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エルヴェ・ポンシャラルへのインタビュー

MotoGP界の名伯楽、テック3のオーナーであるエルヴェ・ポンシャラルへのロングインタビューです。CRASH.netより。チームオーナーの経験に基づくお金にまつわる諸々が興味深いです。
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エルヴェ・ポンシャラルへの独占インタビューのパート1。ポンシャラルはMotoGPとMoto2チーム、テック3のオーナーであり、チームの会議体であるIRTA(訳注:国際レーシングチーム協会)の議長でもある。

パート1ではMotoGPについて、パート2ではMoto2について語ってくれた。

CRASH.net:テック3本社の様子はいかがですか?

ポンシャラル:年間を通じて今が一番忙しい時期なんですよ。サーキットでのテストもありますし、ピットとかパドックの設営に関することとか、チームウェアとか契約とかいろいろありますからね。それにセパンにもっていく貨物がらみも忙しさの要因です。20日にはワークショップを出なきゃならないし、日本とのやりとりもありますし。Moto2に関して言うと、まずマシンを作らなきゃならないんですけど、サプライヤからの部品待ちもあるんですよ。そんなわけですごく忙しいんです。


CRASH.net:例年よりも忙しいんですか?それとも毎年こんな感じです?

ポンシャラル:冬はいつも忙しいですね。チームでレースを始めてからそろそろ30シーズンになりますから、何をしなきゃならないかはわかってるんです。でも予想できないことはいつも起こるし、それに対応しなきゃならないですからね。
 正直言うとチームのみんなはMotoGPとMoto2テストのスタートを待ち焦がれていますよ。今は忙しいですけど、退屈でもあるんです。自分たちの仕事の結果をサーキットで見ることができない時期ですからね。


CRASH.net:昨シーズンを終わってチームの雰囲気はいかがですか?目標は達成できたとお考えですか?

ポンシャラル:2013年と比べたら、ってリザルトだけの話ですけど、2014年はあまりいい年ではなかったですね。2013年はカル(クラッチロー)が4回の表彰台と7回のフロントローを獲得してますから。2014年はフロントローが2回だけでした。ブラッド(ブラッドリー・スミス)がカタールで、ポル(エスパルガロ)がフランスで1回ずつですね。表彰台はブラッドがオーストラリアで1回獲得しただけですし。
 だから結果はそれほどいいものではなかった。でもご存じの通りレギュレーションが大幅に変わりましたからね。オープンクラスの燃料制限とタイヤアロケーションが変わったということです。
 ワークスの4人を除けば、その他のライダーの実力は伯仲していて、しかもオープンクラスには優位性がある。特にソフトタイヤが効いているんですけど、それで予選で苦労するようになったんです。しかもレースに対する予選の重要性はどんどん増している。序盤の5〜6周がとても大事になってるんですよ。
 ブラッドリーはもうルーキーとは言えないですけど、うちのライダーは2人とも若くて、まだまだ学ばなければいけない。そういう意味ではプラン通りだし、予想通りの結果とも言えますね。満足しているとは言えませんし、こんな順位じゃないとも思ってますし、こういう厳しい年もある。うちのライダーは2人ともかなりいい戦いをしました。ちょっとやりすぎることもあったし、何回かはクラッシュもしてますけどね。限界まで攻めすぎたってことですけど、それでいろいろ学んでくれたと思います。
 それで2人をキープすることにしたんです。ポルはどっちにしろ2年契約でしたけど、ブラッドともあと1年契約することにしました。まだ彼の本当の実力を発揮しているわけじゃないと信じているからです。そう言う意味では2014年には満足していると言ってもいいかもしれませんね。でなきゃ2人とも契約を続けるなんてことはしないですから。2015年に何ができるか楽しみにしていますよ。


CRASH.net:ヤマハレーシングのマネージングディレクターであるリン・ジャーヴィスもドゥカティのオープンクラス待遇がサテライトチームの苦労の種になっていると言っています。2015年に新型ドゥカティがさらに強くなったらどうなるでしょう?

