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ミシュランの技術ディレクターへのインタビュー

お次はタイヤネタ。CRASH.netより、ミシュランの技術ディレクター、ニコラス・グーベールへのインタビューをば。
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ミシュランのレース部問の技術ディレクターであるニコラス・グーベールにヴァレンシアテストで独占インタビューを行った。

ブリヂストンに代わって来年からミシュランがMotoGPのタイヤを供給することになる。ヴァレンシアテストで初めてこのフランスのタイヤメーカーの公式タイムが出ることになった。

ほとんどのライダーがブリヂストンの最終戦で出したタイムを上回ったが、一方でフロントからの転倒も相変わらず多かった。

CRASH.net:ミシュランにとってはこれが2008年以来のMotoGPテストになるわけですが、戻ってきたご感想を。

グーベール:すごくいい気分ですね。7年って長かったですけど、それだけに嬉しいです。今はタイヤ設計の最終段階にきています。2016年シーズンそして新しいパッケージの導入に向けて全員が集中していますよ。来年は電子制御が全く新しいものになるチームもありますからね。そうしたチームは新しいパッケージを最大限に活かすためにがんばらなければならない。つまり全てに適応していかなきゃならないってことなんです。


CRASH.net:ピットでいくつかのチームと話されていましたけど、タイヤに関してはどう言われたんですか?

グーベール:今のところいろんな意見がありますね。ラップタイムはすごくいいです。2時間くらいでレースタイムが出せてますから。


CRASH.net:ラップタイムには驚かれましたか?

グーベール:そうでもないですよ。前のテストでもこんな感じでしたから。
 とは言えチームの協力を得ながらまだ改善しなければならないこともあります。ライダーにクラッシュしないって信頼してもらうとかですね。誰も怪我をしていないのは安心できる点ですけど、どうやったら改善できるかは検討を続けないといけませんね。
 この三者が同じ方向に向かって協働していくことが望みです、チームはタイヤに合ったマシンセッティングを見つけて、ライダーには新型タイヤに合わせた乗り方を見つけてもらう。ミシュランにはミシュランの乗り方があるわけですし、他のタイヤでもミシュランの乗り方は合わないですよね。そして私たちは彼らに信頼してもらえるタイヤを作らなければならない。
 開幕戦から自信を持って乗ってもらえるように開発努力を続けていきますよ。


CRASH.net:同じパターンの転倒が多かったですね。たいていはクリッピングポイントからライダーがスロットルを開けようとした時なんですけど、何が起こっていたか説明していただけますか?

グーベール:まだ全てを分析したわけではないですけど、転倒のいくつかは最初の頃のセパンでの転倒にそっくりですね。つまりリーンアングルが最大になったところこで起きてるってことです。ただポル・エスパルガロみたいにそれほどリーンしていない状態でバンプに乗って、それでマシンが振られて転倒しているケースもあります。
 今のところこの二つのパターンについてはかなり力をいれないといけないと思っています。最大アングルでの転倒の方がタイヤの要因が大きいと考えていますね。浅いリーンでの転倒についてはタイヤとマシンセッティングの両者に原因がある。
 基本的なセッティングについてはチームにつくってもらわないといけないんですが、残りはライダーと私たちで作っていく感じですね。


CRASH.net:リアタイヤに関してはかなり良い反応が返ってきているようですが。

グーベール:ええ。リアに関しては全然心配してないですね。


CRASH.net:テストには何を持ち込んできてるんですか?

グーベール:基本的にはフロント2種類、リア2種類です。今回はセッティングを出してもらいたかったので、それほど多くの種類は持ち込まないことにしたんです。新型タイヤのテストではセッティングを変えないのが普通なんです。タイヤの違いがはっきりわかるようにね。
 2週間前にヴァレンシアに入って、ピッロ(ドゥカティのテストライダー)に試してもらってるんです。その時点でテスト用タイヤが悪くないことはわかりました。ペースも良かったんですよ。ほとんどのライダーが同じスペックのタイヤを使っていましたけど、太陽が出て気温が上がってからは少しハード目のタイヤを使うライダーもいました。まあタイヤのテストというより、ライダーとチームがタイヤに慣れるためのテストという意味合いが強かったですね。


CRASH.net:ミシュランを使ってのセッティングは今回が初めてなんですか?

グーベール:ほとんどのチームにとってはそうですね。


CRASH.net:例えばカタールにどんなタイヤをもっていくかについてはどこまで決まっているんですか?

グーベール:まだ決めてないですね。リアはほぼ決まりです。もちろんコースによって変わってきますけど、何をすべきかはかなりわかっています。フロントについてはまだ改善の余地がありますし、残り時間を開幕戦に向けて最大限に活用していきますよ。


CRASH.net:来シーズン何種類のタイヤを使うかは決まっているんですか?

グーベール:まだ正確に何種類のスペックを導入すればいいのかは把握していません。でもリアよりフロントのバリエーションの方が少なく済むでしょうね。ライダーはフロントタイヤのスペックは変えたがらないんですよ。ですからフロントが対応できるコンディションの幅を広げなければならないんです。今はそこに力を注いでいます。決めるまで残り4か月ですね。


CRASH.net:今シーズンのMotoGPについてはどう思いました?

グーベール:すばらしいシーズンでしたね。もの凄いレースも何レースかありました。最終戦はそれほど気に入りませんでしたけど、いいレースが多かったですね。いい時に戻ってきたと思っています。


CRASH.net:ありがとうございました。

グーベール:どういたしまして。
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誰にとってラッキーで誰が苦労するのか、とても楽しみですね!

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MotoGP技術ディレクター、コラード・チェッキネリ「統一ソフトウェアはまだそのポテンシャルの10%しか発揮していない」

2016年はタイヤがミシュランに、そして電子制御はハード、ソフトともに統一されます。これからそれがらみのネタを2題。まずはMotoMatters.comより電子制御についてMotoGPの技術ディレクターへのインタビューを。
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2016年のMotoGPで大きく変わる二つ、ミシュランタイヤと統一電子制御がヴァレンシアテストで公の場に初めて現れることとなった。ミシュランタイヤについては2月のセパンからテストが続けられているが、今回のヴァレンシアで初めてライダーが自由に発言できるようになったのだ。2016年の統一電子制御パッケージ、一般的には統一ソフトウェアと呼ばれているそれは、今回初めて公開の場でコースデビューを果たしている。これまでは非公開の場でテストライダーが走っていただけだった。

統一ソフトに対するライダーの反応は様々だ。しかし誰もが口をそろえて言うのは、かなり過去に戻ったということである。これに喜んでいるライダーもいれば、それほどでもないライダーもいる。反応が一定でないためにラップごとにソフトウェアがどんな動きをするのか把握しにくいというのが批判の中心だ。これがソフトウェアに起因するのか、それともコースで使われるのが実質的に初めてだった性でエンジニアがこの電子制御システムを理解するのに時間がかかっているだけなのかはシーズンが進んでみないとわからないだろう。

ソフトウェアについてより深く理解するために新型電子制御のテスト初日、我々はコラード・チェッキネリへのインタビューを試みた。彼はMotoGPの技術ディレクターであり、統一ソフトの開発の総責任者である。彼によればソフトウェアはまだ開発途上にあるとのことだ。「まだ開発中のバージョンなんです。開発が終わることはないんですけどね。改良も進めていきますしメーカーの要望もきいていくつもりですが、今の開発スピードは以前よりかなり速くなっています。例えば今回使われたソフトは既に次のセパンでワークスが使用するものにバージョンアップさるてるんです」

反応が一定しないとライダーが訴えていることについては、チームがソフトウェアに慣れていないことが一番の要因とのことだ。「現時点でのセッティングは本来の能力の10%も出せていないと思いますね。まだソフトの能力を最大限に発揮できる状態からは程遠いですね。誰もそれができていない」。とは言え統一ソフトの到達目標はワークスが使用しているソフトのパフォーマンスを再現することではないとチェッキネリは語る。「可能な限り最良の統一ソフトを作るのが目的であるということは共通理解にしておかなければなりませんね。そういう意味では最高のワークス用ソフトを目指しているわけではないんです。お金と努力をつぎこみたいところではありますけど、どうやってもワークス用のソフトウェアよりマシンの挙動がよろしくないものになるのは仕方がないんです。全部うまくいって、しかも将来的にリリースするソフトウェアのポテンシャルを100%発揮しても、ワークス用ソフトウェアが理想的な状態で理論的に最大限の能力を発揮した場合と比較して百分の何秒か、ことによったら十分の1秒は落ちると思っています。ここ(ヴァレンシア)での差は十分の何秒か落ちくらいですね」

チェッキネリはライダーからの批判も理解できると行っている。「なんでそういうことを言うのかはちゃんと理解できますよ。ライダーにしてみればこれは一種の退化ですからね。今日の時点では退化に見えるはずですし、実は明日もその状況は変わらないこともわかってもらわないといけないんです。今日よりはいいでしょうけど、これに慣れてもらわないとね。ソフトの能力自体がまだちょっと劣っているんです」

チェッキネリはライダーの声に耳を傾けるつもりはあるが、彼にとってだけでなくソフト開発を手がけるマニエッティ・マレリ社にとって最も大事なのはチームのチーフエンジニアである。ライダーからの声をソフトウェアエンジニアが理解できる形に翻訳するのが彼らだからだ。「私たちにとっていちばん大事なのはメーカーのエンジニアからの声ですね。データもわかっているしライダーからの意見もわかっている。その上でこうした情報をまとめてエンジニアリングの視点から使えるようにしてくれるんです。ライダーがこれを退化だって言うのは当然ですけど、何かを良くしていくために使える意見ではないですよね。エンジニアがそれを使えるような情報に翻訳してくれるんです。ウィリーの話とか、とにかくこちらが理解できるようなところに落とし込んでくれるんです。一昨日(訳注:最終戦決勝日)から退化してるとライダーが言うのは当然ですけど、その情報だけでは何も変わらないんです」

安定性に欠けるというライダーの非難に対してまずすべきことは、現行ソフトウェアの最適化と、使い方に習熟することだとチェッキネリは考えている。「この不安定性という問題はソフトウェアの問題ではないことはわかってもらえると思っています。セッティングの問題なんです。コーナーによって反応が違うというのは説明しようがないですし。コーナーごとに最適のセッティングができてないだけだと考えています」。ライダーからの批判でチェッキネリを最も驚かせているのは、同じコーナーでも反応が違うという話だ。「それについてはもっと掘り下げてみたいと考えています。そうなる理由がないですからね。普通に考えたらそんな風に不安定になるはずがないんです。ライダーとは使っている言語が違うのでちゃんと話を聞かないといけないですね。コンピュータの言語はライダーの言語とは違うんですよ。ライダーの言葉の方がいいかげんなこともありますしね!そういう意味ではあまり心配してはいないんです。今のところソフトウェアが間違っていたせいで問題が起きているという話はきいていませんし」

次のバージョンはセパンテストで登場する予定だ。しかし現時点で計画されているアップデートの内容は、ミスを減らしてソフトウェアの安全性を高めることだそうだ。「セパンで登場するバージョンは主に安全性が多重化されたものになりますね。問題が発生したときのリカバリがうまくできるようになるんです」。パフォーマンス自体は変わらない予定だが、しかしセパンテストでマシンが速くならないというわけではない。チェッキネリはこう言っている。「パフォーマンス自体が上がるとは思ってはいません。誰もがこのソフトに習熟して、それでうまく調整えきるようにはなるでしょうね。速くなってもそれはソフトが変わったせいではない。ただ、みんなが慣れてきてタイムが上がるだろうとは思ってます。現時点ではセッティングのやり方もわかっていなくて、それが今回のテストでいろいろわかってきて、だからセパンでもかなりの進歩が見られるでしょう」

チェッキネリはさらに統一ソフトウェアの今後についても話してくれた。「前回のリリースは11月6日で、これがセパンテスト用のものでした。12月10日に打合せを予定していますが、ここで次のリリースについて決定することになります。おそらく開幕戦の後になるでしょうね。何を盛り込むかにもよりますが。現時点では何も言えないんですけど、次のバージョンに何を盛り込むかが決まってないからなんです。私はセパンテストのバージョンが開幕戦に使われると思っていますが、まあ私がそう思ってるってだけですよ。そう決めつけるのは早計です。いろんなことがすごい速さで進んでいますからね。でも私はそう思ってはいます。

チェッキネリが最後までわからなかったのは2016年から使用されるミシュランタイヤとソフトウェアの相性だった。ワークス、そしてその他のチームの中には2015年型ソフトウェアを使ったところがある。しかしチェッキネリに言わせればそれは時間の無駄だ。新型タイヤのせいで何もかもが変わってしまうのだと彼は言う。「ベースとなるセッティングを作るプロセスが全然違うことになると思いますよ。ソフトウェア自体、タイヤの情報を加味してるんです。セッティングはタイヤの挙動を考慮しなければならないんですよ。つまりベース作りが全然違ってくるんです。ソフトウェアのマッピングの問題ではないんですよ。ですからここでワークスソフトウェアを使っても、相手はミシュランタイヤなんだから全然意味がないと思いますよ。私がやってるわけじゃないんで言っても無駄ですけど。そもそもベースセッティング作りにはタイヤがらみのことがたくさんあるんです。例えばタイヤの断面形状を考えてみてもわかると思いますけど、ソフトウェアやマッピングは変わらないし、タイヤがらみで何か変える必要はないように見える。マッピングのために入力する数値が変わるだけなんですよね」
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ソフトウェアにタイヤ情報まで入っているのか!

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データを扱うということ:マッテオ・フラミニへのインタビュー

さて、諸々落ち着いてきたところでヤマハ・レーシング公式が裏方さんを取り上げているので訳出。こういう記事はとても楽しいのでどんどん取り上げてほしいですね。
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MotoGpマシンが膨大な数のソフトウェアと電子部品を搭載しているのは周知の事実だ。こうしたソフト・ハードからデータがはき出されてくる。しかしチームはそれをどんな風に使っているのだろうか?データはどこに保存されるのだろうか?そして2016年にMotoGPクラスに導入される新ルールによりデータの扱い方はどんな風に変わるのだろうか?ヴァレンティーノ・ロッシのデータ・エンジニアであるマッテオ・フラミニに話をきてみた。ついでに彼の人となりも紹介しよう。

ヴァレンティーノはもう何年もMotoGPで戦っていますが、彼のデータはいつ頃まで遡ることができるんですか?

