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アルヴァロ・バウティスタとアプリリアMotoGPプロジェクト:苦難の道のり

MotoGPに復帰したものの泣かずとばずのアプリリアですが、まあ元々2016年が本格復帰の年であるのを無理して1年前倒し参戦しているので当然と言えば当然の結果ではあります。そんなアプリリアで苦労しながら走っているアルヴァロ・バウティスタへのインタビューをSport Rider Magazineより。
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アルヴァロ・バウティスタの最高峰クラス100戦目はアラゴンGPだった。これとは別にMotoGP以外のクラスで115戦も走っている。30歳になった今、彼は既にベテランと言ってもいいだろう。MotoGPではスズキワークス、ホンダを経験し、そして今シーズンはアプリリアのMotoGP復帰プロジェクトのテストライダーを務めている。2015年シーズンの倍ティスタはレースをしているというより単に参戦しているだけという状況だ。彼はこう言っている。「確かにそうですね。今年は普通の年ではないですから。自分が望めるグリッドを争える状況では全くないです」

アプリリアが彼を雇ったのはMotoGPマシンの開発のためだ。そういう意味では今シーズンバウティスタにはかなりの仕事が求められているはずだ。ここでアプリリアのMotoGPにおける将来が決まるのだから。繰り返そう。バウティスタがやっているのは来シーズン以降アプリリアのMotoGPマシンの特性を決めるという仕事なのだ。

「今シーズン僕らが作っているマシンは他のオープンクラスのアプリリアとは全然違うものがベースとなってるんです。シーズン当初からそうでしたね。何かの改良型じゃなくて完全に新型マシンを開発するためのいわば実験室なんです。『来年はここを改良したいよね』とか、そういう話じゃ全然ないんですよ。いま走らせているのはテスト用マシンなんです。いろんな部品を試しながらそれが機能するかどうか確認してるんです。そうやってデータを集めてこれから作るワークスマシンの使用を決めていくという作業なんです。それこそが戦うためのマシンになるんです。こういうやり方なんで今シーズンは最後まで速くはならないでしょうね」


今年は戦う年ではない

間違いなく普通はないようなやり方だろう。アプリリアが最初に最高峰クラスに参戦した時も事前テストをMotoGPのレースそのものでこなすということはしていなかった。スズキは参戦復帰前の2年間近くを使ってテストパーツを装着したマシンを何千キロも走らせたのだ。アプリリアはこうした手順を踏んでいないように見えるがバウティスタに言わせればそうではないということだ。「別にステップを飛ばしているということじゃないですよ。やると言ったことをやってるだけなです。もちろん本来はスズキのようにレース外でやるべきことだって言うこともできますけどね。MotoGPで戦うために必要なものをきかれて、軽いエンジンって答えて、他に何が必要かきかれて、ここがこうして、あそこがこうしてって答えて、マシンを作って、それでそこから開発していく、みたいな感じですかね。でもアプリリアではそういうやり方はしてないんです。まずはマシンを持ち込んでレースで開発していく。まだテスト用マシンなんですよ。いいバイクを作るための途上なんです」

テストバイクということは戦闘力は全く期待できないし、そもそも戦闘力を期待して作るものでもない。そういう意味ではレース現場というのはテストの場所としてはいささか奇妙なところではある。

「さっき言ったように今の目標は部品ごとにちゃんとしたデータを集めることなんです。フレームはうまくできているかとか、そういうことですね。エンジンが一番基本なんですけど現段階では公道用エンジンがベースなんです。だから大きいですしね。例えばホンダのエンジンなんかはうちのより小さいですから搭載位置もいろいろ試せるんですよ。重心位置とかね。でもうちのはそういうわけにはいかないんです」

公道用エンジンがベースということはサイズが大きくフレームのどこに搭載するかの選択肢も極めて限定されるということである。複数の搭載位置を試したり重量配分を変えたりということはほとんどできないはずだ。「そうですね。そういう意味ではできることはかなり限られています。でも本当の始まりは当初の予定通り来年なんです。来年はエンジンが新しくなりますからね。そうなればかなり小さくて軽くてパワフルなエンジンが手に入ります。そうしたらいろんなことができますし、そこに今年テストしたいろんなパーツをつけていけるんです」

