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ペドロサ「ホンダ残留がいつでも僕の最優先事項だ」

まわりで憶測を巡らすくらいなら本人に直接聞くのが確かだよね、ってことでダニに直接アタックしたPECINO GPの記事です。もちろん直撃インタビューをできるだけの信頼関係は重要。
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フランスGPが開催されたルマンでは一躍時の人となったダニ・ペドロサだが、それは彼のコース上のパフォーマンスが理由ではなかった。彼が2017年、2018年の2年間ヤマハでM1に乗るという契約にサインしたとスペインのメディアが報じたからである。つまり彼は10年間所属したレプソル・ホンダのHRCチームを離脱するということだ。なんたる驚き!
このニュースについてはあらゆる関係者が公式には否定しているが、ペドロサ自身はいくつかのオファーがきていると認めている。「ええ、それは本当ですよ。いくつかのメーカーからオファーをもらっています。でもホンダが最優先ですね」。そうきたら、いつ将来について決めるのか、そしてそれに期限は設定されているのかについてたずねるのは当然だ。「こういうことを決断しなきゃならないときは、いろんなことを考慮しなきゃならないんです。それにタイミングも重要ですね。あらゆることを分析してみて、その上で決めますよ」。ダニの口調は静かだった。じっくり考えて返答するというのはMotoGPでの10年間で培われた彼の良識でもある。「これまでしてきた決断というのは正しかったと思ってます。これまでの経験を大事にして、それを軽く見ないようにしたいですね」

世界チャンピオンになるという誰もが望む最高の目標は達成していないということは、特にHRCとしては変化を考えるべき段階にきている可能性もある。では彼に対するオファーには皆がほしがるチャンピオンの座をもたらしてくれそうなものが含まれているのだろうか?「僕の目標はもちろん世界チャンピオンになることですよ。そのためには勝てるパッケージ、そしてやる気にさせてくれるパッケージを手に入れることがいちばん大事なことのひとつですね。一生懸命がんばって、いい状態で、そして良いチームがあれば勝てるチャンスがあるわけだし、トップに立てる。それが僕を駆り立ててくれるんです」

次の質問は簡単だった。この10年チャンピオンになれなかったことを考えたら、これまでの8年間で5回のタイトルをもたらしているマシンに乗るというのは彼にとって「最後のチャンス」ではないのか?そろそろ違うことを試しても言い頃合いなのではないか?ダニは私をみつめ、そして答えた。まあ実際にはちゃんと答えてくれたわけではないが。彼は肩をすくめてこう言った。「ふっ…」。答えたくはなかったのだ。そこで、ホンダに自信を保っているなら今年チャンピオンになれると思っているのかたずねてみた。ホンダはシーズン当初から明らかに問題を抱えているのだ。統一電子制御とミシュランが組み合わされたRCVはまともに走っているようには見えない。「ずっとホンダで勝てると思ってますし、うちのマシンで起こっていることはよくあることなんです」と彼は言った。これは今に始まったことではないと言うのだ。

「そうですねぇ、状況がここまで変わるという中ではよくある話だと思いますよ。800ccの時も同じようなことがありましたから。あの時はドゥカティが有利になった。うまくやっていたし、彼らは運がよかったんです。でもうちには厳しいことになった。タイトル争いがどうなるかはこれからですね。まだレースはたくさんあるわけだしタイヤがどうなるかもわからない。まだ変化している最中ですから。とにかく良い方向にいくようにがんばらないといけませんね」

ペドロサは改善途中のマシンに自信を持とうと努力しているところだ。2016年型RCVは新レギュレーションの下ではかなりの問題を抱えていた。ダニはそれをわかっており、そして今でも問題を抱えている。つまりは満足できないというか、悲観的というか、我慢しているというか、とにかくそういう状況だ。ダニが弱そうに見えるという状況が出来しているのだ。こんな状況であればペドロサはヤマハにチャンスを与えるべきだったし、もしそうならなかったら、それはヤマハのマネジャーのリン・ジャーヴィスにとって第一選択ではなかったからだろうと私は思う。

怪我との戦い

30歳になった彼にとって、何年も追いかけてきた世界チャンピオンという夢を実現するための時間はそれほどないし、彼もそのことはわかっている。かつての自分のチーフメカであるマイク・レイトナーが率いるKTMのプロジェクトに参加するという選択はないのだろうか?これについてペドロサは「興味深いですけど勝利を求めてアドレナリンが出るタイプのマシンではない」と言っている。

