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2015年MotoGPセパンテスト1回目まとめ:ホンダvsヤマハ 互角の戦い

マルケスが1分58秒台を出したりして、今年もホンダが圧倒的かと思いきや、結構ヤマハもがんばっているようです。MotoMatters.comより。
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誰のマシンが最速なのか?それはホンダなのか?それともヤマハに上を行かれているのか?セパンで行われた今年最初のMotoGPテストでその答えは出たのだろうか?月曜の段階で答えはわかったように思えた。しかし金曜には再び答えは闇の中だということが判明している。まだシーズン開幕までには時間があり、現段階でわかっているのは、今シーズンがすばらしい年になるだろうということだけだ。誰が一番速いかを決められないということは、レースが接戦になることを意味しているのである。

ヤマハとホンダの力関係はどう変わったのか?ヤマハはセパンに今すぐにでもレースに出られるマシンを持ち込んできた。もちろんテスト対象のパーツは山ほどあるが、ヤマハの哲学からすれば、テストパーツの効果は少ないはずだ。もちろんいい方向に影響することは間違いないが。マシンはもともと速かったが、さらに速さを増した。つまりヤマハは初日から速く、日々少しずつさらに速くなっていたのである。

一方のホンダはマルク・マルケス用に4種類、ダニ・ペドロサ用に3種類のマシンを持ち込んでいる。彼らレプソルの2人は初日はマシンの比較に徹していたようだ。水曜にはマシンを絞り込み、木曜にはそれを確認し、木金でさらに調整という段取りで進めていたのである。テストの最後には2015年型ホンダRC213Vはその強さをまざまざと見せつけた。問題は無かったわけではないが、それでもそのポテンシャルは驚異的だ。マルケスはこう言っている。「2014年レベルにはきてますね。この新型についてはまだやらなきゃならないことがいくつか残ってます。いちばん大事なのはフィーリングの改善ですね」

ホンダはつまり相当なアドバンテージを確保したということだろうか?コース初となる1分58秒台を叩き出したマルケスを見ると、その通りだとも思える。さらにペドロサは2番手タイムを出しており、アタックラップでの失敗があったせいで58秒代に届かなかっただけだと言っている。しかしペドロサで印象的だったのは最速タイムではなくレースシミュレーションだ。2分00秒台で10ラップ、2分01秒台で9ラップをこなしているが、このシミュレーションタイムはマルケスが去年10月のレースで出した優勝タイムを14秒も上回っているのだ。このときのマルケスは1周目に2分08秒台だったにもかかわらず、ラストラップは2分14秒台まで落としている。

もちろん10月と直接比べるわけにはいかない。サーキットのコンディションはどのライダーも最高だったと認めているのだ。3日間のテスト期間中、雨は降ることもなかったのだ。夕方のスコールもなし。28台のMotoGPマシンが走ることでコースはきれいでラバーグリップもあった。気温も10月より低かったし、路面温度は15℃も低かった。これらすべてが合わさって良いタイムが出しやすかったのだ。とは言えそれでもすごいタイムが出たと言えよう。ロッシは状況についてこう言っている。「今日はすごくいいコンディションでしたね。でも1分58秒8までいくとはね。まあ出したのがマルケスなら納得ですけどね」

これまでのところはホンダが優位なように見えるが、まだテストである。ロッシは言う。「ホンダも一発出しは相当良いタイムだし、序盤はいい感じですね。だから今日レースをやったらホンダが勝ったでしょう。でもうちもそれほど離されてはいませんよ」。セパンの2回目のテストでは今回見えてこなかったことがいろいろ見えてくるだろう。ホンダは2015年型RC213Vのリファインを行ってくるはずだ。コーナー脱出を改善し、同時にホイールスピンを抑えるというあたりだ。マルケスはこう言っている。「コーナー中盤の加速でちょっとタイムをロスしてるんです」。つまりはエンジンが相当アグレッシブだということだ。「エンジン特性を変えれば相当良くなるでしょうね」

しかしヤマハも次のセパンテストでは大ジャンプをすることになる。完全なシームレスギアボックスの導入だ。シフトアップだけでなくシフトダウンでもシームレスになるバージョンだ。これが2週間後のテストで初お目見えとなる予定である。何もなければロッシとロレンソは初めてこのギアボックスを試すことになるが、間違いなくブレーキングでの弱みを相当カバーしてくれることになるだろう。ロッシは言う。「特にブレーキングが良くなってます。データを見ると深く突っ込めるようになってますからね。でもまだ十分じゃないですよ」。新型ギアボックスはここを解決することになるだろう。これで大進歩を遂げることになればホンダとヤマハは再び同列に並ぶことになる。ことによったらヤマハが上に立つかもしれないのだ。