もちろんちゃんとしたレースできるようになるにはノアーレにあるアプリリア本社でやるべきことは山積みだ。とはいえ少なくとも電子制御に関してはアプリリアはどこよりも早く導入しているし、一定レベルに到達しているだろうと考えていたが、バウティスタによればそうでもないらしい。「そうですねえ、アプリリアは電子制御では先を行ってましたけどもうMotoGPから離れて何年も経ちますから遅れをとっていて…、まあホンダと比べたらずいぶん先を行かれてますよね。スーパーバイクでは長いこと走ってますけど、あれは別の世界ですし、こちらでは太刀打ちできないですね」


ポジティブなバウティスタ

こういう発言には全く批判する調子がなかったことは言っておくべきだろう。アプリリアと2016年までの契約(いい取引だったに違いない)をした段階で彼は自分がどういう立場にあるかは充分わかっていたのだ。スズキでも同じような立場にあった。ただスズキの場合は少し違った状況だったが。「ですね、スズキでの経験は今とは違ってましたね。あのときは僕自身250ccから上がってきて、まずはマシンを理解する必要があったんです。スズキではマシンの改良が主な目標で、レースに参戦するのは改良が終わってからだった。つまり傍目にはマシンが進化しているのがわかりやすかったということです。今年はこうした経験で蓄積したことも利用していくということですね。ライダーとしてはいろんなシチュエーションに対応できるような経験を積んでますから」

彼はなにもかもがうまくいかなかった時代について測ってくれた。GPで216戦も走っていればこそ忍耐力もつき、そしてトップクラスの実力を維持することもできるのだろう。「グラスの水はまだ半分って思うようにしてるんです。その時々で良い面を見るようにしてるんですよ。常に平静でいて、あらゆることを冷静に分析して、やり方を変えるべきかどうか考える。今の僕は結果を出せてませんけど、ライダーとしては前より成熟しているし前より進化していると思います。状況に左右されなくなったのは間違いないですね。たぶんそのおかげでマシンの戦闘力がなくてもいらいらしないし、だからこそ勝利を引き寄せられるんだと思います。今年はすごくうまくいっているし完璧とも言っていいですけど、うまくいってなくても誰かが僕に『もっと上のレベルに向けて努力しろ』って言ってくれるわけじゃないですからね」

2015年のバウティスタはテストライダーということなのだ。しかし決勝のスタートでレッドライトが消えた瞬間にスロットルを開けるのが戦うためでないということはどういう心持ちなのかは想像しがたいことだ。慢心がなんであれ他のマシンに囲まれてグリッドにいるのだ。テストライダーとしての役割を忘れても無理はないだろう。「当然ですよ!」。そう彼は笑ってみせた。「プラクティスの最終ラップやテストが終わったときや、あと何かついてそれがいいのか悪いのか考えているときは自分がGPでプラクティスを走ってることを忘れちゃんですけどね。新しいパーツのこととかしか考えてないんで。でもやれるだけのことをやって、それでレースが始まったらもうあとは戦うために走るんです」

「ドイツGPまでは彼らも自分たちが何をやってるか理解できてなかったと思いますね」。アプリリアのエンジニアがやるべきことをわかっていたかとたずねると、バウティスタはここまでと同様に真摯に答えてくれた。「なんか情報が多すぎてうまくハンドリングできない感じだったんです。でもドイツGPからはちょっと考え方も変わってきて、どっちの方向に進むべきかとか、そのために何をすべきかがわかってきた感じですね。ここんとこアプリリアのエンジニアがエンジニアがやってきたことはちょっとしたことなんですけど、すごくいい方向に進んでいるんです。最初の頃は自分たちが何について話しているのかもわかってなかったんですよね」

2016年のバウティスタと彼のチームそしてアプリリアの目標は良いマシン、そして戦えるマシンであるのは間違いない。2016年はレギュレーションが大幅に変わる年だ。統一電子制御とタイヤメーカーの変更がある。つまりマシンのレベルが接近するだろうということだ。「あんまり教えてはくれないんですよ」。来年型のRSV-GPについて探りをいれるとバウティスタはこう答えた。「僕もなんどもきいてるんですけど、とにかくやってるし、新しいエンジンを設計してるからって言われるだけなんです。まあ新型パーツも届き初めてはいるんですけど、最終戦後のヴァレンシアテストで試せるかってきいても、セパンで試せるかってきいたときと同じで答えはノーなんですよ」
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バウティスタの根性の入り具合に泣けてきたよ。

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