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2015もてぎプレビュー:佳境に入ったタイトル争いに向けての長距離移動

さてタイムラインも盛り上がる今日この頃、皆様方にはいかがお過ごしでしょうか?私は今年こそはと金曜朝入りを目論んでおりましたが諸般の事情により例年通り土曜朝からの観戦となりました。

というわけで日本GP前の最後の更新になるかと思いますが、ここはひとつMotoMatters.comより日本GPのプレビューをば。
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ついにシーズンで最も重要な時期がやってきた。もちろんどのレースも同じように大事だと主張するのも自由だが、それでも環太平洋フライアウェイラウンドはタイトル争いにいつも重要な役割を果たしているのも事実である。もてぎ、フィリップアイランド、セパンの3連戦前にタイトルを決めていなければこの3戦が鍵を握ることになるのだ。程度の差はあれ厳しい3週間が待っている。タイトル争いのプレッシャーで当然ミスも起きやすくなるからだ。

ライダーたちがまず直面するのは次のレースまでのきつい移動である。ヨーロッパから東京までは少なくとも18時間。さらにもてぎに着くまでに2時間。サーキットホテルに宿泊できるほどのサラリーをもらっていなければレースに間に合うように毎日サーキットまで50分かけて通わなければならない。そして日曜の夜か月曜朝には東京に戻って10時間(直行便が取れていなければそれ以上)かけてメルボルンに向かいフィリップアイランドまでのドライブが待っている。その1週間後にはマレーシアのクアラルンプールに8時間かけて向かうのである。セパンが終われば再び17時間以上のフライトでヨーロッパの自宅にもどり、1週間の休みを挟んでやっとヴァレンシアの最終戦に臨むことになる。雨が降ったり湿気が多かったりするもてぎから初春の凍えるフィリップアイランドへ、そして汗ばむ熱帯の陽気が待つセパンへの移動なのだ。

バイクレーサーの活動量はいつでもハンパ無い。1日でもっとも良い時間に彼らを静かに座らせておくなどできない相談だ。日本のメーカー(日本に拠点を置くブリヂストンもそのひとつだ)はアジアに向けて自分たちが最高のライダーを抱えていることを発信したくて仕方がない。そこでライダーを工場や本社や、あわよくばインドネシアやタイといった重要な市場にも連れて行こうと強行ツアーが組まれることになる。カル・クラッチローやニッキー・ヘイデンといったライダーは毎日トレーニングに3時間の自転車を組み入れているが、それもできなくなってしまうのだ。ヴァレンティーノ・ロッシやマルク・マルケスのようなバイクでのトレーニングが好きなライダーにとっても状況は同じだ。少しはジムにも入れるかもしれないが、ひどい時差ボケに悩まされている上、言葉はほとんど理解できず、さらには慣れない食べ物も口にしなければならないとのだから、集中力を維持していくのは極めて難しいのである。そしてそんな時こそ細かいことに気を回せる注意力が必要とされるのだ。ちょっとしたミスが命取りとなってしまう。だからこそこうしたフライアウェイラウンドでタイトル争いが混乱する可能性も高いのである。

厳密には3クラスともタイトル争いは終わっていないが、それぞれのクラスでかなり様相は異なっている。Moto2はほぼ決まりだろう。もてぎでヨハン・ザルコがティト・ラバトに3ポイント差以内でゴールすればタイトルはザルコのものとなる。残り3戦を残して75ポイント差となるのだ。数字上はラバトに追いつく余地が残されてはいるが2位の回数でザルコが勝るのである。

Moto3はもう少し微妙である。ダニー・ケントがもてぎでタイトルを決めるのはエネア・バスティアニーニの成績次第なのだ。ケントがバスティアニーニに対して75ポイントのリードをするにはもてぎで20ポイント以上の差をつけてゴールしなければならないのである。つまりケントは最低でも1位か2位、そして2位ならバスティアニーニがリタイアしなければタイトル争いは持ち越しである。たぶんフィリップアイランドでは決まらないだろうが、55ポイントあればほぼタイトルを手中に収めてヨーロッパに戻ることになるだろう。

最もわからないのはMotoGPクラスである。モヴィスター・ヤマハのヴァレンティーノ・ロッシのリードは14ポイント。相手はチームメイトのホルヘ・ロレンソだ。残り4戦で100ポイントがかかっている。マルク・マルケスはタイトル争いを混乱させたいと言っているし、アラゴンではダニ・ペドロサもその仲間に喜んで参加するつもりであることを示している。そしてロッシとロレンソが過去にもてぎで繰り広げた戦いもこの熾烈なタイトル争いをおもしろくする要素である。