今日のロングランの結果だけを見るとやや誤解を招きそうである。ペドロサの走りは確かに印象的だった。ただいい時間にシミュレーションをやったという点も否めない。ロッシとロレンソも同様である。しかしロッシのロングランはパーツテストも兼ねていた。そしてマッピングとブレーキセッティングを変えるために2回ほどスローダウンしている。ヤマハはレースディスタンスで試したかったのだ。マルケスのレースシミュレーションはかなり遅い者だったが、ペドロサ、ロッシ、ロレンソは昼過ぎに走り出している。一方マルケスのシミュレーションは3時頃で、最も熱くなる時間だったのだ。路面には油分が浮き、全くグリップしない状態だった。

ドゥカティについては、かなりいいテストだったと言えよう。ドゥカティがドヴィツィオーゾとイアンノーネの二人のアンドレアのために持ち込んだのはGP14.3だ。現時点では最もGP15に近いマシンである。二人が試した新型フレームはレース本番仕様に近いディメンションで、エンジン特性はかなりスムーズになっている。未だにアンダーステアはあるものの(GP15で解決してほしい問題は?ときかれたドヴィツィオーゾは即座にこう答えている「コーナリングです!」)、次のセパンテストに導入する新型のためのテストは十分に行えたようだ。タイムもかなりいい。二人とも1分59秒台に入れているのだ。イアンノーネの最速ラップは1分59秒388で、トータルで3番手となっている。ヤマハワークスの二人を上回るタイムなのだ。

セパンの1回目のテストにデスモセディチGP15が登場しなかったのは残円だが、ジジ・ダリーニャのマネージング力を十分に見せつけることができたと言えよう。セパンテスト用のGP14.3に加えられた改良はわずかだが、それでもGP15の基本的ディメンジョンを試すことはできた。セパンテストの2回目では、ドヴィツィオーゾとイアンノーネは新型フレーム、エンジンのテストを行い、基本セッティングを探ることになっている。一方、ダニオ・ペトルッチはGP15用の電子制御のテストを刷る予定だ。電子制御セッティングは他のマシンにも適用できるので、ペトルッチが乗るのはGP14.1(2014年後半にクラッチローが乗ったマシン)だが、これはすぐにGP15に使われることになるはずだ。

テスト結果が良かったことでドゥカティのワークスライダーは楽観的な気持ちになっている。アンドレア・イアンノーネとしてはもっと早くGP15を手に入れたかったようだ。どれくらい?彼の言葉を聞いてみよう。「ものすっごくですよ。でも2014年の結果には満足していますし、2015年もいい感じで始められました」。一方、ドヴィツィオーゾはもう少し慎重である。「悲観はしてませんけど現時点でこれ以上何か言うのは意味がないですね」。新型マシンが走り出すまではまだわからないということだろう。

スズキにとってもすばらしいテスト結果だったろう。とは言え彼らの弱みがあらわになってしまってもいる。次のテストに向けての改善ポイントについてアレイシ・エスパルガロはこう叫んでいる。「もっとパワーを!」。チームメイトのルーキー、マーヴェリック・ヴィニャーレスも同意見だ。どちらもハンドリングは褒めている。コーナリングは素晴らしいとのことだ。しかしパワーが足りない。非公式のトップスピードを比べると、ホンダが325km/hだったのに対してスズキは315km/hしか出せていないのだ。これは乗り越えられない壁ではない。10月のレースでマルク・マルケスが出したトップスピードは平均で324km/hだったのに対してポル・エスパルガロが出したのは316kmだったのだ。とは言えスズキの予定とは違っている。

当初のスズキの計画ではセパンでパワフルなエンジンを導入するはずだった。しかしヴァレンシアでレース、テスト共に信頼性の問題が発生してしまった。スズキのエンジニアはその後の6週間、信頼性を取り戻すために時間を費やし、なんとかそこは解決できたおかげでセパンにはかなり丈夫なエンジンを持ち込むことができた。しかしおかげでパワー向上にかける時間がなくなってしまったのだ。問題の原因について問われたチームマネジャーのダヴィデ・ブリヴィオは口を濁している。複数のパーツの問題で、様々な要素が絡んでいるとしか教えてくれないのだ。問題が発生したのは去年の10月のテストが初めてだったそうだ。パワー向上の予定日雨手はブリヴィオは口をつぐんだままである。

マーヴェリック・ヴィニャーレスのパフォーマンスを見ると、パワー向上のスピードがが追いつかなさそうだ。ルーキーのヴィニャーレスはテストで素晴らしい結果を出している。神秘もしたし、ライディングスタイルも帰ってきていいる。そして速さはどんどん増している。トップとの差は初日から最終日にかけて0.9秒も縮まっているのだ。そして自身のタイムは2.2秒更新している。これを上回るのはロリス・バズだけだった。とは言えバズの初日のタイムはかなり遅かった。ヴィニャーレスは総合タイムで12番手に着けている。より経験の不快チームメイトのエスパルガロからはわずか0.5秒遅れだ。セパンテストで一番輝いた一人だと言えよう。イアンノーネもかなりタイムを上げてきたが、ヴィニャーレスにとってMotoGPマシンはまだ3回目のテストなのだ。

