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なぜロレンソはそれを選んだのか?

さてさて、ホルヘのドゥカティ移籍が発表されましたね。MotoMatters.comのEmmett氏の意見はJack A Moさんの気になるバイクニュースで既に翻訳してくださってますので、こちらはMotor Sport MagazineよりMat Oxley氏の記事を翻訳。
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ロッシのドゥカティ移籍がロレンソにとっての移籍の最大の理由と言えるわけ

ホルヘ・ロレンソが過去10年のMotoGPで5回のタイトルを獲得したメーカーを離れ、そして過去8年にわたってチャンピオン争いに加われなかったメーカーに移籍する理由を語る人は、誰もがなんらかの話を作り上げようとしている。

しかし彼が移籍に積極的だった理由も考えてみる価値はあるだろう。

プロライダーが走る理由は大きく3つ。喜び、エゴ、そして金銭だ。そして金銭は前の2つが満たされることが前提である。現金というのは前2つの要素を補完するものでしかないのだ。

これは私が知恵を絞った、しかし推測に過ぎない。本当のことを知っているのはホルヘ・ロレンソだけだからだ。しかし彼にとって最も大事だったのは、誰も入れないMotoGP宮殿のVIPエリアに入ることだったと私は考えている。70年間のGPの歴史において最高峰クラスで異なるメーカーのマシンでチャンピオンをとったライダーはここまで5人だけ。ジェフ・デューク(ノートンとジレラ)、ジャコモ・アゴスチーニ(MVアグスタとヤマハ)、エディー・ローソン(ヤマハとホンダ)、ヴァレンティーノ・ロッシ(ホンダとヤマハ)、ケイシー・ストーナー(ドゥカティとホンダ)である。

ロレンソがこのエリートたちに名を連ねることができれば、彼が史上最高のライダーの一人であることを疑う者はいなくなる。デュークやローソン、そして他のライダーと同じように長く、それこそ永遠に語り継がれることになるだろう。

同時に彼はロッシが成し遂げたライバルのブランドでもタイトルを獲得するという偉業に並ぶことができる。そしてこれがさらに大事なことだが、ロッシができなかったドゥカティでの勝利を獲得すれば、ロッシを超えることもできるのだ。実際、それこそがロレンソにとって最も大事ななことである。彼がロッシより多くのタイトルを獲得することはなさそうなだけに、ドゥカティでの勝利は現代バイクレースを築いた男であるロッシの上を行くための最大のチャンスになるのだ。

そしてこれもまたロッシの心理戦の結果なのだろうか?9度のタイトルを獲った彼は心理戦の名手でもある。しかし去年の10月にはマルク・マルケスを不安定にされることには失敗し、そして彼はその報いを受けることになった。先月カタールでロレンソに仕掛けた心理戦もまた同じ結果となっている。

ロッシがヤマハと契約を更改したというニュースを彼はこう言って出迎えた。「ロッシはうまいこと契約更改しましたね。あんまりほかに選択肢はなかったわけだし」。それに対してロッシはこう吐き捨てた。「ドゥカティに行くには肝っ玉が必要だからね。つまりロレンソは来年もヤマハで走るだろうって僕は思ってるってことさ」

この発言がまたロッシに跳ね返ってくるのだろうか?ロッシの発言はロレンソがユーザーフレンドリーなM1を捨てて悪魔のようなデスモセディチに乗り替えることを促すためだったというのはいかにもありそうなことだ。しかしドゥカティはもう悪魔的なマシンではなくなっている。全く違うマシンになっているのだ。

アルゼンチンとテキサスでクラッシュに巻き込まれなかったらアンドレア・ドヴィツィオーゾが3戦連続2位に入って2016年の激しいタイトル争いに加わっていたことになったかもしれない。そしてロレンソがドヴィツィオーゾより速く、飢えたライダーであるのは間違いない。つまりドゥカに載った彼がすぐにでも勝たない理由はほとんどないということである。

ロッシは間違った時期に間違った理由でドゥカティに移籍したというのは誰もが知るところだ。ヤマハが新しい愛息を得て自分がステージ後方に追いやられるのが嫌だったというのが最大の理由なのだ。

ロレンソがドゥカティに最適の時期に移籍したことになる可能性は高い。ジジ・ダリーニャのおかげで去年生まれ変わったドゥカティはコーナリングスピードが劇的に改善され、もはやただの直線番長ではなくなっている。つまり動的性能がロレンソの素晴らしくスムーズな走りに完璧にマッチするということである。

(自分にあったマシンに乗る)喜び、(ロッシができなかったことをするという)エゴは満たされるということだ。では金銭はどうか?ドゥカティがヤマハより遥かに多くの契約金を払うことは間違いない。レースというのは他のビジネスと同様に需給バランスの上に成り立っている。M1のような勝てるマシンに乗りたいライダーはいくらでもいる。ドゥカのようなみそのついたバイクに乗りたいライダーは少ない。つまりドゥカティはトップライダーを獲得するにはヤマハより遥かに多くの金を用意する必要があるということだ。

とは言えドゥカティがロレンソに支払うわけではまったくない。金持ちのフィリップ・モリスおじさん(訳注:タバコ会社)がこれまで何十年もマールボロ・ドゥカティとマールボロ・ヤマハ似そうしてきたように小切手を切ってくれるのだ。フィリップ・おじさんが所有する最大のブランド、マールボロには燃やすほどの金がある。ヤマハにはとても支払えない金額を用意できるということだ。