「ヴァレンティーノについては2004年からのデータがありますね。もの凄い量ですよ。通常はレース前に前年のデータを確認します。マシンの動態とか何をやっったかとか、そういうことですね。まずはそこから始めるのがベストなんです」


そこで使うのはヴァレンティーノのデータだけですか、それとも他のライダーのデータも使うんですか?

「今はヴァレンティーノのデータしか確認しませんね。彼に向けていいベースセッティングを提供しなきゃならないですから。ロレンソのデータも確認しますけど、それはプラクティスに入ってからですね。まずベースとしてはヴァレンティーノのデータ確認しかしません。ピットにでかいサーバがあってそこに全データが入ってるんです。すごい容量ですよ。メモリーの量がはんぱないんです。


どうやってデータを保存するんですか?

「マシンから全データをダウンロードするだけですよ。そしたら直接巨大なサーバに入っていくんです。基本的には巨大なデータ保存装置って感じですね。あとは必要なデータを分析するだけです」


もしそのコースのデータが今年マシンから得られるデータと異なっていたらどうするんですか?

「過去になにをしたか確認するのはとても訳に立つんですよ。前年に学んだことが入ってますからね。それがいい経験になるんです。ですから今年の状況に100%マッチしていなくても出発点としては使えるんです。ゼロからスタートするのに比べたら何かベースになるものがある方がいいですからね」


データからは何がわかるんですか?

「データがあればいろんなことがわかりますよ。マシンの動的状態がわかるいろんなセンサーがついてますからね。ブレーキングとか加速とかスロットル開度とかがわかるんです。その他にもエンジンのパフォーマンスがわかるセンサーもあるし、マシンの診断をするセンサーもある。基本的にマシンについてはなんでもわかるってことですね」


データを見ただけでどのサーキットかわかります?

「たぶんわかりますよ。ちょっと考える時間はいるかもですが、わかりますね」


サーキットのどの場所かも正確にわかるんですか?

「ええ、その方が楽ですね。どこのサーキットかわかればどのコーナーかはすぐにわかりますよ」


何人かのライダーのデータを見てどれが誰かはわかりますか?

「それもできるでしょうね。ヴァレンティーノことはよく知っていますし、ここ何年も彼とその時のチームメイトとの比較をしていますから。チェカ、エドワーズ、ロレンソってね。違うスタイルのライダーと比較することでヴァレンティーノがどんな乗り方をしているのかよくわかるようになってます」


他のライダーと比べたときの彼のライディングスタイルの特徴ってなんですか?

「例えばブレーキングですね。ちょっと特別なんです、すごくうまいんですよ。あと向き変えがすごく速いことですね。高速コーナーですごく速くて、リアブレーキとフロントブレーキのの両方を使ってるんです。マシンの動かし方も独特ですね。彼の独特なところっていろいろあるんですよ」


現行モデルと以前のモデルの違いはわかりますか?

「そこを見分けるのはちょっと分析しないと難しいですね。簡単じゃないです。エンジンが速いかどうかで見分けるのが一番楽でしょうね。スピードと加速を見ればわかりますから。でも新型シャーシかどうかを動態から見分けるのは相当な深い分析が必要ですね」


来年は電子制御開発が凍結されますが、これはどんな影響があるでしょう?

「今のソフトウェアに満足してたんですよね。すごく良かった。来年型は各メーカーのいいとこ取りだとは聴いているので、ソフト自体はちゃんとしてると願いたいでうね。ですからこれまでのデータ蓄積も無駄にならないと思ってます」


ソフトウェアの良し悪しって何で変わるんですか?

「いろいろありますよ、例えばコーナーごとにトラクションコントロールのプログラムを変えられるとか、アンチ・ウィリーのセッティングを変えられるとかですね。いろんなセッティングができるんですけど、正確に、かつたくさんのインプットをすればアンチ・ウィリーのアウトプットもちゃんとする。ですからできの悪いソフトウェアはアンチ・ウィリーもちゃんとできないですけど、いいソフトならマシンを完璧にまっすぐ、しかも速く走らせることができるし、自分がしたいときだけスライドさせることができるんです」


レースを見てるときって普通に見てるんですか?

「いいえ。『マトリックス』って映画を観たことあります?マシンの挙動を見ると数字やらグラフやら線やらが見えちゃうんです。信じられないですよね!」


他のレースを見ていてもそんな感じなんですか?

「多かれ少なかれそんな感じですね。電子制御ユニットの中を走る数字やらセッティングやら二進数やらが見えちゃうんです。どこにでも数字が見えるんですよ」


楽しむためだけにレースを見るってことはあるんですか?レース中はリラックスできます?

「ええ。楽しんでますよ。レースが始まってしまえば私の仕事は終わりで、何もできることはないんですよ。だからやった結果が形になってライダーが優勝しようと戦ってるのを楽しんでいます。見てるときに数字や燃費が見えちゃうってだけでね」


レースの週末に入って最初にすることは何ですか?

「まず木曜に去年のデータをチェックします。去年何をしたか、ベースとなるセッティングはどうすればいいかを考えるんです。例えば去年はコースがすごく滑りやすかったんでトラクションコントロールを使いまくったし、今年も舗装はそのままだから同じ問題が出るだろうとかね。去年のギア比とかも確認しますし、そうやって基本となるセッティングがあれば今年も去年とそれほど違わないだろうって考えられるんです。去年のデータをちゃんと見るのはとても大事なんですよ」


ヴァレンティーノの安定性ってどうなんですか?

「すごいですよ。ほんとうに正確なんです。マシンがOKなら何周も同じタイムを出せる。信じがたいことですよ」


彼からのフィードバックはどれくらい正確なんですか?

「そこが彼の最高にすごいとこなんですよ。おかげで助かってます。チェックしなきゃならないデータがどれほどあるか想像がつきます?ありがたいことに彼はどのラップのどこコーナーの話か正確に伝えてくれるんです。だからそのデータを見れば良くって、すぐに問題を見つけられるんです」


ヴァレンティーノのような生きる伝説と仕事をしたい人のために教えてほしいんですが、どうやってこの仕事を手に入れたんですか?

「ヴァレンティーノがチームに入った時には私はもうここにいたんですよ。1999年の11月からヤマハでやってるんです。マックス・ビアッジがヤマハに乗っていて、私に声を掛けてくれたんです。で、ヤマハで働くことにした。まだ覚えてますけどアルゼンチンGPのときでした。それでマックス・ビアッジのデータ・レコーディング・エンジニアとして2000年の契約書にサインしたんです。そこからずっとヤマハで働いてます」


マックスとはどこで知り合ったんですか?

「彼を担当していた理学療法士が私の近くに住んでいたんです。で彼も私がヤマハで働いてることを知っていて、私もイタリア人だし当時チームは英語をしゃべる人しかいかなった。それでイタリア人が必要になって私に声を掛けてくれたってわけです」


モータースポーツ界で仕事をしていなかったら何をしていましたか?

「自転車会社で働いていたんじゃないでしょうか。すごくサイクリングが好きなんです。自転車が大好きだし、いろいろ電子機器を自転車に載せるのも好きなんですよ」


自分のことを「ヤマハ人」だと思いますか?

「ええ。それに前よりその思いは強くなってますね。2年間ドゥカティでやってたことがあるんですけど幸いにも戻ることができた。あの頃のことを思うと、ヤマハって家族なんですよ。故郷みたいなものなんです。もう他には行きたくないですね。ここにずっといたい。とても居心地がいいんです」


自分のいいところを三つ挙げて下さい。

「人見知りしないことと、うーん、他の人に聞いてもらった方がいいかな、自分を褒めるのは難しいですよね。あとは自分にも一緒に働いている人にもに正直なことと、スキルがちゃんとあることですかね。経験もあるし、何をやるべきかわかっている」


一緒に働いている人の中で誰と一番長くやってますか?

「(ヴァレンティーノのメカニックの)ブレントですね。1999年にはもう一緒にやってたと思います。私がチームに入った時にはもういましたから」


GPの合間には何をして楽しんだりリラックスしたりしてるんですか?

「読書と映画とあとはずっと音楽を聴いてますね。音楽好きなんです。マイオとか他の連中と走りにいくこともありますね。ハーフマラソンもやるんです」


自分に挑戦するためにですか?

「ええ。挑戦なんです。でもみんなで集まってだらしゃべるのも楽しいんです。ハーフマラソンは楽しいし終わった後が気持ちいい。好きですね」


音楽はなんでも好きだということですが、映画は何がお好きなんですか?

「『マトリックス』とかそういうやつですね。未来的で電子的な感じな映画が好きなんです。本だとキャシー・ライクス(訳注:犯罪ドラマ「ボーンズ」の原作者)とか、連続殺人ものとかが好きですね。あとはジェフリー・ディーヴァーが好きです。あとジョン・グリシャムもね(訳注:どちらも犯罪物)。犯罪者を追い詰めるやり方が好きなんですよ。思考の方法とか、細かい証拠から分析していく感じが好きなんです。私の仕事もそんな感じで理解するために分析していくんです。彼らも同じように何が起こっているかを理解するために分析する。。だから好きなんでしょうね!」


GPには必ず持ってくるものを三つ挙げて下さい。

「iPodかiPhoneは音楽のために必ず持ってますね。もちろん本も。あとはサイクリングとランニングのための道具ですね」


シーズンを通じていちばんお気に入りの場所はどこですか?

「いろいろいい場所はありますけどミザノが好きですね。雰囲気がいいんです。ミザノはホリデーシーズンに開催されるんでGPのために行くんだけど仕事な感じがしないんですよ。外に出ればたくさんの人が、たくさんの観光客がいる。それに私の家からもそう遠くはないですし。車で1時間ぐらいなんで帰ってきた気持ちになれるんです。ムジェロも同じですね。仕事のために行ってるのに里帰りした気持ちになれる。あとはアメリカも好きです。行くたびに何か新しい発見がある。いつも何か新しいことをするんです。例えば今年オースチンに行ったときには2〜3人で素晴らしいサイクリングをしました。ほんとに楽しかった。知らない場所で、すごく素敵だったんですよ。インディではホテルの近くの川沿いがランニングに最高で、本当にリラックスできてストレス解消になりました。生まれ変わったみたいですたよ!もうラグナに行けないのは残念ですね。あそこも素晴らしい。でもまあどこの場所もすごくいいんですよ。自分は運が良かったと想いますよ。仕事を楽しめるんですから」


誰も知らないご自分の秘密ってありますか?

「タトゥーが12か所あります。でも全部シャツの下の見えないところですけどね。小さいけど自分の人生の思い出を刻み込んでるんです。心に残った特別なことなんです。あと私はすごく細いんですけど象みたいに食べるんですよ!健康的に食べなきゃとは思ってるんですけど、チョコやアイスを食べまくることがあるんです。アイスには目がないんです!今日も2個食べて、夜も1個か、ことによったら2個食べるかもです!」
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ドゥカティの2年間はスタッフにとっても暗黒だったということでしょうか。この記事を見ると確かにそんな感じかも…。

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2015MotoGP最終戦で何が本当に起こっていたのか

さて、今回もDavid Emmett氏西村章氏と並んで「読みたいジャーナリスト」の一人、Mat Oxley氏の記事をMotor Sport Magazineより。
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これは誰にも言ったことはないのだが、今がその時なのだろう。正直に告白しよう。私はヴァレンティーノ・ロッシのファンだ。私のソーシャルメディアはこの数週間というもの毒を吐くロッシ教の信者に汚染されてしまった。彼らは私が事実に対して客観的であろうとしていることが犯罪的であると断罪していた。多くの読者が何年にもわたって尊敬しているような他のMotoGPジャーナリストも真実を追究しようとしたことでひどい攻撃を受けている。

私が彼のファンになったのは1996年の夏のことだ。その頃から彼は日曜の夕方にプレスルームに現れるようになった。ジャーナリストとジョークを交わし、そしてライダーには珍しくそれを楽しんでいた。その2年後、私たちは一緒に仕事をするようになった。私が彼のコラムの執筆を担当することになったのだ。日曜の夕方に彼をつかまえて(その当時でさえなかなかたいへんなことだった)、レースやその前の週に何をしたかといったようなことについておしゃべりをしたものだ。リオ・デ・ジャネイロのプールサイドでの会話では、ロッシはビールとシャンパンにまみれ、隣で友人やスタッフがプールに飛び込んでいた。彼が250ccのタイトルを獲得した数時間後の話だ。彼の話はいつでもおもしろかった。レースや人生を心から楽しんでいる様子が伝わってきたのだ。

私の書いた彼のコラムは世界中のバイク雑誌に掲載されたが、今読むと笑ってしまうほど素人くさいものだった。そしてそれがかえって良かったようだ。ロッシはレース後は必ず30分ほどはつきあってくれた。そして私はいつも彼にCDを持っていった。当時私はロンドンのクラブシーンに入り浸っていたのでドラムンベース(訳注:こんな感じ)のレコードを持参したのだ。世界を変えたゴールディのタイムレスとかそういうやつだ。「このゴールディって変な音楽だね」と彼は笑いながら言っていた。

そのさらに2年後、彼は私に自分の伝記を書かせてくれた。ロンドンのセント・ジェームズ・スクェアにある彼のマンションで何時間も過ごすことになったのだ。

私たちは彼の過去について語り合い、その隣では彼の親友であるウーチョ(サルッキ)がソファに横になっていびきをかいていた。またどこかのクラブで徹夜をしたらしい。その前の年にロッシが手にした500ccチャンピオンのトロフィーが旅暮らしで片付けもままならないサイドボードの上に鎮座している。

彼の伝記を書くためにイタリアにも行った。素晴らしい彼の父(彼は私の子供時代のヒーローでもある)と優しく明るい彼の母としばらく過ごしたのだ。彼の母はロッシの子供時代の面白い話をたくさんしてくれた。中でも最も私が感銘を受けたのは、ミニバイク用コースから帰ってきた彼がアドレナリンを出しっぱなしでしゃべり続けたということだ。ヴァレンティーノはレースだけじゃなくてパドックにいることがとても好きだったんですよと彼女は言った。彼はパドックを愛していて、だからこそここまで長くやってこられたのに違いない。

私がロッシを好きなのは、彼がレースでは戦士になるからだ。人間としてももちろん好きだ。明るく、おもしろく、心が広い。それは両親から受け継いだものだ。彼が人間として素晴らしいことを疑ったことはない。無慈悲で悪意に満ちたこの世界でトップに立とうともがいている内に多くのレーサーがそうした人間性を失ってしまうのとは違っているのだ。

