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2015ヴァレンシアMotoGP土曜まとめ:素晴らしいポール獲得ラップ、それでもタイトルの行方はわからない

盛り上がって参りしました!普段は時間と気力の都合で土曜の翻訳は少ないんですけど、今日はやるよ!MotoMatters.comより。
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もう逃げ場はどこにもない。日曜にはGPに関わる誰もが固唾を呑んで心拍数を上げながら恐ろしい出来事を目にすることになる。賭け金は膨大だ。Moto3タイトルはとっくに決まっているはずだった。MotoGPタイトルは若者と年老いた男の戦いのせいで混乱している。Moto2の優勝争いも熾烈だ。3クラスとも栄光に輝きたいと全てのライダーが熱望している。若い男女が命を賭けて栄光を追いかける。勝利の美酒を味わえるのは幸運な数人だけだ。残りは苦い酒を飲まされることになるのだ。

日曜のレースに先立ってスポーツ仲裁裁判所がヴァレンティーノ・ロッシによる3ポイントのペナルティの執行停止要請を却下している。これですべてのカードが揃うことになった。金曜、土曜とロッシはピットインを繰り返していた。いつもなら8回か9回に収まるところをQ2に進出するのにも苦労してるありさまだった。しかしペース自体は安定しており、しかもそれなりのタイムを出している。「かなりの速さに驚きましたね」とニッキー・ヘイデンが予選後に語っている。「すごく安定しているように見えます。決勝での速さが彼に9回もタイトルをもたらしたってのはみんな知ってるけど、今日は一段ステップをのぼった感じですよ。コースレコードは更新してないけどいつもの金曜や土曜に比べたら良いペースですね」

そして予選だ。ロッシはQ2に進出。金曜にはいつものようにタイムを出すために走ると言っていた。Q2に出たことで彼は有利になるものと思われた。ホルヘ・ロレンソが明らかに神経質になっているように見えたのだ。ロレンソはピットで捨てバイザーをはがすのを忘れ、アシスタントとばたばた対応していた。そしてピットを出た彼はやや慌てているようだった。よい徴候ではない。だれもがそう思っていた。

なんというスピード!

大間違いだ。彼の1スティント目のタイムでもフロントロー獲得には充分だったが、それでも納得しているようではなかった。いつものロレンソのバターのようにスムーズな走りは影を潜め、マシンは暴れていた。だが2回目の走りは完璧だった。絶好調のときのロレンソの走りとはこういうものだと言わんばかりだった。「人生最高のラップでしたね」とロレンソは言っている。他のライダーもこの走りを賞賛している。実にスムーズで落ち着いた走りだ。まったく攻めていないようにすら見える。「ロレンソのラップを見てたんですけど、ピットに入るのかなーって思うような走りでしたね」とヘイデンは言う。「信じられないですよ!あと0.5秒は縮められそうに見える。もちろんそんなわけはないってわかってますし、彼もそういう風には想ってないでしょうけど、限界で走ってるとテレビとかでは『え?もっとブレーキングを遅らせられるじゃん』って思っちゃうんですよ」

ブラッドリー・スミスはロレンソのデータを見ているが、それは「ちょっと参っちゃう」ようなものだったようだ。「最後のセクターだけで僕より0.5秒も速いんですよ。死にたくなりますね。僕はスライドしまくって縁石に乗り上げて、もうこれ以上できないってやったのに、そこから0.5秒稼いでるんですよ!」。それでもスミスは6番グリッドを獲得しているのだ。4番手からは0.1秒差、3番手のダニ・ペドロサからでも0.5秒差だ。ロレンソがどこでタイムを稼いでいたのかは謎のままだ。

ロレンソがここまでのタイムを出せたのはタイトル争いのプレッシャーのおかげだと言っている。「プレッシャーが頂点に達するとたまにこういうことが起こるんです。さらに速く走れるようになる。でもいつもじゃないんですよね。プレッシャーで緊張してしまうこともある。特にブレーキングでね。経験を積んでいくとそういうことをどう扱えばいいかわかってくるんです」

砂上の楼閣か?