もちろんロレンソのドゥカティ移籍には皮肉な側面もたくさんある。ロッシ時代が不名誉な失敗に終わったおかげで、ケイシー・ストーナーや他のライダーが何年も言い続けてきたことが真実だったと、ようやくボルゴ・パニガーレの本社に住まう気位の高い連中が気付くことになったのだ。ライダーたちはデスモセディチがレースマシンとしては奇形だと訴え続けていた。しかしロッシの失敗という出来事だけでドゥカティの幹部は問題がライダーにあるのではなく自分たちにあるのだと認めることができたのである。そして彼らは完全に新型のバイクを作り、そしてドゥカティのレース部問に変革をもたらすためにダリーニャを獲得した。言い方を変えれば、ロッシがドゥカティで成功できなかったことこそがロレンソの成功の最大の要因だということである。もしロレンソが成功すれば、だが。

まあこれは将来の話だ。ではいま現在はどういうことになっているのか?今年のストーブリーグはかつてないほど早く始まっている。ロッシとロレンソが既に契約を済ませ、マーヴェリック・ヴィニャーレスのヤマハ加入の発表も目前に迫っている(まあこれは私のちんけな推測に過ぎないが)。

ロレンソはまだヤマハであと15レースすることになる。その間は日本のエンジニアも彼を勝たせ、そしてタイトルを獲らせたいはずだ。同時に彼らは2017年、2018年の2年間のドゥカティを助けるような情報やデータを渡さないよう最大限の努力をすることにもなる。昨今では価値が高く会社にとって重要な社員がライバル会社に転職すると言ったとたんに、机を片付けてすぐさま社屋を出て行くように申し渡されることになっている。ロレンソは全く同じ状況にある。しかし11月まで彼は自分の席に座り続けるのだ。奇妙なシーズンとなるだろう。
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そんなわけでロッシの心理戦が吉と出るか凶とでるかというのも来シーズンの興味の対象となるわけですね。
ま、それよりヘレスなわけですが。

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コメント

こんにちは。
番長の言葉が懐かしい世代に、直線番長の響き好きです。ハンドリング番長やドリフト番長もあるのかな。
言うだけ番長(夕焼けのパロ)なんてのもありました。

今にして思えばキャリアをヤマハで終えたいの言葉はヤマハに対してのものではなくドカに対して、その何割かが使われていたのでしょうね。
そして彼の思い描いたラインを上手くトレース出来たのではないのでしょうか。
かつてホンダ移籍の話の時は上手くトレースできずにゴタゴタの記憶があります。ビニャーレスはスズキにいて欲しいな。スズキの希望だし、メーカやチームを応援しているファンにとってはライバルチームに敵として現れるのは納得できない部分もあります。リンさんが言っていた様に選択肢は沢山あるから才能のある若いライダーをかつてのロレンゾの様に起用して欲しいです。
早くストーブリーグが収まってレースに集中出来る様に期待しています。

投稿: とんかりん | 2016/04/21 05:45

そうですね。
とにもかくにもまず今シーズンのチャンピオンシップです。
巷ではすでにヤマハはヴァレと同じパーツを供給するのか、最終戦後のテストにホルヘはドカと合流できるのか等いろいろ騒いでますが、状況がどうあろうとホルヘがやることは一つしかないわけなので『平常心』の一言かと。
といいつつファンとしては【騒ぎ】にもついつい耳を傾けてしまったりもするのですがw
エメットさんのツイートを読むと、現在のヤマハ・チームホルヘの誰かがドカへ同行する可能性もあったりするとかしないとか(ウィルコ氏はなしなようなのでもしやラモン氏が?…いやないかぁ)
そこらへんがどうなるかはおいおいわかるでしょうから、やっぱりそれもおいといて、と^^
ヘレス勝ちに行きましょう!

投稿: りゅ | 2016/04/21 18:40

はじめましてかな?

私が思った、移籍理由の一番は、
出戻ったロッシの意見も入れ、マシンが造られて来た事じゃないかと。

ロレンソは、多少、走りを変えれば、速く走れる、その、適応できる範囲内ではあるが、ロッシの為に、
その労力を強いられる事が、我慢ならないと。
それが、一番、根底に有るんじゃないかと。

そんな気がしますけれど。

投稿: 輝 | 2016/04/22 01:12

三度目もヤマハにチャンピオンをもたらしてるのに、居心地は悪くなる一方。
その原因の一部ともなっているチームメイトのイレギュラーな言動にヤマハは目をつむり、早々に契約延長もしてあげた。
これでは自分が大事ににされていると思えないでしょうね。
一方で昔成功に導いてくれた人がいて、戦闘力がついてきたマシンを持ったチームが熱心に口説いてくる。

当初はヤマハと「開幕前に契約したい」と言ってたロレンゾの心境の変化。
やっぱり人間は感情の動物なのでしょう。
成功を祈ります。
逆にロレンゾがいなくなったヤマハの今後が心配です。

投稿: motobeatle | 2016/04/23 10:55

>とんからりんさん
 ファン心理!鈴菌なみなさんにとってはドキドキですね。

投稿: とみなが | 2016/04/27 22:46

>りゅさん
 ロレンソファンには悔しくかつ意外な結果のヘレスでしたね。でもチャンピオン争いがおもしろくなるので、ストーブリーグは横において楽しみましょう!

投稿: とみなが | 2016/04/27 22:47

>輝さん
 なんかロッシがいると、自分がナンバー2に思えて来ちゃうのかもですね。実際はそんなことはないとしても、あまりにも光が強すぎて、勝手にそう思わされちゃうのかもって感じです。まあ、それがロッシのロッシたる所以でもあるんですけど。

投稿: とみなが | 2016/04/27 22:48

>motobeatleさん
 ヤマハにとっても選択肢がなかったんでしょうね。マーケティング的力関係ではロッシの方が強そうだし。
 しかしなー、って感じではあります。

投稿: とみなが | 2016/04/27 22:50

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