250で素晴らしい走りを見せたロッシは、500でも抜群の走りをし、そして4stのMotoGP時代にホンダに乗ってからは誰も追いつけなくなってしまった。しかし本当は2ストローク500ccの剃刀の刃のようなスリルを懐かしんでいたのだ。

ジャーナリストであれば利害関係も偏見もなく、誰かに肩入れするようなことがあってはならないのは当然だ。しかしロッシの成し遂げたこと、そしてその人好きのする性格のせいで当時の私は彼を悪く書くことができなかった。競争が激しくなり、彼の無慈悲な一面が見え隠れし始めたときでさえ、私は気にしていなかった。そもそも彼のことを温和でおとなしいと思ったことなど一度もない。彼はバイクレーサー、つまり命を賭けて世界最速を争うスポーツの主役なのだ。王者の中の王者になるには、必要とあらば卑劣で自己中心的で悪辣にならなければいけない。笑顔で手を振る姿に騙されてはいけない。それはやる気になった暗殺者の見せる笑顔にすぎないのだ。

彼が最初にコース内外で激突した相手はマックス・ビアッジとセテ・ジベルノーだ。その二人はロッシにしてみれば楽な相手だった。そして次はニッキー・ヘイデンだが、2006年のタイトル争いの相手となった彼は本当の紳士であり、その年のロッシが不運に見舞われ続けたこともあって、二人の戦いはお手本となるようなフェアなものになった。2006年のヴァレンシアの素晴らしいバトルと今年のヴァレンシアの悲惨な結末を比較すると実に悲しい気持ちになってしまうのだ。

そしてケイシー・ストーナーが現れる。彼の才能はGP界最高の人気を誇るロッシに匹敵し、そして時には彼を上回る力も見せた。ロッシは実に頭の良いライダーだ。彼は若い世代によって自分のレース人生が脅かされるだろうことをわかっていた。若いライダーたちは彼にはない技術と欲望を持っている。次にやってきたのはホルヘ・ロレンソだ。ロッシは彼らのことを「命を狙って周りを回っている鮫」だと言ったことがある。

最後にやって来たのはマルク・マルケスだ。自分自身とそっくりなライバルがついに現れたのだ。マルケスは幼年時代からロッシを見て、そしてロッシを信仰してきた。マルケスが憧れであるロッシと同じような笑顔の殺し屋になったのも当然だ。

2008年のカタルニアでのことだ。既に少年レーサーとして名を馳せていたマルケスはあるスペインのジャーナリストと写真家に自分のアイドルに紹介してくれるように頼んだ結果、ついにロッシにミニカーを手渡すことができた。その時ロッシはこう言っている。「ああ、君があの勇敢なマルクだね…」

自分のアイドルに会ってはいけないとは良く言ったものだ。マルケスが現れるまで最も無慈悲なライダーはロッシだった。ライバルとのつばぜり合いではいつもロッシが勝利をおさめていた。ビアッジ、ジベルノー、ストーナー、誰もが彼の殺戮本能を感じていた。しかしロッシに追いつきたくて仕方が無い気狂いライダーが現れたのである。

フィリップアイランドでマルケスがロレンソを手助けしたという証拠は私にはみつからない。セパンでマルケスがそれをやった証拠はいくらでもあるが、それは彼の最優先事項だったわけではない。数日前に公衆の面前で恥をかかせたロッシにちょっかいをだしたのにはこういう考えがあったのだろう。僕がオーストラリアで脚を引っ張ったって思ってるんだろ?僕が本気で脚を引っ張ろうとしたらどういうことになるか教えてあげるよ。

当然のようにロッシは怒りを爆発させた。そして彼はグリッド最後尾に追いやられることになる。これで実質的に彼のタイトル獲得の可能性は潰えてしまった。彼も口撃を仕掛けたこと、そしてレース中にマルケスに仕掛けたことは間違いだったと認めている。「自分のラインを走らずアウトにマシンを持っていったことは後悔してますよ」。彼はそうヴァレンシアで言っている。結局セパンの木曜午後に自分がやったことでタイトルを失ったのだ。

私は今でもロッシのファンだ。そして私は歴史も好きだ。ロッシが日曜にタイトルを獲得していれば、それは歴史に残る瞬間になったはずだ。過酷で無慈悲なこのGPというスポーツで10回目のタイトルを獲る。しかも最初のタイトルから数えて19年目のことになるのだ。F1のミハエル・シューマッハの記録の11年のほぼ倍である。人間を超越した記録だ。モータースポーツ界だけではない。あらゆるスポーツを見回してもこんな記録はないだろう。

誰もが心から知りたいのは日曜に何があったかだ。ロレンソが優勝しタイトルを獲得した。マルケスは僅差の2位で、ダニ・ペドロサが3位に入り、ロッシはその遙か後方で、しかし26番手から見事な走りの結果4位でゴールした。

もしレプソル・ホンダの2台がロレンソを抜いていたらロッシがチャンピオンだった。しかしそうはならなかった。マルケスがロレンソを護っていた可能性はある。ではどうして最後までM1の後ろにぴったりくっついていたのか?彼のボディランゲージが(いつもの通り!)雄弁に語っている通り、最終ラップでのアタックを目論んでいたはずだ。おそらく最終ヘアピンだろう。そこで抜いておけばロレンソに抜き返されることはない。なぜ彼はそれなりの距離をとってロレンソに楽をさせなかったのか?なぜ毎周つつき続けたのか?誰もがその質問を思い浮かべ、誰もが自分なりの答えを出している。ロレンソのM1は加速時のグリップが良く、マルケスは立ち上がりで離されてしまって次のコーナーで仕掛けられなかったということは数少ない事実として挙げておこう。

ヴァレンシアが抜きにくいサーキットだということも指摘しておこう。低速コーナーが多く、コース幅は狭く、結果としてラインは一本だけで前のライダーの後ろを走るしなかないのだ。そして唯一のストレートに向かって立ち上がるコーナーはエントリーで極端にスピードを落とさなければならないようにできている。幅が広く高速で見通しの良いフィリップアイランドと正反対のコースなのだ。ヴァレンシアはコーナー脱出から次のコーナーまでの間に抜くのがとても難しいレイアウトなのである。トラクションコントロールとカーボンブレーキで武装した重いMotoGPマシンにとっては特にそうだ。過去9回のドライで行われたMotoGP決勝のうち、5回までもがトップは一度も抜かれないままゴールしている。一度もだ。

一夜明けた月曜、私は真実を探るためにパドックをうろついて、MotoGPに何十年も関わっているが利害関係のない第三者に話を聞くことにした。ワークスのエンジニアやチームマネジャーや元レーサーや現役レーサーやメカニックにだ。斧を磨いている相手は避けた(要するにワークスホンダとワークスヤマハだ)。

彼らには匿名の投票をしてもらうことにした。ロッシの非難が正しいと思うならロッシの欄に、マルケスがロレンソを守っていたとは思わないならマルケスの欄にそれぞれチェックしてもらったのだ。結果は接戦だった。何人かは「わからない」の欄にチェックをし、わずかだがチェックをしなかった人もいた。そのほとんどは質問をしたとたんに逃げるように去っていったライダーだ。つまりGPを最も良くわかっている人たちですら何が起こったのか判断しかねているということなのである。

ロレンソが7回目のポール・トゥ・フィニッシュでタイトルを獲得したという普通では達成できないもう一つの事実を見れば、前が空いてる状態でしかもロボットモードで走っている彼はとんでもなく抜きにくいライダーだということも言えよう。

2015年にもっとも速かったのは間違いなくロレンソだ。ロッシは雨のシルバーストン(彼の最高のレースのひとつだ)をはじめとして4勝を挙げ、もう少しでタイトルを獲得するところだった。彼の強みは状況に対応できるところにある。今年彼が犯した間違いはひとつだけだ。セパンのプレスカンファレンスでマルケスに対して口撃を仕掛けたことだけである。もし彼がその思いを自分の中にしまっておいたなら普通のレースになっていただろうし、ヴァレンシアではトップグループでタイトル争いができただろう。それも見応えがあったに違いない。

私はひとつのストーリーをもっている。根拠はまったくない。それはこんなストーリーだ。ロッシがどうしてもタイトルを獲りたかったのは亡き親友、マルコ・シモンチェリのためだったと。この話に少しでも真実が含まれているなら、気持ちが先走っていつもの冷静さを失ってしまったのも頷ける。そしてそれは自分のレースができなくなることを意味するのだ。

この数週間ろくでもないことが起こっていたし、狂信的なファンはロッシは神なのだから間違ったことなどするわけがないと彼を祭り上げていた。私はまだロッシのファンだがマルケスのことも好きだ。なぜなら彼はロッシと同じように戦士の魂を持っているのだ。

ロレンソの性格は私の好みとするところではないが、コースサイドで彼があり得ないリーンアングルでバイクを完璧に安定させたまま流れるようにコーナーを繋いでいく様を見ていると畏敬の念で満たされる。誰もあんな風にマシンを操ることはできないのだ。

黄色を身に付けた何千人もの観客からのブーイングに晒されても冷静に完璧なライディングができる彼の能力も賞賛したい。私はものすごい天の邪鬼でもある。だから彼の素晴らしさを理解できないファンが彼を嫌えば嫌うほど、私は彼を好きになっていく。

つまり私は全員が好きなのだ。私はバイクレースを見るのが好きで、とてつもない人生を送っている彼らのことが好きで、ドラマと混乱が展開されていく様子が好きなのだ。撃ち合いの無い戦争である。基本的に私は誰が勝とうとかまわない。自分にはどうにもできないことを望むのになんの意味があろう。もし私が何かの集団に属して盲目的な忠誠を誓いたいならとっくにバイクレースから離れてサッカーにいっているだろう。
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そう!そういうこと!

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2015ヴァレンシア日曜MotoGPまとめ:タイトル争いの勝者、敗者、そして破壊者

最初にお断りしておくと、この記事の翻訳にはちょっと迷いがありました。グルーミーな内容だからです。実は私は記事を書いたEmmett氏ほどにはがっかりしていないのです。いや、正確に言うなら「がっかり」も含めて楽しめばいいと思っているというか。だから実は今シーズンは私にとっても最高のシーズンのひとつなのです。
というわけでMotoMatters.comより。

ってなことを書いていたら、ストーナーがドゥカティのテストライダーに、というニュースが流れてきて、もう出遅れた感…。
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事実は小説よりも奇なり、とは良く言われることである。もう少しつっこんだ表現をするなら、事実と作られた物語の区別をつけるのはとても難しいということだ。物語は簡単に作ることができる。それが私の仕事でもあるし、すべてのスポーツライターの仕事でもある。しかし紡いできた事実を再構築しているはずが、どの時点からかファンタジーの世界に脚を踏み入れてしまうことがある。そしていつ脚を踏み入れたか気付くのは難しいのだ。同じ事実を見ても全く違う正反対の結論にいたることがある。一方が妄想で一方が理性的かつ客観的ということだろうか?それぞれの意見をどの程度重んじればいいのだろうか?誰が言っているか、その人が好きかどうかで事実に対する見方を変えてしまっているのだろうか?

MotoGP最終戦のせいでGP自体がこうした混乱に巻き込まれることになってしまった。近年最高、ことによったら史上最高の年になるはずだったのに、それが単なる茶番になってしまったのだ。事実に対する二つの対立する解釈が衝突し、爆発し、そしてせっかくのいいシーズンを泥沼に引きずり落としてしまった。せっかく勝者も敗者も見事なレースをしたのに敵意と怒りと疑惑と恐怖がそれを台無しにしてしまった。普通に見ればヴァレンシアのMotoGPレースは最高のレースによる最高の1日だった。しかしもう誰も普通の気持ちではこのレースを見られなくなってしまったのだ。

決勝日はすばらしいはじまりだった。Moto3ではすごいバトルがあった。そして誰もが納得する結末を迎えた。ミゲール・オリヴェイラが熟練の技で次々と襲い来るホルヘ・ナヴァッロやロマーノ・フェナティ、エフレン・ヴァスケス、ニッコロ・アントネッリを下して連勝を飾ったのだ。そして18番手という最低の予選結果だったダニー・ケントが安全優先の手堅いレースをしてタイトルを獲得した。GPでは1977年のバリー・シーン以来となるイギリス人チャンピオンだ。ずいぶん間があいたものである。

達成

今週末のケントは常に緊張などしていないと言い続けていた。日曜にはチャンピオンTシャツ(まあより正確にはチャンピオンベストだが)を着ることができたが、本当は緊張していたんだとケントは告白している。みんなそれを知っていた、彼も嘘がばれていることを知っていた。しかし我々は素知らぬふりをしていた。同じ意味のない質問をするよりはるかに楽だからだ。土曜の夜、ケントのチーフメカのピーター・ボムは目に見えて苛立っていた。彼とスタッフはケントが望むセッティングをなんとか作ろうとマシンをいじり続けていたのだ。長いスイングアームに短いスイングアーム、リア上げにフロント上げ、固いショックや柔らかいショック。しかしどれもケントの気に入らなかった。最終的にすべてを素のセッティングに戻すことにした。しかし最も鍵となったのはケントの気持ちのセッティング変更だったのだ。午前中のウォームアップの後、ケントは彼のチーム・マネジャーであるステファン・キーファーに、やるべきことをやりとげる気持ちになったと言ったそうだ。そして彼は見事にやりとげてみせた。

ケントはここまで実に長い旅を続けて生きた。最初はアプリリアのスーパーティーンズ、そしてレッドブル・ルーキーズカップ、次はMoto3からMoto2に上がり再びMoto3に戻ってきた。ケントは2回も1ポイント差でタイトルを逃している。誰もが三度同じことが起こるのを怖れていた。そうならなかったのはキーファーのチーム、より正確にはピーター・ボムのおかげだ。二人はとても仲が良く、ホテルの部屋も常に一緒で、ピットからホスピタリティを経てホテルに帰ってまでマシンのセッティングについて議論していることもある。もちろんつまらないことについてだべっていることもあるのだが。

