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マルク・マルケス:シーズン中盤の告白「惑わされないで、僕は相変わらずマルク・マルケスだよ」

8耐も終わりましたがまだシーズン開催までは少し間がありますね。
というわけで少し古い記事ですがマルケスのインタビューをPecinoGPより。まずは前編。
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スペインのスターライダーである彼が乗っているのはMotoGPの中で最も戦闘力が低いと見なされるマシンである。にもかかわらずランキングトップの座を固めてサマーブレイクを迎えることができたのはどうしてだろう?誰もが知りたい疑問である。あなたも知りたいでしょ?だったら是非読み進めていただきたい。この疑問にマルク本人以上にうまく答えられる者はいないはずだ。

僅か3か月ほど前、シーズンがスタートする時点でマルク・マルケスがシーズン中盤をランキングトップで迎えられることに賭けることができたのは彼の熱狂的なファンと彼の家族くらいなものだった。マシン自体の素性に問題があるせいで重大な技術的問題を抱えているにもかかわらず、マルケスはそのダメージを最小にすることができた上、ライバルを圧倒している。そのおかげで彼はサマーブレイクトップの座で迎えることができたのだ。

"トップ”というのは単に2位のホルヘ・ロレンソに48ポイント、3位のヴァレンティーノ・ロッシに59ポイントの差をつけているランキングだけの話ではない。レースに臨む姿勢がとんでもなく成熟してきてもいるのだ。もちろん後半のレースには200ポイントも残っている。現時点のポイント差は決定的なものではないということだ。しかしそれでもずいぶんなポイント差である。

彼が中々良いポジションにいるというのがサマーブレイク前のインタビューの最初の話題だった。「そうですねぇ、マシンに問題を抱えているのにランキングトップに立っている理由はひとつではないんですよね。レースで勝ちまくってるわけでもないし、全セッションで最速タイムを出しているわけでもない。でも一番安定しているというのがひとつの理由かもしれませんね。いままでこんなことはなかったんでしょ!でもそうですね、安定性がでたおかげで今ランキングトップでいられるんだと思います」

新型マルク・マルケス

安定性…、どのレースも自分の最後のレースであるかのように走っていた「一か八か」のライダーが安定性を確保したということは、間違いなくマルクが自分自身を変えようとして多大な努力を払ったということである。彼が勝利以外の何かを考えて走っているなど数か月前は想像もできなかったことだ。しかし昨シーズンは転倒続きでシーズン序盤にタイトルの望みを失ったことで、マルクは「注意深く」走ることを学んだようだ。「いや注意深いというわけじゃないんです」。私が自分の考えについてたずねてみると彼はそう答えた。「いま実際に起こっていることとはちょっとニュアンスが違う言葉ですね。例えばオランダではかなりのリスクを冒してます。レースを通じてリスクを冒したわけじゃないけど、危ない瞬間もいくつかありました。そこでクラッシュしていたら、雨が降ってたから簡単にクラッシュしてた可能性もありましたし、そうなったらすべてがおじゃんになってましたね」

マルケスは今シーズン何度か「気持ちだけではなく"頭を使って"レースをするのは自分にとって簡単なことではない」と言っている。実際彼がタイトル争いを忘れた「楽しむため」だけにレースをしたのはムジェロだけだ。そのレースで彼はロレンソとフィニッシュラインまで熾烈なバトルを繰り広げたのだ。「ええ、ムジェロは今年一番リスクを冒したレースでしたね。モントメロも最後の2周まではそうでしたね。そこで僕は『わかったもう充分だ!こんな風に走ってたらクラッシュする』って思ったんです。でもモントメロではけっこうヤバい瞬間が何度もあったんですよ。あの2レース、ムジェロとモントメロで自分がどれくらいリスクを冒せるかわかりましたし、オランダでもドライなら結構リスクを冒せることがわかった。でも決勝日はあんなコンディションでしたからね」

タイトル争いのことを考えながらレースをするのは勝利を目指して走るほどは楽しくない。マルケスはレースが「決して終わらないように見える、とにかくゴールが遠い」と言っている。例えばアッセンのオランダGPでは自分のレースDNAに逆らって、ジャック・ミラーとの優勝争いから自発的に身を引いている。だからこそ彼は2位になったのを優勝したように喜ぶことができたのだ。彼は自分の本能を制御してみせたのである。

