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ムジェロでのMoto2の混乱:誰を責めるべきか?

前回の記事の最後にあったとおり、MotoMatters.comがムジェロでのMoto2のクイックリスタートでの混乱について書いています。
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2016年のMoto2クラスのスタートは不運につきまとわれているようだ。まずはカタール。多くのライダーがフライングをしたことで、ライドスルーを科せられるライダーとタイム加算を科せられたライダーが出てしまい、そのやり方に不満を覚える者もいたのである。原因はフライングを確認するためにスターティンググリッドを撮影していた高速度カメラの不良だった。

ムジェロではスターティンググリッドに関して再び大きな問題が発生している。とは言え今回の問題はフライングではない。リスタートで混乱したのだ。レースが中断され、その後のクイックリスタート手順が大混乱を招いてしまったのである。これが適用されたのは今回が初めてだが、その結果多くのチームがミスを犯し、これがレースディレクションにまで波及してしまったのだ。よくあることだが予想外の出来事で誰もが混乱し、最初のクイックリスタート手順は中断され、そして通常通りのリスタートが行われることになった。

レッドフラッグの理由はきちんとしたものだった。シャヴィ・ヴィエルヘがビオンデッティシケインで転倒し、彼のマシンがぶつかって開いた穴のせいで、エアフェンスがしぼんでしまったのだ。ここにエアフェンスがなければレースには危険すぎるということである。

クイックリスタート?なにそれ?

それがそもそものトラブルの始まりだった。レースディレクションはまず新たに導入されたクイックリスタート手順を適用すると宣言した。このルールの下では、チームは再給油とタイヤ交換、セッティング変更が可能となる。クイックリスタートが宣言されてから5分後にピットレーン出口が60秒間だけ開かれる。ライダーはその間にサイティングラップのためにコースに出て、グリッドにつくことになる。この際、グリッドに入れるメカニックは一人のみとなる。その間エンジンは停止してはならず、さらにタイヤウォーマーの使用は許されていない。

このリスタート手順は今年から導入されたものだ。ただしワールドスーパーバイクでは3年間この方式である。この手続きで混乱したチームがあり、8人のライダーが60秒の間にピットレーンを出そこなっている。

これ自体は問題ではない。ルールは明解に規定している。ライダーが時間内にサイティングラップに出られず指定されたグリッドにつけなかった場合はウォームアップのピットレーンからスタートし、グリッドの最後尾でレースのスタートを切るとされているのだ。8人のライダーに指示してグリッド後方に整列させるという仕事は不可能なことではないが、グリッドのスタッフは全力を振り絞って整理する必要があるはずだ(8人といったらMoto2グリッドの1/4にも相当することも忘れてはならない)。

問題は8人の内6人がピットレーン出口で待つことなく赤信号を無視してウォームアップラップに飛び出していったことである。そのせいでIRTA(訳注:国際レーシングチーム協会)、そしてサーキットのグリッドスタッフが取り組まなければならない課題は急速に複雑さを増していったのだ。その間、ルールを守ったライダーはグリッドで待たされ続けていた。エンジンはオーバーヒートしタイヤは冷えていく。ダニー・ケントが語っていたが、彼のマシンの水温は127℃まで上がってしまったそうだ。主催者側が混乱したこと、そしてライダーの間にパニックが蔓延しそうになったことで、リスタートは中断され、2回目のクイックリスタート手順が開始されることとなった。

広がる非難

今回の混乱の原因の一端はチームにあるが、レースディレクションも非難を免れないだろう。これはMotoGPレース・ディレクターのマイク・ウェッブも認めている。「まず問題だったのはこれが初めてだったということですね。そして次の問題は、残念なことに本当にびっくりするほど多くのチームがルールブックをちらっとしか見ていなかったことです。全然見てないわけじゃないとしても、要点を把握してないんです。間違って解釈するチームもありますし」

クイックリスタート手順は実にきちんとした形で始まったとウェッブは言う。「クイックリスタート手順はうまくいったんですよ。時間通りにグリッドを準備できましたから。それにメカニックもちゃんとグリッドについてくれた。全員がというわけじゃなかったですけどね。中にはカートとか持ち込もうとしたメカニックもいたんで、それは止めなきゃなりませんでした。でもまあ全体的にはうまくいったんです。わかっていなかったチームがいて、6人のライダーがピットレーン出口の赤信号を無視して出て行ってしまってますけど、結果として8人が1分以内に出ていけてなかったかと思います」

これはチームのミスかもしれないが、そのせいでレースディレクションはルール通りにやった場合に何が起こるか見えなくなってしまったのだ。その準備ができていなかったのである。「それ以降は正直に言いますけど、こちらのやり方が想定通りにはうまくいかなくなってしまいましたね」とウェッブは認める。「後方からスタートするライダーがあれほどいると、まあ、どの順番で後ろに並べるんだ?ってなっちゃうんですよ。グリッドが足りなくなったんです。それでグリッドを用意できなくて、だから全員をグリッドから待避させたんですよ」

