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2016年の始まり:とりあえず現時点での(なので馬鹿馬鹿しいレベルの)来るシーズンに向けての6つの予言

さて今年の幕開けとしてMotoMatters.comのDavid Emmett氏による今シーズンのとりあえずの予想を訳出って思ってたのですが新年早々ばたばたしていたので放置していました。年始の頃の記事ですがセパンテスト前にどうぞ。
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新年がやってきた。そしてバイクレースの新たなシーズンもやってくる。希望に満ち、チャンスに溢れ、そして楽しみなシーズンだ。レースファンにとってどんなシーズンになるだろう?ワールドスーパーバイクのテストはまだ数週間先だ。そしてMotoGPのテストは1か月先である。予想を立てるにはかなり早すぎる時期ではなる。しかし一般論なら語ることはできるだろう。当たるも八卦、当たらぬも八卦。思い切って2016年の予想をしてみよう。

1.再びの失敗:ホンダは今年も馬力の罠に落ちる

2015年はホンダにとって厳しいシーズンとなった。2014年の終わりに2015年にはより使い易いエンジンを作るのが目標だと言ったにもかかわらず、HRCは馬力を上げる誘惑に勝てなかった。*その結果、既に扱いにくかった2014年型よりさらにアグレッシブなエンジンを作ってしまったのだ。そして統べたのホンダライダーがこれに苦しめられることになった。シーズン終盤にはなんとか状況をコントロールできるようになったものの、それでも理想とは程遠い状態だった。

2015年のようなシーズンを過ごせば当然ホンダも学んだと誰もが思うだろう。しかしそうではないようだ。ホンダがヴァレンシアとヘレスでテストした最新型のエンジンは相変わらずアグレッシブだった。これまでのアグレッシブさとは違うのだが。今度は低回転域のパワーが増しているのだ。

さらに悪いことに、新たに導入された統一ソフトウェアのせいでホンダのマシンはグリップが低下してしまっている。HRCの技術者はRC213Vがを新型ソフトウェアで制御することが難しいことに気付くことになったのだ。そしてスロットルへの反応が予測しがたく、理解も難しいものになってしまったのである。ヤマハもドゥカティもそうした問題に見舞われていないということは問題はソフトウェア自体ではなくその使い方にあるということなのだろう。

これまでの状況を総合すると2016年のホンダはマルク・マルケスやダニ・ペドロサやカル・クラッチローにはぞっとするほどお馴染みのマシンになりそうである(ティト・ラバトは旧型マシンにはほとんど乗っていない)。HRCはセパンかフィリップアイランド(訳注:2月に行われるテスト)あたりの早い内にこの問題を解決しないと今年もマシンを制御するのに手一杯で優勝争いどころではなくなるだろう。そうなればホンダはまた学習しないまま1シーズンを棒に振ることになる。

このホンダの状況に巻き込まれそうにないライダーが一人だけいる。ジャック・ミラーだ。彼が去年のっていたのはオーブンクラスのホンダRC213V-RSだが、そこで使われていたのは旧型の開発が進んでいなかった(と言うかむしろ恐怖を感じさせるような)統一ソフトウェアだ。彼にとっては状況は良くなるのである。20156年はミラーに注目だ。


2.相変わらず変わらないこと:ロッシとロレンソによるタイトル争い

タイトル争いが2015年と同じようになると予想するのにはそれなりにたくさんの理由がある。ホンダがタイトル争いから脱落するなら4人の最高のライダーのうち残されたのは最高のマシンに乗る2人のライダーだ。マルク・マルケスもダニ・ペドロサも間違いなく優勝はするだろうが、タイトル争いをするには解決しなければならない問題がホンダには多すぎる。ドゥカティは2015年よりさらに良くはなるだろうし、改善幅も大きいはずだ。しかしアンドレア・ドヴィツィオーゾとアンドレア・イアンノーネがタイトル争いに加われるかどうかは大いに疑問である。アプリリアについては全くの新型になるため未知数だ。そしてスズキも改善されるだろうが、しかしこれもまた天才まーヴェレ一区・ヴィニャーレスをもってしても2016年型ヤマハM1に対抗できるかというと、相当難しいと言わざるを得ない。

2015年型ヤマハM1は既に史上最高のレーシングマシンのひとつであった。ほぼすべてが完璧だったのだ。唯一の弱点はわずかにトップスピードが劣っていたことだが、それもラップチャートを詳細に分析しなければ気付かない程度だった。2016年型の変更点はわずかだ。タンクが2L分だけ大きくなった程度である。これはホンダとヤマハが来シーズン受けられる恩恵だ。つまり今年のまま素晴らしいマシンだということになる。