「どれくらい時間が残されているかはわからないですね」。40歳近くになっても第一線で活躍するロッシと同じようになれると思うかとたずねるとダニはこう答えた。「僕にとって身体的にいい状態でいるのはとても大事なことですね。マシンに乗るためにはすごくいい状態でないといけないんです」。これについてはペドロサ自身が最もよくわかっているだろう。MotoGPで、それどころか全クラスを通じてこれほど怪我とつきあってきたライダーはいないだろうからだ。あまり彼は怪我について語りたがらない。他のライダーとの比較については特に語りたがらない。そんなことをしてもあまり良い方向に傾かないから、というのがその理由だ。「みんなつい比べちゃうけど、それって間違いなんです。起こったことは受け入れるしかないんですよ。僕にとって物事はなるようにしかならなかったし、それを乗り越えるための努力をするしかないんです。それが僕の宿命なんです。今言えるのは、これまでいろんなことがあったけど、まだレースをしているし、レースができてるってことだけですね」。そう言って彼はこの話題を終わりにした。

レースの最悪の一部である怪我に関して言うと、彼は既に被曝の限界に達してしまっているために医師が放射線検査を拒むほどになってしまっているのだ!「最終的にはそのせいでフィジカル面をきちんと調えるようになったんです。前より自分に気を遣うようになりました。トレーニングも少し変わりましたね。トレーニングであることには変わりないですけど、怪我を防ぐような体作りに重点を置くようになったんです。例えばサッカーみたいな感じですね。何度も転倒したら、できるだけ転倒しないようにいろいろ変えていく。そんな感じです」

経験が培った知恵

あまりないことだがダニ・ペドロサがレースについて双方向の会話をしようという気になると、かなり興味深い話をきくことができる。豊富な経験の陸がで、彼は様々な視点から語ってくれるからだ。例えば今回はシーズン当初のミシュランが引き起こした状況について話してくれた。ヘレスでの最終戦の後、ダニは許される限りたくさんのテストを自らすすんで行っている。「そうですねぇ、今の状況は理想的とは言えませんね。もっとミシュランを支援するように柔軟に対応しないといけないんです。彼らはそれだけがんばっているんだし、楽な立場ではないんですから。MotoGPに参加していろんなマシンが使うタイヤを毎レース用意してるんですよ。しかもこの何年かは離れてたんですらね、でしょ?」

ここのところMotoGPを浸食しつつあるウイングについてのペドロサの考えも興味深いものだ。彼の見方はこれまで私たちが耳にしたものとは全く違うのである。「MotoGPではこういうウイングって見なかったですよね。僕らにウイングから最高のパフォーマンスを引き出すような知識や技術があるのかどうかはわからないんです。僕が言えるのは良い面と悪い面の両方があるってことです。安定性は増すし加速でフロントが浮きにくくなるのは確かです。でも状況を悪くしている部分もありますね。今のところライダーが使うかどうかを決められるんですけど、技術的な話だけじゃなくなりつつあると思ってます」

ご存じの通り、ペドロサの性格は独特だ。彼は好かれるタイプではないし、「パドックのアイドル」でもない。彼を見出したアルベルト・プーチといっしょにいたころは、毎晩寝るためだけにホテルに帰り、パドックという「汚濁の世界」から距離を置いていたが、そんなライダーは彼一人だった。数年がたち、「死が二人を分かつまで」と思われたプーチとペドロサの関係は破綻している。ダニは以前と比べれば少しはオープンになり、コミュニケーションもとりやすくなった。だが少しだけだ。

話を終える前にそのアルベルト・プーチについてきいてみた。彼らが一緒に歩んできたことで「サーキットでのアドバイザー」という役割ができたとも言える。今ではトップのMotoGPライダーなら誰もがつけている。最近ではルカ・カダローラがヴァレンティーノ・ロッシのチームに加わった。ペドロサはしかし逆の道を歩んでいる。何年もプーチというサーキット・アドバイザーと一緒にやっていたのに、今では周りにそういう役割の人間はいない。なぜだろうか?

「ええ、おもしろいですね。みんなの役に立つことをいろいろやってきたってことでしょうか」と彼は考えながら答えた。「ピットボードにメッセージを出すとか、今はみんなやってますし、他にもみんながやるようになったことはありますね。僕らは125ccの時からやってるんですよ!今アドバイザーがいない理由ですか…?話せないですね」。驚いたような顔はまるで自分にも同じことを問いかけているかのようだった…。ダニ・ペドロサ、孤高のライダーだ。

おまけ

「ホンダで起こっているのはこういうこと」

ホンダを難しくしているのはいったい何なのだろう?新たに導入された逆回転クランクシャフトなのか?統一電子制御ソフトへの対応が遅れているからか?ミシュランタイヤのせいなのか?ホンダを悩ませいているのが何かということについてダニ・ペドロサほどうまく説明してくれる者はいない。正確に、しかも明解にダニは何が起こっているのか教えてくれた。

