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2015ヴァレンシアGPプレビュー:ゴールするまで終わらない

1日遅れですが安心と信頼のMotoMatters.comより最終戦(!)ヴァレンシアGPのプレビューを。
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ヴァレンシアについて誰もがひとつ誤解していることがある。2015年のMotoGPが終わってしまったという間違いだ。まったくそんなことはない。ロレンソが予選でポールを獲ろうがフロントローに並ぼうが、ヴァレンティーノ・ロッシが予選順位のグリッドからスタートしようが最後尾からスタートしようが、戦いは最後のライダーがチェッカーフラッグをくぐるまで終わらない。まだ勝負はついていないのだ。

なぜまだタイトル争いが終わっていないと思うかって?ヴァレンシアは気まぐれな女主人なのだ。これまで何度驚かされたかわからない。ヴァレンティーノ・ロッシもホルヘ・ロレンソもここで駆ったことがある。そしてどちらもここでタイトルを失ったこともある。二人とも圧倒的な強さを発揮したこともあるし、クラッシュしたこともある。ヴァレンシアでのレースは予想通りにいったことがないのだ。たいていは予選結果が当てにならない結果に終わる。予測不可能な天気もくせものだ。そしてどんなことでも起こりえるのだ。

なぜびっくりするような結果になるかって?11月初旬のヴァレンシアで走るというのは天気との戦いだからだ。今週末の予報にあるようにドライ路面で天気が良くても午前中の気温の低さと強風がタイヤを冷やす。そして数少ない、離れて設置されている右コーナーに危険が待っているのだ。もし雨が降ったり路面がウェットだったりすればこんどはその風によりドライラインが急速に現れることとなる。つまりタイヤ選択がギャンブルとなってしまうのだ。

普通でないできごと

ヴァレンシアがどれほど普通でないかを確認するにはそれほど過去まで遡る必要はない。2012年、ダニ・ペドロサはウォームアップのあとにドライ用のマシンに乗り換えた。ドライラインができはじめているのに気付いたのだ。彼はピットレーンからスタートした。一団となったマシンが走り去った後だ。追撃の最中にはハイサイドで蔵シュしそうにもなっている。しかし他のライダーがウェットタイヤの摩耗に苦しんでいる一方でペドロサのスリックが性能を発揮し始め、結果として彼は優勝を飾ることになった。

去年もハーフウェットのレースだった。ライダーはやはりタイヤチョイスで賭けに出る。その数戦前にマルク・マルケスのチャンピオンは決まっていたがヴァレンティーノ・ロッシとホルヘ・ロレンソによるランキング2位争いはまだ続いていた。ロレンソはアタックを掛けようとしたが難しいコンディションの中、自信が持てないままだった。結局彼はあきらめてピットに入りリタイヤしてしまう。

2011年はケイシー・ストーナーが独走で優勝するかと思えたが突然の雨で状況はいきなり難しくなった。彼がそれまでに築いた膨大なリードはベン・スピーズによりみるまに削り取られ、一旦は抜かれてしまう。最後は最終コーナーの奇跡的なパッシングで優勝はしたがロレンソの代役の中須賀克行も表彰台に立つようなレースだった。その週末に最初の子供が生まれたばかりの彼にとってはいい思い出になったろう。(訳注:中須賀が表彰台に立ったのは2012年。2011年は6位でした。この時3位に入ったのはドヴィツィオーゾです)(さらに訳注:この日に産まれた中須賀のお子さんは二人目)

ストーナーは2009年にもヴァレンシアでありえない出来事を経験している。圧倒的な速さでポールを獲得したにもかかわらず彼はウォームアップで転倒したのだ。その年は多くのライダーが転倒している。そのせいでブリヂストンはタイヤ温度が上がりやすいように構造を変更することになった。以降冷えたタイヤでのハイサイドは減少している。