信じる気持ち

最も重要なのはボムがケントのためにしてくれるすべてについてケントが信頼をおいていたことだ。そしてボムもケントの才能を信じ、そしてそのことでケントが自分の才能に自信を持てたということだ。ボムにとってはこれが最初のタイトルではない。Moto2ではステファン・ブラドルで、ワールドスーパースポーツではクリス・ヴァーミューレンでタイトルを獲得しているのだ。その経験が役に立った。ボムとキーファーは再び良いチームで、しかも戦闘力のあることを証明したのだ。残念なことにGPほどのレベルでもそうしたチームはそう多くはないのだが。

ケントはオリヴェイラからMoto3のタイトルを奪うことができたが、今年レッドブル・KTMチームで走ったオリヴェイラは素晴らしい成績を残すことができた。KTMが新型フレームを導入すると彼は飛び抜けた速さを見せ、その一方でケントはシーズン後半で調子を落としてしまった。その結果、今シーズンのMoto3クラスは二人の争いとなったのだ。ケントが前半を支配し、オリヴェイラが後半を支配した。二人とも2016年はキーファーとMoto2を戦うことになる。すばらしいコンビニなるだろう。

Moto2のレースは接戦だった。多くのライダーを巻き込んだクラッシュのせいで赤旗中断、周回数減算となってしまったのだ。ティト・ラバトが復帰レースで優勝したマルクMVDのMoto2チームには良い置き土産となった。彼は火曜のテストから同じチームでMotoGPマシンに乗ることになっている。アレックス・リンスが2位になった。もう少しで勝てそうだったのだがランキング2位を守ることを優先したようだ。Moto2ルーキーとは思えない活躍をしたリンスはマーヴェリック・ヴィニャーレスと同じ道を歩んでいる。既にMotoGPのワークスチームがぱらぱらと(それほどぱらぱらではないかもしれない)Moto2卒業後の2017年のリンスの可能性について検討し始めている。

見えること/見えないこと

そしてMotoGPのレースだ。今回もフィリップアイランドとセパンと同様にレース後のごたごたで素晴らしい戦いが台無しになってしまった。レース後に起こった出来事を、明らかに不公正なことに対する正しい問題提起と見るか、自分以外の誰かに自分のミスの責任を押しつけた男の八つ当たりと見るかはどの視座に立つかによって違ってしまう。議論の余地無く受け入れられる事実もあれば、解釈の余地のある事実もある。しかし誰もが同意できることがひとつだけある。それはこの騒動のせいで本来なら最高峰クラスでは近年になかった偉大な年になるはずだった今年が薄汚れてしまったということだ。もういちど言っておこう。勝者はいない。それが本当に悲しいのだ。

議論の余地のない事実とはなんだろう?ホルヘ・ロレンソの走りはヴァレンティーノ・ロッシが怖れていたとおりのものだったことだ。彼は最前列から飛び出していった。路面温度は土曜とほぼ同じ。ハード側のフロントタイヤでもレースが進行するにつれてたれてくるような温度だ。特にホンダはその影響を受けていた。ヴァレンティーノ・ロッシは命がけのレースをした。右から左からそして真ん中から正確に前のライダーを抜き去り4位に上がる。マルク・マルケスはレースの最初から最後までロレンソについていけるだけのペースで走っていたが、ほぼ限界で走っていた。ダニ・ペドロサは序盤でトップ二人に遅れをとったものの、再び追いついて残り2周というところでマルケスに仕掛けた。マルケスはペドロサがはらんだ隙を見逃さず、すぐさま抜き返す。しかしロレンソにアタックすることはできなかった。

ここまでの事実についても解釈の余地が残されている。なぜマルケスはロレンソに仕掛けなかったのか?マルケスは今シーズンよくやっていたように仕掛け時を待っていたのだと言っている。最終ラップかその前のラップでロレンソに仕掛けるはずだったのに、ペドロサがその計画を潰してしまったというのが彼の説明だ。一方ロッシはマルケスがロレンソの「ボディガード」をやっていたと非難している。ロレンソの後ろについて守っていたというのだ。自分はロレンソを抜かなかったくせにペドロサに抜かれたらすぐに抜き返したのがその証拠だというのだ。

単純な事実でさえ…

マルケスはロレンソについていくので精一杯だったと言っている。そして二人の差も常に変化していたとも指摘している。自分はロレンソについて行くために攻め続けていたが、彼より速かったのは第2セクターだけで6コーナーしか抜けるポイントが無かったというのが彼の主張だ。ロッシはペドロサの走りを引き合いに出してこんな理論を展開している。彼は最初に後ろに下がってしまったが再びマルケスに追いついて最後に抜こうとした。ペドロサがマルケスに追いつけるということはホンダはもっと速く走れたということではないか。

マルケスによれば、自分は優勝を目指して走っていたが、くびきを解かれたロレンソに追いつく術はなかったということだ。ロッシはマルケスがロレンソの後ろを守って彼のタイトル獲得をバックアップしたという。ヴァレンティーノ・ロッシにはタイトルを獲らせなくなかったのだと非難しているのだ。

どちらの解釈が真実なのだろうか?それを決めるのはおそろしく難しいことだ。どちらの主張も同じ二つの特徴がある。どちらもあり得ることで、同時に反証不可能ということだ。様々な事実をかき集めて、それを詳細に分析して、それでもそこから導き出される解釈には大きな差が出てしまう。こうなったらオッカムの剃刀の出番だ。最もシンプルな説明がもっとも可能性が高いということだ。

最初に検討すべきはマルケスが本当に限界で走っていたのか、それともヴァレンティーノ・ロッシがレース後に申し立てたとおり手を抜いていたのかということだ。わかっているのはロレンソもマルケスもヴァレンシアでの最も最近のドライレースだった2013年と比較して11秒も速かったということだ。その後、再舗装がなされたとはいえ彼らのタイムは相当速いものである。

外から推し量る

さて、見た目だけでそのライダーが限界で走っているかどうかわかるものだろうか?13コーナーのマルケスは間違いなく速かった。両輪共にスライドしていたほどだ。しかしそれが限界だったのだろうか?そこで利害関係のない第三者、アンドレア・ドヴィツィオーゾにたずねてみることにした。ロッシがマルケスを卑劣だと非難した後にたまたま私たちと話をする機会があったのだ。「それはそのとおりですね。マルクはいつでもバトルをしている。だから今回は不思議といえば不思議です。でもマシンが問題を抱えているかどうかは乗ってるライダーしかわからないんですよ。だから彼が限界で走っていたのか限界を超えていたのか、それともレースをコントロールしていたのかは僕にはわからないですね」

MotoGPライダーなら他のMotoGPライダーが限界で走っているかどうかわかるのだろうか?「普通はそうですね」というのがドヴィツィオーゾの答えだ。「でも他のライダーが直面している状況をすべて把握することはできないですよ。特にマシンが違うとね」。だいたいのことはわかるがマシンが違うと限界も違うし、どの部分で苦労しているのかは見ただけではなかなかわからないと示唆したのだ。「3つのメーカーのマシンに乗ったから言えることですけどね。乗ってみないと細かいことはわからないんですよ。午前と午後とでどう違うかなんてなおさらですね。コンディションも常に変わりますし。だからライダーなら端から見ていてもだいたいのことは理解して分析できますけど、全てを把握するのは簡単なことじゃないですよ」。ではどの程度までならわかるのだろうか?95%くらいは正確なのか?「いや、そこまでじゃないでしょうね」とドヴィツィオーゾは言う。「ひとつのメーカーのマシンしか乗ったことがないならそこまではわからないでしょう。もし違うマシンに乗った経験があるならある程度はわかりますけど、ルールも変わるしマシンも変わるから、僕だってもうホンダについては語れないですよ。乗ってたのはずいぶん前ですからね」

ロッシはマルケスが普段とは違って前のライダーを抜こうとしなかったことを自らの主張の根拠としている。「この2年間マルク・マルケスがやってたこと思い出せばわかると思いますけど、彼はいつだって、少なくとも最終ラップには抜こうとしますよね」とロッシは言う。「つまりなんでマルク・マルケスがホルヘ・ロレンソを一度も抜こうとしなかったのかってことですよ。なんで最終ラップでも一度もトライしなかったのか不思議ですよね」

マルケスの説明はシンプルだ。「ダニについてはわからないですけど僕はフロントがきつかったんです。特に序盤でね。で終盤に残り6ラップというあたりで勝てる可能性が見えてきたんですけど、ダニに抜かれて0.5秒くらい失ってしまった。それでホルヘに追いつけなくなったんです」。最終ラップで抜こうとしていたのだがペドロサに先に動かれてその機会を失ってしまった、ホンダ同士で抜き合ったことでヤマハのロレンソに離されてしまったというのがマルケスの説明だ。

得意/不得意

なぜマルケスはもっと速くロレンソに仕掛けなかったのか?前回のレースではマルケスはロッシとの間で1周の内に9回も抜き合いをしている。しかしヴァレンシアではマルケスは一度も抜こうとしなかった。それは戦略の違いもあるのかもしれない。マルケスはインディアナポリスとアッセンで似たような戦略を採っている。前のライダーに一度も仕掛けることなく最後までついていき、最終ラップでアタックする。アッセンではそれを最終ラップの最終コーナーでやろうとした。他にもマシンとコースの相性の問題もあるかもしれない。あるMotoGPライダーが匿名を条件に離してくれたのだが、ロッシとマルケスの抜き合いはそもそもホンダとヤマハの特性の差に起因するのではないかだということだ。マルケスはホンダが強い場所でアタックし、ロッシはヤマハが強い部分で反撃する。

そしてもちろん二つのレースがそもそも全く違うコンディションで行われているということもあるだろう。セパンでのマルケスは木曜のプレスカンファレンスという公の場で自分を公然と非難し顔に泥を塗ったライダーを相手にしていた。当然彼は激怒していた。マルケスはセパンのレースに関してレース・ディレクションから非公式に注意を受けている。タイトル争いをしているライダーの近くで不必要なリスクを冒すなと言われたのだ。それをきちんと受け止めたマルケスがヴァレンシアで相手にしていたのはタイトル獲得を目前にしているライダーだ。そして彼はロレンソに対してクリーンで安全なパッシングをするほどには近づけなかった。たまに近づけてもクラッシュするリスクを冒さずに抜けるほどには近づけていないのだ。

マルケスの最大の問題は最終コーナーからの立ち上がりの差だった。ホンダは今年ずっと加速力の無さを指摘されてきていた。リアタイヤの空転が激しく前に進まないのだ。一方のヤマハはメカニカルグリップが素晴らしく、その結果最終コーナーからの加速でストレートスピードを稼ぎ、1コーナーのブレーキングまでにホンダに差をつけられたのだ、。6コーナーが唯一マルケスがロレンソを抜ける場所だったが、それでも安全に抜ける機会はやってこなかった。そして最後の2周はペドロサも相手にしなければならなくなっていたのだ。

サンタのお手伝い妖精?

マルケスは本当にロレンソを助けることにしたのか?その二人がそもそも不仲だったことを考えたら奇妙な話だ。ロレンソはマルケスのことをスペインにおける自分の地位を脅かし、本来自分のものだった人気まで奪おうとしている相手として見ている。そしてマルケスにとってロレンソは他のライバルと同じ一人のライダーにすぎず、自分の勝利とタイトル獲得を邪魔する相手である。マルケスはロレンソが彼のライディングを公然と非難しているからこそロレンソにアタックし負かすことを楽しんでいる。ロレンソがマルケスを危険なライダーだと何度も言うようになってからは、ロレンソを負かすのがマルケスの何よりの楽しみになっているのだ。

マルケスに対するロッシの非難の最も奇妙な点は公然と非難した相手にタイトル獲得をまかせてしまったように見えるところである。ロッシは序盤ですばらしい走りをみせたし、確かに実に正確かつ容赦なくパッシングしていく様は美しいものだったとは言え、トップ3のペースには及ばなかったのも事実である。ロレンソとマルケスはレースを通じて1分35秒5から1分31秒9の間で走っている。ペドロサは1分31秒7で、その後タイヤのオーバーヒートのせいで1分31秒9から32秒あたりまで落ちてトップと差が開いてしまったが、最終的に1分31秒5までペースを上げてトップに追いついている。

一方ロッシは常に1分32秒1から1分32秒2で走っていた。4位になるには充分な速さだが優勝するには程遠いタイムだ。もしロッシがフロントローからスタートして今回のように集団のバトルに巻き込まれなかったとしても(まあそこでのバトルもレースの1/3あたりで終わっているが)、ロレンソに勝てるどころか2台のホンダの間に行ける速さすらなかったということである。ロッシは彼の本来のタイム通りの順位でゴールしたのだ。どこからスタートしたかは関係ない。そして彼のラップタイムはプラクティスのタイムが示している通りトップグループからは0.2秒ほど遅かったのだ。

速さがないなら…

ロレンソを負かすのを2台のホンダに任せてしまったことで自分の失敗を隠すことができたとも言える。シーズンを通じてパドックバーに来るライダーは口をそろえて、今年のチャンピオンは速いホルヘ・ロレンソか安定性とクレバーな走りのヴァレンティーノ・ロッシのどちらかだと言っていた。速ければ勝てるというものではない。しかし18戦を通してみれば速さは確かに役に立つ。

マルケスがロレンソを助けたとロッシが非難しているレースですら、きちんと分析すれば簡単に反証可能だ。オーストラリアについてロッシはマルケスが自分とアンドレア・イアンノーネの脚を引っ張りロレンソに追いつけないようにした、そしてそのギャップはマルケスにしか追いつけないほど広がったと非難している。しかし結果はマルケスが優勝してロレンソから5ポイントを奪い、イアンノーネが3位に入ってロッシは3ポイントが奪われたというものだった。セパンではマルケスをアウトに押しやった後でもロッシにはロレンソに追いつく速さがなかった。もしマルケスの計画にはまって彼とのバトルに巻き込まれなかったとしても(計画通りだったのは間違いない。セパンのプレスカンファレンスで恥をかかされたことへの復讐だ)、ロッシは3位か4位だったろう。つまりロレンソにさらにポイントを詰められたということだ。そしてもしロッシがマルケスより本当に速かったのなら、すぐに彼を突き放しロレンソを追えたはずだ。しかしロッシはマルケスより速かったわけではなく、何も得られることのないバトルにまきこまれたのである。

