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2016年ルマン金曜まとめ:タイヤ、ウイング、そしてペドロサがヤマハに

きましたね!Emmett氏が言ってるんだから確度はとても高そうです。MotoMatters.comより。
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人生で確かなことは二つしかないと言われている。死と税だ。今年のMotoGPでも確かなことは二つしかない。毎戦ミシュランは新型タイヤを投入すること、そして毎戦ドゥカティデスモセディチGPが新しいウイングを生やすということだ。ルマンではミシュランが新型リアタイヤを導入した。これまでより柔らかい構造で、コンパウンドはそのままだ。グリップを少しだけ増やすと共に、加速を邪魔し、しかも高いギアでも発生するということでライダーから不評だったリアのスピンを減らそうというものである。ドゥカティの新型ウイングはこれまでのものよりかなり大きく、おそらくルマンにはたくさんある1速で走るコーナー用だと思われる。

ミシュランがまた新たなタイヤを導入したということは相変わらずばたばたしているように思われるかもしれないがそうではない。ロリス・バスとスコット・レディングという二人のドゥカティライダーが被害を被ったことで計画が迷走しはじめたものの、いま彼らは開発の方向性を見出しつつあるのだ。オースチンとヘレスで使われたリアタイヤは彼らの言うところの「安全なタイヤ」だった。恐ろしい結果を招くことなくレースを走りきれるとミシュランが自信を持てるような構造だったのだ。実質的なテスト無しでレースに使われたもので、いわばバックアップタイヤである。そもそもレースでの激しいバトルを前提としたものではなかったということだ。

少しましなゴム

新型リアタイヤは改良されている。柔らかい構造によってグリップが増したのだ。ライダーからの評価も高い。もっとも手放しで褒めているというわけではないようだ。「間違いなく僕にとってはいい方向ですね」とダニ・ペドロサは言っている。しかし違いは小さいようだ。「良い方向にちょっとだけ変わってるんですけど、ほんとにすごく僅かですよ」

ブラッドリー・スミスはもう少し評価している。「良い方向にひとつ階段を上りましたね。グリップするようになったし前より少しだけ加速するようになってます」。スミスはこのタイヤで24周をレースペースで走っている。ほぼレースディスタンスに相当する距離だ。彼はゴールまでこのタイヤが保つことは確信しているが、これについてはミシュランとしてもきちんと確認しなければならないことではある。アンドレア・ドヴィツィオーゾとホルヘ・ロレンソも同じように評価しているが、特にロレンソは300km/hで駆け抜けるシーズンの全サーキットで最速となる左コーナーであるダンロップコーナーでのリアタイヤの挙動が抑えられたということに満足している。このコーナーでライダーの頭がどれほどガクガクするかを考えたら、リアの挙動が少しでも改善すればそれは歓迎される事実だろう。

新型リアタイヤをテストできなかった数少ないライダーの一人がヴァレンティーノ・ロッシだ。彼はミディアムタイヤ(旧タイプの安全性を重んじた構造の仲で最も固いもの)がレースで使えるようにするのに集中していたのだ。しかしそれは間違いだったと彼は言っている。コーナー進入、特にダンロップコーナーで深刻な問題を抱えていたとのことだ。土曜に新型タイヤを試す計画だったということで、ロレンソと同じように自分にも効果があるといいと彼は語っていた。

34番のフロント

ミシュランがMotoGPに対応し始めたという証拠はもう一つある。フロントに関しては構造は一種類だということだ。「34番」と呼ばれるその構造はオースチンでは多くのライダーを転倒に追い込んだ。フロントの感触がうまく得られなかったからだ。ルマンでは2種類のなかから選択するという方式が撤回され、結果としてチームは楽になったとブラッドリー・スミスは言っている。

ライダーに選択肢を与えるとどちらのタイヤがいいか試すのに時間をとられてしまう。選択肢がなければそのタイヤでのセッティングに集中できるということだ。「構造が一種類であとはコンパウンドだけということになれば僕らにとってはやりやすいですよ。ソフトかミディアムかハードかだけを選べばいいんですから。その中からうまくいくタイヤをみつければいいんです」

