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2015アッセンMotoGPレースまとめ(その1):ロッシ vs マルケス

いろいろ物議を醸しているアッセンのラストラップ最終シケイン。御大David Emmett氏も書いてます。
MotoMatters.comより。
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偉大なる最終コーナーというものが歴史を作る。あらゆるサーキットにそうした最終コーナーがあるべきなのだ。シケインでも高速コーナーでもタイトなコーナーでも、とにかくライダーが最後のチャンスをものにして勝利を手にしようと相手のインに飛び込むような、とんでもなく勇敢なライダーがアウトから抜きにかかるような、そうしたコーナーだ。そして真に偉大なコーナーは、アタックしたライダーがミスを犯したら逆に抜かれたライダーがリードを奪えるような、そういうシナリオも生み出すものなのだ。

アッセンの最終コーナーはそうした偉大なものの一つである。そしてアッセンにあるのは最終コナーナーだけではない。そこまでに至る一連の流れではライダーが自分で組み立てを作ることができる。そしてそのプランに入っていなかった予想もできなかったことに対処することも求められるという、素晴らしいレイアウトとなっている。土曜にはアッセンのGTシケイン、そしてデ・ブルトからラムズフークの出口に至るまでの複合コーナーではワクワクするような争いが見られた。そして最後にはMotoGPの歴史に刻まれるような戦いの場となったのだ。今後何年にもわたってみなが議論するような事件の現場となったのだ。ことによったら2015年の流れを決定づけたと言われることになるかもしれない。

主役の二人はお馴染みのヴァレンティーノ・ロッシとマルク・マルケスだ。ロッシが最終コーナーに先に入り、マルケスがものすごい勢いでそれを追う。次に起こったことはどちらの言い分を信じたいかによるだろう。二人の言い分は異なっているからだ。ロッシは先にシケインに入ったのは自分だと言う。そしてマルケスに当てられて仕方なくはらんでしまい、クラッシュを避けるためにアクセルを開けてグラベルを突っ切るしかなかったと主張しているのだ。一方のマルケスは自分はインにいてロッシに邪魔をされたと言う。こちらはロッシが勝つためにわざとショートカットしたと考えている。どちらの見方が真実なのだろうか?それについてはもう少し後の方でとりあげるとして、まずはレース序盤の状況から解きほぐしていこう。

ロッシの勝利の萌芽はバルセロナにあった。ロッシとチームが土曜の午前中にカタルニアで戦うための方向性をみつけていたのだ。そこでみつかった新たなセッティングはアッセンで投入された新型フレームでさらに改善される。ロッシは序盤から良いペースで走れるようになったのだ。予選でポールを獲得したのはこの5年間でわずか3回目。スタートから逃げるには最高のポジションだ。ライトが消えると彼はその優位性を最大限に活かすことになる。続いたのはアレイシ・エスパルガロだ。1コーナーをややカット気味に駆け抜けたおかげで彼は自分のポジションを守ることができた。そしてマルケスが3番手で続く。ストルッベンヘアピンでマルケスがエスパルガロのインに入り、そのまま加速しロッシを追いかけ始める。そしてトップ2台はどんどん逃げていった。

恐ろしいほど精密な走りで8番手から上げてきたホルヘ・ロレンソもそれを追いかける。半周もしないうちにマンデヴェーンでもう一人のエスパルガロであるポルのインをついて3番手に上がったのだ。ロレンソはトップの2台を追いかけようとするが、しかし彼らは速すぎた。結局ロレンソは追撃をあきらめ、3位を脅かされることもなく孤独な走りのまま表彰台を目指すことになった。

トップを走るロッシはまるで熱湯を浴びせられた猫のように走り続ける。そしてマルケスがそれを追う。マルケスのRC213Vは今年最高の出来のようだ。コーナー進入でのリアのスライドや蛇行はずいぶん収まっており、再びマルケスはマシンをコントロールできるようになっていた。タイヤがタレ初めてもマルケスはコントロールできたし、バルセロナやムジェロとは異なり、マシンが彼のコントロール下を飛び出すこともなかった。未だに予想もつかない動きをすることもあるが、マルケスは常にクリッピングを外すことなく正確な走りを続けられたのである。マシンは良くなったのか?「まだわからないですね。今週末だけの話ですから」とマルケスは記者会見で語っている。「でもまた楽しんでライディングできるようになりましたよ。もちろん進入でのスライドについては改善の余地がありますけどね。特にレース終盤ではね」。ロッシのペースに楽についていけた彼はレース終盤、いつでもいけるという状態になっていた。

しかしなんというペースだったろう。ロッシのラップはすべてこれまでのラップレコードを上回るものだった。唯一の例外はマルケスにトップを奪われたときだけである。マルケスも同じだ。レコードタイムを下回ったのはロッシにアタックしたときだけだった。マルケスは19周にわたってロッシを注意深く観察し、彼が最終シケインで人工芝にはみ出してストレート加速が鈍った隙を逃さずアタックをかけた。マルケスは1コーナーをトップで抜ける。今度はロッシが追いかける番だ。

ロッシにはまだ引き出しがあった。残り3周、マンデヴェーンでインに入るとタイトなラインでトップを奪い返す。マルケスはダイカースロートで抜こうとするがロッシにブロックされる。これは伝統的なヤマハの走り方だ。その前の日にブラッドリー・スミスが「クリッピングについて『やあ!』って言うんだよ」と表現していたそのままである。

ロッシはとどめを刺す時がやってきたことを理解していた。そしてファステストラップを叩き出し、0.5秒のリードをつける。しかしマルケスもそれに反応すべきことはわかっていた。最終ラップ、マルケスはわずかずつではあるがコーナーごとに差を詰めてていく。そしてついにラムズフークでGTシケインでインにねじ込めるほどに近づいたのだ。アッセンを有名にしているまさにそのコーナーである。記者会見でマルケスはその動きをプラクティスでなんども練習したと語っている。こうした瞬間がきたときのためにだ。「僕の考えではシケインの一つ目でインに入って二個目でブロックする予定だったんです。そうすれば相手はスペースがなくなって、自分が前に行けるはずだったんです」