不愉快な歴史

おそらくヴァレンシアでのタイトル確定で最も記憶に残っているのは2006年だろう。ヴァレンティーノ・ロッシはそのシーズン初めてランキングトップにたってヴァレンシアに臨むことになった。前戦エストリルでニッキー・ヘイデンがチームメイトのルーキー、ダニ・ペドロサの不幸なミスによりポイントを失ってしまったおかげだ。ロッシはフロントローからスタートしたがすぐに順位を下げてしまう。最後はクラッシュしてしまい13位でフィニッシュするのがやっとだった。ヘイデンは素晴らしいレースでドゥカティ2台に続く3位に入り、感動的なタイトル獲得となった。黄色いスモークがたかれるなか彼はタイトル獲得を祝うことになった。主催者は賭けに失敗したのだ。その日優勝したのはトロイ・ベイリスだ。彼はシーズン序盤にMotoGPから離脱していたが1戦限りでワイルドカード参戦したのだ。ワールドスーパーバイクを共に戦った自分のスタッフを動員して990cc時代最後のMotoGPレースに勝ったことで彼は実力を見せつけたのである。

つまりはヴァレンシアのレースに関して今シーズンのこれまでの戦いは当てにならないということだろうか?そういう意味ではここまでのことは少しだけ考慮に入れることにして、プラクティスと予選の結果から予想を立てるのはやめた方がいいということである。タイトル争いをする二人だけに集中することも無理だろう。彼らのほかに24人ものライダーがグリッドにつくのだ。そして誰もがそれぞれ重要な役割を果たすことになる。モヴィスター・ヤマハの二人がどこからスタートしようがそれは変わらないのだ。

レプソルによる支配

一番のやっかいものは2台のレプソルホンダだ。何よりゼッケン26、ダニ・ペドロサが鍵になるだろう。ペドロサはヴァレンシアで素晴らしい結果を残している。ワールド・スーパーバイクのコメンテーターであるスティーブ・デイが書き上げた表を見てみればそれが簡単にわかる(リンク先の訳:#26、#93、#99、#46の全クラスでの記録。エクセルとかいらなくね?)。ヴァレンシアを13回走ってペドロサは優勝6回、つまり5割近い勝率を記録しているということだ。表彰台は計10回。MotoGPクラスで表彰台を逃したのは3回だ。ペドロサから目を離すわけにはいかないだろう。

しかもこの3戦ほど彼は素晴らしい速さを見せている。アラゴンでは世界に、そして名による自分自身に対してカタール後の腕上がりの手術から完全復帰したことを証明してみせた。アラゴンでのロッシとのバトルの末彼は表彰台に上がり、ここ3戦で2勝している。もてぎとセパンでの勝利はあっとうてきなものだった。ペドロサは覚醒した。そして自分に何ができるか見せつけようとしている。彼はブックメーカーが筆頭にあげるタイプではないが自分なら彼に賭けたいと思う。

そのペドロサの最大のライバルはチームメイトのマルク・マルケスだ。マルケスはセパンの後からずっと煮えたぎった状態だ。そして自分の主張を証明しようとしている。彼の望みはただ一つ。世界は間違っている、自分がMotoGPで最高のライダーだと証明することだ。ヴァレンシアで勝つことができれば今シーズンの勝利数はホルヘ・ロレンソに並ぶことになる。そうなればチャンピオンに何ができるかを世界に思い出させることができるのだ。日曜に何が起こるかはわからないが、いずれにせよ彼はチャンピオンではなくなる。そして新しいチャンピオンが誕生する。マルケスはその新チャンピオンに対して明確なメッセージを発しようとしているのである。

マルケスがシーズン序盤でもう少し慎重な走りをしていたら彼もタイトル争いに加わっていたかもしれないというのは皮肉な話だ。しかし2015年型ホンダRC213Vでは勝てないということを受け入れられなかったせいでマシンの限界を超える走りをしてしまい、結果として5戦で自爆しているのだ。その内4回は攻めすぎてフロントタイヤに負荷を賭けすぎたためである。前回それが起こったのはアラゴンだ。彼は逃げるホルヘ・ロレンソを追おうとしていたが重いタンクとロレンソに追いつきたい気持ちにやられてしまったのだ。序盤でチームメイトの前に行けないとなったらヴァレンシアでも同じ過ちを繰り返す可能性はある。

ドゥカティはさらに速くなるか?