ホルヘ・ロレンソはこの件に関してレース後のプレスカンファレンスではっきりと意見を表明している。「僕には世界チャンピオンになる資格があります。ライバルの彼と比べてみればわかりますけど、僕の方が全て勝っている。勝利数もポール数もファステストラップ数もレースでトップを走った周回数もプラクティスでトップを走った周回数も、全部僕の方が上です。表彰台の回数と安定性だけが彼が勝っているところなんです」。ロッシが自分は脚を引っ張られたというなら、ロレンソはどうだろう?彼はカタールではヘルメットの内装が落ち、オースチンでは肺炎にかかり、アルゼンチンではタイヤトラブルにあい、シルバーストンではシールドが曇り、そしてミザノではバカな間違いをおかした。もしスリックでピットから出てきたばかりのロレンソがスコット・レディングを追おうなどと思わなければ彼はミザノで2位か3位に入っていただろう。ロッシは6位になったということである。そうなればロレンソは14か11ポイントのリードでヴァレンシアに入れたということだ。そうなればレプソル・ホンダの2台が前に行こうが行くまいがロッシのタイトルは不可能だったということである。

誰の目にも明らかなこと

ここまで書いたことにも解釈の余地はあるが、それでも2015年について間違いない事実がある。まずひとつは今シーズンがここ何年もなかったほどスリリングで厳しいタイトル争いだったということだ。最終戦ヴァレンシアまでタイトル決定が持ち越されたのである。そして二つ目はヤマハがYZR-M1という素晴らしいマシンを作り上げたと言うことだ。日の目を見た中では史上最高のレーサーだと言ってもいいだろう。2015年型M1は昨年型の良さをすべて維持したまま、フレームの改良、電子制御、シフトダウンも含めたシームレスギアボックスの導入が相まって弱点も消してみせたのだ。

三つ目はヴァレンティーノ・ロッシもホルヘ・ロレンソもタイトルにふさわしいということだ。どちらもキャリア最高のライディングを見せてくれた。ドゥカティでの悲惨で長い2年間を経てロッシは36歳で実に感嘆すべきことを成し遂げたのである。自分を見て育ち、自分の真似をし、自分のやり方を学んできた若いライダーに勝ち、そして彼らの上をいくために、自己を抑制し飽くなき体力作りとライディングスキルの改善に取り組んだ結果、ロッシは史上誰も見たことのないライダーとなった。

2015年のホルヘ・ロレンソもまた自身最強のライダーとなっていた。去年の間違いから学んだ彼は自分が出会うあらゆる問題に対処するための新しい走り方を生み出したのだ。エッジグリップが良くなったブリヂストンに助けられたのも確かだが、もう完璧なセッティングを探さなくてもよくなったのだ。セッティングが完璧でなくても速さを見せ、そしてラモーン・フォルカダが問題を解決してくれればさらに安定性を増すことになった。

井戸に毒を投げ込む

にもかかわらずロッシが公開の場でマルク・マルケスを非難すると決意したことでMotoGPそのものに対する信頼が破壊されてしまった。それだけではない。今年のホルヘ・ロレンソのタイトルと彼の走りまでもが価値を損なわれてしまったのである。マルケスを非難することでロッシは自分にはタイトルはどうにもならず他のライダーの手助けが必要だと告白してしまったも同然だ。なぜ自分が痛烈に非難したライダーが助けてくれると考えたのかは永遠の謎である。

ロッシがどんな順番、どんな方法で攻撃を仕掛けたのかを分析するのもなかなか興味深いことだ。まず彼はイタリアのテレビに不満を打ち明けた。彼はイタリア人に直接話すのが好きなのだ。これはロッシが自分の望むような改良をほどこすようドゥカティを動かそうとしたときと同じやり方だ。次にレース後の取材に対して(そしてテレビの生中継でも)これまでとは異なりまずイタリア語で話し始めたのだ。英語で話したのはその後からだった。これは実に興味深い。よりなじんだ、しかも正確に話せる自分の母語で非難を切り出すことができたということだ。そして同じ非難を英語でした。彼の英語は素晴らしいが、それでもその時の彼はイタリア語で考えていたのは明らかだった。

さらに興味深い一幕がイタリアのテレビに映っている。カルメロ・エスペレータが素晴らしいシーズンを祝うために彼のところにきたときのことだ。彼はエスペレータに芝居がかった仕草でこう言った。「ね、言ったでしょ!木曜にこうなるって言ったじゃないですか!」。つまりロッシはエスペレータに木曜に会っているということだ。自分に対する「スペインの陰謀」を告げに行ったということだ。そしてほぼカットされそうな、しかし最も興味深い言葉がそれに続く。「後から僕のモーターホームで会いましょう」。そうロッシは言ったのだ。MotoGPライダーがシリーズの興業主であるドルナのCEOを自分のモーターホームに呼びつけたのである。パワーバランスがおかしな方向に行っているということだ。相手がどんなライダーでもカルメロ・エスペレータは自分の好きなときに自分のオフィスに呼びつけるべきである。ライダーの機嫌をとるために言いなりになるということなどあってはならないのだ。

ロッシがマルケスを非難した上にロッシはFIMアワードのセレモニーにも出席しなかった。これは2015年の表彰式である。つまりロッシはドルナに対してだけではなくFIM、つまりMotoGPを主催している国際連盟に対してもバカにした態度をとったのである。これが意味するのはそれだけではない。ヴァレンティーノ・ロッシは今回の敗北をおそろしく深刻に受け止めており、さらに良き敗者になるつもりも全くないということだ。彼は別の誰かが責められるべきだと信じており、その誰かに対して喧嘩を売ることも怖れていないということである。

MotoGP界より肥大化してしまったのか?

ロッシの戦略には重大な落とし穴がある。彼が傷つけたのはタイトルだけではない。彼自身の価値も傷つけてしまったのだ。ロッシの非難のせいで今年のタイトルが信頼を減じただけではなく、今後のタイトルの信頼も削られてしまったのだ。ファンが今年のタイトルを出来レースだと信じてしまったら、来年のタイトルもそうであると考えてしまうだろう。他のライダーがずるをしたと非難することでパンドラの箱が開いてしまい、陰謀論と妄想が奔流のようにあふれ出す。そしてそれは制御できないほどの濁流となってしまう。もしファンがMotoGPはフェアではないという理由で離れていってしまったら、今後ロッシが成功してもそれを目撃するのはごくわずかということになってしまうだろう。

MotoGPは不正なものなのか?それが本当なら最大限の経済効果を狙って行われるのではないか。つまりヴァレンティーノ・ロッシが毎年チャンピオンを獲るということだ。ロッシはMotoGP界の巨人である。MotoGPよりも大きくなってしまったのだ。普通のファン向けにMotoGPを売り込み、バイクレースに世界の目を向けさせる。もしドルナが思い通りにできるならチャンピオンとしてホルヘ・ロレンソを選ぶことはないだろう。間違いなく今年最速の男だし地球上に存在した最速の人間の一人だが、愛されるタイプではないし、それどころか少しでも好かれるタイプのキャラクターではない。それよりももっとチケットを売れるライダー、例えばヴァレンティーノ・ロッシやマルク・マルケスにタイトルを獲らせるはずだ。

マルク・マルケスはスペイン人にタイトルを獲らせたかったというのは本当だろうか?それは間違いない。ただしそのスペイン人の名前がマルク・マルケスだった場合だけだ。バイクレーサーというのは心の底からエゴイストで自分の目標しか眼中にいものだ。ホルヘ・ロレンソがヴァレンティーノロッシを破るのをマルク・マルケスが手伝ったというのはロッシがセテ・ジベルノーに勝つのをマクス・ビアッジが手伝ったというのと同じくらい馬鹿馬鹿しい説である。理論的にはあり得るが机上の空論も甚だしい。状況を、そしてリアルな人間を無視した考えに過ぎないのだ。

真実はそこにある

日曜に目撃したことを信じていいのだろうか?事実が語ることもあるが、そこから簡単にストーリーを読み取らないように注意はしよう。それは本当かどうかわからないのだ。マルク・マルケスは本当にホルヘ・ロレンソの優勝を助けたのか?彼がそうしたかどうかは私たちには決してわからない。そしてそれについて推測を巡らせるのは全く意味がないことだ。マルク・マルケスのせいでヴァレンティーノ・ロッシの10回目のタイトルが失われたのか?これについてはもう少し確かなことが言えそうだ。フィリップアイランドのマルケスを非難するなら同じようにアンドレア・イアンノーネも非難しなければならない。同じようにミザノでのロッシ自身もピットにいつまでも入らないという判断ミスをしたことで非難されるべきだろうし、オースチンで彼より速かったアンドレア・ドヴィツィオーゾもムジェロのイアンノーネもアラゴンのペドロサも非難されるべきとなる。彼らは皆タイトル争いの脚を引っ張ったし、それはロッシがヴァレンシアで抜いていったライダーについても言えることだ。それはあまりに狭い視野で、あまりに単純にものを見過ぎている。MotoGPタイトルというのはそういうものではない。

シーズン18戦、毎回ポイントが加算され、それぞれ違った状況で行われる。毎レース驚くようなこと、普通ではないこと、奇妙なことが起きるのだ。しかし18戦もあるということは、そうした出来事がならされ、パフォーマンスの出来不出来も平均化されるということである。つまり最高のパフォーマンスをシーズンを通して発揮できたライダーがタイトルを獲るということだ。2015年、それはホルヘ・ロレンソだった。ここのところなかったほどわずかな差だった。ヴァレンティーノ・ロッシはライオンのように戦い、終盤まで偉大なライダーにふさわしい品位を保っていた。しかしセパン以降、その品位は地に落ち、ロッシは言い訳を探す年老いたライダーになってしまった。

史上最高と称されるべきライダーの汚点となってしまったのだ。もっと重く受け止めるべきはGPのイメージに傷がついてしまった問うことである。特にMotoGPが大きなダメージを負ってしまった。非常によろしくないことだ。GPはヴァレンティーノ・ロッシが引退しても続いていくのだ。アスリートが彼が戦うスポーツ自体より大きくなってしまうことはある。しかしそのスポーツが彼が引退したときにその重みでつぶれてしまわないようにしなければならないのだ。
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<2015.11.23追記>
再び @hige_penguin さんの御指摘で諸々修正しました。ありがとうございます!

このあたりの「どんな理由でどこをどう間違えたのか」は近々ネタにする予定ですのでお楽しみに。

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戦利品

「ロッシが勝つ方にビット。本人の顔つき見て。」

それはある方のこんなつぶやきから始まります。

ヴァレンシア最終戦、グリッド上のロッシは確かに外の世界から完全に切り離されて集中しきっていました。。最後尾グリッドからのスタートでも3位以内に入れば自動的にチャンピオン。それが無理でも4位に入ればレプソルホンダの二人、マルケスとペドロサがロレンソの前でゴールすればやはりチャンピオン。厳しいとは言えその逆境を跳ね返すかもしれないという様子でした。一方のロレンソは元国王と握手をしたり誰かに声を掛けられたりするたびに笑顔で応対。さて、これをどうとるか?

私は彼に瞬間的にこう返していました。

「うふふ、では私はホルヘのタイトルに賭けましょう。」

そしてやはり瞬時に彼からリプライが。

「極上ワイン1本!」

なぜ考えもしないで私はホルヘに賭けたのか?願望かもしれません、笑顔を平常心の表れととらえたのかもしれません、単にそう返した方がおもしろいと思ったのかもしれません。

ロレンソには厳しいレースになりました。2周目には9番手に上がったロッシはその後も着実に前を抜き続け、3,0周のレースの折り返し点にもいかない13周目のゴールラインは4位に上がっていました。一方のロレンソは終始マルケスに後を追われ続け、終盤にはペドロサにも追いつかれてしまいます。

(この時点で「極上」っていくらぐらいからだろう…とか一瞬頭によぎったり)

そこで彼らが何を考えていたのかは知るよしもありませんが、ささいなミス一つも許されない状況です。

しかしロレンソはこれに耐えきりました。(見た目的には)危ない場面もひとつもなく、彼の専売特許であるウルトラスムーズな走りを最初から最後まで貫いて優勝したのです。

レース後すぐにツイッターのDMがやってきました。

「楽しい賭けでした。住所くださいませ。」

そして住所を送るとこんなDMが。

「数日内に届く予定です。ホントはスペイン野郎が勝ったのでカバにしたかったのですが安いのしかなかったので、当てつけでwバレの国のイタリアスパークリングにしました。」

この記事の写真の素敵なプロセッコ(イタリア製スパークリングワイン)はそんな経緯で彼、「日本沈没」や、バイク乗りには「モーティブ」や「君はバイクに乗るだろう」でお馴染みの道瀬食堂店主、一色登希彦さんからせしめたものです。

うふふ。クリスマスにマダムといただきます!ありがとうございました!

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2015.11.8 ヴァレンシア/私は勝者を讃えよう

私は勝者を讃えよう

彼らはいつも美しい

私は敗者を讃えよう

彼らもまた同じように 美しい

私は醜い敗者も讃えよう

その醜さもまた美しい戦いを作るのだから

私はあなたを讃えよう

あなたの楽しむ姿は美しい

そして私は腕を広げてこの世界を抱きしめる

いつか私も讃えられるために

「ああ、世界は美しい」


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公式リリース>ヴァレンシアGP2015

ヤマハホンダドゥカティ(英語)スズキアプリリア(英語)

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2015ヴァレンシアMotoGP土曜まとめ:素晴らしいポール獲得ラップ、それでもタイトルの行方はわからない

盛り上がって参りしました!普段は時間と気力の都合で土曜の翻訳は少ないんですけど、今日はやるよ!MotoMatters.comより。
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もう逃げ場はどこにもない。日曜にはGPに関わる誰もが固唾を呑んで心拍数を上げながら恐ろしい出来事を目にすることになる。賭け金は膨大だ。Moto3タイトルはとっくに決まっているはずだった。MotoGPタイトルは若者と年老いた男の戦いのせいで混乱している。Moto2の優勝争いも熾烈だ。3クラスとも栄光に輝きたいと全てのライダーが熱望している。若い男女が命を賭けて栄光を追いかける。勝利の美酒を味わえるのは幸運な数人だけだ。残りは苦い酒を飲まされることになるのだ。

日曜のレースに先立ってスポーツ仲裁裁判所がヴァレンティーノ・ロッシによる3ポイントのペナルティの執行停止要請を却下している。これですべてのカードが揃うことになった。金曜、土曜とロッシはピットインを繰り返していた。いつもなら8回か9回に収まるところをQ2に進出するのにも苦労してるありさまだった。しかしペース自体は安定しており、しかもそれなりのタイムを出している。「かなりの速さに驚きましたね」とニッキー・ヘイデンが予選後に語っている。「すごく安定しているように見えます。決勝での速さが彼に9回もタイトルをもたらしたってのはみんな知ってるけど、今日は一段ステップをのぼった感じですよ。コースレコードは更新してないけどいつもの金曜や土曜に比べたら良いペースですね」

そして予選だ。ロッシはQ2に進出。金曜にはいつものようにタイムを出すために走ると言っていた。Q2に出たことで彼は有利になるものと思われた。ホルヘ・ロレンソが明らかに神経質になっているように見えたのだ。ロレンソはピットで捨てバイザーをはがすのを忘れ、アシスタントとばたばた対応していた。そしてピットを出た彼はやや慌てているようだった。よい徴候ではない。だれもがそう思っていた。

なんというスピード!

