« スタッフを入れ替えたことで来年のペドロサは強くなるだろう、と中本さん | トップページ | シルバーストンが2014年のどん底だった、とクラッチロー »

MotoGPルール変更:燃料制限は2016年から22L。SCAT3脳震盪テスト導入等々

他のサイトはみんな燃料制限変更についてだけ書いてますが、さすがのMotoMatters.com。ちゃんとライダーの安全性向上についてのルール変更も網羅しています。というわけで訳出。ちなみにSCAT3(Sport Concussion Assessment Tool 3:スポーツにおける脳震盪判断ツール 第3版)の概要はこちら(日本語PDF)にざっと紹介されています。前バージョンのSCAT2はこちら(PDF)に和訳がありますのでバイクに乗る方は是非ご参照ください。英語が大丈夫ならオリジナルがこちらに。
============
グランプリコミッションの会合が今週火曜にマドリッドで開催された。そこでGPの3クラスについて多くの細かなルール変更が行われたが、これらに加えて燃料制限が2016年から22Lになるということと、ライダーがクラッシュした際に脳震盪の判断ツールであるSCAT3が導入されるという2点の大きな変更も行われた。しかし今回の会合で最も注目すべきは何が決められたかではなく、何が決められなかったかであろう。

さまざまな小変更の中にも言及すべきものがいくつかある。ひとつはエンジン使用台数制限を超えてしまったライダーに対するスタート時のタイムペナルティの時間が短くなったということだ。2015年からは台数制限を超えたエンジンを使うライダーはピットレーンでグリーンライトが点いてから5秒後にスタートできることになった(現行は10秒後)。ちなみにグリーンライトが点くのは、通常のスタートをしたライダーが全員ピットレーン出口を通過した時点である。実際にはそれほどの影響はないだろうが、最後尾のライダーには近づけるだろうし、うまくいけば1ポイントか2ポイントは稼げるようになるかもしれない。

Moto2ではタイヤ空気圧センサーが義務づけられることになった。これは空気圧が供給側のタイヤメーカーが指定した範囲内に収めるようにするためのものだ。リアのエッジグリップを増してタイヤのフィーリングを良くするためにリアタイヤの空気圧を危険が生じるほど低くしているチームがあったことから、去年から空気圧の規定が導入されたのだが、これに実効性をもたせようと今回からセンター導入も義務づけられたというわけだ。要するに、わからないからということで実際にタイヤ空気圧規定を無視していたチームがあったということでもある。

MotoGPではブレーキシステム一式の価格上限が導入された。ドライレース用セッション一式で7万ユーロ(邦貨換算1千万円)、またはキャリパー別で6万ユーロ(880万円)というのがその価格である。残念なことにこのルールには抜け穴がある。ドライコンディションの価格しか設定していない上に、キャリパー抜きでオーダーするということもできるのだ。11月に発表されたルールではではブレーキコンポーネントはホモロゲーションが必要で価格管理が導入されるということになっていたが、この規定が現時点でも生きているのかどうかは定かではない。最終的には2015年のルールが発表された段階でわかることになるだろう。

今回の決定で最も重要なのはSCAT3脳震盪検査の導入と2016年からの22Lへの燃料制限変更である。脳震盪の公式検査が導入されたのはライダーの安全性のみならず医療面の均てん化という意味でも重要だろう。ライダーからはレース出場可否の判断がサーキットごとに異なるメディカルオフィサー(医療担当管理者)によってかなりばらつきがあるという問題が指摘されている。とんでもなく緩い医師もいれば、すごく厳しい医師もいるというのだ。中でも脳震盪はバイクレースでは難しい問題となっている。脳震盪を見逃したことでレース出場が許されることがあったら、かなり深刻な問題となるし、場合によってはそのライダー本人のみならず、レースで近くを走るライダーにまで命の危険が及ぶからだ。SCAT検査はそれを防止するための第一歩である。もちろん完璧ではないとしてもだ。今回の規定変更では脳震盪の有無を判断するための基準値の設定については何も決められてない。これについてはシーズン前に個々のライダーに対してSCATテストに対する通常時の反応についての質問を行ってからになるようだ(訳注:SCATテストでは「今は何月?」「今日は何日?」「これからいくつかの単語を言うので、できる限りそれを思い出して下さい?」とかいろんな質問をすることになりますので、それに対する通常の反応を見てから脳震盪の有無の判断基準を作るということです)。とは言え基準値は特に設定する必要もないだろう。SCAT3の目的は走るべきでないライダーをみつけることであり、走るのを禁じられたライダーが復帰できるかどうかを判断するものではないからだ。