「ええ、その通りです。かなり辛いレースでしたからね。ドライでは注意すべきポイントが3か所あるんですが、雨だとコースのどこもかしこも気を付けて走らないといけないんです。あらゆるコーナーで最大限に注意を払わないといけない、本当に疲れるんですよ。、ドライでも疲れますけど、それって体力的な話出、でも雨だと精神的に疲れ切ってしまうんです。アッセンの決勝日の夜はすごく早寝でしたよ、精神的に本当に疲れるレースでしたからね。

2016年型RCVの難しさ

マルケスが変化せざるを得なかったのはHRCが投入した2016年型RCVのせいである。マルクが2016年の開幕前に選択したエンジンは今シーズンから導入された統一電子制御ユニットとのマッチングが今ひとつだったのだ。シーズン当初は昨年のシステムと比較して今シーズンのシステムは30%程度の能力しかかなったと彼はインタビューで教えてくれた。30%である!

「ええ、でも今はそれほど悪くはないですよ。もうかなり去年のものに近くなってきてます。85〜90%くらいまで来てるんじゃないでしょうか。問題は他のメーカーは100%使いこなしてるってことですね。特にドゥカティはそうですよね。ドゥカティの後ろにつくと、前と同じことが起こってる。加速でおいて行かれるんです。でもこれはエンジンだけの問題じゃないと思ってます。電子制御の問題でもあるんです。去年も加速では負けてましたけど、今年は新型電子制御のせいでさらに差がついてますね」

30%から85%!マルクが序盤に使っていた電子制御の性能を考えれば、現時点で彼がランキングトップにいるというのは実に驚くべきことである。ロッシやロレンソという強力なライバルと戦いながらここまで開発を進めてきたのだ。

「ええ、本当はシーズン前に開発しなきゃいけないんですけど、でも今年のプレシーズンテストでは、フィリップアイランドでトップタイムが出せてましたしね。でもあそこは電子制御があんまり関係ないコースでもあるんです。3速とか4速の高速コーナーが主体ですからね。もちろん電子制御は関係しますよ。どこでもそれは同じです。でも他のコースほど影響はしないんです。例えばトラクションコントロールもそれほどエンジンパワーを切ってこない。でも11月にヘレスで電子制御をテストしたときにはレディングやペトルッチやバルベラなんかに前に行かれてしまった。2月のマレーシアでは8番手か9番手だった。今でもまだ出遅れてるんです」

つまりは新型電子制御とホンダが新たに導入した逆回転クランクシャフトのエンジンの相性が悪かったというか、今でも悪いということなである。昨シーズンまではHRCのエンジンは唯一順回転のクランクシャフトだった。エンジンはパワーは出るが、引き替えにRCVは曲がりにくくウィリー制御も難しいところを、ホンダのとんでもなく洗練された電子制御で手なずけていたのである。しかしそれも今シーズンから使えなくなってしまった。

「新しいタイプのエンジンでうちのエンジニアはウィリーを減らして加速を改善しようとしててたんです」とマルケスは去年型からの違いを説明してくれた。「理論的にはウィリーが減るはずなんですが、でも実際にはそれほど変わらなかったですね。高速コーナーでも理論的には速くなるはずでした。ムジェロやモントメロ、カタール、フィリップアイランドとかではいつも苦労してましたからね。高速コーナーではかなり他のメーカーに近づいてきてますよ。でも逆にマシンがうまく減速できなくなったんです。前のモデルはあるサーキットではとんでもなくすごくて、別のコースではとんでもなく難しいってタイプだったんですが、今年のマシンでも苦労はしてますけどコースによる違いが小さいんですよ」

楽観的な見方をするなら、サーキットによる違いが少ないのであれば新しいサーキットでは楽に走れるということだろうか?…大間違いだ!「そこは同じですね。結局もっと速くって気持ちは同じなんですから。どのコースでも最速なら楽に走れるでしょうけど、実際にはそうじゃないわけですし。どのコースでも最速というわけじゃないんだし、でも最速になりたいんですからね」。マルクはライダーとして「成長した」かもしれないが、でもそういう気持ちはあるわけだ。それどろか勝利への渇望をかけらも失っているわけではないということである。その口調はあたかもこう言っているかのようだった。「惑わされないで下さいね。僕は今でもマルク・マルケスですよ」
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夕ご飯の買い物してきたら後編を訳します。「いつかバカ呼ばわりされることになるかもしれないですけど、それでもモントメロでのロッシの握手は信じてますよ」というネタ。

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