大間違いだ。彼の1スティント目のタイムでもフロントロー獲得には充分だったが、それでも納得しているようではなかった。いつものロレンソのバターのようにスムーズな走りは影を潜め、マシンは暴れていた。だが2回目の走りは完璧だった。絶好調のときのロレンソの走りとはこういうものだと言わんばかりだった。「人生最高のラップでしたね」とロレンソは言っている。他のライダーもこの走りを賞賛している。実にスムーズで落ち着いた走りだ。まったく攻めていないようにすら見える。「ロレンソのラップを見てたんですけど、ピットに入るのかなーって思うような走りでしたね」とヘイデンは言う。「信じられないですよ!あと0.5秒は縮められそうに見える。もちろんそんなわけはないってわかってますし、彼もそういう風には想ってないでしょうけど、限界で走ってるとテレビとかでは『え?もっとブレーキングを遅らせられるじゃん』って思っちゃうんですよ」

ブラッドリー・スミスはロレンソのデータを見ているが、それは「ちょっと参っちゃう」ようなものだったようだ。「最後のセクターだけで僕より0.5秒も速いんですよ。死にたくなりますね。僕はスライドしまくって縁石に乗り上げて、もうこれ以上できないってやったのに、そこから0.5秒稼いでるんですよ!」。それでもスミスは6番グリッドを獲得しているのだ。4番手からは0.1秒差、3番手のダニ・ペドロサからでも0.5秒差だ。ロレンソがどこでタイムを稼いでいたのかは謎のままだ。

ロレンソがここまでのタイムを出せたのはタイトル争いのプレッシャーのおかげだと言っている。「プレッシャーが頂点に達するとたまにこういうことが起こるんです。さらに速く走れるようになる。でもいつもじゃないんですよね。プレッシャーで緊張してしまうこともある。特にブレーキングでね。経験を積んでいくとそういうことをどう扱えばいいかわかってくるんです」

砂上の楼閣か?

今回プレッシャーに負けたのはヴァレンティーノ・ロッシのようにも見える。ロッシの1回目の走りはひいき目に行っても凡庸なものだった。そして2回目の走りではクラッシュし不完全燃焼のまま終わってしまった。グリッド最後尾のからのスタートになるために、ロッシが一発出しよりセッティング出しを優先していたのであればタイムはそれほど重要ではないとも言える。予選後に彼はその通りのことを言っている。「今日の午後はフリップがいまひとつで苦労しましたね。だから予選をセッティングに使ったんです。タイムは出す必要はなかったですから。でもいいセッティングはみつからないままですね」。そこでセッティングを戻したのだがそれが功を奏したようだ。すぐにロッシは良いタイムを出し始める。しかしそこでミスをしてクラッシュしたと彼は言っている。ロレンソがポール、自分はクラッシュというのは望んでいた1日の結果ではないはずだ。

明日のレースではロレンソよりロッシの方がプレッシャーを感じることになるのだろうか?そうとは限らない。「木曜に西郷日スタートって決まった時点でもう状況は絶望的になってますからね」とロッシは言う。「とにかく最初から最後まで全力で良いレースをするだけですよ。その結果何が起こるかですね。最後尾スタートってのはリスクもすごく高いですから」

別の視点から見てみよう。ロッシにはもう失うものはない。もしクラッシュしてもタイトル獲得のためにはリスクをとって攻めるしかなかったと言い訳できる。もし彼がうまいこと他のライダーを抜き続けることができれば実際にタイトルの可能性もある。一方のロレンソはタイトルを確実にものにするには1位か2位でのゴールが必要だ。二人のレプソル・ホンダのライダーに前に行かれてしまえばロッシは6位でチャンピオンである。6位というのはかなり難しいだろうが不可能なものでは全くない。もしロレンソがなにかの理由で4位にでもなればロッシは9位でチャンピオンになれる。これは簡単なことだろう。

ホンダの助け?

ロレンソの前でゴールしそうなライダーは誰だろう?マルク・マルケスはロレンソに対抗できる速さを見せているが、ラインをはずしたときのスピードが課題である。ロレンソは序盤のスピードに賭けている。第3セクターと第4セクターはピットアウトしたラップでもレース並のスピードだ。ヴァレンティーノ・ロッシも予選でこれを試そうとしているがロレンソほどの安定性はない。マルケスがタイムを出せるようになるにはさらにセクター2つ分ほどかかる。彼が本領を発揮するのは2周目からだ。ダニ・ペドロサも同じである。スタート直後はそれほど速くはないがリズムが出始めたら相当な速さを見せる。

計算上はロレンソの序盤の速さがあればホンダを突き放すことはできるが、マルケスもペドロサも2〜3周で彼に追いつくことが可能だ。もしレースがバトルになればタイトルの行方はいきなり混沌としてくる。2台のホンダがロレンソとのバトルという形でタイトル争いの鍵を握るというのは皮肉なことだ。セパンでマルケスにやられたとロッシが非難していたことをパドックは忘れてはいない。これと同じことがヴァレンシアではロレンソに起こるかもしれないのだ。視点を変えるとおもしろいことが見えてくるのだ。

ではロッシはどれだけ前に行けるだろうか?ラップタイム上はペドロサと同じくらいの速さが出せている。つまり16番手以下のライダーからは1秒以上速いということだ。9番手以下まで含めると0.5秒の差となる。2コーナーまでにはロッシはそのあたりまで追いついて、レースが1/3を終えるあたりまでは8位争いに巻き込まれるだろう。そこから上はたいへんだ。しかしバトルが行われて5位から8位あたりまでが近ければロッシにもタイトルの可能性が生まれてくることになる。

天気予報

最後の要素は明日の気温だ。このところヴァレンシアは想定より気温が高く、タイヤの想定温度の限界に近い。ライダーは特にフロントタイヤに関して文句を言っている。ハード側でさえ温度の限界に近づいているのだ。中でもホンダはフロントタイヤをオーバーヒートさせてしまっている。しかしこれは他のマシンも多かれ少なかれ抱えている問題だ。日曜の気温が想定の派にないに下がってくればタイヤもかなりうまく機能するはずだ。つまりホンダのライダーは土曜までより少しだけ攻められるということである。そうなれば2台のレプソル・ホンダがロレンソを苦しめることは充分あり得るし、カル・クラッチローもからんでくるかもしれない。

要するにタイトル争いはまだ終わっていないということだ。ドルナはもうロレンソにトロフィーを渡してしまったとロッシファンは嘆いているが、ヴァレンティーノ・ロッシ本人はまだあきらめてはいない。誰もがかつてのニッキー・ヘイデンの名言を思い出している。「だから僕らは日曜に走るんだ。何が起こるかわからないんだよ」。その通りなのだ。それが真実なのである。何が起こるかわからない。確定するまでタイトルは誰のものでもないのだ。

もうひとつのタイトル争いがMoto3で行われている。ダニー・ケントがミゲール・オリヴェイラを24ポイント差でリードしている。ケントは14位以内に入ればチャンピオンだ。しかし予想していたよりはるかに彼は苦労している。彼の予選順位は18位。今年最悪のグリッドだ。グリッド降格を科せられたときより後ろだ。シーズン前半は完璧に支配していたのに、インディアナポリス以降の表彰台はわずか1回。そしてミスは数知れずだ。

ケントに必要なのは自信だ。普通の状態なら14位は固いはずだ。しかしケントのまわりにいるのは注意深さに欠けることで評判のMoto3ライダーたちである。ペッコ・バグナイアはケントのすぐ後ろからのスタートだ。バグ内野はすでに今年フィリップアイランドでケントを転倒させている。1コーナーは慎重さを必要とするし、タイトな2コーナーはさらに難しい。ケントは自分のせいで状況をここまで複雑にしてしまったのだ。既に自分だけではどうにもならないことになってしまっている。

そして幸運の女神は私たちに微笑む

まだすべてが片付くまでには何時間かある。勝者の名が告げられチャンピオンが決まる。訴訟のごたごたに結果が左右されることもない。今シーズンは3クラスとも史上最高にスリリングな年だったとして語り継がれることになる。図書館を一杯にできるほどの論争もあった。明日誰が勝っても敗者は文句を言うだろう。フェアではないレースについてだ。もしロッシがタイトルを獲ればロレンソは以前口にしたとおり、それはセパンで失格にならなかったおかげだと言うだろう。もしロレンソがチャンピオンになればロッシは最後尾グリッドからのスタートでなければ状況は違っていたと言うだろう。

真実はこうだ。どちらのライダーもチャンピオンにふさわしい。ヴァレンティーノ・ロッシは史上最高の復活劇を遂げた。2014年の初めには引退も真剣に考えていたのにだ。ここまでくるのに彼はすべてをつぎこみ、レースを見事に構築し、素晴らしいスピードを発揮した。一方のホルヘ・ロレンソは、乗れているときには地球上で最も速いバイクレーサーで、誰も追いつけないことを見せつけてくれる。マルク・マルケスは乗りこなせないようなマシンに乗っていても相手が誰であろうと戦えることを証明した。ダニ・ペドロサはセカンドオピニオンのおかげで腕上がりから完全復活した。素晴らしい年ではないか。アジアでのたった一つの週末が汚点となったが、結果がどうなろうといつか振り返ってみて、このシーズンを目撃できた幸運に感謝するのである。
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さあ、みんなで最高のシーズンの最終戦を待ちましょう!

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ニッキー・ヘイデンがMotoGPの殿堂入り

1回しかチャンピオンを獲ってないけど、彼がいるおかげでMotoGPは素敵な場所になっていました。来年からはワールドスーパーバイクですが、ぜひがんばってほしいものです。そのヘイデンのコメントをSuper Bike Planetより。
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ニッキー・ヘイデンがMotoGPの殿堂に入ることがヴァレンシアGPで発表された。2006年のチャンピオンである彼は2015年の最終戦となるヴァレンシアでドルナのCEOカルメロ・エスペレータから22人目の殿堂入りライダーに叙せられたのだ。

アメリカ人ライダーのヘイデンはMotoGPを離れ来年からはワールドスーパーバイクで走ることを発表している。

2006年にレプソル・ホンダでチャンピオンになった彼は3勝を挙げている。2001年から2005年まで5界連続してタイトルを獲得していたロッシの連覇をとめるたのだ。MotoGPで216戦を走り表彰台28回、最速ラップ7回、ポール5回という成績を残して彼は去っていく。

MotoGPの殿堂に入っているライダーの名前は錚々たるものだ。ジャコモ・アゴスチーニ、ミック・ドゥーハン、ジェフ・デューク、ワイン・ガードナー、マイク・ヘイルウッド、加藤大治郎、エディー・ローソン、アントン・マンク・アンヘル・ニエート、ウェイン・レイニー、フィル・リード、ジム・レッドマン、ケニー・ロバーツ、ヤルノ・サーリネン、ケヴィン・シュワンツ、バリー・シーン、マルコ・シモンチェリ、フレディ・スペンサー、ケイシー・ストーナー、ジョン・サーティース、カルロ・ウビアッリ。

ニッキー・ヘイデン「これは本当に名誉なことですね。簡単にもらえるものではない。殿堂入りしているライダーはぼくよりもっとすごい成績を残していて僕よりもっと勝っている。なのに僕も仲間に入れてもらえたんです!すごくうれしいですよ。この13年間、MotoGPを食べて、MotoGPを呼吸して、MotoGPと眠っていた、すごい経験でした。もちろんこの2年間はたいへんでした。でもいつでも楽しんでいましたし、良いチームと一緒に仕事ができたし、すごいマシンで走らせてもらえた。
 とにかく僕を助けてくれた人たちに感謝したいです。チームにも家族にも本当に感謝してます。カルメロにもありがとうと言いたいですね。MotoGPは、まあちょっとこの2週間ばかりネガティブな感じになってますけど、すばらしい世界なんdねす。これまでにないくらい大きな、そしていいスポーツになっている。サーキットの安全性も高まっているし、若い才能がどんどん現れてくる。そして彼らはすごく速くなっている。だから未来はとても明るいと思います」

カルメロ・エスペレータ「私たちみんなにとってニッキーの殿堂入りはとてもうれしいことです。あなたがチャンピオンだからというだけではなく、最高峰クラスで最多出場しているライダーの一人というだけでもなく、なによりあなたの振るまい、スポーツマンシップ、友情を讃えたいと思っています。あなたが殿堂入りするのは本当にすばらしいことです。これまでの長きにわたってこのスポーツに貢献してくれたことに感謝します」
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ほんとにいい人だったよなあ。

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ダニ・ペドロサ発言集

ここんとこ完全復活を遂げたペドロサのコメント集をCycle Worldより。なんか顔つきが変わってきたよね。
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「ホンダのいいところはマシンを信頼できることですね。限界がわかりやすいんです。それを超えて走ることはできないかもしれないけど、限界を超えなくても大丈夫なんです」

「まだマシンには苦労していますよ。いろんなことを試してます、できないことはできないですけど。でもこの数戦すごくいいですからね。チームも最高の状態だしモチベーションも上がってます」

「ホンダはパワーがあるし、ヤマハはコーナリングが強い。だから自分たちの強みを活かさなきゃなんないんですけどパワーを使うにはタイヤの端じゃなくて真ん中を活かさなきゃならない」

「コーナーでタイヤの端を使ってる時間が長くなればそれだけ遅くなるってことです、もっと端を使った方がいいのかもしれませんけどそうするとタイムが落ちるんです」

「エッジ部分に違いは無いですけど体勢によってエッジから引き出せるスピードが変わるんです」

「チョコレートが食べたいと思って、しかもそれが手元にある。でも我慢しなきゃならない。それってすっごく辛いですよね。もてぎがそういう感じだったんです。行けるとわかってるけど最後までは保たない。我慢して我慢して我慢して、ヴァレンティーノ・ロッシとアンドレア・ドヴィツィオーゾが逃げていくのも見えていた。スロットルを全開にしたかった。でも最後にはそれが報われましたから」

「MotoGPは体力的もすごくきついんです。いちばん辛かったのは信じ続けることでした。何かを信じ続ける、自分を信じ続ける。でもいつまで信じ続ければいいのかわからなかった」

「ニッキー・ヘイデンといっしょにやれたのは楽しかったですね。彼のライディングスタイルは僕と正反対なんです。彼といっしょにやっているとき僕はルーキーでした。250のスタイルで走っていたんですけどMotoGPのことはよくわかってなかったんです」

「集団にまぎれちゃうと僕はうまく走れないんです。でも自分の走りができれば速く走れる。ニッキーもそこは似ていたけど全然違うスタイルでした。彼はとにかく努力することを厭わない、それが彼から学んだことですね」

「ライディングスタイルとか戦略とか、あと抜き方とかはタイヤによって変わるんです。ライダーはすべてのことを要求するんです。温度がすぐに上がるとか、耐久性があるとか、グリップがいいとか、安全性が高いとか。熱くても寒くても、午前中でも午後でもちゃんと機能するタイヤがほしいんですよ」

「来年はすごく変わりますからね。電子制御とタイヤが変わる。だからものすごく一生懸命がんばらないといけない。とにかくできるかぎりのことをいい方向にもっていかないといけないんです」

「来年いちばん変わるのは戦略でしょうね。プラクティスをどう走るか、タイヤをどう持たせるか、アタクラップはどうするか、レースはどうするか」

「いつでも前を見ています。人間がここまで来たのも進化のおかげですからね。今日は自分がこういうことをして、明日はそれを誰かに教える。そうするとこんどはその相手が僕から得た知識に自分の考えを付け加えていくんです」
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ヴァレンシアでは期待している!

