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俺の名はマニアック

先日のオーストリアGPでドゥカティにほぼ10年ぶりの勝利をもたらすMotoGPキャリア初優勝を飾ったイアンノーネ。乱暴者のイメージが強い彼を、だからこそ好きだと告白するMat Oxley氏の愛ある記事をMotor Sport Magazineより。
あ、マニアックってのは日本ではマニアが嵩じた人という意味で使われてますが英語では気狂いって意味です。
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…生まれついての狂犬野郎。オーストリアGPの勝者であるアンドレア・イアンノーネは本当は何を考えているのか?

私はアンドレア・イアンノーネが好きだ。そうだ。はっきり言っておく。私が彼を好きなのは、彼がわかりやすい悪役だからだ。まるでピーターパンのフック船長のようだ。

彼が土曜にポールを獲得した後の様子はまさにそうだった。辺りを睥睨しながらパルクフェルメに戻ってくる。まるで彼がサーキットの王であるかのようだった。まあ実際それに近い状態だったのは事実だ。

イアンノーネの牙も爪も血まみれである。素晴らしい。もちろんアンドレア・ドヴィツィオーゾやホルヘ・ロレンソと違って自分が彼と一緒に走らなくて済むからそう言えるのだが。二人はそれぞれアルゼンチンとカタルニアで彼に撃墜されている。そしてユージーン・ラヴァティはオーストリアのプラクティスで危うくはじき飛ばされそうになっていた。そうそう他にも犠牲者はいる。去年のフィリップアイランドのカモメだ。

27歳になるイタリア人の彼はかつて一度たりともいい人の振りをしようとしたことはない。2週間ほど前、ソーシャルメディアで自分を邪魔する奴は誰でも殺してやると言っていた。その表現は比喩だと願うばかりだ。もし彼がこの記事を最後まで読んでくれるとしたらなおさらである。

イアンノーネは常に問題児だった。彼が最初に有名になったのは2009年のミサノでの事件だ。最終ラップの最終コーナーで気狂いじみた(驚きだ(棒))動きをし125ccのポイントリーダーだったポル・エスパルガロを道連れにリタイヤすることになったのだ。二人はグラベルでにらみあい、そしてイアンノーネは彼が道連れにしたその犠牲者に向かって追い打ちとなる頭突きをかましてみせたのである。そのとき彼はイタリアのテレビでこう言っている。「スペイン人はみんな大嫌いだから」。こうした不適切な行為の結果、彼は数千ユーロの罰金を科せられることとなった。

GPに参戦した頃のイアンノーネの眼はまるでナポリの裏通りをうろつく殺し屋のようだった。今でもそれは変わらない。参戦から何年もかかって彼は自身の悪名を高め続け、そして今では誰もが彼に対して用心深くなっている。「おい気を付けろ、イアンノーネが来たぜ」。レースの世界では別に目新しい話ではない。

「相手をびびらせることが一番大事なんだ」そう言ったのは最高峰クラスで5回もタイトルを獲得したミック・ドゥーハンだ。数年前のことである。「そうやって思い知らせておけば勝手に『やつは自分に優しくしてくれそうもないからスロットルを閉じるか』ってなってくれる」

ドルナの中でも議論が沸騰しているダッシュボードを使った通信システムについて誰かがジョークを言っていた。「IPW灯」をつけた方がいいというのだ。Iannnone Proximity Warnig、すなわちイアンノーネ接近警報である。奴が来た!安全を確保せよ!という意味だ。

Moto2開幕の年となる2010年、彼もMoto2にやってきた。そして彼は無茶苦茶な接近戦ばかりのMoto2クラスにぴったりマッチしていた。当初の2〜3年は肘と肘、カウルとカウルがぶつかり合う戦いが繰り広げられていたのだ。「接近戦の時ほど抜くのが楽しいんですよ」と彼は言う。「抜き去る瞬間ってほんとに息を呑むんです!」