つまりヴァレンティーノ・ロッシとホルヘ・ロレンソが再びタイトル争いをするということだ。2016年の二人のタイトル争いが去年以上に白熱するだろう理由もたくさんある。ロレンソはこれまでの3回のタイトルに値するライダーであることを証明したいと考えているはずだ。そのために2015年に見せたわずかな弱点すら消そうと努力している。ロッシは今でも去年のタイトルが盗まれたものだと考えいてるだろう。つまりタイトル獲得のチャンスがあればそれを全力でつかみにかかるということだ。そして彼は復讐に燃えている。その対象チームメイトではない。自分が獲るはずだったタイトルを邪魔した相手だ。ロッシが記録した全クラスでの勝利数はジャコモ・アゴスチーニの122勝にあと10勝と迫っている。そして4勝すれば最高峰クラスで90勝となる。2月にロッシは37歳になるが、戦いに飢えていて、そしてなにより戦闘力もまだあるのだ。

2016年のロッシ対ロレンソの戦いは2015年以上のものとなる可能性もある。2つの大きな変更点があるのだ。ひとつはブリヂストンがミシュランになること。もうひとつは全ライダーが同じソフトウェアを使うことだ。ロレンソの強みであったエッジグリップを支えてくれたブリヂストンはもういない。しかしリアのフィーリングが良くなったのは彼のライディングスタイルに有利に働くだろう。一方ロッシはMotoGPクラスのキャリアの半分はミシュランで走っている。当時からすればずいぶん変わっただろうがDNAと彼が言うところの何かは残っている。ロレンソのコーナリングスピード重視のスタイルはスムーズなスロットルレスポンスに負うところが大きかった。しかし現時点の統一ソフトウェアにはそれがない。しかしロレンソはマシンのセッティングにかかわらずラインディングを合わせる能力も並外れている。一方ロッシには低スペックの電子制御を経験しているのだ。

要するにタイトル争いは気持ちの戦いになるということだ。ロレンソもロッシもタイトルを熱望しているのは間違いない。また最終戦ヴァレンシアまでもつれこむのか?そうなっても私は驚かない。


3.新型タイヤと新型電子制御のどちらが影響が大きいか-ビットよりゴム

来るシーズン、二つの大きな技術的変更が行われる。ブリヂストンに代わりミシュランがMotoGPクラスの統一タイヤサプライヤとして登場するとともに、全員が同じ電子制御ソフトを使用することになる。この統一ソフトはマニエッティ・マレリ社がホンダ、ヤマハ、ドゥカティ、ドルナとともに開発したものだ。

普通は同時に二つの変更を行うのは良くない考えだろう。しかしドルナに選択肢はほとんどなかった。ブリヂストンは統一タイヤ供給メーカーとしての契約更新をせず、当年限りで撤退すると2014年初頭に発表したのだ。しかし実際にはそれほど短期間で代わりを見つけるのは不可能である。そこでブリヂストンはもう1年契約を延長し、彼らを継承することになる(そしてかつてのライバルでもある)ミシュランにMotoGP復帰までの準備期間を提供することに同意した。

シリーズの行方により大きな影響を与えるのはどちらだろうか?ライダーの不満は電子制御についての方が大きくなるだろう。仕事が増えるからだ。ウィリー制御も退化するし、さらに重要なこととして現在の洗練されたエンジンブレーキ制御も退化する。つまりマシン制御はライダーの右手とリアブレーキにかかってくることになるのである。990cc時代のような栄光の日々は戻らないだろうが、現在より人間に厳しいマシンとなることは間違いないだろう。

とは言え電子制御はそれほど大きな要素ではない。MotoGPで誰が成功し誰が苦労するか、誰が速くて誰が遅いかについてはミシュランへの変更の方があらゆる面において影響が大きいだろう。理由は簡単だ。バイクで最も重要なパーツがタイヤだからだ。タイヤが駆動力の限界を決めるのである。馬力を前に進む力に変えられなければなんの意味もない。同様にコーナリングスピードは深いリーンアングルでのグリップに規定される。ブレーキを掛ければフロントタイヤに荷重がかかり、そこでタイヤがどう応答するかがコーナー親友の有り様が決まる。カーカスの硬さと設計が荷重下でのタイヤの変形、そして変形時のタイヤの振る舞い、マシンの他の部分へのタイヤインフォメーションを決める。