マルケスはロッシのインに入ろうとするが、彼のフロントホイールがヤマハの前に行くことはなかった。せいぜいM1のラジエターあたりにとどいたにすぎない。それではポジションを固めるには足りなかったのだ。ロッシはマルケスが近づいていることに気付いていた。しかし彼が言うにはタイヤしか見えなかったのである。そこでホンダをブロックした。トップを走っているライダーの当然の権利を行使したまでだ。しかしマルケスは突っ込みすぎており、ロッシのカウルに接触してしまう。そしてロッシはラインをはずれ、マルケスのRC213Vは大きく振られる。ロッシは瞬時に反応しマシンを起こすとアクセルを開けてグラベルを突っ切りフィニッシュラインを目指す。マルケスが彼のマシンのコントロールを取り戻して人工芝部分をショートカットしたが、結局怒りに震えながらフィニッシュラインを越えることとなった。

レース後ロッシは自分はコーナーに入って通常通りのラインを通っただけど、マルケスのせいでグラベルに出てしまったのだと言っている。しかしマルケスは違う考えのようだ。自分はインに入ったのだから優先権があると主張し、ロッシはコーナーをショートカットしたのだから優勝を取り消されるべきだと言っている。ホンダはすぐにレースコントロールに出向き苦情を訴えているが、レースディレクションは即座にあれはレーシングアクシデントだという裁定を下した。2台とも最終コーナーをショートカットしており、結果はそのままだということなのだ。ホンダはその裁定を受け入れ、レース後の記者会見終了後、ロッシとマルケスはレースディレクションに呼び出され、放映された以外の映像を含めて様々なアングルからのビデオを見させられることになった。

レース後には多くのジャーナリストがレースディレクターのマイク・ウェッブにインタビューを行っている。彼の説明はこうだ。「見たとたんに間違いなく確認が必要な状況だということはわかりました。最終ラップでしたから注目もしていたんです。だから何度もビデオを見返して議論をしました。最終的にはあれはレースアクシデントだという結論です。これはもうはっきりしてますよ。迷うような話では全くないですね。誰の目にも明らかですよ。ポイントは最終シケインでずっとヴァレンティーノが前にいたことですね。すごくいいヘリコプターからの映像があって、それを見ると彼がずっと前にいて、だからラインは彼に優先権にあったことがわかるんです。彼はコーナーに入って普通のラインを走っている。ちゃんとコーナーをクリアしようとしているんです。マルクがインから仕掛けたんですけど、これも当然ですね。最終ラップなんですから。そこで抜こうとした。その過程で彼はヴァレンティーノの前に出ることはなかった。ヘリコプターの映像でそれは明らかなんです。ヴァレンティーノは常に前にいた。そしてマルクがヴァレンティーノに接触したんです」

マルケスがロッシに当たったのか、それともロッシがマルケスに当たったのか?「明らかにマルクがヴァレンティーノに当たっていますね。ヘリコプターからの映像ではどっちが前にいたのかははっきりしています。真正面からの映像はありませんけど、比較的前から撮った映像があるんで2台の離れ具合と、どう近づいていったのかがわかります。ヴァレンティーノは本当に普通のラインを通っているんです。マルクがインから抜きにかかってヴァレンティーノに接触しているんですね。そこでヴァレンティーノはマシンを起こすことにしたんです。彼は自分が限界で走っていたといっています。限界でコーナーに入っていってインから当てられて、仕方なく起こしたとね。そこでグラベルに出てしまったということです。マルクもコースをはずれて人工芝に入ってしまった。だからルール上では2台ともコースを外れたってことなんですよ。2台ともコーナーに進入して、それをクリアした後コースを外れてしまった。その間に順位の変動はありません。どこでも順位は入れ替わってないんです。つまりどちらもコースをはずれて得をしているわけではないということですね。ヴァレンティーノがショートカットしたことでタイムを稼げたのは間違いないですけど、この場合それは関係ないんです。どっちが次のラップで得をするかは見る必要がない。前にいたライダーが前に残って2番手のライダーが2番手のままだったというだけですから。どちらもコースを外れてまた戻ってきた。それだけです。大事なのはどちらもコーナーをちゃんとクリアしようとしていたことなんです。どちらもグラベルに出ようなんて思っていなかった。どちらも相手をはじき飛ばそうなんて思っていなかった。接触が起こって2台ともコース外に出てしまったのはあくまで結果なんです。ですから話はシンプルですよ。レーシングアクシデントで、誰かが得をしたわけじゃないということなんです」

ウェッブはマルケスが最終コーナーでアタックをかけたことにも理解を示す。「マルクが抜きにいったのも当然です。別にヴァレンティーノに当たろうと思っていたわけじゃないこともわかっています。でも接触してしまった」。レースディレクションの設置目的はレースを安全に運営することである。しかしレースはレースだ。ラーダーが勝とうとするのは当然だし、最終ラップにリスクを冒すのも当然なのだ。次のチャンスはないのだから。

マルケスの抜き方の問題はなかったろうか?プラクティスからウォームアップと通じて、彼が何度も最終コーナーでラインを試していたのを目にした。問題があるとすればそれをプラクティス、すなわち他のライダーにラインを邪魔されない状態で試していたことかもしれない。しかしそういう意味ではマルケスらしいとも言える。自分が抜こうとしている他のライダーについてあまり考えることなく走るのがマルケスのトレードマークなのだから。誰と走っていても同じことをやっただろう。しかしこの件に関してはレースディレクションは違った見方をしている。「マルクは過去にもこうしたことをおこしていますよね。相手が誰かとか、どのクラスを走っていたかにかかわらずです。とても成功するとは思えないのに抜こうとしていて、わざと当たりにいっているような走りですね。そういうのはペナルティの対象になりますよ。今回は最終ラップの最終コーナーでのアタックで接触が起こったわけですが、これは仕方ないでしょう。幸い順位の入れ替えも起こりませんでしたしね。もしどちらか、または両方が転倒していたらそういう目で見る必要があったでしょうが、そうはなりませんでしたしね」とマイク・ウェッブはこの接触について語っている。

マルク・マルケスの失敗は相手がただの年取ったライダーではなかったということだ。相手はヴァレンティーノ・ロッシだったのである。ロッシは20年以上もアッセンを走っている。最初はヨーロッパ選手権で、そしてその後はGPで。彼はここで多くのレースを目にしてきた。そしてあらゆる可能性を学んだのだ。元チームメイトのコーリン・エドワーズが2006年に最終コーナーで転倒しニッキー・ヘイデンに優勝をさらわれたのも同じラインだった(訳注:参考映像はこちら)。ロッシはあそこで何が起こるか十分すぎるほど考えていたに違いない。そして本能的に正しい選択をしたのだ。そういう意味では2006年というのはマルケスがGP現れるはるか前の話である。

