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ヴァレンティーノ・ロッシにインタビューするには

人気者へのインタビューって(当然ですが)アポ取りから苦労します。Motor Sport Magazineより
今回はEd Faster氏の記事。
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ルマンで9回勝ったレーサーにインタビューしたい?問題ない。現役グランプリドライバー?もう少し難しいけど不可能ではない。じゃあヴァレンティーノ・ロッシに賞を直接渡したいとなったら?うーむ、幸運に頼ろう。

ダミアン・スミスが私に彼の9つの世界タイトルを保持しているライダーにモータースポーツ殿堂入り(訳注:Motor Sport Magazine誌主催)に顔を出してもらうよう私に頼んできたときから「幸運」の2文字が頭を離れなかった。ロッシは5月31日のイベントに出席できなかったので、MotoGPレースに出向いて彼が賞を受け取るのを撮影しなければならなかったのである。どうしたらそんなことができるのだろうか?。

まず最初にやることはロッシの予定帳に隙間を見つけることだ。普通の予定帳ではない。普通ならレース開催期間でもどこかしらに時間を見つけることができる。特に賞をもらえるというならなおさらだ。しかしロッシの場合は違う。彼の自由時間はほとんどなく、しかも高くつくのだ。彼を捕まえる最高の方法を模索しているなかで、2時間ばかりの仕事のために7桁(邦貨換算:億円単位)積んでも断られたという噂まできいたほどである。ヤマハの広報は彼のスケジュールについて「ドラマッチクなほど大忙し」だと言っていた。要するに希望は持てなかったということである。

最初にコンタクトするのはヤマハだ。ロッシはヤマハにとって金の卵を産むガチョウであり、当然のことだがそのガチョウが卵を産まなくなるまで疲れることのないように気を遣っている。ヴァレンティーノ・ロッシのおかげえどれくらい新車を売ることができるだろうか?これほどの重荷に耐えることができるスポーツマン/スポーツウーマンはそうはいないだろう。イタリア史上だけでも2012年に26万台もの新車が売れているのである。

e-mailへの返信ではずいぶん無礼な広報もいる。ヤマハは通常は非常に新設だが今回ばかりは彼らから返答を引き出すのに少々時間を要することとなった。それも当然だった。こちらがロッシを5分間捕まえようとしていた最中に、ホルヘ・ロレンソが2017年にドゥカティに行くのは悪くない考えだと決めたからである。完璧なタイミングだった。ありがとうホルヘ。

次に苦労するのはどうやって撮影するかだ。「カメラでだ!」と言いたくなるのも当然だ。もちろんそんな簡単な話ではない。サーキット敷地内のMotoGPの映像権はドルナが保有しているので許可が必要なのである。その他にカメラクルーにも許可が必要で、こちらはBTスポーツ(訳注:英国のMotoGP放映権を持つテレビ局)の管轄だ。

ヤマハとのメールのやりとりの末、ヘレスのスペインGPで金曜のメディア対応の後にロッシの時間を確保することができた。この許可が下りたのが4月20日だったのだが、これはフライトの前日だった(予約はしてあった)。一方BTスポーツとドルナに対する交渉はまだ続いていた。マット・オクスレイがあらゆるコネを使ってくれたのだが結局金曜午前中にサーキットで返答をもらうことになってしまった。マットはたいていの人より様々なチームに通じており、しかもロッシの伝記まで書いている(購入はこちら)。誰かがうまく差配してくれるとしたら彼をおいて他にはないということだ。

サーキットに到着した我々はドルナとの打合せをセットした。Motor Sport Magazineのバックナンバーと、丹精込めて書き上げたとびきり丁寧な依頼文も持参した。ドルナは充分理解してくれたようだ。許可を出してくれたばかりか、2015年シーズンのロッシの映像を殿堂で流すことまで許してくれたのだ。ありがとうドルナ。

