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カル・クラッチローへのインタビュー

ドゥカティからLCRに移籍が決まったとたんに、なんだか走りが良くなっているクラッチロー。彼への独占インタビューをCRASH.netが行っていますので訳出。
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CRASH.net:今年は仕事の上でもプライベートでも重要な年となりましたね。MotoGPに来て初めてのワークスライダーとなって、そして結婚もしました。ご自身は何か変わったと思いますか?

クラッチロー:実際には何も変わってないですね。まずルーシーとは結婚前から6年も一緒にいるんで、まあ結婚ってワクワクするものですけど二人の関係は何も変わってないんです。幸せだしお互いに心地良い。でも結婚したら楽しいよねって言ってたんです。考え方は何も変わりませんけどね。
 コース上では思った通りにいかなかったのは残念ですね。結婚した年にうまくいけばいいお祝いになったんですけどね。でも実際にそう思ってるわけじゃなくて、ルーシーとのプライベートとレース生活は分けるようにしてるんです。レースより生活が大事ですからね。誤解しないでほしいんですけど、レースのことは大好きだしこの仕事も気に入ってます。でもここ何年かでバイクに乗ることより生活の方が大事だってことがわかってきたんです。


CRASH.net:その心境の違いはどこからきたんでしょうか?以前とは異なり、去年はポールも獲得して優勝争いもできるようになっというのが理由でしょうか?以前は自分の実力を示そうとやっきになりすぎていたとか?

クラッチロー:若いときにはレースで人生が埋め尽くされていて、気持ちがそれに集中しちゃうんですよ。でも振り返ってみると、成功しようとしゃかりきになっているのってちょっと気狂いじみてたってわかるんです。でもそれじゃあだめで、リラックスして自信を持って気持ちよくやらないといけないんですよ。


CRASH.net:つまり「急がば回れ」ということですか?心地よい環境で幸せな方がいいライディングができると。
 ピットにいらっしゃるお父さんも含めて、レース現場で家族に囲まれているというのはどれくらい大切なんですか?

クラッチロー:実際にはちょっと違うんですよ。父さんもレースに来ますけど、それほど僕のレースに口を出してくるわけじゃない。もちろん父さんはメカニックのみんなやチームとうまくやってるし、歓迎してもらえますけどね。


CRASH.net:つまりテニスみたいに親がコーチでプレイヤーに大きな影響を与えてるというわけじゃないんですね。

クラッチロー:ええ、父親が一緒にいる他のライダーとは違いますよ。全然違う。うちの父さんは現場に来たいから来てるだけで、何か仕事があるわけでもスポンサーやチームと交渉するわけでもないんです。彼はそういうことはなんにもしない。だって自分でもできるしちゃんとマネジメント会社と契約してますしね。彼は現場が好きでレースが好きで、ピットサインを出したいだけなんですよ。もちろん彼にいてもらってうれしいですよ。でも親が自分のために働いてくれるような他のライダーとは違って、父さんがいないと困るわけじゃないんですよ。


CRASH.net:ドゥカティに来るまではとても家族的なテック3ヤマハにいましたけど、今年はいろいろあって蚊帳の外に置かれているように見えます。実際ドヴィツィオーゾとイアンノーネの方が会社に近いところにいるんですか?

クラッチロー:言葉の定義によりますね。チームはとても良くしてくれるし、ピットの僕の側もみんな一生懸命やってくれる。つまり僕のリザルトが伴ってなくて、それで状況が悪くなって、実際自分でもうまく乗れてないと思っていて、だから文句を言える筋合いじゃないし、それで夏に決断したんです。
 イアンノーネは実質的にワークスライダーですよ。給料は会社がずっと払ってますしね。今年の初めから彼の方が僕よりサポートを受けてると思います。ドゥカティを攻めようとは思いませんよ。そういうもんだし、実際成果も上がってますしね。彼はワークスライダーで、要するにドゥカティには3人ワークスライダーがいるってことなんです。1人が違うチームにいるってだけでね。自分が蚊帳の外に置かれてるとは思いませんけど、イタリア人でない人間が、オールイタリアンのチームにいるってのは楽じゃないんですよ。もちろんオーストラリアではチームが僕のことをあきらめてないってことを見せてくれたし、今でもすごくサポートしてくれてるんですよ。そこは間違えないでほしい。その時点での最速・最強のライダーがサポートを受けられるってことなんですよ。


CRASH.net:この2〜3戦、調子がいいのはなぜなんですか?