おそらくロッシは接触したときにどうするかも考えてコーナーに入っていたのだろう。ブラッドリー・スミスがこの接触について明確に語っている。「ヴァレンティーノは何もかもをうまく利用したんですよ。マルクが当たって着ることは予想していて、だからグラベルに向かったんですね。でも誰も文句は言えないでしょ。そういうことなんですよ。あれは経験の賜ですね。彼はブロックラインを通って、マルクがそこに入って自分をはじき出すタイミングを計っていたんですそうしたら誰も何にも言えないですからね。ヴァレンティーノは言ってるでしょ。『イャー、僕はコーナーをクリアしようとしたんだだけだよ』ってね。実際彼がコーナーを回り切れたかどうかは別にして、彼は『僕がまっすぐ言っちゃったのはマルクに当てられたからで、シケインでは前にいたんだし、別に得したわけじゃないから勝ったのは僕だね』って言えるんですよ」

本当にロッシはマルケスに当てさせたのか?それはなさそうに思える。しかし彼がそこまで考慮に入れていたのは間違いないだろう。マルケスにとって、今回のロッシは初めて現れた自分を脅かすライダーとも言えよう。これまで効果を発揮してきたフィジカルコンタクトが機能しなかったのだ。ホルヘ・ロレンソも2013年にのセパンでマルケスの脅しに屈しないことを示し、マルケスに対してお返しをすることになった。しかし今回のロッシはそれ以上のものを見せたのだ。マルケスの接触をものともしないスタイルを見事に切り返してみせたのである。

他のライダーのことを考えておらず、安全も考慮していない上にコース上での優先権も全く気にしていないという非難がマルケスに対してはあった。ロレンソは1レースばかり出場停止にしなければマルケスの走りは変わらないだろうと言っている。2005年のもてぎでのロレンソの走りに対して下された裁定と同じようにだ。しかしロッシがマルケスに与えた苦い薬はそれより効果的かもしれない。出場停止もマルケスには痛いだろうが自分の戦術のせいで勝利が逃げていったという事実の方が彼にとってはショックだったろう。次にマルケスが勝利のためにロッシのラインに無理矢理ねじこもうとする際には2015年のアッセンのことが頭をよぎるだろう。ベテランであるロッシを倒すための唯一のやり方は確実に彼を抜き去るしかないことに思い至るのだ。つまりフィジカルコンタクトで脅すのではなく、確実に前に出て、そして前を走り続けるしかないということなのだ。

これがマルケスにとって苦い経験になったというのはレース後記者会見からも明らかだ。なかなか気まずい会見だった。ロッシとマルケスのあいだのいつもの軽口や仲の良さは全く見られなかった。ジョークはとびかっていた。ちなみに最高のジョークは驚いたことにロレンソの口から発せられたものだった。彼は自分のパフォーマンスの悪さに言い訳することもなく、うまいことを言ってみせたのである。しかし当事者二人はどちらも自分の意見を変えようとはしていなかった。勝者のロッシは肩の荷が下りたかのような気楽さで、そして歴史的な勝利を記録したことに喜んでいた。一方のマルケスは自分が悪くないと一貫して文句を言っていた。「僕の考えでは自分は完璧に最終シケインに入っていったと思っていますよ。だって僕がインにいたんだしちゃんとマシンをと減速できたんだし、それでシケインの2個目ではちゃんとヴァレンティーノをクロスラインで抜けるはずだったんです」。そしてその後こう言っている。「シケインは完璧でした。昨日考えた通りだったんです」。さらにこうも言っている。「自分では間違ったことはしていないと思ってます。だって僕はコースを外れませんでしたからね。さっき言った通り、最終ラップは完璧だったし最終コーナーも完璧だった。これは予定通りだったんです。でもマシンを完璧に減速してインにラインをみつけたら接触してしまった。でもあのシケインはかなりタイトだってお互いわかってるはずですよね。だから僕は間違ってないと思いますよ」

ロッシの答えはシンプルだった。「今じゃなくて後から映像を見た方がいいですね」。そして彼らはその通りのことをした。記者会見のnotに、レースコントロールでレースディレクションの面々と映像を確認することになったのだ。英国スーパーバイク選手権のディレクターであるスチュアート・ヒッグスが二人がビデオを見ているところの写真を投稿している。二人のライダーの顔がそれぞれの気持ちを雄弁に物語っている。マルケスは結局冗談で紛らすことにしたようだ。アッセンでのロッシから何を学んだかと聞かれた彼はこう即答している。「モトクロスは重要ってことですよ。それだけですね」

もしロッシの立場だったらどうしたかと聞かれたマルケスがくらい声でこう答えたのは皮肉と言うほかないだろう。「わかりませんけどね、でも今回のような経験をしたらやるべきことをするだけですよ」。これは2013年のヘレスでマルケスに採取医コーナーで押し出されたロレンソが言ったことと全く同じだ。「これから何が起こるか楽しみですね」というのがロレンソの答えだったのだ。

マイク・ウェッブはやんわりとしたマルケスの脅しには驚く様子も見せてない。「こうしたことは何度もありましたしね。何かやられたと思っているライダーはこれまで何人もいましたし、彼らはみんな『これがありなら自分もやるよ』って言ってますから。まあ脅迫みたいなもんですね。でも彼らには済まないんだけどもうそういうせりふは聞き飽きてるんですよ。コメントする価値もないってのが正直なところですね」。こうした熱い闘いの仲ではライダーはいろいろなことを言うものだ。しかし言ったことがそのまま実行されることもほとんどないというのが事実なのだ。

記者会見での勝者がいるとすればそれはホルヘ・ロレンソだろう。どちらの味方をするかと問われた彼は実に見事に答えを避け、記者たちを笑わせたのだ。どちらのライダーに味方するとも言わず、しかも質問した記者が自縄自縛に陥るような答えを返したのである。その後ロッシとマルケスがバトルすることで自分が有利になるかと問われた彼はこう自分を皮肉った。「まあ二人がクラッシュしたら有利にはなるでしょうけどね…」。二人についていけなかったレースを終えたロレンソは記者会見で力を取り戻したようだ。いい会見だったし、うまい答えだった。

アッセンでの接触はロッシとマルケスの関係を変えることになるだろうか?どちらもそれは否定している。当然だ。しかし間違いなく関係は変わるだろう。チャンピオンが見えてきたらロッシのライバルに対する態度は厳しいものになっていくだろう。確実に距離を取るようになっていくはずだ。マルケスがMotoGPクラスに上がってきたとき、ドゥカティの2年間の後で復帰したヤマハへの対応に苦しんでいた。当時のロッシはマルケスを自分の後継者だと考えていたのかもしれない。だからこそ好意を持って接していたのだ。それは二人が勝利をめぐって争うようになった去年も同じだった。今年もロッシはにこやかで友好的だし、マルケスのジョークには笑ってみせる。しかし二人の間で交わされるジョークはとげとげしくなってきた。もちろんお互い尊敬しあってはいるが、以前より毒が感じられるようになったのだ。