多くのライダーがルールを守らなかったことでレースディレクションが混乱したが、このせいでルールを守ったライダーが著しく不利になってしまった。「グリッドについていたライダーはみんな言ってましたよ。『おい、エンジンを止めちゃいけないせいでオーバーヒートしそうだし、タイヤも冷えるんだけど。何が起こってるんだ?』ってね。だからそれ以上彼らをグリッドに留めておいたら不公平になると判断して、それでスタートが遅れたんです。最初からやり直すことにしたんですよ」

不正は止める

レースディレクションの最大のミスは赤信号にも関わらずピーッとレーンを出ることを許したことだ。「まずピットレーンから出るのを許してしまったことについて、やり方をなんとかしなきゃならないですね。本当は止めなきゃいけなかったんです」

そのせいでライダーがグリッドについたあたりから問題がドミノ倒しのように発生していったのである。「グリッドのライダーやメカニックに『いや、そこじゃない、後ろですよ。後ろについてください』って教えるためのスタッフは確保していたんです。その間もエンジンは掛けっぱなしです」とウェッブは語る。「もしそのライダーがまだコースにいて、これからグリッドにつこうとしているとなると、グリッドを並べ直す時間がないことに気付いたんですよ」

ライダーがピットレーンを勝手に出ないようにするのが確実な解決策だろう。「赤信号でピットレーンを出ようとしてたら止めなきゃならないですね。ピットレーンを出ること自体はライダーのミスですけど、こちらとしてもピットレーンを出られないようにする実効的な策を講じる必要があったんです。でないともしグリッドについてしまったらかなりの距離を後ろまで押して行かなきゃならないですからね。そこはわかりましたんで。まあちょっと勉強台は高くつきましたし、うまくはできなかったし、レースも遅らせちゃいましたし、きつかったですけどね。もうこういうことは起こりませんよ。チームも、次のレースでうちがみんなを集めて、きちんとわかりやすく説明しますから。質疑応答もやりますし、チームが望むことには対応します。とにかく全員に何がどうなるのかをきっちりわかってもらう必要がありますからね」

しかしウェッブは、今回の問題が全チームではなく数チームのせいで起こったということも強調している。「これは言っておきたいんですけど、ほとんどのチームは時間通りにライダーを出してるんです。ちゃんとグリッドにもついてますし、グリッドのメカニックもルール通り一人だけでした。そこでスタートを待っていたんです。ルールを理解していなかった人たちのせいでスタート手順が中断されたんです。でもこちらとしてもいろいろ学んだこともありますけどね」

二度と起こさないために

レースディレクションはチームがルールになじめるようにもっと策を講じる必要があったということだろうか?ウェッブはもうかなりのことをしているので、今回はチームの責任だとはっきり言っている。「今シーズン当初からのルールですからね。チームにもちゃんと伝えていますし、ライダーはチームから説明を受けています。ルールがどうなってるか理解する時間は充分あったんです」

クイックリスタート手順をやめるべきなのだろうか?これに関してもウェッブはワールドスーパーバイクでは過去3年、完璧に運用されていると指摘する。失敗したのはチーム側で対応できていなかったこと、そしてそのせいでレースディレクションの想定外の事態が発生したことが理由だ。レースディレクションのミスは、ルールに対するチームの理解力を過大評価していたことである。そのせいでレースディレクションは大問題を抱えることになり、危うくルールを守ったライダーとチームに罰を科すはめになりそうになった。

チームがこちらが期待するほどルールを理解していないということは驚くには当たらない。むしろきちんと理解していたら驚くべきことだと思う。MotoGPチームですらヴァレンティーノ・ロッシがウェットだったFP1の最中にピットレーンで9回もスタート練習をやったことに対して勘違いしていたほどだ。これが違反ではないことを知らなかったのだ。それどころかMotoGPのルールでは「許可する」と書いてあるのだ。ルールブック、特に手続き関係はわかりにくいものがある。可能性のある状況をいくつも想定しているからだ。我々ジャーナリストもいつも混乱するし、間違った情報を記事にしてしまうこともある。

Moto2での混乱で良かったことは、もうこんなことは起こらないだろうということだ。チームはルールを理解することの大事さを学び、解釈を間違うとどんなひどいことが起こるかも学んだ。アレックス・リンスはMoto2スタート時点ではランキングトップだったのにチームが時間通りに彼を送り出さなかったためにグリッドを下げられてしまった。超スプリントとなったレースでかなり取り戻し、ライバルのサム・ロウズはタイヤに苦しんでいたのだが、結局彼は5ポイント差のリードを逆転され、ロウズを2ポイント差で追いかけることになってしまう。シーズン終わりのタイトル争いでこれが利いてくるかもしれない。

もちろんチームも良い勉強をしたわけだし、レースディレクションもクイックリスタート手順の問題点を把握することができたわけだが、これからはすべてがうまくいくと断言することはできないだろう。ムジェロと同じ混乱は起きないだろうが、チームやライダーやレースディレクションや何かの偶然のせいで、またつまづく可能性はあるのだ。
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まあそれも含めて楽しめば。

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