こうしたこと全てがマシンの挙動と感触をコントロールすることになるのだ。ミシュランの設計哲学はブリヂストンとはかなり違う。彼らにとってはリアタイヤのパフォーマンスを最大化することが最も大事なのである。タイヤが装着されるのは現在の16.5インチホイールから17インチホイールとなる。これでタイヤのプロファイルも変わることになる。ライダーは新しい状況を理解するために今以上に知恵を絞らなければならないし、走り方もライディングスタイルも 変えなければならない。ミシュランタイヤはこれまでほど大胆にブレーキをひきずったままコーナーに進入することを許してはくれない、しかし一方でコーナー脱出ではこれまでよりグリップが得られるはずだ。この特性を最大限に活かすことができたライダーが優位に立つことができるだろう。

ではライダーの序列はどれほど変わるだろうか。有名ライダーが周回遅れになってしまうのか?少なくともトップライダーについてはそれはないだろうとだけは言える。ダニ・ペドロサ、ホルヘ・ロレンソ、マルク・マルケス、ヴァレンティーノ・ロッシ、つまりトップチームに所属する世界最高の4人のことだ。彼らが今この地位にあるのは状況にうまく適応して、これまで自分が乗っていたすべてのマシンからすべてを引き出すことができたからである。彼らに挑戦できるライダーも現れるだろうが、現時点ではこの4人が技術規定が変わってもチャンピオン争いを支配することになるだろう。

もっと後ろの方ではサプライズもあり得る。アンドレア・イアンノーネとスコット・レディングはミシュランをうまく使いこなしているし、マーヴェリック・ヴィニャーレスも気合いが入っている。ポル・エスパルガロは年間通してミシュランを激賞していたがヴァレンシアテストではそれほど速さを改善できていない。このあたりは混戦になるだろう。


4.ロッシvsマルケスはまだ続く

ヴァレンティーノ・ロッシとマルク・マルケスの間の確執について知らないMotoGPファンがいるなら、それは南極の地下500mにあるアイスキューブ・ニュートリノ観測施設にこもっていたからに違いない。チェレンコフ放射を観測中の彼らのために要約しておくと、まずセパンでロッシがマルケスに対して「フィリップアイランドでマルケスはホルヘ・ロレンソのタイトル獲得を助けるために走っていた」と非難し、そしてセパンではロッシとマルケスが接触、マルケスは転倒、ロッシはその罰としてヴァレンシアでは最後尾からスタートすることとなったという経緯である。ヴァレンシアでマルケスはロレンソについていったが、彼を抜くことは(マルケスに言わせれば)できなかった、または(ロッシの言い分では)しなかった。その結果ロレンソはチャンピオンとなりロッシはタイトル獲得を逃すこととなった。

ロッシの非難の真正性はさておき、この件で二人の関係は悪化することとなる。マルケスがMotoGPクラスに三戦を始めた頃とは反対の状況だ。この頃ロッシはマルケスをライバルではなく自分が保護すべき相手として扱っており、マルケスの成功を喜び二人でバトルするのを楽しんでいた。ヤマハ復帰2年目となるロッシの成績が上がってきたことで彼らの戦いは激しさを増していったが友情は2014年までは続いていた。状況が変わり始めたのは2015年序盤からだ。まず最初はアルゼンチンでの戦いだった。マルケスはここでの接触をレーシングアクシデントであると言い切ってはいたが、その様はロッシがラインを変えたのが悪いと言っているようだった。次はアッセンだ。ロッシがここでもマルケスを出し抜いたのだ。最終のGTシケインはマルケスの予想通りにはいかず、ロッシが勝つことになったのである。セパン以降の出来事は二つの大きなエゴのぶつかり合いの結果なのだ。

シーズンオフを経て状況は沈静化しただろうか?ヴァレンティーノ・ロッシはセパンで科せられた3点のペナルティポイントについての抗議を取り下げた。世間はこれを正しい決断だと評価している。マルク・マルケスはこれを「MotoGPにとっていい決断だ。ロッシとまた友達になって来シーズンに向けてクールになれればいい」と言っている。モンツァ・ラリーショーでロッシはイギリスのバイク誌MCNからのこの件に関する質問を慎重に避けている。彼と、彼の親友であるウーチョ・サルッキはロッシがヴァレンシア後に少し落ち込んだがモンツァで勝ってリラックスできたと言っただけだった。

オフシーズンの間にロッシはこの結果を受け入れ、2016年に向けて新たなスタートを切ることができるはずだ。同じようにマルケスも過ぎ去ったシーズンは忘れ新たなシーズンに向けて集中を高めている。レーサーにとってそういう能力はとても重要なものだ。過去の失敗や不公平な出来事にこだわっても遅くなるだけだ。将来に目を向け明るい未来を思い描くことで前に進めるし勝利も手にすることができる。ドルナが二人をカタールの開幕前記者会見に呼ぶのは間違いない。そこで二人はお互いの関係についての質問をいやというほどされるだろう。彼らは笑顔でプロらしい関係性を見せるはずだ。そして2015年は輝かしい年に見えることになる。