同じく来年からMotoGPに復帰するアプリリアの方はこれほど楽観的にはなれないだろう。新型ニューマチックバルブエンジンを華々しく持ち込んだものの、新たな問題が発生した模様だ。さらに悪いことにはアプリリアが2015年型として持ち込んだ新型フレームは使われないままピットに置き去りにされていた。ワークスライダーは二人ともこれを気に入らなかったのだ。ARTの2014年型フレームの方が良かったようである。さらにアルヴァロ・バウティスタはそれなりのタイムをだしたものの、スターライダーのマルコ・メランドリは最下位に沈んでしまっている。ファクトリークラスだけではなくオープンクラスにも遅れを取っている上、ルーキーやテストライダーにも上を行かれてしまったのだ。4.7秒というマルケスとの差はやや絶望的だ。それよりなによりチームメイトからも1.7秒遅れというのはどうしたものだろう。

なぜこんなことになってしまったのか?メランドリはそもそもMotoGPに来る気などなかったのだ。アプリリアがワールドスーパーバイクを撤退してMotoGPに集中することにしたおかげで選択肢がなくなってしまったのである。アプリリアとの契約が残っているため別チームにいくのも難しかった。そもそもアプリリアの撤退発表時期が遅かったというのもある。メランドリ自身もMotoGPに来たくなかったと言っている。セパンのタイムを見るといつまで彼がMotoGPにいるのかははなはだ疑問である。

レプソル・ホンダの二人がトップ2になった一方、オープンクラスのホンダのタイムはそれほどいいものではなかった。クラッチローがオープンクラスホンダでは最速だったが、11番手に沈んでいる。クラッチローはスコット・レディングと同様にホンダのアグレッシブなエンジン特性に苦しんでいるのだ。クラッチローもレディングも口をそろえて言っているのは、コーナー進入ではすばらしいもののエンジン特性がアグレッシブなためにコーナー立ち上がりでホイールスピンが起きるということだ。これはワークスライダーも苦労していたところである。しかし経験とワークスのバックアップ体制のおかげで、エンジンを手なずけることができているのだ。

新型のオープンホンダは馬力の問題はなくなったようだが、それがタイムの改善につながったのかどうかは疑問である。ニッキー・ヘイデンの手首はかなり良くなっているようだが、チャタリングに苦労している上、エンジンを手なずけるための電子制御セッティングもうまくいっていない。乗りこなすのが難しいことはタイムを見れば明らかだ。馬力不足を指摘され続けたRCV1000Rでヘイデンが出したタイムはトップから2.0秒遅れだったのに、パワフルなRC213Vでは2.6秒遅れになってしまっているのだ。マシンはパワフルになってファクトリークラスにも負けないくらいになっているのに、タイムは出せないのである。

スコット・レディングは他の問題にも悩まされていた。これはプラマック・ドゥカティに乗るダニオ・ペトルッチをも悩ませていることだが、これまでパワーのないマシンに慣れていたので、ライディングスタイルを変える必要に迫られているのだ。RCV1000Rは乗りやすかったとレディングは言っている。スロットルを開けるとリアから曲がるスタイルだったのだ。同じことをRC213Vでやるとホイールスピンが起こりタイヤが摩耗してしまうだけでちっとも曲がらないのだそうだ。

ペトルッチも同じ問題を抱えていると言う。パワーのないCRTマシンに乗っていたころにはブレーキを早めにかけてコーナリングスピードを稼ごうとしていた。これは脱出加速を稼ぐためである。しかしドゥカティではブレーキングを遅らせてマシンを曲げたら、すぐにマシンを起こして、それからでないとスロットルが開けられないのだそうだ。これまでとは全く違うやり方を求められており、今まで通りではスロットルの開け始めが早すぎてホイールスピンを起こしてしまうとのことである。スロットルを開けるのを我慢しなければならないということだ。マシンを起こしてタイヤの太い部分が接地するまではスロットルを開けられないのである。

ホンダやドゥカティやヤマハや、それにオープンクラスのライダーも昔から言っていることだが、一生懸命やればやるほど遅くなるのは皮肉なことだ。リラックスして冷静になればマシンは上手く反応して早く走れるのである。MotoGPライダーに求められるのは全身全霊をかけて走る野性味ではなく、仏教の僧侶のように冷静に観察し、じっくり考えて動くことなのだ。ことによったらマルケスやペドロサは、つなぎの下にレプソルオレンジの袈裟を着ているのかもしれない。
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たぶん現地に行かないでここまでの分析をして記事にできるってのがプロのわざです。
<訂正!>本人、現地入りしていました。 @hige_penguin さん、御指摘ありがとうございます!!

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