2010年のことだ。ロッシは素晴らしいバトルの末にロレンソをうっちゃってみせた。接触しながらの3位争いは二人の仲の悪さの象徴だった。そのときロッシはヤマハを去ることが決まっていた。結局ドゥカティで失意の2年間を過ごすこととなったのだが、その時点でロッシに失うものは何もなかった。自分からエースの座を奪ったロレンソのタイトル争いを助ける気など毛頭ない。その年のロッシは怪我の影響で苦しんでいた。カタール戦後のトレーニングで方を傷め、それがシーズン全体に影響していた上に、ムジェロでは大クラッシュの結果、脚を骨折しキャリア初の欠場まで経験していたのだ。脚の回復は早かったが方については2010年が終わるまで癒えることはなかった。

しかしもてぎでは肩の怪我の影響もみられなかった。ロッシは限界までロレンソを追い立て、ヤマハの幹部からかなり厳しいお説教をくらうほどだった。次のシーズンのロッシはロレンソを悩ませるほどの位置で走ることはできなかったが、去年は再び速さをみせた。2014年終盤にかけて輝きを取り戻しつつあったロッシは序盤でロレンソを苦しめることができたのだ。結果的にはロレンソが優勝しマルケスにも前を行かれてしまったが、彼は表彰台に立っている。

今年はヤマハM1も速くなっており、ロッシ自身もキャリア最高の状態だろう。つまりロレンソを相当苦しめることができるということだ。二人の間の仲違いは陰を潜めたが、しかし状況は2010年の比ではない。タイトル争いをする二人なのだ。そしてもてぎはヴァレンシアと同様にロレンソの得意とするコースである。ロッシのもてぎでの目標は失点を最小限に抑えることで、もしロレンソの前でゴールできたら完璧なレースと言えるだろう。

それは決して簡単なことではない。ロレンソはもてぎで連勝中であり、その前2年間はペドロサに次いで2回連続2位となっている。2009年にも優勝しているのでもてぎでロッシと戦った7回のうちロレンソが後塵を拝したのは2回だけということになる。強さを見せたアラゴンでの勝利を見ればロレンソが再び自分を取り戻したことがはっきりとわかる。だれもついていけないラップを刻めるようになったのだ。

しかしこれは先週までの予想だ。ロレンソはミニバイクでのトレーニング中に大クラッシュし肩を捻挫しているのである。怪我自体は大したことはないと診断されており、実際日本でのイベントでも腕をつっていることはなかった。今、彼の心の中にあるのは2010年のレースだろう。ロッシは肩の怪我を抱えながら自分を打ち破った。ロレンソが考えているのはこの日曜にそのお返しをすることに違いない。

怪我をしたのはロレンソだけではない。マルク・マルケスもトレーニング中に怪我をしている。マウンテンバイクで転倒して左手の第5中手骨を骨折しているのだ。さらにアンドレア・イアンノーネは左肩の怪我が完治いていないほか、怪我人リストには多くのライダーが載っている。もちろんその中にはロッシもいる。彼はアラゴンでのミシュランタイヤのテスト中に転倒し腕にひどい擦り傷を負ったのだ。シーズンを通してもっともブレーキングがタメされるサーキットのひとつであるもてぎは340mmディスクの使用が義務づけられている唯一のコースである。怪我を抱えたライダーにはレースが進むにつれ厳しいものになるだろう。しかしそれでも2010年のロッシは速さを維持できた。今年も多くのライダーが怪我に耐えきるに違いない。

すべてのライダーに影響するのは雨だろう。9月10月はもてぎで最も雨の多い時期である。熱帯低気圧や台風がやってくるのだ。台風が近くを通り過ぎるためにすでに強風が吹き始めている。その台風は雨ももたらす可能性がある。雨がいつどれくらい降るかが鍵になるだろう。ウェットではロレンソよりロッシに分があるようだが、実際には走ってみなければわからないだろう。

ロレンソのマネジャーであるウィルコ・ツィーレンベルクにアラゴンで尋ねたところ、ロレンソはグリップが予測できる状態なら速いということだった。ドライで誰よりも速いのはあらゆる場所のグリップを正確に把握し、それを最大限に活かしているからなのだそうだ。しかしウェットでグリップが予測できなくなるとその強みは消え去ってしまうと言う。特にハーフウェット状態やコースの一部だけ雨が降っていて他はドライな状態が苦手だということである。インディアナポリスのようなコーナーごとに極端にグリップが違うコースでも彼は苦労していることは良く知られている。