再びロッシは心理戦を開始したのだろうか?実を言うと私は彼が自分で意識して心理戦を仕掛けたことはないと考えているし、それがうまくいったこともないと思っている。ロッシがライバルと戦うとき、その真価はコース上で発揮されるのだ。コース外の彼の発言はそれほどのものでもない。彼がマルケスとの間に距離を置いているように見えるのはチャンピオンが視野に入ってきており、しかもマルケスがそれを邪魔するだろうからだ。チャンピオン争いの相手にはならないだろうが、レースでポイントを奪われることは大いにあり得るのだ。ヴァレンティーノ・ロッシはいつもでおもしろい男で、常に楽しませてくれる。しかしそれーはレースに関係のない場面での話だ。レースは彼にとって真剣な仕事であり、勝利することはそれ以上のものなのだ。

2015年のアッセンは2008年のラグナセカと同じ位置づけとなるのだろうか?私はそうは思わない。アッセンでロッシに負けた相手は既にチャンピオン争いから脱落したライダーだ。2008年のロッシの相手はケイシー・ストーナーだった。血が凍るほどの、しかしわくわくするような真っ向勝負だった。レースの歴史に燦然と輝いている。ラグナセカでの勝利でロッシはストーナーからタイトル争いの勢いを奪ったのである。アッセンでロッシはマルケスを完膚無きまでに叩きのめし、自分の立場を思い知らせることになった。これでホルヘ・ロレンソとの差を10ポイントまで広げたが、それでも2位に落とされたのがマルケスだということを考えるとチャンピオン争いには大した影響はないだろう。まあマルケスのランキング3位が危うくなってきた程度だ。

ロッシの本当のライバルはモヴィスター・ヤマハのチームメイトであるロレンソだ。アッセンでは圧倒的な差で勝ったものの、心理的なダメージは与えていない。ロレンソはエッジグリップが感じられないことでペースを上げられずロッシについていけなかった。この4戦、ロッシがしてくれたことへの恩返し程度だということだ。アッセンはチャンピオン争いのターニングポイントということになるかもしれないが、まだチームメイトの心を折るには至っていない。本当の戦いはこれからなのだ。間違いなくそれはやってくる。

4000語近い原稿で語れたのはたった一回の追い抜きについてだ。まだまだ語りたいことがある。今年のアッセンはひとつの記事だけでは語り尽くせないのだ。スズキの物語、アンドレアイアンノーネの成熟した慎重な走り、アンドレア・ドヴィツィオーゾの壊れたシートカウル、5位争い、ペドロサのマシンのブレーキ問題、MotoGPクラスの新基準、Moto2のヨハン・ザルコの快進撃、そしていつもの素晴らしいMoto3レース。ここではダニー・ケントがさらにポイントリードを積み重ねている。これらは別の記事にしようと思う。明日さらにいろいろお伝えできるだろう。
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この記事にはジェレミー・マックウィリアムズ(元GPライダー)から「接触への単なる反応をここまで書くとは陰謀論のタネは尽きまじ」みたいなツイートが飛んでいますが、Mat Oxley氏がこれに「昨日私が話をしたあるトップライダーは、ロッシがプラクティスでグラベル走行の練習をしてるのを見たって言ってましたよ。練習は大事」とか返していて、いろいろ味わい深し。

ちなみに4000ワードを日本語にすると約1万字ですね。

<追記>
記者会見でのホルヘの発言については「気になるバイクニュース」さんが全文翻訳されてました!こちらも是非!

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オランダGPラストラップのロッシとマルケスの接触に関するレースディレクションの見解

最終ラップの最終シケイン、最初の右でインにねじ込んだマルケスに当てられてアウト側にはじき飛ばされたロッシですが、そのままなんとなく左コーナーをショートカットしてトップでゴール。特にマルケス側からも抗議が出なかったようですし、審議もなしということで結果はそのままですが、レースディレクションがこの件について説明してくれています。CRASH.netより。
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MotoGPのレース・ディレクターであるマイク・ウェッブが、アッセンの最終ラップにおけるヴァレンティーノ・ロッシとマルク・マルケスの衝突をレーシングアクシデントと判断した理由について説明してくれた。

優勝争いをしている2台。最終のシケインでマルケスはポイントランキングでトップに立つロッシを抜こうとした。右・左・右と切り返す最初の右で2台が接触すると、ロッシはコースを外れてしまい、残りのコーナーをショートカットしたままコースに戻りマルケスに1.2秒の差をつけてトップでチェッカーを切ってしまう。

この件に関する2人の意見はずいぶん違うものだ。

ロッシはこう言っている。「僕としては自分が前にいたわけですしマルクが僕のマシンの真ん中辺りに当たってきたんですよ。おかげでコースアウトしてしまったんです」

一方のマルケスはこう言う。「最終シケインは完璧に把握していたんです。どうやって正しい場所にバイクをもっていくかわかっていた。まあでも仕方ありませんね。彼がショートカットするなんて思ってもみませんでしたよ!最終的に勝ったのはこっちだと思ってますよ」

接触がなければどちらが勝ったかと問われたロッシは「前にいたのは僕ですからね」と答え、マルケスは「インにいたのは僕ですよ!」と答えている。

レースディレクションの判断はこうだ。判断を決めたのは接触が怒った時点で前にいたのがロッシだということである。

マイク・ウェッブはCRASH.netにこう説明してくれた。「すべてのカメラアングルからチェックしました。その結果レーシングアクシデントであるという判断になりました。あれでロッシが有利になったわけではない、ということです。決め手となったのはヘリコプターからの映像です。すべての場面でヴァレンティーノが前にいたということがわかりました。ですからヴァレンティーノにラインを選ぶ権利があったということです。
 ヴァレンティーノが前にいて、彼はそのまま抜かれることはなかった。2台が右コーナーのクリッピングにきたときにマルクがヴァレンティーノに接触して、ヴァレンティーノがアウトに出てしまった。つまりそれはレーシングアクシデントで、仕方のないことだったんです。
 あれがかなり無理が追い抜きで接触があったということ、他のライダーをラインからはじきとばしてはいけないということ、この2点が考慮されました。最終的に一連のコーナーに入ったときと同じ順番で出てきたということで、別に誰かが得をしたということではない。そういうことなんです」
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マルケスの「まさかショートカットするとは思わなかった」ってのが本当のところなんでしょうね。その斜め上を行くロッシの恐ろしさってことでしょう。

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公式リリース>オランダGP2015

ヤマハホンダドゥカティ(英語)スズキアプリリア(英語)

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人は一生のうちに平均何回入院するか?