ポンシャラル:それは相当な問題ですね。でもワークスヤマハが使ってるのはうちとほぼ同スペックのマシンで、ロッシとロレンソはマルケスとペドロサとトップ争いができている。技術規定について要望は出したいと思ってますけど、まあ完璧にワークスと同じマシンというわけじゃないんですよね。
 それとこのルールで走るのはあと1年で、2016年には全員が同じ燃料制限と同じタイヤチョイスと同じ電子制御で走ることになる。そうすれば何もかもまともになるでしょう。
 2014年と2015年にクラスが実質的に混在することを認めたのは、2016年までは同じ電子制御で走ることをメーカーが拒否したからなんです。新規参戦メーカーや苦労しているメーカーにトップ争いをするチャンスを与えるという意味もありました。
 2014年のドゥカティがほぼ復活できてみんな喜んでいるでしょうね。ドヴィ(アンドレア・ドヴィツィオーゾ)の顔にも笑顔が戻ったし、カルやアンドレア(イアンノーネ)やヨニー(エルナンデス)も笑顔を見せることがあった。それはいいことですよ。復帰するスズキとアプリリアにとってもかなりの助けになるはずです。
 去年はオープンクラスで強かったのは1メーカーだけだった。2015年にはヤマハのオープンマシンはうちのマシンに相当近いものになるでしょうし、レースという面からはうちに危機が迫っていると言うことですね。でもホンダもオープンクラスへのスタンスを変えてヤマハと同じようなことをやろうとしている。
 ですから戦闘力のあるましが増えることになりますね。オープンクラスのホンダとヤマハは相当強いでしょうし、ドゥカティももっと強くなるでしょう。それにフルワークスのマシンが8台になる。まだ時間が必要だろうアプリリアは除いてね。
 うちにとっては厳しい話ですけど、フランスでも話した通り、「バトルがなければファンもつかない」ってことなんです。バトル満載の楽しい年になるといいですね!ファンやメディアにとってはエキサイティングな年になるでしょう。レースという面ではMoto2やMoto3に近い状況になるわけですからね。


CRASH.net:2016年の話が出ましたけど、統一ルールになるということはサテライトチームにどんな影響がありそうですか?

ポンシャラル:私としては望み通りですね。みんなそういう方向になるようにもってきたわけですし。「みんな」ってのはチームとドルナとFIMということです。メーカーにとっては電子制御の研究開発が止まるのは理解できないでしょうけどね。そこが得意分野なわけですから。
 タイヤと電子制御を統一する必要性についてはメーカーにも理解してもらうように努めてきました。今みたいなやり方を続けて費用がどんどんかさむのを放置するわけにはいかないんです。ワークスでさえ耐えられないところが出始めている。
 ですから最終的にこうなってすごく喜んでいます。サテライトチームもこれまでになかったほどワークスに近づくことができるわけですからね。
 2016年からはグリッドのほぼ全マシンが、理論的にはですけど勝てるパッケージになるわけです。Moto2とかMoto3みたいな感じですね。昔みたいにサテライトチームがMotoGPで勝てるようになる可能性もあるんです。ことによったらチャンピオンだって獲れるかもしれませんよね。
 でも一番大事なのはライダーだってことを忘れてはいけません。それが全てなんです。
 ワークスとサテライトのマシンはかなり近づいてきています。ヤマハについては本当にそうですし、他のメーカーもそうでしょう。例えば2013年はカルが、まあ彼は本当に正直者ですけど、良く言っていたのは「僕のマシンでロレンソが走っても結果は変わらないだろうね」ってことです。
 メディアやファンや、時にはライダーまでもがサスや電子制御や技術スタッフに問題があるって口にする気持ちもわかりますよ。だって自分より誰かが速いというのは厳しい事実ですからね。
 ですから2016年からはサテライトもマシンとタイヤと電子制御についてはほぼワークスと同じ仕様になるんです。レースが接戦になるだけじゃなくて、スポンサーがトップライダーを連れてくるだけの資金をサテライトに投じてくれることを夢見ているんですよ。内だけじゃなく他のチームにもね。
 過去にもサテライトマシンのトップライダーがワークスを負かした例はいくらでもあります。


CRASH.net:2016年の最大の変更の一つに統一タイヤがミシュランになることがありますけど、フランスのチームとして彼らが戻ってくることはうれしいものですか?