こういう状況でのロッシは逆に強い。ロッシはその場その場でグリップを判断できるのだ。変化するコンディションでロレンソがおそるおそる走っている横をロッシは限界まで攻めながら走り去っていく。状況に合わせて走りを変えられるロッシの強みが発揮されるのだ。雨が強くなるししかし再びロレンソが速くなる。ツィーレンベルグによれば完全にウェットなコースはむしろ完全にドライなコースに似ているのだという。コースのどこでもグリップが予測できるのだ。そしてプラクティスでもウェットを体験していればロレンソは最速タイムを出せるのだ。

現時点での日曜の天気予報は強雨。朝から午後まで降り続くとのことである。しかし別の天気予報では午前中は雨が降るものの午後はドライ。逆に午前ドライで午後は雨という予報もあれば、土曜まで雨という予報もある。モヴィスター・ヤマハの二人は週末中空を見続けることになるだろう。

誰もがロッシ対ロレンソの争いに注目する中では別の要素は忘れられがちだ。実は最大の脅威はダニ・ペドロサという可能性もあるのだ。彼はマシンが完璧ならすばらしい成績を残す実力を持っている。2011年と2012年の2回優勝し213年には表彰台に上がっているのだ。去年は腕上がりに苦しんでいたがそれもやっと治ったようである。アラゴンですばらしいレースをみせてくれたことを考えれば完全復活といっていいだろう。やる気も高まっている。もう勝利から1年以上遠ざかっており、ペドロサとしても優勝は喉から手が出るほどほしいはずだ。ホンダのホームコースにもかかわらずこの2年はヤマハが勝っているもてぎで優勝するのはペドロサにとっても素晴らしいことに違いない。

彼のチームメイトであるマルケスはつい先日手にプレートを入れたばかりだ。しかも2位は2回あるとはいえ、もてぎはMotoGPでマルケスが勝っていない数少ないコースである。今年のマルケスはかなり苦しんでいる。実はこれは去年から続いていることであり、ここ最近の20レースで8回、つまり40%もリタイヤしているのである。問題は常に同じ。ブレーキングではリアにかかるエンジンブレーキが少ないためにフロントに頼らざるを得ないのだ。そうなるとフロントタイヤはすぐに根を上げてしまうことになる。ハードブレーキングを要求するコースではマルケスのチャンスはわずかだろう。ことによったら手の怪我がかえって良い結果をもたらすかもしれない。いつものようなブレーキングでの信じられないほどのフロント荷重が封じられるからだ。

さてドゥカティはどうだろう?過去もてぎでのデスモセディチの強さは圧倒的だった。皮肉なことにGP15の大幅な進化のために捨てたものが彼らを苦しめることになるかもしれない。今年のドゥカティはコーナーで速いが、そのためにジジ・ダリーニャと彼のスタッフはGP14.2の得意分野であったブレーキングでの安定性をあきらめたのだ。バックストレートからのブレーキングやコースのそこかしこにあるヘアピン、そしてタイトコーナーではこれが不利に働くだろう。1、3、5,9,10そして11コーナーでは去年より苦労するはずだ。

二人のアンドレアのうちドヴィツィオーゾの方がブレーキングの安定性の欠如に苦労しているようだ。イアンノーネにとってはそれほどではないらしい。肩の怪我のせいでアプローチが慎重になっているせいかもしれない。怪我が彼を速くしたと言ってもいいかもしれない。もてぎではイアンノーネに注目しよう。アラゴンでも4位に入って見せた彼は日本に向けて好調を維持しているのだ。

理論上はスズキにとってもてぎは悪夢のような場所になるだろう。GSX-RRの良さは機動性を行かしたタイトなコーナリングである。加速ではたいてい苦労しているし、もてぎのようなストップ・アンド・ゴーのコースではアレイシ・エスパルガロもマーヴェリック・ヴィニャーレスも苦労することになるだろう。もてぎでは新型エンジンが導入されるという噂が前々から流れている。しかもこれまでにない大改良を施しているという。アラゴンではアレイシ・エスパルガロとスタッフがリアグリップの向上に成功しているので思ったほど悪い結果にはならないかもしれない。ヴィニャーレスもグリップに苦労しているがエスパルガロサイドから情報が得られれば少しはおもしろいことになるだろう。

いずれにせよ今週末はみるべきところがたくさんある。下位クラスではタイトルが決まる可能性があるのだ。しかしもっとも注目すべきはMotoGPだろう。チャンピオン争いの渦中にある二人はどうプレッシャーに対処するのか。ここで勝てればフライアウェイの残りの2戦の流れをぐっと引き寄せることもできる。もてぎではいくつもの夢が打ち砕かれ、そして新たな夢が生まれることになるだろう。すべてを賭けた戦いが始まるのだ。
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天気なー。

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