ちょっと気になったのでざっくり計算してみました。

計算方法は

Σ(年齢階級別人口当たり退院患者数)

となります。
要するに、ある年齢階層(1-4歳とか)にいる間に退院患者となる期待値(=入院回数の期待値)を算出して、それを一生分(85歳まで)足したらどうなるかという計算。

計算の前提はこちら。
(1)入院回数=退院回数
(2)性・年齢5歳階級別の人口当たり退院患者数は将来的に変動しない
(やや思い切った前提ですし、本来は疾患別にやった方がよさそうですが、とりあえずめんどくさいので)

→計算表(エクセル)ダウンロードはこちら: admi_expect_150521.xlsx (287KB いろいろおまけでメモとかついています)


<結論>

84歳までに入院する期待値は男性10.9回、女性9.2回

ええーっ!って思いますよね。周りを見てもそんなに入院したことのある人っていない感じだし。

そこでお友達のドラえもん石川ベンジャミン光一先生(国立がん研究センター)にヘルプをお願いしたところ、こんなグラフをいただきました(DPC全国データ1年分なので、ある1年に何回入院したかを示しています)。

「患者数」
Patients

「延べ入院回数」
Num_admission


以下、石川先生とのやりとりの結果出てきた考察。


感覚とのずれは以下の理由によるのではないか。

(1)確率ではなく「期待値」と考えるべき?

 人生で10回というのは平均回数なので、入院「確率」ではなく入院回数「期待値」と考えると腑に落ちそう。つまり入院って2回以上の入院も結構あるのに、同じ疾患での入院は何回しても1回としか頭の中でカウントされてない可能性。
 
(2)1回入院するとその人の入院確率が跳ね上がるので、入院する人は何度もするけど、1回もしない人はしない
石川先生からいただいたグラフを観察すると、例えば40-49歳で
 
 a)1年間に1回でも入院を体験したことのある人:31万人(←患者数のグラフから目検討)
 b)40-49歳人口:1767万人(←総務省人口統計H24.10.1現在)
 c)40-49歳の人が1年間に1回以上入院する確率:1.75%(←a÷b)
 
 って結構確率が低いんですが、
 
 1回目の入院をしたことがある人がその年度内(1年以内ではなく、年度内でOKですよね?)にもう1回以上入院する確率=40-49歳の全患者数に占める2回以上入院患者数割合:15%(←患者数のグラフから目検討)
 
と8-9倍に確率が跳ね上がっています。
 
あとはスケールが小さくなるのを目検討で測っているのでどんどん精度が落ちますが、
 
2回目の入院をしたことがある人がその年度内にさらに入院する確率=30%くらい
3回目の入院をしたことがある人がその年度内にさらに入院する確率=45%くらい
4回目の入院をしたことがある人がその年度内にさらに入院する確率=75%くらい
 
と確率が上がっていってます。これは年度内に限ったデータなので、「1年以内の再入院確率」とすれば、もっと数字は大きくなりそうです。
 
つまり入院を体験した人は少ないので周りにあんまりいないけど、1回以上入院するとその入院確率がどんどん上がっていくので、期待値はイメージより大きいということなのかも。
 
(3)この計算方法では時代背景の差は考慮されない

 計算の前提でも挙げましたが、例えば今80歳の人が1-4歳の時を考えると、当時は入院施設も整っていなかったので、これほど入院してわけではなさそう。つまり時代の差による入院確率の差は無視して、とりあえず断面のデータだけで推計しているという限界はありますね。
 
(4)Healthy Worker Effect
 周りに入院したことのある人が少ないのは、そもそも働いてる人の周りには働いている人が多い(つまり入院して働けない人のことは見えない)というのもあるでしょうね。
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ってなわけで、今後どなたかに生命表みたいな感じで「入院回数表」の年次推移をみながら、その変化の要因について分析するとか、疾患別に分析してみるとかやってもらえないかしらん。
実社会に対するインプリは別途考えなきゃならないですけど。

というわけで、患者調査とか人口統計といった既存の統計データからでも結構いろいろ遊べるというお話でした(DPCの全国データは入手できないですけどね)。

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マシンの進歩が腕上がりを起こしているのでは、とマルケスとロッシ

なんどかこちらのサイトでも翻訳している腕上がりネタですが、マルケスとロッシが考えを述べています。AUTOSPORT.comより。
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マルク・マルケスとヴァレンティーノ・ロッシはどちらもMotoGPライダーの腕上がり問題は2015年マシンの改良のせいだと考えている。

腕上がり症候群はライダーの間では普通にみられるものだが、それがどんどん深刻になってきているのだ。

マルケスのチームメイトであるダニ・ペドロサはかなり思い切った腕の手術を4月に行っている。2014年に苦しんだ腕上がりが再発したのだ。

テック3・ヤマハのポル・エスパルガロとアヴィンティア・ドゥカティのエクトル・バルベラも今年手術を行っているし、Moto2ランキングトップのアレックス・リンスもやっている。

マルケスはパワーの上昇とタイヤの保ちがよくなったせいでライダーがこれまで以上に限界まで攻められるようになってことが腕上がりをひどくしている可能性があると考えている。特にマシンのセッティングが好みでない場合にそれがひどくなると言っているのだ。

「マシンが速いとどんどん攻められちゃうんです。1周だけじゃなくてレースディスタンスで攻め続けられるんですよ。タイヤも保っちゃいますし。つまりレースの間中ストレスにさらされるんですよ。
 あと乗り方も関係ありますね。例えば去年の僕は全然マシンに問題を感じてなかったですけど、今年はちょっと気になるところがあるんですよ。そうなると自分の乗り方で乗れなくなる。乗ってる最中に凝りがでちゃうってのは、マシンに何か問題があるときなんですよ。
 それが一因なんじゃないかと思いますよ。ライディングスタイルの問題でもあるけど、マシンの問題でもある。あとサーキットにもよりますね」