ポンシャラル:ミシュランはモータースポーツのビッグネームですよね。2輪でも4輪でもそうです。フランスのメーカーというのもありますけど、それはあんまり関係ないですね。もちろんフランスの大企業がGPに投資してくれるのはうれしいですよ。他のフランス企業も続いてくれるかもしれませんからね。でもまだそれは実現していません。
 ミシュランがMotoGPに戻って来たがっていたというのが大事なんです。トップレベルのノウハウも提供してくれるでしょうし、それでみんなの戦闘力が上がるということが大事なんですね。
 統一タイヤルールの下では、各メーカーのマシンとライディングのレベルが一定以上になることが大切なんですよ。今年はタイヤについては余り議論になりませんでした。話題になったのはオープンクラスのソフトタイヤくらいですかね。でもそれ以外についてはみんな同じタイヤで、タイヤの性能を発揮するのは自分たちの力に任されていたんです。
 ミシュランについては初テストの段階からメーカーの反応はいいですし、ラップタイムもかなりいい。だから面白いことになると思いますね。2016年までには何回かテストをすることになっています。まずはセパンの2回目で、全車が新型ミシュランを初めて試す機会になります。
 タイヤメーカーはそれぞれ違ったタイヤの作り方をしています。構造もコンパウンドも違う。マシンやライディングスタイルをタイヤの特性に合わせて変えていかなければいけないということですね。みんながどう対応するか見物だと思いますよ。


CRASH.net:セパンテストでは2015年型マシンを試すことになるわけですが、スペック的にはロッシとロレンソが昨シーズン使っていたものになるんですか?

ポンシャラル:正確に言うのは難しいんですよ。ヴァレとホルヘのマシンも違うし、ホンダもダニとマルクでは違う。どちらも全く同じマシンを使っているというわけじゃないんです。フレームから違うことだってあるんです。ライダーのスタイルによってフィットしたりフィットしなかったりということがありますからね。電子制御とサスは同じものですけども。
 ヤマハからはかなりのサポートを受けています。それは過去のリザルトからもわかりますよね。ヴァレンシアのレース後テストでは2015年型パーツも供給してもらいました。ヴァレとホルヘが最終戦で使ったものですね。だから2014年型ワークスマシンの最終形ということになります。
 セパンの1回目のテストではこれを走らせることになります。でもそのあとは開発状況次第ですね。あとはエンジン開発凍結ルールの範囲で何ができるか次第です。それとワークスチームが何をしたいかにもよりますね。ワークスチームがテック3のパーツをほしがることがあるんですよ。6か月とか1年前のパーツでもね。ライダーが苦労しているときに、何か別のことを試したくなることがあるんですよ。
 古澤政生さん(元ヤマハのMotoGPのトップ)が良く言ってましたけど、ヤマハには4台のワークスマシンがある。ワークス2台、サテライト2台ではないんです。もちろん最先端のスペックと最新パーツはヴァレとホルヘが優先ですよ。でもスペアパーツやらなにやらを膨大に持ち込んでくれるんです。その中からライダーの要求やライディングスタイルに合ったものを探すんですよ。
 ですからうちのマシンがどういうものかを正確に言うのは難しいですね。レースごとというかプラクティスごとに組み合わせが変わっていくんですから。
 パートナーへのごますりと思われたくないんですけど、うちのマシンは戦闘力のあるパッケージですし、ライダー2人とも速く走れるだけのものを作っています。それをどう速く走らせるかをライダーは学ばなければならないんです。
 ワークスと全く同じかというとノーですけど、互角に走れるくらい速いかといえばイエス、なんです。


CRASH.net:今年はフルシームレス・ギアボックスになるんですか?(原注:去年のテック3のマシンは2速以上のシフトアップのみがシームレス。ロッシとロレンソは1速からシフトアップはシームレスで、2015年にはシフトダウンにも対応したものを要望している)

ポンシャラル:それについてはあまり詳細は語れないんです。いいギアボックスを入手できていますよ。ギアボックスのせいで後れをとっているとは全く思っていません。もちろんヤマハはギアボックスも含めてマシンを全力で開発しています。テストになってみてからですね。
 2014年の1回目のセパンテストまではブラッドもポルもシームレスギアボックスをすごくほしがってました。セパンの2回目のテストで入手して、確かにすごい進歩で満足できました。今はそのギアボックスを使っているんですけど、ほんとうにいいものなんですよ。文句は全然ないです。
 最終的にはさらにいいものになるんですけど、まずはメーカーといっしょに何ができるか考えなければならない。いまの装備でもトップ争いは充分できると考えていますよ。


CRASH.net:トップ争いという意味では、来年ヤマハのロッシとロレンソはマルケスとホンダの組み合わせと戦うことができると思いますか?それとも3年目になってマルケスはさらに先を行ってしまうのでしょうか?