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2015ヴァレンシアGPプレビュー:ゴールするまで終わらない

1日遅れですが安心と信頼のMotoMatters.comより最終戦(!)ヴァレンシアGPのプレビューを。
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ヴァレンシアについて誰もがひとつ誤解していることがある。2015年のMotoGPが終わってしまったという間違いだ。まったくそんなことはない。ロレンソが予選でポールを獲ろうがフロントローに並ぼうが、ヴァレンティーノ・ロッシが予選順位のグリッドからスタートしようが最後尾からスタートしようが、戦いは最後のライダーがチェッカーフラッグをくぐるまで終わらない。まだ勝負はついていないのだ。

なぜまだタイトル争いが終わっていないと思うかって?ヴァレンシアは気まぐれな女主人なのだ。これまで何度驚かされたかわからない。ヴァレンティーノ・ロッシもホルヘ・ロレンソもここで駆ったことがある。そしてどちらもここでタイトルを失ったこともある。二人とも圧倒的な強さを発揮したこともあるし、クラッシュしたこともある。ヴァレンシアでのレースは予想通りにいったことがないのだ。たいていは予選結果が当てにならない結果に終わる。予測不可能な天気もくせものだ。そしてどんなことでも起こりえるのだ。

なぜびっくりするような結果になるかって?11月初旬のヴァレンシアで走るというのは天気との戦いだからだ。今週末の予報にあるようにドライ路面で天気が良くても午前中の気温の低さと強風がタイヤを冷やす。そして数少ない、離れて設置されている右コーナーに危険が待っているのだ。もし雨が降ったり路面がウェットだったりすればこんどはその風によりドライラインが急速に現れることとなる。つまりタイヤ選択がギャンブルとなってしまうのだ。

普通でないできごと

ヴァレンシアがどれほど普通でないかを確認するにはそれほど過去まで遡る必要はない。2012年、ダニ・ペドロサはウォームアップのあとにドライ用のマシンに乗り換えた。ドライラインができはじめているのに気付いたのだ。彼はピットレーンからスタートした。一団となったマシンが走り去った後だ。追撃の最中にはハイサイドで蔵シュしそうにもなっている。しかし他のライダーがウェットタイヤの摩耗に苦しんでいる一方でペドロサのスリックが性能を発揮し始め、結果として彼は優勝を飾ることになった。

去年もハーフウェットのレースだった。ライダーはやはりタイヤチョイスで賭けに出る。その数戦前にマルク・マルケスのチャンピオンは決まっていたがヴァレンティーノ・ロッシとホルヘ・ロレンソによるランキング2位争いはまだ続いていた。ロレンソはアタックを掛けようとしたが難しいコンディションの中、自信が持てないままだった。結局彼はあきらめてピットに入りリタイヤしてしまう。

2011年はケイシー・ストーナーが独走で優勝するかと思えたが突然の雨で状況はいきなり難しくなった。彼がそれまでに築いた膨大なリードはベン・スピーズによりみるまに削り取られ、一旦は抜かれてしまう。最後は最終コーナーの奇跡的なパッシングで優勝はしたがロレンソの代役の中須賀克行も表彰台に立つようなレースだった。その週末に最初の子供が生まれたばかりの彼にとってはいい思い出になったろう。(訳注:中須賀が表彰台に立ったのは2012年。2011年は6位でした。この時3位に入ったのはドヴィツィオーゾです)(さらに訳注:この日に産まれた中須賀のお子さんは二人目)

ストーナーは2009年にもヴァレンシアでありえない出来事を経験している。圧倒的な速さでポールを獲得したにもかかわらず彼はウォームアップで転倒したのだ。その年は多くのライダーが転倒している。そのせいでブリヂストンはタイヤ温度が上がりやすいように構造を変更することになった。以降冷えたタイヤでのハイサイドは減少している。

不愉快な歴史

おそらくヴァレンシアでのタイトル確定で最も記憶に残っているのは2006年だろう。ヴァレンティーノ・ロッシはそのシーズン初めてランキングトップにたってヴァレンシアに臨むことになった。前戦エストリルでニッキー・ヘイデンがチームメイトのルーキー、ダニ・ペドロサの不幸なミスによりポイントを失ってしまったおかげだ。ロッシはフロントローからスタートしたがすぐに順位を下げてしまう。最後はクラッシュしてしまい13位でフィニッシュするのがやっとだった。ヘイデンは素晴らしいレースでドゥカティ2台に続く3位に入り、感動的なタイトル獲得となった。黄色いスモークがたかれるなか彼はタイトル獲得を祝うことになった。主催者は賭けに失敗したのだ。その日優勝したのはトロイ・ベイリスだ。彼はシーズン序盤にMotoGPから離脱していたが1戦限りでワイルドカード参戦したのだ。ワールドスーパーバイクを共に戦った自分のスタッフを動員して990cc時代最後のMotoGPレースに勝ったことで彼は実力を見せつけたのである。

つまりはヴァレンシアのレースに関して今シーズンのこれまでの戦いは当てにならないということだろうか?そういう意味ではここまでのことは少しだけ考慮に入れることにして、プラクティスと予選の結果から予想を立てるのはやめた方がいいということである。タイトル争いをする二人だけに集中することも無理だろう。彼らのほかに24人ものライダーがグリッドにつくのだ。そして誰もがそれぞれ重要な役割を果たすことになる。モヴィスター・ヤマハの二人がどこからスタートしようがそれは変わらないのだ。

レプソルによる支配

一番のやっかいものは2台のレプソルホンダだ。何よりゼッケン26、ダニ・ペドロサが鍵になるだろう。ペドロサはヴァレンシアで素晴らしい結果を残している。ワールド・スーパーバイクのコメンテーターであるスティーブ・デイが書き上げた表を見てみればそれが簡単にわかる(リンク先の訳:#26、#93、#99、#46の全クラスでの記録。エクセルとかいらなくね?)。ヴァレンシアを13回走ってペドロサは優勝6回、つまり5割近い勝率を記録しているということだ。表彰台は計10回。MotoGPクラスで表彰台を逃したのは3回だ。ペドロサから目を離すわけにはいかないだろう。

しかもこの3戦ほど彼は素晴らしい速さを見せている。アラゴンでは世界に、そして名による自分自身に対してカタール後の腕上がりの手術から完全復帰したことを証明してみせた。アラゴンでのロッシとのバトルの末彼は表彰台に上がり、ここ3戦で2勝している。もてぎとセパンでの勝利はあっとうてきなものだった。ペドロサは覚醒した。そして自分に何ができるか見せつけようとしている。彼はブックメーカーが筆頭にあげるタイプではないが自分なら彼に賭けたいと思う。

そのペドロサの最大のライバルはチームメイトのマルク・マルケスだ。マルケスはセパンの後からずっと煮えたぎった状態だ。そして自分の主張を証明しようとしている。彼の望みはただ一つ。世界は間違っている、自分がMotoGPで最高のライダーだと証明することだ。ヴァレンシアで勝つことができれば今シーズンの勝利数はホルヘ・ロレンソに並ぶことになる。そうなればチャンピオンに何ができるかを世界に思い出させることができるのだ。日曜に何が起こるかはわからないが、いずれにせよ彼はチャンピオンではなくなる。そして新しいチャンピオンが誕生する。マルケスはその新チャンピオンに対して明確なメッセージを発しようとしているのである。

マルケスがシーズン序盤でもう少し慎重な走りをしていたら彼もタイトル争いに加わっていたかもしれないというのは皮肉な話だ。しかし2015年型ホンダRC213Vでは勝てないということを受け入れられなかったせいでマシンの限界を超える走りをしてしまい、結果として5戦で自爆しているのだ。その内4回は攻めすぎてフロントタイヤに負荷を賭けすぎたためである。前回それが起こったのはアラゴンだ。彼は逃げるホルヘ・ロレンソを追おうとしていたが重いタンクとロレンソに追いつきたい気持ちにやられてしまったのだ。序盤でチームメイトの前に行けないとなったらヴァレンシアでも同じ過ちを繰り返す可能性はある。

ドゥカティはさらに速くなるか?

ではドゥカティはどうだろう?アンドレア・イアンノーネもアンドレア・ドヴィツィオーゾもこのコースをあまり得意とはしていない。二人合わせて表彰台は3回だ。しかもMotoGPでの表彰台となると1回だけである。しかし今年の状況はかなり違う。イアンノーネは絶好調で、これまでは荒削りな走りの中に天才の片鱗をみせるだけだったのが、やっと成功への階段を昇り始めたのだ。激烈なバトルの末にフィリップアイランドで獲得した表彰台がその証だ。そして今年のドゥカティは去年ヴァレンシアを走ったGP14.2と比較して遥かに戦闘力のあるマシンに仕上がっている。

去年のマシンですらここリカルド・トロモ・サーキットでは強みを発揮し、ドヴィツィオーゾとカル・クラッチローのワークスドゥカティは4位と5位になっている。そしてヴァレンシアのコース自体がドゥカティに向いているというのも見逃せない。低速コーナーからの加速が重要なのだ。そしてそれは間違いなくドゥカティの強みである。さらに高速コーナーでの安定性もGP15が得意とするところだ。それに加えて2L多いガソリンが燃費に厳しいこのサーキットでは有利に働くはずだ。つまり彼ら二人も手強い敵になるということである。

計算上ではスズキも脅威となる可能性がある。しかしマーヴェリック・ヴィニャーレスもアレイシ・エスパルガロもGSX-RRのストレートでの遅さと低速コーナーからの加速の悪さには苦労するだろう。全閉状態からの加速の悪さがスズキの弱みである。つまり低速左の1コーナーで最初から彼らは遅れをとることになる。さらに2コーナー、6コーナー、11コーナーといった低速コーナーで大きな差をつけられる。高速コーナーが続く区間では挽回できるだろうし終わりの見えない左高速コーナーである13コーナーは見応えのある走りが楽しめるだろう。しかし他の3メーカーのワークスマシンに対抗するのはかなり厳しいだろう。サテライトのホンダやヤマハにもついていけない可能性もある。

サテライトの魔法

カル・クラッチローはLCRでの初年度をいい形で終えたいと願っている。RC213Vは予想より乗りにくいものとなっていたし、彼もかなり苦労し、転倒も多かった。しかし昨年ここでRC213Vに乗っていることで良い走りができるかもしれない。

しかし同国人のブラッドリー・スミスの前でフィニッシュするのは相当難しいはずだ。スミスはMotoGPで最高のシーズンを送っている。125cc時代から考えても最高と言えるだろう。来年同じパーツを得るためにもワークスヤマハとの契約であるチームメイトのポル・エスパルガロにはもう一度勝っておきたいはずだ。ランキング6胃はほど確定しているが、今シーズンの結果を考えたらさらにいい成績を残したいのは間違いない。

2台のモヴィスター・ヤマハにとってワークスドゥカティが脅威になるのは間違いないが、他のドゥカティも侮れない。今シーズンのダニオ・ペトルッチは素晴らしい戦闘力をみせているがGP14.2を得てさらに速さに磨きがかかっている。そもそもGP14.2は去年のヴァレンシアでワークスライダーの手によって速さを見せている。つまりプラマックの二人も戦いに加われると言うことだ。そしてテストライダーのミケーレ・ピッロもいる。彼も今シーズン速さを見せた。イタリア選手権で走ることで技術を維持しているのだ。今年最後のワイルドカード参戦となる今回、彼も再び力を発揮したいと考えているだろう。ピッロもまた人々が考えているよりタフなライダーなのだ。

何も決まっていないということだ

つまり今年のタイトル争いはどうなるのか?スポーツ仲裁裁判所の裁定によってヴァレンティーノ・ロッシがどこからスタートするかが決まるが、その結果に関わらず苦労はするだろう。しかし一方で彼が10回目のGPタイトル、8回目の最高峰クラスチャンピオンを獲得する可能性ももちろんある。もしレプソルホンダの2台が逃げてしまえばロレンソは3位にとどまることになる。この場合ロッシは6位でチャンピオンだ。たとえ最後尾からのスタートでも不可能なことではまったくない。ロレンソが表彰台に昇れなければロッシは9位でチャンピオンになれる。彼が9位以上になるのは間違いないだろう。こうした様々な可能性を考えるためにフリーのバイクジャーナリストでポッドキャスト番組、フロントエンド・チャッターのホストであるサイモン・ハーグリーヴスが便利なチャートをツイッターにアップしてくれている。