ロッシはブレーキングがハードになったことも大きな要因だと考えている。

「おもしろいですね。技術的な答えがあるんだと思いますよ。ブレーキングで腕にかかる負担が大きくなってるんですよ。
 ブリヂストンのフロントタイヤが素晴らしくって、しかもブレーキも良くなっているしエンブレも効く。あとシームレスのおかげでさらにブレーキングがやりやすくなってますしね。
 こうしたいろんな技術開発が腕にかかる負担を増やしてるんです。それで去年はみんあ腕上がりに苦しめられた。そういうことだと思いますよ。でも僕自身は幸いにも悩まされてないですけど」
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そろそろマシンが人間の限界を超えようとしているのかしらん。

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ブルーvs.ブルー

ども、お久しぶりです。ここんとこ気持ちと時間に余裕がなくてすっかりご無沙汰してましたが、ちょっと時間ができたので気になる記事を訳していきますよ。

すばらしい走りで4連勝を飾ったロレンソについて、Mat Oxley氏が書いていますので、まずはMotor Sport Magazineに掲載されたその記事から。
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40年前のこの週末、映画「ジョーズ」が封切りとなった。メインテーマとなる音楽は今でも人の心をざわざわさせる。あの恐ろしいメロディーの繰り返しを耳にすると、誰もが危険が近づいてくるような気持ちになるのだ(訳注:知らない方はこちらからどうぞ)。

この4戦でホルヘ・ロレンソはまさにジョーズのごとくヴァレンティーノ・ロッシのポイントリードを噛み砕いていった。実に28ポイントを削り取ったのである。7戦を消化し、残り11線。ロレンソはロッシに対してわずか1ポイント差にまで詰め寄っている。いつでもとどめを刺せる状態だ。果たしてその通りになるだろうか?おそらくロレンソの勢いは止まらないだろうし、ロッシは再び最初からやりなおさなければならないだろう。

もちろんロッシにとってこうした状況は初めてのことではない。なんといっても彼は9回もチャンピオンを獲っているのだ。2009年に遡る。その時ロッシはロレンソをはじめとする若いライダーを鮫の一群にたとえている。「もし僕が弱くなったら一発でかみ殺されるでしょうね。ちょっとした血のニオイをかぎつけて、よし今だ!ってかかってくるんですよ」

去年ロッシは自己改革にとりくんだが、そのとき手本としていたのはマルク・マルケスではなくロレンソだった。ヤマハに戻った彼はロレンソのデータから学び、ロレンソについていくために努力をしたのだ。この日曜のロッシのラップタイムはロレンソのわずか0.03秒遅れだった。しかし3周目にして1.3秒差をつけられた後では、それもなんの役に立たなかったのである。

ロレンソはカタルニアでこう言っている。「ヴァレンティーノは日曜の男なんですよね」。つまりそれこそが彼が学ぶべきことなのである。土曜日の男になるにはピットを出て最初のコーナーからまるで最終ラップかのようにアタックを開始するという危険な技術を学ばなければならないのだ。タイヤが温まっているかどうかは関係ない。

これを「自信ということに関して歴史に残る跳躍」だと言うものもいる。ロレンソはまさにそこにいるのだ。予選でピットを飛び出すと、またたくまにアタックモードに移る。トップスピードで走るために徐々にタイムを上げていくということはしない。レースでも同じだ。自分のラインを走るためには誰かに前を走らせるわけにはいかないのである。

ロレンソは昔からそうだったわけではない。彼もこの技術をものにするためにかなりの努力をしているのだ。ケイシー・ストーナーにこてんぱんにやられたのがそのきっかけになった。数年前の冬、ロレンソは筋力トレーニングにはげみながら同時に精神力の鍛錬も行っていた。理性が止めたときでも気持ちを優先できるようにだ。オフシーズンテストではピットを真っ先に飛び出し、口から心臓が飛び出そうになるのをぐっとこらえて最初のコーナーに飛び込んでいった。まるでそのコーナーでチャンピオンが決まるかのようにだ。そして実際にそうなったのだ。

ロッシ自身もそうしたスキルが必要だということは何年も前からわかっている。実際ピットから飛び出すロレンソを追いかけていって何かを学ぼうとしたこともある。しかしロレンソほどすぐに速く走ることはできないままだ。トップスピードにのるまでに時間がかかるのである。つまり現在の15分間の予選方式には全く適合できていないということだ。

では何を変えれば良いのだろうか?予選専用のセッティングをスタッフが用意できれば良いのか?それとも自身の内面を作りかえなければいけないのか?

昨今のMotoGPではメカニックが予選でマシンに手を着けることはほとんどない。20Lのタンクに1/4ばかりガソリンを注ぎ、燃調を少し濃くするくらいしかしないのだ。フロントのプリロードを1mmほど上げるくらいはする。ライダーがあと1/100秒詰めたいと考えるとき最も役立つのはブレーキングだからだ。そしてリアにも1mmほどプリロードをかけるかもしれない。そのおかげでニュータイヤでスロットルを開けやすくするためだ。

要するにマシンへの変更は最小限に留めるということなのである。バイクレースというのは自信がすべてだからだ。ライダーはマシンがどう動くか完璧に予想できれば安心してライディングに集中して限界まで攻められる。そのためにこそセッティングが存在するのである。もし予選タイムを上げようとしてメカニックが大胆あ変更を加えたら、ライダーはむしろ遅くなってしまうだろう。なじんだセッティングではないからだ。

となるとロッシのメカニックはレースを通して全体のセッティングを変更しなければならないのだろう。ロレンソと同様にサスセッティングを少し柔らかくするのだ。しかしライディングスタイルの違いも考慮しなければならない。ロレンソはマシンの上で全く動かないがロッシはせわしなく動いている。

ロッシに必要なのは自身がどうかわるべきかをみつけることなのだ。しかしそれは容易なことではない。彼は何年もそれに取り組みつづけているのだ。

とは言え彼はまだタイトル争いの中心にいる。そこがホンダとの違いだ。去年のチャンピオンが稼いだポイントはロレンソのちょうど半分。マルケスがピットで話している相手から推測するに、問題はメカニカルグリップの欠如と軽すぎるフライホイールにありそうだ。

フライホイールが軽すぎるとスロットルに対するエンジン回転の反応がシャープになりすぎるのだ。そしてその結果ホイールスピンを引き起こす。ライダーがスロットルを閉じるとエンジン回転は急激に落ちてしまい、こんどはリアホイールがロックする。こうした現象が起こっているのはマルケスのコメントからもわかる。

2年ほど前ならすぐにこうした問題は解決できたろう。2スト時代にもタングステンをフライホイールに埋め込んでNSR500を乗りやすくしている。しかしシーズン中のエンジン開発は凍結されてしまっている。すべてのエンジンは開幕戦時点で封印されており、変更は許されない。もちろん去年のエンジンに戻すこともできない。