ポンシャラル:間違いなく去年のマルケスはとんでもなく強かったですし、その前の年も強かった。2013年お方が2014年よりすごかったという人もいますね。うーん、私はそうは思って亡くて、序盤の10レースを全焼するなんてもの凄いことですよね。
 ダリル・ビーティーへのCRASH.netのインタビューも読みましたけど、私は彼の意見に賛成ですね。ミック(ドゥーハン)は何年もGPを支配して、彼こそが倒すべきライダーだった。その後ヴァレンティーノがやって来て、レース界に君臨した。彼はいまでもすごいけど、当時はものすごかった。ホンダでもヤマハでもね。そしてケイシーが来て、彼こそが最高のライダーになった。早くに引退してしまって、そのあとがマルクです。
 マルクが新時代の最高のライダーです。ミックやヴァレにも比すことができる。ヴァレやホルヘやダニもすごいけど、2013年、2014年のマルクはとんでもなかったと思います。マルクがトップ4の中で最年少というのも凄いことですよね。MotoGPでは一番経験がないんです。だからもっともっとすごくなる可能性があるんですよ。
 今年はホルヘとヴァレがもっとマルクを苦しめられるといいですね。初戦のカタールが鍵となるでしょう。マレーシアテストでは時間でコンディションが変わるのでラップタイムはあてにならないんです。
 去年のカタールでのヴァレとマルクのバトルはすごかったですね。あれでチャンピオン争いがどうなるのかよくわかった。マルクにとってあそこでの勝利が重要だったんです。最初から自分お実力を見せつけることができた。ヴァレもそれに対抗することを示した。一方のホルヘは完全に蚊帳の外でした。だからこそ今年のカタールも注目すべきですね。
 コース上でのマルクを見ればわかりますけど、彼は野獣で、しかもマシンなんです。昔のヴァレみたいにマルクは最高のライダーになっているんです。2015年にヤマハがチャンピオンになるのを見たいと思ってますし、それは可能でしょう。ヴァレもホルヘもチャンスはある。でも賭けるならマルクですね。彼を負かすのは相当たいへんでしょう。
 でも一方で昨シーズン後半のことも忘れてはいけません。ヤマハはすごく強かった。現時点では最高にバランスのとれたパッケージだと思います。どれが最高かというは決してわからないですけど、2014年後半のヤマハはすごく良かったですし、2015年も相当強いでしょう。
 ホルヘとヴァレ次第ですけど、2人にはマルクを苦しめて欲しいですね。マルクだって無敵じゃない。彼のやってことは凄いことですけど、ヴァレも10回目のタイトルに向けてたぶん最後のチャンスになるでしょうし、ホルヘ将来の残留に向けて幹部にアピールしなければならない。ポルは契約2年目で、彼もトップ争いができることを示さなきゃならないし、ブラッドリーについても同じですね。
 ヴァレがどれほど改善してきたかも驚きです。2004年と2014年のライディングスタイルを写真で比べてみるとわかりますけど、全然違うんですよ。マルクが全員のレベルを上げているんです。みんながマルクにどう対抗するか見物ですね。


CRASH.net:この冬、ポルとホルヘと一緒にインドネシアに行っていますが、MotoGPファンはいかがでしたか?

ポンシャラル:びっくりはしめせんでしたよ。MotoGP人気がどれくらいすごいか聞かされていましたからね。心づもりはしていたんです。でも予想以上でした。ヤマハカップレースに60,000人以上の人が集まったんでスyお!信じられないでしょう。グランプリの決勝日みたいだったんです。
 それにあんなにたくさんの人がバイクでレースを観に来るのも見たことがないですね。アッセンと、それからルマンやシルバーストンも伝統的にたくさんのファンがバイクで来ますけど、バスや車も多い。インドネシアでは70%くらいがバイクで来てるんじゃないでしょうか。サーキットまでバイクが何キロも連なってるんです。ほとんどが小さいバイクなんですけど、みんなレプソルカラーとかモビスターカラーとかモンスター・テック3MotoGPカラーとかなんですよ。
 ポルとホルヘが一緒だったんですけど、MotoGPライダーがロックスターみたいな扱いを受けるって記事がありましたよね。でも60年代のローリングストーンズとかビートルズみたいな感じなんですよ!神様扱いですよ!あんなの他の場所ではないですね。ポルも信じられなかったみたいです。ものすごい情熱で、でもちゃんとこちらを尊敬してくれて、知識も深いんです。
 ファンと話すと、彼らが本当に物知りなことがわかります。例えばポルはMotoGPライダーでいちばん遊泳というわけじゃないですよね。でもファンクラブの人たちがいて、彼のことならなんでも知ってるんです。2014年に何が起こったか、私より知ってるんですよ!
 MotoGPへの熱狂ぶりがすごいんですよ。レースについてもマシンについてもすごく情熱がある。正直、行くのは気が進まなかったんですよ。シーズンが終わったばかりでまた長旅か、って思ったんで。でもすごく感動しました。ファンの様子が感動的だったんです。
 MotoGPはマレーシアでかなりの地位になってますけど、インドネシアはその1万倍すごいんですよ。だからヤマハとサクラに招待してもらえてよかったですね。信じられない体験だったしうれしいショックでした。
 その夜ヤマハ・インドネシアの社長とディナーをご一緒したんですけど、彼によれば需要に生産が追いつかないって言ってました。工場も増やしているにもかかわらずですよ。インドネシアはバイク業界とレース業界にとってすごく大事な場所ですね。