2013年にはMotoGPに昇格。そしてMotoGPマシンも乗りこなせることを証明してみせた。とは言え、彼の走りは相も変わらず気狂いじみていた。彼のライバルの多くは彼が危険すぎると主張していたし、その主張には充分根拠があったと言えよう。

その昔、彼のツナギには「気狂いジョー」というニックネームが貼ってあった。スクーターで転びまくっていた彼に学生時代の友達がつけた名前だ。2年ほど前からはそれを「ザ・マニアック」と変えている。同じ意味に見える。しかしいつでも葉巻をくわえた黒づくめのマネジャー、カルロ・ペルナートが私に教えてくれたのだが、違うのだそうだ。

「乗り方がマニアックってことじゃないんですよ」とペルナートはまじめくさって言った。「彼自身がまじマニアックなんです」

私のイタリア語の辞書によればこの言い方は正しくない。「Maniaco」というのは何かに取り憑かれたとか何かに夢中という意味だ。私はその辞書の説明に納得していたが、それは素直すぎる考えだったようだ。

後になってやっとわかった。「マニアック」というのはスロットルを握る右手のことではない。彼の体の別の部位のことだったのだ。

しばらく前、私の仕事仲間がイアンノーネにシーズンオフに何をする予定なのか聞いたときのことだ。「トレーニングとファック」それが彼の答えだった。

イアンノーネは決して恥ずかしがり屋ではない。自分の筋骨隆々の裸や、プライベートジェットに乗り込みどこかの国でどこかの国の若い女と一緒に飲んでいる姿をツイートし続ける(訳注:むしろインスタグラム)。こうした派手な生活がたくさんの人をいらいらさせていることを彼もわかっているのは間違いない。彼はそれを楽しんでいるのだ。彼自分がいかに恵まれているかをリング上で見せびらかすために威張って歩くボクサーなのだ。

彼のウェブサイトもぜひ訪れて欲しい。実に楽しいのだ。他のレーサーのサイトとは全く違うものを眼にすることになる。

それは「みんな集まれ」と始まる。「俺の名前はアンドレア・イアンノーネ」

そしてこう続く。「俺にはタトゥーと指輪があるぜ。誰もが俺を目立ちたがりと呼びやがる。でもそのためにやってきた。ここまで俺はやってきた。兄貴のアンヘロ追っかけて俺はレースを始めたぜ。俺にはレーサーの血が流れてる。兄弟げんかをしてた頃には、親父はボクシンググローブを渡して俺らを部屋に閉じ込め、部屋が静かになったその時、親父はドアをそっと開け、疲れた俺らをベッドに寝かす。親父は俺を信じてくれた。親父がいたから今の俺がある。わかるかい?全てが親父のおかげなんだぜ」

「野獣の俺とはおさらばしたんだ」とさらに続く。ザ・マニアックということだ。「でもレースがないときゃ野獣が現れ、俺はそいつを解き放つ。レースの俺はプロフェッショナル。精密機械だ信じてくれよ。信じないなら俺といっしょに、俺のやり方感じてくれよ、見てくれ俺のやり方を。くらわしてやる!」(リリックの全文は以下をご覧あれ)

こうした馬鹿げた虚勢や手に負えない自己愛や男根主義にもかかわらず、というかだからこそ私は彼が好きなのだ。彼は誰から見ても悪役で狂人だ。しかもコース上でもコース外でも同じなのだ。そしてバイクレースにはこうした狂人が必要なのである。

