな最初から攻めていきますから。集団に飲み込まれたりしたら…

Q:レースは1コーナーで終わったようなものだってなるんですか?それで予選が大事になったと?

ペドロサ:ええ。でないとポジションを戻すだけでレースが終わっちゃうんです。
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そっかー、ダニのロケットスタートがなくなったのは、みんながロケットスタートするからなのか。

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コメント

ダニこそは、4ストになってからのホンダmotoGPの生き字引と言っていいですよね。
ちょっと大袈裟?でも11年間ファクトリーホンダ一筋ですからね。
もの凄く恵まれているも言えるでしょうか。
反面、モテギで骨折した時に切ない気持ちも湧いてきました。
身体も痛いけど心もだったんじゃないかな?と。
既にダニは、身体の相当な部分を骨折しているし、そのモテギでチームメイトは、はや三度目のチャンプを決めました。
イヤ、それは見ている方の先入観で、走っている本人は違うでしょうか。
後ろを振り返っちゃいけないんだった。
自分を信じて走るのみ。
日々トレーニングし、感性を研ぎ澄ませ戦っていく。
そうあるのみ!
前に向かって。
走れ!ダニペドロサ!

投稿: motobeatle | 2016/11/15 20:47

>motobeatleさん
 いやぁ、なんとか一回くらいチャンピオンを!!

投稿: とみなが | 2016/11/15 20:59

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