CRASH.net:MotoGPの生中継をどうやって見るかという話ですけど、有料チャンネルと無料チャンネルについてはどういう立場ですか?

ポンシャラル:リン(ジャーヴィス)、パオロ(チアバッティ)、リヴィオ(スッポ)がヴァレンシアで話したことに賛成ですね。間違いなく世界は変わっているんです。ツール・ド・フランスやウィンブルドンやサッカーのワールドカップやローランギャロスやオリンピックとは違うんです。こうしたイベントは無料でやって、みんなが見る。でもほとんどのスポーツは有料チャンネルに移行することになるでしょう。
 なぜかって?無料チャンネルはもっと安上がりに作りたいんですよ。できれば無料でね。それでできるだけたくさんの視聴者を集めたい。通常放送というのは、まあ私が悲しかろうがハッピーだろうが、そういうもので、世の中はそういう方向に動いているんです。BBCやTF1やRAI(訳注:イギリス、フランス、イタリアの国営放送)がMotoGPにお金を払いたくないって言っても、それは私のせいじゃない。
 レーシングチームを所有するのは私の人生であり、情熱なんです。でもそのためにはスポンサーやドルナのような興行主が必要なです。テレビの放映権料はそのためにも重要なんですよ。それがなければチームは運営できないし、だから興行主も放映権料を得る機会を逃すわけにはいかないんです。もちろん興行主も会社なんで財政的には健全でなければならない。そこに問題はないんです。しかもドルナはいい放映をするためのテレビ放映技術の開発にかなりの額を投資しているし、安全面にも投資しているんですよ。
 これは一例に過ぎませんし、全部でいくらになるのかは全然わかりませんが、もしドルナに対してBBCが2しか出そうとしない一方でBTスポーツが20出すと言ったらどうします?ほとんどただみたいな値段を受け入れますか?無料チャンネルを非難するつもりはないですよ。それが彼らのビジネスモデルなんですから。
 フランスのテレビ関係者と話したんですけど、彼らが言ってました。「もし20年前のアメリカの連ドラなら無料で放映権が手に入れられて、それでも何百万人かは見るんですよ。でもスポーツだとお金はかかるのに100万人しか見てくれない。そしたらどっちを選びます?」ってね。通常の無料チャンネルというのはお金を生み出す機械で、利益のために存在してるんです。別に彼らを非難しようとは思いませんよ。それが彼らのやり方なんですから。
 もしうちのスポンサーが「昔は3百万人が見てたのに今は有料チャンネルで100万人だって?」って言ったらですか?そんなことは言われたことはないですよ。一度もね。だって有料チャンネルでは視聴者数は減ってるけど、放映時間は延びてるんですからね。無料チャンネルだとレッドシグナルからチェッカーフラッグまでですけど、有料チャンネルなら週末を通してプラクティスからレース前イベントからエース後イベントまで見られるんですよ。
 あと5時間くらいは議論できるネタですね。もちろんチームやドルナが無料放送を嫌ってるということじゃないんです。無料なら1千万人が見てくれますからね。それはすごいことですよ。無料放送の方が僕らを嫌ってるんです。彼らは放映権料を払いたくないんですよ。
 要するに同じ商品に対して3倍のお金を払ってくれる人がいたらどうするかってことなんです。カルを手元に置いておけなかったときと同じ状況ですよ。あの時もドゥカティの提示金額なんてとても払えなかったんです。
 MotoGPだけの問題ではないですね。F1も有料チャンネルで、モータースポーツの最高峰と言われている。そして今はもっと力を持っている。無料放送をやめて有料放送に移行するというのは、ドルナが決めたことじゃないんです。テレビのスポーツ放映はそうなっていくんですよ。


CRASH.net:ドルナからの支援はチームにとってかなり重要なんですか?