俺の半生
みんな集まれ
俺の名前はアンドレア・イアンノーネ
モーターサイクルレーサーだ。今はドゥカティ・ワークスチームでMotoGPを走ってる。
生まれはヴァスト、1989
8月9日が誕生日だぜ
俺にはタトゥーと指輪があるぜ。誰もが俺を、目立ちたがりと呼びやがる
でもそのためにやってきた。ここまで俺はやって来た
兄貴のアンヘロ追っかけて俺はレースを始めたぜ
俺にはレーサーの血が流れてる
兄弟げんかをしてた頃には、親父はボクシンググローブを 渡して俺らを部屋に閉じ込め
部屋が静かになると親父はドアをそっと開け、疲れた俺らをベッドに寝かす
親父は俺を信じてくれた
親父がいたから今の俺がある。わかるかい?全てが親父のおかげなんだぜ
小学校に上がった初日に親父は俺にこう言った。「もし殴られて帰ってきたら俺にもっと殴られるからな。忘れるんじゃない、相手には倍返しだぞ」
だから俺にちょっかい出した奴ら俺には必ずぶちのめされてた
必ず俺はキレていた
ある時親父は俺に言った。「おまえは何をしたいんだ。仲間と遊んで満足か?それとも何かになりたいのか?」と
そして親父は全てを売っ払い、俺をサポートしてくれたんだ
2004年に15になってイタリア・スペイン、レースの暮らし
スタート苦手で途中で追いつき残り2周で転ける日々。自分を抑えられなかった俺。でもどうしてもなんとかしたい
それがこの俺、限界知らず
ゲームは必ず勝ちたい気持ち。ルールなんかは知らなくてもな
負けたらでっかく叫んでやるぜ
信じないなら俺といっしょに
俺のやり方感じてくれよ、見てくれ俺のやり方を

俺は私学を退学になった
ダチの部屋をテレカで開けようとしたからだ
でも退学じゃなきゃ俺が逃げてた
お願いするより謝るのがマシ
なぜかは後から教えてやるよ
次のシーズン世界に出たぜ。125のチャンピオンシップ
初の勝利は2008年、5月4日の上海だった。人生最高の1日だった
今でもそれは同じだぜ
あのとき勝ったマシンは今でも俺のヴァストの納屋に入れてる
俺の人生全部そこにある
ヴァスコを聴いてクラブ・ドゴを聴く
俺の好きな歌詞「クリスタルグラスを割ってやったぜ、だってそれが得意技だから」
わかったかい?
自分の才能信じてやるんだ、そこがすべての始まりなんだ
2010から12年までMoto2クラスで走っていたぜ
MotoGPではプラマック・ドゥカティチームで2年走った
そこで学んだ3つのことがら、考えること耐えること、そしてゴールを目指すこと

人生大好き
服も好き
ヴァスト・マリナの俺の家も好き
シャワー室にはタイルで描いた夢見る少女
リビングルームにゃパワフルステレオ
モータホームも愛しているぜ、ドライブするのはアウディのRS6ビターボだ。最高パワフルマシンだぜ
シフトダウンの音も最高、爆竹みたいな音がするんだ
ダチとの遊びも大好きだけど、一緒にいくのはほんとのダチだけ
約束守るは男の基本
100回失敗してたとしても、101回目にホントにすると、俺が言ったら実現するぜ、そいつは信じてくれてもいいぜ
誰かを抜き去るときのアドレナリンとスピードが最高
べたべたするのは好きじゃない
朝寝は最高
食うのも遅くに
寝るのも遅くに
そしてトレーニング
俺のモットー聴かせてやるぜ「びびるな、いつでも思い切るんだ」
いつでも俺は振り切ってるぜ、そいつはチャンスをつかむため
失敗するかもしれないけどな、だから謝る方がマシって言ってる。誰かにお願いするのはやだね
気持ちを隠すつもりはないぜ。それで自分が傷ついてもな
野獣の俺とはおさらばしたんだ
でもレースがないときゃ野獣が現れ、俺はそいつを解き放つ。レースの俺はプロフェッショナル。
精密機械だ信じてくれよ。信じないなら俺といっしょに、俺のやり方感じてくれよ
見てくれ俺のやり方を
くらわしてやる!

俺の名前はアンドレア・イアンノーネ
モーターサイクルレーサーだ
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おうふ、本文の倍かかったよ…。

ちなみにこのリリック的なものは本人じゃなく、Writeandrollsociety(おそらくヒップホップっぽい詩作集団?)のMoreno Pistoという人が書いていますのよ。

あと、イアンノーネの犠牲者カモメはこちらで。

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