今回プレッシャーに負けたのはヴァレンティーノ・ロッシのようにも見える。ロッシの1回目の走りはひいき目に行っても凡庸なものだった。そして2回目の走りではクラッシュし不完全燃焼のまま終わってしまった。グリッド最後尾のからのスタートになるために、ロッシが一発出しよりセッティング出しを優先していたのであればタイムはそれほど重要ではないとも言える。予選後に彼はその通りのことを言っている。「今日の午後はフリップがいまひとつで苦労しましたね。だから予選をセッティングに使ったんです。タイムは出す必要はなかったですから。でもいいセッティングはみつからないままですね」。そこでセッティングを戻したのだがそれが功を奏したようだ。すぐにロッシは良いタイムを出し始める。しかしそこでミスをしてクラッシュしたと彼は言っている。ロレンソがポール、自分はクラッシュというのは望んでいた1日の結果ではないはずだ。

明日のレースではロレンソよりロッシの方がプレッシャーを感じることになるのだろうか?そうとは限らない。「木曜に西郷日スタートって決まった時点でもう状況は絶望的になってますからね」とロッシは言う。「とにかく最初から最後まで全力で良いレースをするだけですよ。その結果何が起こるかですね。最後尾スタートってのはリスクもすごく高いですから」

別の視点から見てみよう。ロッシにはもう失うものはない。もしクラッシュしてもタイトル獲得のためにはリスクをとって攻めるしかなかったと言い訳できる。もし彼がうまいこと他のライダーを抜き続けることができれば実際にタイトルの可能性もある。一方のロレンソはタイトルを確実にものにするには1位か2位でのゴールが必要だ。二人のレプソル・ホンダのライダーに前に行かれてしまえばロッシは6位でチャンピオンである。6位というのはかなり難しいだろうが不可能なものでは全くない。もしロレンソがなにかの理由で4位にでもなればロッシは9位でチャンピオンになれる。これは簡単なことだろう。

ホンダの助け?

ロレンソの前でゴールしそうなライダーは誰だろう?マルク・マルケスはロレンソに対抗できる速さを見せているが、ラインをはずしたときのスピードが課題である。ロレンソは序盤のスピードに賭けている。第3セクターと第4セクターはピットアウトしたラップでもレース並のスピードだ。ヴァレンティーノ・ロッシも予選でこれを試そうとしているがロレンソほどの安定性はない。マルケスがタイムを出せるようになるにはさらにセクター2つ分ほどかかる。彼が本領を発揮するのは2周目からだ。ダニ・ペドロサも同じである。スタート直後はそれほど速くはないがリズムが出始めたら相当な速さを見せる。

計算上はロレンソの序盤の速さがあればホンダを突き放すことはできるが、マルケスもペドロサも2〜3周で彼に追いつくことが可能だ。もしレースがバトルになればタイトルの行方はいきなり混沌としてくる。2台のホンダがロレンソとのバトルという形でタイトル争いの鍵を握るというのは皮肉なことだ。セパンでマルケスにやられたとロッシが非難していたことをパドックは忘れてはいない。これと同じことがヴァレンシアではロレンソに起こるかもしれないのだ。視点を変えるとおもしろいことが見えてくるのだ。

ではロッシはどれだけ前に行けるだろうか?ラップタイム上はペドロサと同じくらいの速さが出せている。つまり16番手以下のライダーからは1秒以上速いということだ。9番手以下まで含めると0.5秒の差となる。2コーナーまでにはロッシはそのあたりまで追いついて、レースが1/3を終えるあたりまでは8位争いに巻き込まれるだろう。そこから上はたいへんだ。しかしバトルが行われて5位から8位あたりまでが近ければロッシにもタイトルの可能性が生まれてくることになる。