2016年からの22L燃料制限導入により、MotoGPは再び単一クラスに戻ることになる。同時に全マシンが同じ電子制御システムを使うこととなっている。オープンクラストドゥカティはコースによって21L〜23Lで走っている。ホンダは燃料制限を厳しくしようとしたが、他のメーカーが反対したのである。統一電子制御システムでは22Lが妥当なところだろう。

この燃料制限に関する合意より重要なのは、合意されなかった部分である。MotoGPにおけるライダー1人あたりのエンジン台数制限と最低重量については決定が2月まで先延ばしされることとなった。ドルナとIRTAはこんな風に先延ばしされることを相当怖れいていた。決定が先になればなるほど来シーズンに向けての準備期間が少なくなるからだ。それをいいことにルールは替えずにこのまま年間5基のエンジンでいこうと主張するメーカーがでてくる可能性もある。そうなれば既存のメーカーにとってはコスト削減になるが、MotoGPに新たに参戦するメーカーが戦闘力のあるマシンを作ることは実質的に不可能となってしまうだろう。

新ルール案では回転数制限も見送られている。つまり2021年のルール大改定までは回転数制限は導入されないということだ。回転数制限はトップスピードを制限する有効な手段だが、特にホンダとドゥカティは強硬に反対している。

新ルールによって見えてきたことが他にもある。ドルナはメーカーとの対決姿勢を明確に打ち出したということだ。電子制御ユニットと、アクチュエータ(訳注:電子制御システムで機械的に動かされる部分)の間に追加デバイスを入れることを禁止している。ここはMoto2とMoto3で抜け道として利用されてきて、MotoGPでも大問題になる可能性があった部分だ。最も天気英的なのは2012年にいくつかのMoto2チームが導入していた特性クイックシフターだ。マルク・マルケスが使っていたのはよく知られている。これはクイックシフターの回路に後付けコンポーネントを追加することで点火カット時間を短縮し加速を改善するというものだった。電子制御システムとスロットルバタフライやインジェクターやイグニッションといった機械部分の間に追加コンポーネントを入れれば統一電子制御システムではできないことまでできてしまうようになる。つまり標準電子制御が有名無実のものとなってしまうということだ。

とは言えこれはルール作成側とチームとの良くあるいたちごっことも言える。メーカーとチームはいつでもルールブックの裏をかいて有利な立場を得ようとする。ルールブックが厚くなれば、これに伴い抜け穴も増えるのだ。税法と同じだ。ルールが増えれば、知恵を絞れる部分も増えるのだ。そしてさらにルールが増えていくことになるのだろう。

以下は新ルールに関するプレスリリースである。(以下略)
============
SCAT3、覚えておきましょう、ってかレース関係者は必携ですね。

|

« スタッフを入れ替えたことで来年のペドロサは強くなるだろう、と中本さん | トップページ | シルバーストンが2014年のどん底だった、とクラッチロー »

コメント

脳震盪の影響というのは分かる気がします。
以前、私も頭を路面に激しく打ちつける事故にあった事がありました。
しっかりしたヘルメットで外傷は皆無でしたが、そこから丸一日は目が回るような目眩がしたことを覚えてます。
確かにレーサーがその状況だと他者に危険を及ぼす可能性は高いでしょうね。
しっかりした対策だと思います。

投稿: motobeatle | 2014/12/22 15:13

>motobeatleさん
 をを!そんな経験をお持ちとは!!
 脳震盪の危険性が言われるようになったのは意外と最近のことなので、けっこうがんばったタイミングなのかもしれませんね。日本のレース界はどうなんでしょうか?

投稿: とみなが | 2014/12/22 21:42

国内はどうのでしょうか?
知りたいところですね。
ありがとうございます。

投稿: motobeatle | 2014/12/24 11:58

>motobeatleさん
 なんか期待薄な感じですが・・・。

投稿: とみなが | 2014/12/25 22:33

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/69409/60835673

この記事へのトラックバック一覧です: MotoGPルール変更:燃料制限は2016年から22L。SCAT3脳震盪テスト導入等々 :

« スタッフを入れ替えたことで来年のペドロサは強くなるだろう、と中本さん | トップページ | シルバーストンが2014年のどん底だった、とクラッチロー »