しかしバイクレーサーは象と同じで忘れるということをしないのも事実である。過去を無視するのは単にその方がいいからであって、決してこれまでのことを忘れることはない。それが事実であれ妄想であれだ。彼らが直接対決しなければそれなりに暖かい関係が続くだろう。しかし何らかの形でコース上で相まみえれば再びナイフがきらめくことになる。二人の間のライバル心は単に隠されているだけだ。種火は灰の下でまだくすぶっている。少しでも酸素が供給されれば白く輝く炎が立ち上るのだ。


5.この数年なかったほどのストーブリーグ、そこにリンスとヴィニャーレスの争奪戦も

2~3戦目が終わると、いつ誰がどこにいくかについての根も葉もない噂が立ち上り始めるのがパドックの恒例行事となっている。予想がどれくらいたくさんでるか、そして噂がどれくらいばかばかしいかについては年によって異なる。どのライダーの契約が切れるか、どのチームの席が空いているかによって違うのだ。2015年にささやかれたネタは少なく、そして大したものではなかった。1年前の2014年の方が切れる契約の数を考慮すればもう少し大胆な予想があったと言えるだろう。

空席になるシートの数で予想旋風の強さが決まるのであれば2016年はカテゴリー5、つまり最大級のゴシップと噂の嵐が吹き荒れるだろう。今年で契約が終わるライダーは誰か?ざっくり言えば全員だ。10人いるワークスライダーは全員が2016年で契約が切れる(オプション付き契約もあるが)。そしてサテライトライダーも状況は同じだ。KTMが2017年に強力なワークス体制で乗りこんでくるというのもある。これでワークスシートは12に増えるのだ。

ほぼすべてのシートが空席となるということは、多くのジャーナリストが全ライダー×全チームという組み合わせを選ぶことができる。計算上膨大な数の組み合わせがあるということは20でも30でも100でも噂と推測に満ちた記事をものにすることができるということだ。契約が決まった時点で注意深く間違いを無視していけば、自らの見事な予測の正しさを小計するいい機会にもなるのだ。

では誰がどこに行くのか?もっともありそうなシナリオはレプソル・ホンダとモヴィスター・ヤマハは2017年も同じメンバーになるというものである。ダニ・ペドロサとヴァレンティーノ・ロッシの確度はやや低いとは言える。ホンダは若いライダー(マーヴェリック・ヴィニャーレスかアレックス・リンス)をペドロサのかわりにしたいと考えている可能性はある。そしてヤマハはロッシがもし引退すれば彼の抜けた穴を埋めなければならない。ホルヘ・ロレンソが将来について心を決めたらある程度のことはわかるだろう。もし彼がヤマハに残ると言えばライダーの移籍の組み合わせは限られてくる。もし彼がドゥカティに電撃移籍でもすれば大混乱は必至だ。

誰もがロッシ、ロレンソ、マルケス、ペドロサの4人に注目しているが、最もどきどきするのはヴィニャーレスとリンスの将来である。ヴィニャーレスはMotoGPで現在最も注目すべき若き才能と目されている。リンスはMoto2で最もスリリングな可能性を秘めている。もしスズキが表彰台争いができるようなマシンを供給できなかった場合、ヴィニャーレスは移籍に動くだろう。リンスは2017年には間違いなくMotoGPに上がって来る。そしてホンダとヤマハが二人のスペイン人の獲得争いをすることになるだろう。ホルヘ・ロレンソもマルク・マルケスもヴィニャーレスやリンスがチームメイトになることをうれしく思わないはずだ。どちらも強力なライバルになりそうだからだ。それを彼らがどう考えるかも移籍の有無に影響するだろう。

レプソル・ホンダにリンスが行くとしたら相当おもしろいことになるだろう。これには様々な理由がある。マルク・マルケスの弟であるアレックス・マルケスにMoto3タイトルを奪われてはいるが、これはエミリオ・アルサモラが画策した結果だと受け止められている。アルサモラはマルケス兄弟のマネジャーでもあるが、当時はリンスのマネジャーでもあったのだ。当然リンスは不快に思いアルサモラのもとを離れ独立することになった。以来彼はMoto2でアレックス・マルケスを上回り続け、我々の多くが最初から信じている通り、アレックス・マルケスとリンスのどちらの才能が勝っているかを証明したのだ。リンスはマルケス一家に対して恨みを晴らしたいと考えており、マルク・マルケスは若くそしてとてつもない才能を持ったライダーがレプソル・ホンダでのチームメイトになることを歓迎しないはずだ。実際相当火花が散ることになるに違いない。