ではドゥカティはどうだろう?アンドレア・イアンノーネもアンドレア・ドヴィツィオーゾもこのコースをあまり得意とはしていない。二人合わせて表彰台は3回だ。しかもMotoGPでの表彰台となると1回だけである。しかし今年の状況はかなり違う。イアンノーネは絶好調で、これまでは荒削りな走りの中に天才の片鱗をみせるだけだったのが、やっと成功への階段を昇り始めたのだ。激烈なバトルの末にフィリップアイランドで獲得した表彰台がその証だ。そして今年のドゥカティは去年ヴァレンシアを走ったGP14.2と比較して遥かに戦闘力のあるマシンに仕上がっている。

去年のマシンですらここリカルド・トロモ・サーキットでは強みを発揮し、ドヴィツィオーゾとカル・クラッチローのワークスドゥカティは4位と5位になっている。そしてヴァレンシアのコース自体がドゥカティに向いているというのも見逃せない。低速コーナーからの加速が重要なのだ。そしてそれは間違いなくドゥカティの強みである。さらに高速コーナーでの安定性もGP15が得意とするところだ。それに加えて2L多いガソリンが燃費に厳しいこのサーキットでは有利に働くはずだ。つまり彼ら二人も手強い敵になるということである。

計算上ではスズキも脅威となる可能性がある。しかしマーヴェリック・ヴィニャーレスもアレイシ・エスパルガロもGSX-RRのストレートでの遅さと低速コーナーからの加速の悪さには苦労するだろう。全閉状態からの加速の悪さがスズキの弱みである。つまり低速左の1コーナーで最初から彼らは遅れをとることになる。さらに2コーナー、6コーナー、11コーナーといった低速コーナーで大きな差をつけられる。高速コーナーが続く区間では挽回できるだろうし終わりの見えない左高速コーナーである13コーナーは見応えのある走りが楽しめるだろう。しかし他の3メーカーのワークスマシンに対抗するのはかなり厳しいだろう。サテライトのホンダやヤマハにもついていけない可能性もある。

サテライトの魔法

カル・クラッチローはLCRでの初年度をいい形で終えたいと願っている。RC213Vは予想より乗りにくいものとなっていたし、彼もかなり苦労し、転倒も多かった。しかし昨年ここでRC213Vに乗っていることで良い走りができるかもしれない。

しかし同国人のブラッドリー・スミスの前でフィニッシュするのは相当難しいはずだ。スミスはMotoGPで最高のシーズンを送っている。125cc時代から考えても最高と言えるだろう。来年同じパーツを得るためにもワークスヤマハとの契約であるチームメイトのポル・エスパルガロにはもう一度勝っておきたいはずだ。ランキング6胃はほど確定しているが、今シーズンの結果を考えたらさらにいい成績を残したいのは間違いない。

2台のモヴィスター・ヤマハにとってワークスドゥカティが脅威になるのは間違いないが、他のドゥカティも侮れない。今シーズンのダニオ・ペトルッチは素晴らしい戦闘力をみせているがGP14.2を得てさらに速さに磨きがかかっている。そもそもGP14.2は去年のヴァレンシアでワークスライダーの手によって速さを見せている。つまりプラマックの二人も戦いに加われると言うことだ。そしてテストライダーのミケーレ・ピッロもいる。彼も今シーズン速さを見せた。イタリア選手権で走ることで技術を維持しているのだ。今年最後のワイルドカード参戦となる今回、彼も再び力を発揮したいと考えているだろう。ピッロもまた人々が考えているよりタフなライダーなのだ。