もしフライホイールの重さが問題ならHRCはカセット型ギアボックスか点火用ピックアップコイルににおもりを付け加えるくらいしかできないのだ。しかしはっきりした違いを出すのは簡単ではない。

問題がメカニカルグリップならカタルニアGP後のテストで試した2014年型シャーシが解決策になるかもしれない。

しあしマルケスがこれから勝ち続けても3連覇には遅すぎるだろう。尊敬すべきチーフメカのラモーン・フォルカダによれば、もうロレンソに迷いはないそうだ。シーズン当初は何度かありえないトラブルに見舞われている。最初はツナギのサイズ、そしてカタールでのヘルメット問題、テキサスでの体調不良、そしてアルゼンチンでのタイヤ選択ミス。

しかしそれを乗り越えてからは彼は完璧に走り続けている。現代GPでは記録となる103周連続トップ、そしてマイク・ヘイルウッドに並ぶ勝利数。去年はマルケスの10連勝に驚かされた。今年のロレンソにもどれほど驚かされることになるだろうか?
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Dennis Noys氏によればロレンソはMotoGPクラスの37勝のレース全939周の内、731周(77.8%)をトップで走っていて、その内17戦は全周回トップとのこと。そういうやり方でしか勝てないということなんでしょうけど、そこに持ち込める力を手にした、そこまでの努力が凄いです。

ちなみに記事の原題は「Blue on Blue」。直訳すると「味方からの砲撃」ですのよ。

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公式リリース>カタルニアGP2015

ヤマハドゥカティ(英語)ホンダスズキアプリリア(英語)

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公式プレビュー>カタルニアGP2015

ヤマハドゥカティ(英語)ホンダスズキ(英語)アプリリア(英語)

アプリリアのメランドリのコメントが味わい深いのでそこだけ翻訳。
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「いい感じでやる気をもってバルセロナにやってきました。僕の状況に関する噂のことは考えないで走るだけです。いい仕事をしたいし、いつも通り全力を尽くします。チームもがんばってくれてるし、新しいパーツがうまくいくといいと思ってます」
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つらい・・・。

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ロレンソの心の中へ

割と「自己啓発系」なツイートが好きなロレンソ。私なんかはちょっと心配しちゃったりしてますけど、心配してるかどうかはともかく、彼の「心の平安」に関する記事をMat Oxley氏が書いてます。Motor Sport Magazineより。
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MotoGP現場でのインタビューには通常15分の枠しか与えられてないのだが、その中でライダーについて様々なことを見抜くのはなかなかたいへんだ。もっとも何か面白いハプニングでもあれば別だが。

ホルヘ・ロレンソにインタビューをするようになった頃のことだ。一緒にいたのは短い時間だったが、自動ドアが故障していたおかげでそれはなかなかおもしろいものになった。

インタビューをしたのは、その故障したドアのすぐ横にあったヤマハのホスピタリティトラックのラウンジだった。

最初はまるで宇宙船エンタープライズ号のようにシュッという音と共に開いたり閉まったりしていたそのドアの調子が悪くなって、いつまでも治らないまま何度も開閉を繰り返すうちにロレンソは目に見えていらだち始めた。そして最後は頭から湯気が出るほど怒っていたのだ。

私たちが話していたのは、彼が心の平安を得るために瞑想に興味を持っているということだった。特に彼が興味を持っていたのはソフロロジーと呼ばれるやり方で、精神と筋肉をリラックスさせることで集中力とモチベーションを高めると信者たちは主張しているものだ。

故障したドアのエピソードもそうだし、ヘルメットの中で時々かんしゃくを爆発させるという話もそうだが、ロレンソがその手のリラクゼーション手法に興味を持つというのはありそうなことである。ライダーにはよくあることだが、煮えたぎるマグマを常に抱えている火山のような人間なのだ。5度の500ccチャンピオンに輝いたミック・ドゥーハンもそうだった。彼はそんなマグマのエネルギーをマシンに乗るためにとっておける希有なライダーだった。

(ベジタリアンだったので瞑想方面には簡単に行きそうだったとは言え)厳密な意味で瞑想していたわけではない。しかしドゥーハンは一旦ピットレーンを出たら常に99.99%の能力を発揮するための集中方法を身に付けていた。ここまで最大限のパフォーマンスを発揮し続けることのできるスポーツマンは本当に、本当に一握りだ。

いささか言葉にしにくいこうした心理状態を心理学者は「フロー」と呼ぶ。しかし一般的には「ゾーン」の方が通りがいいだろう。Wikipediaによればフローは「並外れた集中力であることに没頭したときに訪れる心理状態のこと。気持ちが行動と同期して究極の体験を味わえる状態を表現しているものと考えられる」と説明されている。

ドゥーハンとは違ってロレンソはゾーンに入ることもあれば、そうでないこともある。だからこそ彼の成績は浮き沈みを繰り返しているのだし、だからこそ問題をなんとかするために彼は日に一度はマントラを唱えるのである。今年は去年と同様にゾーンに入るまでに数レースを費やすことになってしまった。

去年の彼は序盤の5戦で1回しか表彰台に上がれなかった。今年は3レースで表彰台を逃すという残念な結果に終わった後に見事な3連勝を飾っている。自分の中のスイッチが入ったかのようだ。先月のヘレスでスタートシグナルが消えて以降、誰にも抜かれていないのだ。トータル78周の間トップを走り続けているということである。

ロレンソにとってはトップを走ることこそが気持ちいいのだそうだ。そうでないライダーもいるが、ロレンソは誰もいないサーキットでこそ進化を発揮できるタイプなのである。自分より速く走ろうというライダーが左右にいることでより力が発揮されるタイプではないのだ。むしろそれは彼の禅的な平安には邪魔なだきえなのだ。「6番手とかで走ってるとだめなんですよ。スムーズに走れなくなるんです」と彼は去年語っている。

ロレンソの好調は心理面に由来するだけではないのはもちろんだ。マシンもかなり良くなっている。去年のヤマハはユーザーフレンドリーではあったがホンダほどいいマシンではなかった。今年のM1は乗りやすさはそのままに、より良いマシンとなっている。シームレスギアボックスがシフトダウンに対応したことも大きいだろう。ロレンソの乗り方に合っているのだ。彼のチームメイトにとってはそれほどの効果はなかったようだが。

ライディング的にはスムーズに乗れること、そして気持ちは平静であることがロレンソにとっては大事なのである。だからこそフルシームレスギアボックスによってもたらされたスムーズなコーナー進入が助けになっているのだし、ヴァレンティーノ・ロッシの得意とする部分、すなわちブレーキングでも追いつけるようになった一因なのだ。