6.ワールドスーパーバイクの復活。少なくとも少しは

ここ数年、ワールドスーパーバイクの人気は下降線をたどっていた。凋落はいつ始まったのだろうか?ドルナがシリーズを運営するようになってからそれははっきりしたのだが、実際にはもっと前から始まっていた。おそらく2008年終わりにフラミニ兄弟がインフロントにシリーズの興行権を売り渡した時からである。そして偶然にもワールドスーパーバイクの最後の真のスターであるトロイ・ベイリスがその時点で引退している。GPよりWSBKの方がエキサイティングでおもしろいと思わせてくれたカール・フォガティが引退してからだという意見もある。

まあそこまで遡るのはやり過ぎだろう。WSBKは長い間人気を保ってきた。そして素晴らしいライダーもいた。ジェームズ・トースランドとニール・ホジソンのおかげで今世紀初頭の英国のファンはWSBKに釘付けとなった。英国ライダーがベイリスや謎に満ちた日本人スーパースターの芳賀紀行とバトルを繰り広げていたのだ。ベン・スピーズとカル・クラッチローがさらにワールドスーパーバイクを面白くしてくれた。ここではGPから逃げてきたマックス・ビアッジとマルコ・メランドリが悪役として舞台にのぼっている。そしてビアッジは2度のタイトルを獲得した。

こうした錚々たる顔ぶれを見れば現在のワールドスーパーバイクに賭けているものがわかる。レース自体に問題はない。毎レース僅差の争いが続いている。マシンはややおとなしくなってしまったが、それでもかなりの野獣である。ライダーの才能には全く問題は無い。昨シーズンのチャンピオンジョナサン・レイは地球上の現役レーサーの中でトップ10に入れてもいいくらいだ。しかし良し悪しは別として才能が溢れている一方でキャラが立つライダーがいないのも事実なのだ。

二つの移籍がこの状況を改善するかもしれない。ここ何年も不遇な目にあわされてきたとはいえ、ニッキー・ヘイデンは世界的スーパースターの一人である。そしてこれまでにないほど成功に向けて野心をかき立てている。ヘイデンはすでにアメリカ人のファンを惹きつけているし、MotoGP時代から彼のファンは世界中にたくさんいる。ヘイデンに加えてやってくるのはジョシュ・ブルックスだ。ブルックスは精力に溢れ歯に衣着せぬ、そして何より速いというWSBK復活には欠かせないキャラクターのライダーだ。危険なライダーだとも批判されることになるかもしれなが、彼は誰を相手にしても同じように戦ってみせる。激しい戦いもあるだろうし議論を巻き起こすようなこともあるだろう。ファンは再び誰かに肩入れできるということだ。派手な事件にヘイデンの素朴な魅力が加わればワールドスーパーバイクは再び上向いていくことになるだろう。長い道のりになるが、それでも2016年はWSBKの転機になるのではないか。

タイトル争いに加われないと誰もが思っている二人のライダーにシーズン当初から注目が集まるのは不公平ではないか?本来ならトップ争いをする才能あるライダーに注目すべきではないか?もちろんその通りだ。しかしプロスポーツにはこうした勝手な見方というのはつきものなのだ。(スポーツプロモーターの)バリー・ハーンが言った通り、スポーツは男の昼メロなのだ。ヒーローと悪役、ファンを盛り上げる選手とファンに嫌われる選手が必要なのだ。理想の世界なら才能の多寡でヒーローが決まる。しかしここは現実世界。理想からは程遠いのである。
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しかしニッキーは意外にテストでもいいタイムですよ!

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コメント

2と4は心配事項ですが、FIMが裁定審査委員団なるものをレースディレクションと別に設置したことにより、少なくとも昨年のような事態にはなりにくいかもと思いました。
確執は続くでしょうけど、そこから「アクション」に繋がることはしにくくなったのではないでしょうか。

1のホンダは心配ですね。
セパンテストでもパッとしなかったですし。
マルクもダニも「これだ!」という自信がないのかもです。

投稿: motobeatle | 2016/02/06 18:21

>motobeatleさん
 ホンダが苦労している理由についてのネタを翻訳しました。
 マルケスはともかくダニはそろそろ後がないので、いいマシンを手にできるといいのですけどねえ。

投稿: とみなが | 2016/02/07 22:04

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