天気予報

最後の要素は明日の気温だ。このところヴァレンシアは想定より気温が高く、タイヤの想定温度の限界に近い。ライダーは特にフロントタイヤに関して文句を言っている。ハード側でさえ温度の限界に近づいているのだ。中でもホンダはフロントタイヤをオーバーヒートさせてしまっている。しかしこれは他のマシンも多かれ少なかれ抱えている問題だ。日曜の気温が想定の派にないに下がってくればタイヤもかなりうまく機能するはずだ。つまりホンダのライダーは土曜までより少しだけ攻められるということである。そうなれば2台のレプソル・ホンダがロレンソを苦しめることは充分あり得るし、カル・クラッチローもからんでくるかもしれない。

要するにタイトル争いはまだ終わっていないということだ。ドルナはもうロレンソにトロフィーを渡してしまったとロッシファンは嘆いているが、ヴァレンティーノ・ロッシ本人はまだあきらめてはいない。誰もがかつてのニッキー・ヘイデンの名言を思い出している。「だから僕らは日曜に走るんだ。何が起こるかわからないんだよ」。その通りなのだ。それが真実なのである。何が起こるかわからない。確定するまでタイトルは誰のものでもないのだ。

もうひとつのタイトル争いがMoto3で行われている。ダニー・ケントがミゲール・オリヴェイラを24ポイント差でリードしている。ケントは14位以内に入ればチャンピオンだ。しかし予想していたよりはるかに彼は苦労している。彼の予選順位は18位。今年最悪のグリッドだ。グリッド降格を科せられたときより後ろだ。シーズン前半は完璧に支配していたのに、インディアナポリス以降の表彰台はわずか1回。そしてミスは数知れずだ。

ケントに必要なのは自信だ。普通の状態なら14位は固いはずだ。しかしケントのまわりにいるのは注意深さに欠けることで評判のMoto3ライダーたちである。ペッコ・バグナイアはケントのすぐ後ろからのスタートだ。バグ内野はすでに今年フィリップアイランドでケントを転倒させている。1コーナーは慎重さを必要とするし、タイトな2コーナーはさらに難しい。ケントは自分のせいで状況をここまで複雑にしてしまったのだ。既に自分だけではどうにもならないことになってしまっている。

そして幸運の女神は私たちに微笑む

まだすべてが片付くまでには何時間かある。勝者の名が告げられチャンピオンが決まる。訴訟のごたごたに結果が左右されることもない。今シーズンは3クラスとも史上最高にスリリングな年だったとして語り継がれることになる。図書館を一杯にできるほどの論争もあった。明日誰が勝っても敗者は文句を言うだろう。フェアではないレースについてだ。もしロッシがタイトルを獲ればロレンソは以前口にしたとおり、それはセパンで失格にならなかったおかげだと言うだろう。もしロレンソがチャンピオンになればロッシは最後尾グリッドからのスタートでなければ状況は違っていたと言うだろう。

真実はこうだ。どちらのライダーもチャンピオンにふさわしい。ヴァレンティーノ・ロッシは史上最高の復活劇を遂げた。2014年の初めには引退も真剣に考えていたのにだ。ここまでくるのに彼はすべてをつぎこみ、レースを見事に構築し、素晴らしいスピードを発揮した。一方のホルヘ・ロレンソは、乗れているときには地球上で最も速いバイクレーサーで、誰も追いつけないことを見せつけてくれる。マルク・マルケスは乗りこなせないようなマシンに乗っていても相手が誰であろうと戦えることを証明した。ダニ・ペドロサはセカンドオピニオンのおかげで腕上がりから完全復活した。素晴らしい年ではないか。アジアでのたった一つの週末が汚点となったが、結果がどうなろうといつか振り返ってみて、このシーズンを目撃できた幸運に感謝するのである。
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さあ、みんなで最高のシーズンの最終戦を待ちましょう!

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