何も決まっていないということだ

つまり今年のタイトル争いはどうなるのか?スポーツ仲裁裁判所の裁定によってヴァレンティーノ・ロッシがどこからスタートするかが決まるが、その結果に関わらず苦労はするだろう。しかし一方で彼が10回目のGPタイトル、8回目の最高峰クラスチャンピオンを獲得する可能性ももちろんある。もしレプソルホンダの2台が逃げてしまえばロレンソは3位にとどまることになる。この場合ロッシは6位でチャンピオンだ。たとえ最後尾からのスタートでも不可能なことではまったくない。ロレンソが表彰台に昇れなければロッシは9位でチャンピオンになれる。彼が9位以上になるのは間違いないだろう。こうした様々な可能性を考えるためにフリーのバイクジャーナリストでポッドキャスト番組、フロントエンド・チャッターのホストであるサイモン・ハーグリーヴスが便利なチャートをツイッターにアップしてくれている。

過去の結果に基づき予想していいのだろうか?MotoMatters.comの素晴らしい写真家スコット・ジョーンズは彼の切りの兄弟との会話の後、私にこう指摘した。。今シーズンの17回のレースのロッシとロレンソの相対順位をみると、ロッシに明らかにアドバンテージがある。もしカタールやオースチン、アルゼンチン、ルマン、バルセロナ、アッセン、ザクセンリング、インディアナポリス、シルバーストン、ミザノ、もてぎ、そしてセパンと同じような結果になるならロッシがチャンピオンだ。もしヘレス、ムジェロ、ブルノ、アラゴン、セパンと同じ相対順位ならロレンソがチャンピオンになる。つまりまったくわからないということだ。

Moto3の大混乱

ヴァレンシアではもう一つタイトルが決まる。しかしそちらはかなりわかりやすい。ダニー・ケントがミゲール・オリヴェイラに24ポイントの差をつけているのだ。ケントは14位以上でゴールすればオリヴェイラの順位にかかわらずチャンピオンだ。しかしケントは2戦前からチャンピオンに王手がかかっていた。プレッシャーでケントは1レースに集中することができなかったのだ。つまりただでさえ難しいヴァレンシア、しかも最終戦の結果にチャンピオンの行方がゆだねられることになったのである。彼がタイトルを獲れば最終戦の順位などみな忘れてしまうだろう。1977年のバリー・シーン以来のイギリス人チャンピオンとして記憶されることになるのだ。

しかしそれでもタイトル獲得は簡単ではない。Moto3のレースはまともではないのだ。ミゲール・オリヴェイラの方が遥かに気楽なはずだ。彼には失うものはないのだ。もし彼がかってケントがタイトルを獲っても、オリヴェイラにとって素晴らしいシーズンであることには変わりはないもし彼が優勝できナックレバケントが自動的にタイトルを獲得することになるが、今シーズンのオリヴェイラは尊敬に値する走りをしたことは記憶されるだろう。もし彼が優勝を狙ったせいでクラッシュしても勇気をたたえられるだけだ。攻撃する方が防御するより楽なのはバイクレースの常である。
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ええ、ドキドキがましてきましたね!さあ楽しみましょう!

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コメント

「普通でないできごと」の勘違い。なんかDavid さんらしからぬ間違いで、やはりここの所の大作続きでお疲れなのかしら。オリジナルの方にはすでに間違いをコメントしている人がいるので、訂正されるかな?
あと当時、ベンには子供がいないので、こういうときの翻訳ってこまっちゃいますよね(^^;;)

投稿: Tako_chan | 2015/11/07 03:40

>Tako_chanさん
をを!ご指摘感謝です!注を追加しました!そもそも翻訳ミスもあって、子供の話は中須賀にかかるんのかも。二人目かな?

投稿: とみなが | 2015/11/07 09:55

公正性がないと大方の人はスポーツと見なしません。
3カウント目が妙に間伸びした嘘くさいプロレスのフォール。
残念ながら今回のセパンとバレンシアは、そんな感じがしてなりません。
まだロレンソがチャンピオンになるならまだしも、ロッシがなりにでもしたら目も当てられません。
関係者に猛省すべきです。


投稿: motobeatle | 2015/11/07 14:42

>motobeatleさん
 うーん、私はそこまでは思ってないですね。
 とにかくヴァレンシアを楽しみましょう!

投稿: とみなが | 2015/11/07 15:38

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