「個々の細かい要素ではなくコンセプトの話をしましょう。それぞれがお互いに影響し合ってますからね。基本的な部分では加速というかパワーを伝えるところで問題があるんです。でもパワーがないわけじゃない。4速でも5速でも6速でも加速はすごいんです。
 それがグリップの問題なのか、ウィリーしやすいからなのか、パワーの出方の問題なのか、ギアボックスとかギアレシオの問題なのか、そこらへんはわかりません。違いは大きいですね。そこははっきりしてます。ここ(ルマン)みたいなサーキットだと、加速ポイントが多いんで他のコースよりはっきりわかりますね。
 例えばプラクティスで誰かの後ろを走っていると、タイヤがフレッシュな時に0.2秒とか0.3秒とか、ちょっとずつ遅れていくんです。そこで自分に言うんです。「限界で走ってるのになんで遅れるのかわからない」ってね。実際レースになって前のライダーについていこうとしてもとコーナーでもコーナー脱出で離される。ひとりで走ってるとわからないことってあるんですよね。限界でウィリーしたりスライドしまくったりしてるんで。
 マルクがどういうレースをしてるのかはわからないですね。でも僕がヤマハのサテライトの2台とかスズキの2台と序盤で一緒に走ってると、ついていくことができないんです。タイムが出せないんですよ。グリップが悪いんでブレーキングでもリカバーできない。でもタンクが軽くなってくるとブレーキングでも突っ込めるしバランスも少し変わってくる。そうなるとトップと変わらないペースで走れるんで、何台か抜けるんですけど、もうそれじゃあ手遅れなんです。
 加速するたびにそんな感じで0.2秒とか0.3秒とか離されて抜くこともできない。加速すると前のライダーが数メートルはなれていく。ブレーキングで抜き返せないほど離れちゃうんですね。前に行くには何台も抜いてきかなきゃならない。ブラッドリーの方が遅いからと抜こうとしてもできないんです。ストレートで離されちゃうんですよ。彼の後ろについて何周も無駄にしてしまう。最後のほうになって前に行って安定したペースで走れるようになるんです。FP1くらいのペースでね。でもそれ以上は前に行けない。最大の問題は加速ですね。加速がないんでストレートでみんなに離されてしまってるんです。
 もうひとつは予選ですね。予選で良いタイムを出そうとしてるんですけど、がんばればがんばるほど悪くなる。次は別のことを試さないといけないですね。冷静になって前に出て、最初の2〜3周で4〜6秒も遅れるようなことがないようにしないと。
 今年のマシンは去年とは違いますし、タイヤも違えば電子制御も違う。今のところ僕らがやるべきはレースの前半をなんとかして、それが後半にどう影響するかを確認することですね。でも前半でかなり良くなれば後半が少しぐらい悪くてもトップから15秒遅れなのが5秒とか7秒遅れで済むかもしれないんです。悪くなるより良くなる部分の方が多ければね。そうすればレース序盤の遅さをなんとかできるんです」
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あけすけな良いインタビュー!

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コメント

PECINO GP、いつも読み応えありますよね。
無口なイメージだけれど、一貫してメディアには丁寧に対応しているダニ。
とはいえ、ここまで口を割らせる(?)とは、インタビュアーの手腕お見事です^^

さてホントどうなるんでしょうねぇ。
ここだけの話(?)私、ダニ→ヤマハはないように思うんですよね…さらにヴィーニャもスズキ残留じゃないかと(超小声)。
でもじゃあ一体誰がヤマハの空いたシート埋めるのさってことを考えると、やっぱりそれは現実的じゃないんでしょうかね…

投稿: りゅ | 2016/05/12 23:50

もうここ何年かで、いろんな人がダニについて語ってますよね。
後から来た者に追い越され、比べられ、そしてその中で自身は怪我を負うことも多かった。
放射線検査を医師が拒むほど、、、凄いことですね。
それくらい彼は体中のあらゆる部分を骨折してますもんね。
苦難 辛抱 忍耐 反省 自重 そんな言葉が思いあたっちゃいます。
この十年の間で一度でもチャンプになっていたら、ダニ自身の様子は少し違っていたのかな?

ただ、この様な競技者にとって自分を信じることは絶対的に大事ですよね。
彼をそれを失ってはいない筈。
うまくいくことを願います。

投稿: motobeatle | 2016/05/13 09:26

>りゅさん
 最近知ったサイトなんですが、ほんとうにおもしろいです。ちなみに私はヤマハのダニを熱望中(予測はしない)。

投稿: とみなが | 2016/05/13 22:14

>motobeatleさん
 ああ、ほんとうにチャンピオンになってほしいです!

投稿: とみなが | 2016/05/13 22:15

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