ロレンソの才能はマルケスのそれとはずいぶん異なっている。彼の走りはスムーズで穏やかだ。そのため彼がマルケスより速く走っていてもとてもそうは見えないのである。これは鏡のようにスムーズだと称されたエディー・ローソンにも匹敵するだろう。そのときのローソンのライバルは対照的な走りのワイン・ガードナーだった。数年前ローソンは私にこう言ったことがある。「みんなに『おまえはずいぶん遅く見えるよ』って言われてたんですけど、まあそれは仕方ないとは思ってましたよ。でも僕が優勝しても同じこと言うなら負けた連中にはなんて言うんでしょうねえ」

マシンが仕上がって、ライダーもゾーンに入り完璧な状態で走っている一方でライバルは問題を抱えている。ロレンソは順風満帆だ。

ロッシについて言えば、土曜日をうまくまとめられない限り10回目のチャンピオンは遠いだろう。いつも彼は日曜日のヒーローなのだ。表彰台争いの集団にいる。しかしそれではチャンピオンにはなれないのだ。なんとかして日曜の45分間のすばらしい走りを土曜午後の1分か2分に持っていかない限り、いつまでもスターティンググリッドは後ろのままだろう。

ロッシが素晴らしい1ラップを決めるのに苦労しているのは今に始まったことではない。15分の一発勝負の予選方式が導入されてからはなおさら苦労している状態だ。彼は走りのスタイルを見事に変えてきているが、それでもこの点に関しては克服が難しいようだ。もちろんそこさえ克服できる可能性もあるのだが。

去年のいまごろ、私は好不調の並がライダーの自信に及ぼす影響についての記事を書いた。その時はロレンソがひどい不調に苦しみ、マルク・マルケスは絶好調だった。信じられないことだが二人は今、まったく逆の立場に立っている。ロレンソが自信を取り戻し波に乗っている一方で、マルケスはこれまでにないほど深い穴に落ち込んでいる。

ロレンソは自分がなぜ今ここにいるのかもわかっている。「何もかもがうまくいっているときはいいライディングができるし、安心して乗れるんです」と今年の初めに彼は私に語ってくれた。「何か問題があると緊張するし、それでさらにうまく乗れなくなるんですよね」

マルケスの不調の原因は彼が求めているマシンを作れないホンダにある。チャンピオンのマルケスをさらに速く走らせるためにHRCは何でもするだろう。去年からずっとホンダは誰にも似ていないマルケスのライディングスタイルにぴったり合ったエンジン、フレーム、電子制御等々を作ろうとしてきた。しかし出来上がったものはマルケスのスタイルに合っていないものになってしまったのだ。ヤマハとドゥカティがここまで仕上がってこなかったらそれでもホンダは勝てたかもしれない。

2015年シーズンが始まってからの6レース、最速のホンダライダーでもレースディスタンスでは去年の平均から1.6秒遅いという結果なのだが、ヤマハは去年と比較して11.06秒、ドゥカティにいたっては17.8秒も縮めているのだ。

レース用マシンの開発に終わりはない。だからこそ時には間違うこともある。ここ何年かはホンダの支配が続いており、今年もHRCが勝つのではないかと思われていた(2012年の途中でフロントタイヤの供給パターンが変わると言うことがなかったらホンダは4年連続でMotoGPタイトルを獲得していただろうことは忘れてはならない)。

マルケスがより速く、より自由に乗れるようになるかと思いきや、2015年型RC213Vは逆の結果をもたらすこととなった。コンパクトな割にアグレッシブなRCVも、そしてナンバー1ライダーであるマルケスも、ある意味ぎりぎりの綱渡りをしていたのだ。そして綱から落ちてしまったのが今シーズンなのである。問題は簡単には解決しそうもない。エンジンだけの問題でもフレームだけの問題でも電子制御だけの問題でもなく、それらすべてが組み合わさって複雑な問題を形作っているのだ。

ムジェロでのマルケスはコーバーでは、特に1コーナーでは大きくはらみ、結局それが転倒の原因となってしまった。残り6周というところで2コーナーではらんでしまったせいで3コーナーに正しいラインで進入できず、最終的にマシンを寝かしすぎてしまい、当然のように転んでしまったのである。

マルケスは他の誰より大きくフロントに荷重を掛ける。しかしエンジン、フレーム、電子制御のバランスのバランスの問題で、コーナー進入で過剰にフロント荷重がかかってしまうのである。特にリアのグリップがない状態でのフロント荷重にはかなりの問題があるようだ。そしてリア荷重がなくなると去年のようにきれいなドリフトに持ち込めず、マルケスですら制御でkないほどの突然スライドしてしまう。これは800cc時代初期のRCVと全く同じ状況だ。

今年の初め、マルケスが苦労していたのはコーナー脱出だったがHRCはこれを解決してみせた。今ごろ朝霞の本社では彼のホームGPとなるカタルニアに間に合うようにコーナー進入の問題を解決しようと夜を徹した作業が行われているだろう。チャンピオン獲得の希望を取り戻すには遅すぎたということになるかもしれない。去年の10連勝のようなとんでもないパフォーマンスをみせないといけないだろう。しかしマルケスのチャレンジを見られると思うと、それも楽しみではないか。
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ソフロロジーですが、英語版Wikipediaによると、1960年にスペインの神経精神医学者が、鬱やトラウマの治療のために生み出した、催眠療法や現象学(哲学の一種)や西洋的リラクゼーション法や自律トレーニング手法を取り入れた治療法だそうです。後にフランスでヨガやら禅やら何やらの東洋風味がふりかけられて今に至るという感じ。そのWikipediaの記事には全く学術論文への参照がなく、どうもたぶん信者によって書かれている様子なのを見ても、まあ遠巻きに眺めながら、友達や知り合いが「興味があるんだけど」って相談してきたら、「やめといた方がいいよ」って私なら答えるたぐいのものですね。

うーん、やっぱりそういうのが好きってことなのかー(-"-)。

あと「だからこそ彼は日に一度はマントラを唱えるのである」というのは「and why he has tried to fix this problem by saying Om at least once a day」の訳なんですがあってる?

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公式リリース>イタリア2015

ヤマハドゥカティ(英語)ホンダスズキアプリリア(英語)

マルケスはちょっと心折れ気味なコメントですが、あれだけのことがあっても今回のイタリアラウンドでは折れずに表彰台争いをするんだから、まだギブアップはしてないでしょうね。

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