さて次はBTスポーツだ。彼らとは4時からのマルケスの会見で会うことにしていた。もし彼らが拒否したら私たちには代替案はなかった。結局彼らはマルケスの会見には現れず、私たちはテレビ放映車を追いかけて彼らにお願いすることになってしまった。答えはこうだった。「もちろんいいですよ」。ありがとうBTスポーツ。「ドルナからは許可を得てますか?」
「ええ」
「見せて頂けます?」
「えーっと、あー、許可はもらってるんですけど書面はないんです」。BTスポーツが撮影許可がないものを撮らせたいはずはない。しかし私たちは彼らにドルナに電話で確認させることにした。「私たちが行かなかったらそれがですからね」というのがBTスポーツの返答だった。それで充分だ。

ロッシの会見が始まる直前、ヤマハが私たちにインタビューでの質問は3つ以内にしてほしいと言ってきた。「でも10分もらえるってことでしたよね?」

「わかりました、じゃあ4分で」

BTスポーツは来てくれた。約束通りだ。そしてやっとその時間がやってくる。「ヴァレンティーノは会見の後はコーヒーを飲むのが楽しみなんですよ。飲み終わったら賞を渡していいですよ」。ヴァレンティーノのコーヒータイムはかなり長いものだった。彼がホスピタリティの仮設仕切りの裏から出てくるということがあるのだろうかと心配になり始めた。そして突然声がする。「OK、OK、準備はいい?」

「ええ、万端です」

それだけだった。さらに待たされたのだ。3分後、「OK、彼の準備ができました。そちらはどうですか?」

「ええ…」。そして彼が現れた。満面の笑みを浮かべて会見用の帽子を被っていた。私が彼に目的を伝えるとすぐに彼は受賞スピーチを始めてくれた。準備なし、メモなしだ。撮影が終わると彼とヤマハ広報チームについてトラックに入り、4分間のトークを行った。ここまでは予定通りだ。しかし4分19秒後にヤマハの広報チームが上がってきて全てを終わらせようとした。そこでロッシが言う。「シー、シー(訳注:イタリア語で「わかったわかった」)。そう言って彼は続けたいという気持ちを表したのだ。こういうことは前にもあったし、それほど驚くほどのことではない。

午後6時前、パドックに戻るとロッシは既に次の予定をこなしていた。彼のこれまでのキャリアのハイライト映像も見せたいのだが放映権の関係でこれはモータースポーツ殿堂イベントで1回限り流すことしかできないものである。スポーツを金にする現代社会では普通のことだ。実際数秒の映像を使うだけでも数千ポンド(邦貨換算数十万円)の契約を要求してくるレースのシリーズもあるくらいだ。ドルナは1ペニーも要求することはなかった。

ロッシの殿堂入りは遅すぎたくらいだ。とは言えそのためにはいろいろなハードルが存在しているのである。
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インタビューはこちら。明日気持ちに余裕があればディクテします。

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コメント

なんか懐かしくも赤裸々な描写で笑ってしまいましたw
ヴァレくらいの『超大物』になるとすべてがもう事務的に進むのでかえって楽だと思いますけどねぇ。
『大物』『プレ大物』あたりが、段取りから内容、カットまで微妙に大変ではなかろうか、と。

相手が『しゃべりたがってる!』コーナに差し掛かった時のスロットルワーク。
それがメディアさんの腕のみせどころです^^

投稿: りゅ | 2016/06/25 13:35

>りゅさん
 まあ確かにマネジメントがしっかりしてる方が楽かもですね。

投稿: とみなが | 2016/06/26 14:22

いつも楽しく拝見しています。
こういう、レースの裏側の話もおもしろいですね。
数年前、まだドゥカティに移籍する前のヤマハのロッシが、
もてぎでノビーとの対談インタビュー(それなりの時間)を受けていたんですが、あれも凄いことだったんですねぇ。

投稿: Nom | 2016/06/28 23:34

>Nomさん
 ですね。あれは昔の先輩パワーかもですがw。

投稿: とみなが | 2016/07/04 22:12

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