過去の結果に基づき予想していいのだろうか?MotoMatters.comの素晴らしい写真家スコット・ジョーンズは彼の切りの兄弟との会話の後、私にこう指摘した。。今シーズンの17回のレースのロッシとロレンソの相対順位をみると、ロッシに明らかにアドバンテージがある。もしカタールやオースチン、アルゼンチン、ルマン、バルセロナ、アッセン、ザクセンリング、インディアナポリス、シルバーストン、ミザノ、もてぎ、そしてセパンと同じような結果になるならロッシがチャンピオンだ。もしヘレス、ムジェロ、ブルノ、アラゴン、セパンと同じ相対順位ならロレンソがチャンピオンになる。つまりまったくわからないということだ。

Moto3の大混乱

ヴァレンシアではもう一つタイトルが決まる。しかしそちらはかなりわかりやすい。ダニー・ケントがミゲール・オリヴェイラに24ポイントの差をつけているのだ。ケントは14位以上でゴールすればオリヴェイラの順位にかかわらずチャンピオンだ。しかしケントは2戦前からチャンピオンに王手がかかっていた。プレッシャーでケントは1レースに集中することができなかったのだ。つまりただでさえ難しいヴァレンシア、しかも最終戦の結果にチャンピオンの行方がゆだねられることになったのである。彼がタイトルを獲れば最終戦の順位などみな忘れてしまうだろう。1977年のバリー・シーン以来のイギリス人チャンピオンとして記憶されることになるのだ。

しかしそれでもタイトル獲得は簡単ではない。Moto3のレースはまともではないのだ。ミゲール・オリヴェイラの方が遥かに気楽なはずだ。彼には失うものはないのだ。もし彼がかってケントがタイトルを獲っても、オリヴェイラにとって素晴らしいシーズンであることには変わりはないもし彼が優勝できナックレバケントが自動的にタイトルを獲得することになるが、今シーズンのオリヴェイラは尊敬に値する走りをしたことは記憶されるだろう。もし彼が優勝を狙ったせいでクラッシュしても勇気をたたえられるだけだ。攻撃する方が防御するより楽なのはバイクレースの常である。
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こうした長文のための情報収集には資金が必要です。もし楽しんでいただけたのならMotomatters.comへのご支援をお願いします。サポーターになっていただくか、カレンダーをお買い求めいただくか、寄付をしていただくか、若しくはGoFundMe経由でご支援をいただければ幸いです。
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ええ、ドキドキがましてきましたね!さあ楽しみましょう!

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公式プレビュー>ヴァレンシアGP2015

ヤマハホンダドゥカティ(英語)スズキ(英語)アプリリア(英語)

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ヴァレンシアGPプロモーションビデオ

いまこの状況でホルヘ・ロレンソをフィーチャーしたヴァレンシアGPのプロモーション映像が公開されました。

各画面のキャプションが各行に対応しています。
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タイトル:「讃頌」

友人たちへ

今日話すのは僕がやり遂げたことでもなく、

僕の間違いでもありません。

いま僕はファンのみなさんに伝えたいことがあります。

僕らは違う色を掲げている。それが僕らを分けている。

スリルが好きな人もいれば、

景色を楽しみたいだけの人もいる。

泥を愛している人もいれば、

磨くのが好きな人もいる。

ひとつの世代から次の世代にバトンを渡す人もいれば、

世界の果てを旅する人もいる。

一人で走るのが好きな人もいれば、

大勢で走るのが好きな人もいる。

みんなそれぞれ違っています。

でもヘルメットをかぶれば

僕らはひとつ。

ヴァレンシア、みんなのグランプリ。
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うむ。

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モヴィスター・ヤマハMotoGPによる公式声明

公正を期するためにこちらの公式発表も訳しておきます。MotoGPヤマハチーム公式より。
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「ペドロサが優勝。マルケスはロッシの蹴りというスポーツマンシップにもとる行為により転倒」と題されたレプソルによる2015年10月25日付けプレスリリース及び「中本修平HRC副社長とのQA」と題されたHRCによる11月2日付けリリースについてコメントさせていただきたいと思います。

ヤマハとしては今回のヴァレンティーノ・ロッシとマルク・マルケスの間に起こった件に関するレポートでの単語の選択については同意できないものだと考えています。

上記プレスリリースではいずれもヴァレンティーノ・ロッシがマルク・マルケスのマシンを蹴ったと非難されていますが、これはレースディレクションが認定した内容には含まれていない事柄です。

よって、上述の声明文で使用された単語の内、レースディレクションの検証結果で認められていないものについては反対の意を表明するものです。

不幸な結果に終わった本件に関してこれ以上の議論に立ち入ることはヤマハの望むところではありません。我々が望むのは2015年が最良の形で終わることです。

次のヴァレンシアでは勝って、すべてのライダー、チームにとって記憶に残るようなレースにすることが我々の望みです。そしてきちんとスポーツマンシップに則ってバイクレースの最高峰にふさわしい勝ち方をしたいと考えています。
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迷ったので「である調」バージョンも。
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「ペドロサが優勝。マルケスはロッシの蹴りというスポーツマンシップにもとる行為により転倒」と題されたレプソルによる2015年10月25日付けプレスリリース及び「中本修平HRC副社長とのQA」と題されたHRCによる11月2日付けリリースについてコメントしたい。

ヤマハとしては今回のヴァレンティーノ・ロッシとマルク・マルケスの間に起こった件に関するレポートでの単語の選択については同意できないものだと考えている。

上記プレスリリースではいずれもヴァレンティーノ・ロッシがマルク・マルケスのマシンを蹴ったと非難されているが、これはレースディレクションが認定した内容には含まれていない事柄である。

よって、上述の声明文で使用された単語の内、レースディレクションの検証結果で認められていないものについては反対の意を表明する。

不幸な結果に終わった本件に関してこれ以上の議論に立ち入ることはヤマハの望むところではない。我々が望むのは2015年が最良の形で終わることである。

次のヴァレンシアでは勝って、すべてのライダー、チームにとって記憶に残るようなレースにすることが我々の望である。そしてきちんとスポーツマンシップに則ってバイクレースの最高峰にふさわしい勝ち方をしたいと考えている。
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はやくこんなこと終わりにして次のレースを楽しもーぜー。

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中本修平HRC副社長とのQ&A

日本語版がその内ホンダのサイトにアップされるかもしれませんが取り急ぎ翻訳。HRC公式サイトより。
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「まずなにより事実について語るのが重要であると私たちは考えています。推測は二の次です。事実は事実としてひとつの解釈しかありません。推測はどちらの立場に立つかによって異なってしまいます。このスポーツのためにはみなさんにも起こった事実をご理解いただきたいと考えています。その事実とは次のようなものです。

−マルク・マルケスはホルヘ・ロレンソを最終ラップで抜いてオーストラリアGPで優勝した。その結果ロレンソから5ポイントを奪った。
-マレーシアGPに先立つプレスカンファレンスでヴァレンティーノ・ロッシがマルクのフィリップアイランドでの走りはホルヘ・ロレンソを手助けするためだったと非難した。
-マレーシアGPでロッシは故意にマルクをレーシングラインからアウトにはらませ、その結果マルクはクラッシュした。レースディレクションはこれに対して彼にペナルティを科し、それはFIMによって承認された。

私たちが考慮すべき事実はこれだけです。これ以外の議論はすべて推測に基づくもので、推測について語ることは現時点で我々がなくしたいと戦っているネガティブな状況を作ることになってしまいます。しかしそうした状況は既に起こってしまった現実を変えることはできないんです。


マレーシアGPを受けての状況についてはどう考えていますか?

「HRCとしてはこの状況をたいへん憂慮しています。まず最初にはっきりさせておきたいのはマフィリップアイランドのレースについてルクはなんの証拠もない非難を受けたということです。誰であろうとタイトル争いをしているライダーを手助けしたいと思う動機がありません。そもそもあのレースでは彼は優勝を狙って攻めていたんです。見て頂ければわかりますけどヴァレンティーノとマルクはオーストラリアのチェッカー後に握手をしているんです。お互いの素晴らしい、そしてフェアなバトルをたたえ合っていたんです」


マレーシアGPでのマルクとヴァレンティーノのバトルはヴァレンティーノが非難したからだと思いますか?

「そうは思っていません。マルクはいつでも100%の力でレースをしていますし、だから私たちは彼が大好きなんですし、」だからこそ彼には世界中にファンがいるんです。マルクはいつでも最高の結果を出すために全力で責めています。これまでたくさんのライダーとすばらしいバトルを繰り広げてきましたが、それについて文句を言ったライダーはいません。マレーシアではマルクがレース序盤のフルタンクの状態で苦労しているのを私たちはみています。今シーズン何度か起こっていることですね。それにセパンではレース序盤で彼はミスをしてホルヘに抜かれてしまった。そこにヴァレンティーノが追いついて3位争いが始まったんです。抜き合いは凄かったですけど安全なものでした。どちらもそういう走りだった。二人の最高のチャンピオンがコース上で争っていたんです」


マルクがそのラップの間にヴァレンティーノを邪魔して遅くすることは可能ですか?

「最初は彼らのラップタイムもすごく速くて、マルクがヴァレンティーノをわざと遅らせようとしたという証拠は見られません。漬け食われるならマルクがクラッシュした後もヴァレンティーノは単独走行だったにもかかわらずマルクとバトルしていた時とラップタイムは変わりません。だからどちらも全力で責めていたと私たちは確信しています。どちらも3位を狙いながらダニとホルヘに追いつこうとしていた。でも当然のようにバトルのせいで前の2台との差が開いてしまった。レースではよくあることですし、マルクとヴァレンティーノほどの天才が戦えばそれは私たちが目にしたように本当に素晴らしいバトルになるんです」


ヴァレンティーノがマルクのマシンを蹴ったと確信しているんですか?

「ヴァレンティーノがマルクをわざとアウト側に押し出したのは明らかですし、それはルール違反です。だからマルクはアウトに行かざるを得なかった・マルクのマシンのデータを見ると、彼がマシンを起こしてヴァレンティーノとの接触を避けようとしたのにフロントブレーキレバーが突然衝撃を受けてフロントタイヤがロックして、それで転倒したことがわかります。この衝撃はロッシのキックによるものだと確信しています。マルクのマシンから吸い出したデータはドルナでもFIMでもマスコミの皆さんにでも、チェックしたいなら公開します」


セパンでヴァレンティーノをわざと遅らせようとしてはいないというマルクの言葉は信じますか?

「マルクのことはよく知っていますからね。彼はいい奴ですし、しっかりした価値観を持っていて正直さを重んじるんです。マルクは単に自分のポジションを守ろうとしただけですよ。それはライダーなら誰でもやることですし、私たちは彼を100%信じています」


レースディレクションのやり方についてはどうお考えですか?

「私たちはレースディレクションをの決定を尊重しますし、そのペナルティの軽重については判断を控えたいと思っています。しかしレース中に裁定を下すだけの証拠は得られたと思いますしね。レース終了まで待つ必要はなかったということです」


ヴァレンティーノがレースディレクションとFIMの決定についてCAS(スポーツ仲裁裁判所)に提訴したことについてはどうお考えですか?

「それは彼の権利ですからね。私たちはCASの決定を尊重しますよ」


タイトル争いから脱落したマルクがその渦中にあるヴァレンティーノに戦いを挑んだこと自体を問題にする人もいます。

「それがレースってもんですよ!ダニがアラゴンでヴァレンティーノとバトルして彼に勝ったときには何も言われなかったですし、フィリップアイランドのイアンノーネもについてもそうですよね。誰もアンドレアがタイトル争いの一方に肩入れしてるなんて非難しなかった。今年は難しいシーズンだったんで、セパンでもマルクはただ自分とチームのために最高の結果を残したかったんです。彼は3位になれるチャンスがあるのに4位で満足するようなライダーじゃないですから。2010年のもてぎではヴァレンティーノはタイトル争いから脱落していたのにチームメイトのホルヘとすごいバトルをしましたよね。レース後ホルヘがヴァレンティーノについて、タイトル争いには関係ないのにやりすぎだって愚痴ったときにはヴァレンティーノはこう言ってます。『ヤマハには行ってやったんだ。僕に何を期待してるのか?後ろでゴールしろってのか?ってね。もしそうならうちでのんびりしてるよ』。私たちはこのヴァレンティーノの考えに大賛成だし、チームのライダーが最高の結果を出すためには支援を惜しまないですよ」


現時点でヴァレンティーノについてはどう思われますか?

「ヴァレンティーノは史上最高のチャンピオンだと思っています。今年もすばらしい仕事をしました。チャンピオンを獲得するにふさわしい仕事です。今年の彼は一貫して安定して、しかもすごく速かった。彼が36歳だというのも偉大なチャンピオンとして尊敬されるべきことの一つです。とは言えなぜ彼がフィリップアイランドのレースであんな非難をしたのかとか、なぜセパンであんなことをやったのかについては理解でスキーません。ヴァレンティーノがこの件について考えをめぐらせて、自分の間違いに気付いてくれるといいのですが」


ヴァレンシアでの目標は何ですか?

「いつも通り優勝ですよ!マルクとダニが優勝争いをしてくれるといいですね。1−2フィニッシュならどちらが前でもいいですし、最高ですね。とにかくシーズン最終戦を4連勝で締めたいんです。そして二人がホルヘとヴァレンティーノの前でゴールしてくれればと思っています。そうすればうちの二人がタイトル争いに影響したってことにはなりませんからね。そうすればみなさんにもホンダのライダーは勝つために、ただ勝利のためだけに走ってるってわかってもらえるでしょう」
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中本サンが「ヴァレンティーノがキックしたと確信している」と言っていることについては早速MotoMatters.comのDavid Emmett氏西村章さんから「テレメトリーをみてわかる事実はマルクのマシンのフロントブレーキが押されたということで、ヴァレがキックしたってのは推測の域」と(たぶんやや冗談交じりに)突っ込みが入っています。

ただし、マルクのブレーキレバーのガードが下を向いてしまっている映像についてもEmmett氏がツイートしていて、まあ事実から真実を構築するのはとても難しいということですよ。

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みなさまありがとうございます!!

ken_sugarさんからマスタードをいただいてうきうきしていたら、
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今日はTako_chanさんからオールフリーをいただきました!
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ほんとうにありがとうございますm(__)m。とても励みになります!!

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