しかしこれはチームが楽をできるということだけではない。ミシュランにとっても前に進めたということだ。スミスはこう語る。「ミシュランもいいとこまできてますよ。それは間違いない。もうストレートでロックさせるライダーはいないし、誰もへんな感じでクラッシュすることもない。つまり普通に使えるところまでフロントタイヤを改善してきたってことですね。次はリアをうまく作ることですね。まだこのリアタイヤで3レースしかやってないわけですし、まだ改善してくれるでしょう」

ウイングの群れ

これが今年になって導入されたミシュランタイヤの状況が落ち着き始めたという話だ。そしてドゥカティの新型ウイングを見ると空力に関しても同様のことが起こっているように思える。デスモセディチが新たに生やしたウイングはルマン専用のようだ。上のウイングの後方が延長されサイズが増大している。そしておそらくライダー周りの整流のために巨大な翼端版が追加されている。下側のウイングは以前からと同様2段式になっている。

ルマンには加速が鍵となるコーナーが数多く配されている。ホームストレートとバックストレートはどちらもかなりのタイトコーナーからの立ち上がりとなっており、ライダーはストレートに向けて全開で加速することになる。ウイングは1速のコーナーでは効果がなさそうだが大きくなれば、以前の比小さなものと比べると比較的低速(例えば130km/hあたりから)でも効果が出てくるだろう。ヘレスで使われた小さいウイングは5コーナー立ち上がりで効果があるといわれていた。ここはバックストレートにつながる160km/hレベルのコーナーだ。今回の大型ウイングならもっとタイトなコーナーでも効果がありそうだ。

誰もがウイングや空力に突然取り組み始めたのはなぜだろうか?簡単に言ってしまえば統一電子制御が導入されたからである。統一電制制御にもウィリー制御プログラムが組み込まれているが去年までファクトリーオプションのマシンが使っていたものほど性能は高くない。これが使えないとなると、そしてこれまた重要な要素だが、電子制御に使っていた予算が浮いたとなれば、メーカーはコーナー立ち上がりの加速を改善するための他の方法を探ることになる。ウイングにはフロントを押さえつけることでライダーはより多くのパワーを掛けられるということがあるのだ。そしてそのおかげでコーナーでの加速力が上がるのである。ドゥカティが空力というパンドラの箱を開け、そして他のメーカーも右へならえということになった。

どのサーキットでもウイングが

ドゥカティがどれほど空力に注力しているかについてアンドレア・ドヴィツィオーゾが語っている。「サーキット入りする前にどのウイングがベストか検討してるんで、現場で比較したりはしないんですよ。レイアウトによってどれがいちばんいいかわかってるんです」。ルマンで登場した新型ウイングはドゥカティがサーキットごとに空力をカスタマイズしているということだ。

このようにサーキットごとに作り込んではいるものの、その効果は限定的である。「説明しにくいし、実際の感触も表現しにくいですね」とドヴィツィオーゾは語る。「違うウイングでも何が起こっているかはよくわからないんです。マシンのセッティングみたいにね」。ブラッドリー・スミスもウイングの優位性は非常に小さいと言っている。「パフォーマンスの違いはほとんどないと思いますよ。特にうちが使ってるヤマハのマシンではね」。スミスによればドゥカティでの状況はやや異なっているようだ。ドゥカティは他メーカーより空力にかなり多くの時間を費やしているのである。

危険だが使うんだ

多くのライダーがウイングの使用に異を唱えている。安全性がその理由だ。しかし興味深いことにライダーによって何が危ないかについての見解は異なっている。ダニ・ペドロサは接触時の危険性を問題視している。「ライダーというのはむきだしなんです。だから安全委員会にコースのコーナーや芝生やグラベルトラップの改善を要求しているし、エアフェンスの増設とかも要求してるんです。そしていま僕らはマシンに取り付けられた『ナイフ』について問題視している。だからウイングについていろいろ開発する一方で廃止しようというのはわけがわからないですよ」