ポンシャラル:チームにとっては生命線ですね。チームを支援してくれと言いながら、同時にお金を稼ぐ機会をみすみす逃すようには言えないでしょ?だから視聴者が100万より500万の方がそりゃあいいですよ。全体を俯瞰して議論しないといけないってことですね。
 インターネットや新聞で有料チャンネルに払うお金がないってコメントを見ることがあります。確かにヨーロッパにはお金に困っている人たちはいますけど、MotoGPを見るにはタバコ1日2箱分もいらないんですよね。
 MotoGPがそんなに大好きなら、有料チャンネルのカバーしてくれる範囲を考慮したら、それがGPのあり方だってわかってくれるんじゃないでしょうか。
 確かに有料チャンネルになったせいで逃した視聴者というのはいるんです。でも、たまたまチャンネルを変えたらやってたから見てるという人もいたんです。テレビの前で日曜午後の昼寝をしてるのかもしれない。だから視聴率というのはあてにはならないんですよ。


CRASH.net:チームの予算の内、どれくらいがドルナからの支援なんですか?スポンサーマネーの割合はここ最近どういう割合なんでしょう?

ポンシャラル:チームによって違いエーエムすね。タバコマネーの時代は終わったことだけは確かですね。あの頃はドルナからの支援は必要なかったんです。スポンサーフィーでコストを100%カバーできましたからね。
 コストは安定させようと努力しています。新たなパートナーも探しています。通信会社とかエナジードリンク会社とかですね。でも私の知る限りどこもタバコ会社ほどは出してくれない。
 いつも言っているんですけど、タバコ会社のせいでインフレが起こって、当時はみんながその恩恵にあずかった。私もその一人です。でもおかげでなにもかもが高騰して、そこから値段を下げていくのはとてもたいへんなことなんです。
 それで少しずつコストを下げてきてはいるんですけど、コストを抑えつつ安定させていくことで気狂いじみたインフレを方向転換させようというのがせいぜいです。でもどんなにいいマーケティング部門があってもコストの100%をカバーするのはたいへんですね。
 だからこそ三者が協力し合わなければならないんです。メーカーはリース車両にとんでもない値段をつけてはいけないし、レース主催者はレースをうまく売りたいと思ったらいい役者が必要だということを理解しなければいけない。そしてチームはマーケティングの努力をしなければいけないし、予算については公正でガラス張りでなければいけないということです。
 今状況は凄く良くなっていて、メーカーと主催者の目標が一致しているし、将来展望も一致している。おかげでチームはやっていけるし、これからも大丈夫だと思います。
 またF1の話になりますが、F1は世界最大のモータースポーツで自動車メーカーの巨人たちが参戦している。でもGP以上に財政的には苦労しています。サテライトのF1チームの中には破産するところもありますしね。
 幸いなことにGPではプラマックやテック3、LCR、グレジーニといったチームが終盤のフライアウェイラウンドに参加できないなんてことは言わないですよね。でも去年はF1でそれが起こった。つまりGPではメーカーも主催者もチームもFIMもうまく協働してお互いのニーズを理解しているということなんです。
 だからMotoGPは健全なんだと思いますし、将来も楽観して良いでしょう。だからといって夢の世界に生きているわけではないですけど、2016年からのルール改正や、Moto2、Moto3の今を見てみれば、合理的なコストの範囲内でいいショウを見せることができるということなんです。みんなこれに参加できてハッピーですし、メーカーも戻ってきてますしね。
 金儲けのためにやってるとか保守的だとか誤解しないでくださいね。私は自分で決断力はあると思ってますし、言いたいことがあれば迷わず言いますから。自分がやっていることを愛していて、レースを信じているんです。でもいつもはファンみたいに行動しちゃうんですよ。レースを見に来てくれる人たちと同じなんです。だからファンの気持ちもわかるし、ファンと話すのは楽しいですね。ファンがテレビ放映についてどう思ってるかもわかってます。でもグリッドがいいマシンとライダーで埋まって、良いレースといいバトルを見てもらうにはこれしかないってこともわかってもらいたいと思ってます。
 私たちが素晴らしいスポーツをみんなに見てもらうためにやろうとしていることを是非理解してほしいですね。


CRASH.net:ありがとうエルベ。

ポンシャラル:どういたしまして。
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苦労している人ならではのお言葉ですね。

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