スミスにとっては乱流の方が問題だということだ。「僕にとって最大の問題は乱流ですね。350km/hで他のマシンの後ろにつけているときにマシンが不安定になってフロントが暴れ始めて、それでブレーキパッドが広がっちゃうんですよ。僕が心配するのはそこなんです」。そんな風に異を唱えているものの、彼もまたウイングを使っている。「なくても走れますよ。でもそれで0.1秒遅くなるんだとしたどうでしょう?」とスミスは指摘した。レースがゴールする頃には2.7秒になるんです。4位と10位がそれくらいの間に収まっちゃうこともあるんですよ。だから使えるとなったら使うんですよ」

さらにスミスはコストの問題も指摘している。空力がまたどれだけ資金力の戦いを引き起こす可能性があるということだ。メーカーは風洞実験にどんどん資金を投入するようになる。スミスの懸念はもっともだが、しかし空力パーツを禁止しても資金力の競争は止められない。これは歴史が教えてくれていることだ。技術者というものは問題解決のために喜んで新しい何かを発明しようとする人種だし、メーカーというものは技術者がそれを実現するためにいくらでも資金を投入してしまうものなのだ。資金戦争を防止するためにデュアルクラッチは禁止されたがHRCはDCTに投入するはずだった資金をシームレスギアボックスの開発に注ぎ込んでしまった。そして今では誰もがシームレスギアボックスを使っている。そうせざるを得なかったのだ。でなければ戦えないのである。

慢心の報い

話のネタとなっているのはもちろんウイングとタイヤだけではない。2017年の去就について多くの噂が飛び交っている。いつものことだがパドックはマーヴェリック・ヴィニャーレスの決定を固唾を呑んで待っている。彼はまだヤマハとスズキの間で迷っているのだ。そしてこの件はそろそろ彼の手に余るようになってきそうだ。ロッシのチームメイトとしてヤマハがダニ・ペドロサに興味を示していると報じられたことについてきかれた彼はこう切り出したのだ。「ダニはここまでずっとホンダだったですよね。ホンダでキャリアを終わればいいんですよ」

2時間ほど後、ヴィニャーレスはツイッターでこう弁解している。「ダニの将来についてのコメントについては申し訳なかったです」「キャリアを始めたメーカーでキャリアを終われればダニにとっても素晴らしいことだなって言いたかったんです」

なぜこんな言い訳をしたのか?言いすぎたと気付いたのか、それともそういう自己表現は気に入らないとヤマハかスズキから無言の圧力があったのか。ダニペドロサがヤマハと契約直前で自分のヤマハ入りの可能性が消えつつあるとという金曜深夜のニュースを読んだのかもしれない。

スクープ!

信頼すべきスペインの新聞エル・パイスのナディア・トロンチョニが、ダニ・ペドロサは既に2017、2018年についてヤマハと合意に達していると報じた。トロンチョニはおそらくMotoGPパドックで最高のジャーナリストであり、知識もとんでもなく豊富なら、信頼性もとんでもなく高い。今週初めにMCNのサイモン・パターソンが報じた内容を(訳注:リンク先は私の翻訳)事実として報じている。さらにパターソンの情報源はペドロサのヤマハ移籍が真剣に検討されていると言っているだけだが、トロンチョニはすでに契約がなされたと書いている。もちろんこうした微妙な事柄に関してはどちらも情報源を明かしてはない。

ヴィニャーレスは自分を過大評価しすぎた結果こんな状況に陥ってしまったのかもしれない。若い彼は確かにとてつもない才能を秘めているが、チームメイトの出す結果を完璧に上回っているわけでもなくMotoGPで表彰台に上がったわけでもない。アンドレア・ドヴィツィオーゾのマネジャーで、思慮深いことで知られるシモーネ・バティステッラがGPOneに今年のストーブリーグはライダー市場を歪めてしまっていると言っている。「(ヴィニャーレスは)強いライダーですけど、でも今の市場では過大評価されてますね。若くてしかも本当に強いライダーはそんなにいないんです。同じことがアレックス・リンスにも言えますね。現時点ではライダーは3つのグループに分けられるんです。トップグループは30歳前後と27歳のイアンノーネとそれ以外ですね。本当に凄い若手ってのはマルク・マルケスだけですよ」

ダニ・ペドロサがヤマハに移籍するとなるとマーヴェリック・ヴィニャーレスはススキに残ることになり、最大の関心事はレプソル・ホンダの2人目ということになる。MCNはカル・クラッチローがそのシートを得るだろうと報じているし、現在の市場を見る限りそれほど的外れな説ではないだろう。他に選択肢がないというのもある。ヘレスでホンダの幹部の一人と話をしたときには、マーヴェリック・ヴィニャーレスもアレックス・リンスもまだ印象に残るような結果を出せていないという意見だった。HRCと契約があるもののジャック・ミラーも同様の状況だという認識だった。ミラーは足首の怪我からの回復が遅れており、今シーズンは印象に残る結果を出せないでいる。

レプソル・ホンダの2人目を考える場合、誰の契約がフリーなのかということも考慮にいれなければならない。アンドレア・イアンノーネは速いライダーだが名前には傷がついている。それも多数。アルゼンチンでのクラッシュがその典型だ。ポル・エスパルガロはホンダ加入を熱望しているしレプソル・ホンダなら喜んで加入するだろうがこれまでの評価を覆させるほどの結果をだしていない。マイケル・ファン・デン・マークはワールドスーパーバイクで素晴らしい結果を出しているがWSBKからMotoGPに直接飛び込むのはかなりのリスクを伴う。去年のWSBKのチャンピオンであるジョナサン・レイならできるかもしれないが、彼はすでにMotoGPで走ることをあきらめているようだ。

憶測は巡らせておこう

レプソルのシートが空いたおかげでメディアはコラムのネタもできるしページビューも稼げるし大喜びだ。これから数週間はあらゆるライダーとマシンの組み合わせが報道されることになるだろう。そのシートが決まれば、全てのメディアは正しい組み合わせの記事だけを指さして自分は正しかったと言い張るだろう。同じライダーが別のマシンに乗ると書いた他のたくさんの記事はこっそりカーペットの下に隠されるのだ。

MotoGPチームがスーパーバイクに興味を示さない理由、そしてメーカーが別のシリーズからライダーを連れてくることに懸念を示す理由についてはCRASH.netにカル・クラッチローが語った内容が興味部深い。クラッチローが語るそれぞれのライダーがどうなるかについて、そしてその理由は相変わらず面白い洞察に溢れている。彼はどう思うか?チャズ・デイヴィスのプラマック・ドゥカティ入りだ。私もそれはかなりの可能性があると考えている。デイヴィスと同時にマイケル・ファン・デン・マークもMotoGPに来る可能性があるが、それはサテライトのシートが空けばの話だろう。もしクラッチローがレプソル・ホンダに入るならLCRのシートが空くわけだが…。

ああ、今日、たくさんのマシンがコースを走っていたことも忘れてはならない。ホルヘ・ロレンソが止められない速さを見せた。ここのコースと彼の相性は抜群だ。ホンダは予想より速かった。グリップのなさにそれほど苦労しなかったのだ。ロッシと彼のスタッフについては上に書いたとおり間違った方向に言ってしまったが、土曜にはなんとかしたいと考えていることだろう。

Moto2ではヨハン・ザルコが地元で輝いていた。午後のセッションでトップタイムを出したのだ。ランキングトップのサム・ロウズは対照的に苦労していたが、その原因ははっきりしない。Moto3ではブラッド・ビンダーが午前の不調とはうって変わって午後のセッションを支配していた。怪我が回復していないため出場を止められたエネア・バスティアニーニのチャンピオンの可能性はほぼ潰えたと言えるだろう。彼はランキングトップのビンダーからは48ポイント差となってしまっている。そしてその差は日曜が終わればさらに大きくなっていることになるだろう。
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ストーブリーグ、落ち着き始めちゃった?

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