クラッチロー:この3戦は僕が好きなコースだったってのもありますね。マシンのことも信頼できるようになったし、自分のことも信頼できた、コースも好きだったということです。技術的なサポートのことじゃないですよ。もうそうしたアップグレードは僕にはないし、マシン自体はシーズンはじめから変わってないんです。
 情報はいろいろもらっているし、でもセッティングはあんまり変えてませんね。アラゴンでもマシンの変更は少なくて、ライディングの問題だったんですね。僕がちょっとだけ今までよりリスクをとろうとできたんです。もてぎはがっかりな結果でしたね。オーストラリアよりがっかりですよ。だって行けると思ってたし、良い結果が出せるはずだったんです。表彰台には昇れなかったかもしれないけど、良い結果を出して他の2台のドゥカティとも競り合えると思ってたんです。


CRASH.net:去年のことを考えると、いちばんの違いはワークスマシンに乗ってるってことなんですが、ヤマハとドゥカティではどちらのサポートが手厚いんですか?それとワークスライダーとサテライトライダーのいちばんの違いは何ですか?

クラッチロー:今年はテック3でワークスマシンに乗れたんです。そうすればヤマハからのサポートも大きくなったでしょうね。でもワークスチームに席がなかったんです。今年のポル(エスパルガロ)と同じ状態ですね。あと2年、どこにも行けないでしょ?ヤマハはホルヘとヴァレの両方と2年契約をしてしまったんですよ。つまりそういうことなんです。それでポルがワークスライダーを破ったらどうなるでしょうね?僕はテック3でそんなことを考えていて、それでドゥカティに移籍することにしたんです。今年も同じ状況でワークスに席がなくなってしまってます。
 ドゥカティはイアンノーネとドヴィの2人と2年契約をして、もし僕が来年ドゥカティでチャンピオンを獲っちゃったらどうなるでしょう?自分のキャリアを考えてテック3から移籍したときと同じ状況ですよね。コース上で力を発揮できるかどうかという話じゃなくて、自分のキャリア全体を考えての決断なんです。ワークスチームに入ったのも、そのメリットがいっぱいあったからで、でもネガティブなこともいっぱいあったんです。最大の違いは会社から直接サポートが受けられるってことですけど、今年見ての通り必ずしもそういうわけではないんですね。


CRASH.net:LCRに行ったらHRCとの関係はどうなりそうですか?

クラッチロー:テック3の時と同じような感じでしょうね。でもテック3でも結果を出せましたから。ワークスチームじゃないんでフルサポートってわけにはいかないでしょうけど、アップグレードパーツも、ちゃんと良いもので、しかも他のライダーが使わないんならもらえるでしょう。来年マシンを替えればもっといけるという自信もありますよ。
 でも今のチームをけなそうとかは思いませんよ。来年もここで走ってたらもっと良い結果を残せたでしょうからね。でも当時はそういう気持ちにはなれなかった。残りの1戦、ドゥカティで走れるのが楽しみですよ。良い走りがやっとできるようになったわけですし、日本とオーストラリアではリタイアになったけど、コース上では良い走りができたんです。


CRASH.net:シーズン終盤に向けて良いレースができるようになったことは、やはり重要ですか?不調のままヴァレンシアテストになってホンダで良いタイムが出せたらドゥカティで手を抜いていたとか、ドゥカティを乗りこなせなかったとか言われることになったと思いますか?

クラッチロー:自分では速く走れるってわかってましたし、それが証明できたというだけですね。ある朝目が醒めてみたら突然遅くなったなんてことはないんですよ。自分では速さは失われてないって思っていたんですけど今シーズンはそれが発揮できませんでした。僕なりに理由があって、マシンの問題だけじゃないんです。今年はうまく乗れていなかったのは事実ですよ。
 テキサスでのクラッシュで手を怪我してしまってレースは欠場して、次のレースではあんまり距離を走れなかったけどドヴィに近いところでゴールできました。それ以降も相変わらずマシンの感触は伝わってこないし、バルセロナではマシンが壊れてしまう。まあうまくいかない理由はいくらでも挙げられますよ。でもシーズン終盤で速さを見せられたおかげで、自分にもやれるところを証明できたと思ってます。


CRASH.net:ドヴィやイアンノーネと比べた際のリーンアングルの少なさについてずっと行ってましたけど、結果が出せるようになってもそれは同じ状況なんですか?

クラッチロー:今でもドヴィほどには倒せてないですね。コーナリングスピードはドヴィと同じくらいなんで問題は無いんですけど、彼ほど倒せないコーナーがたくさんあるんです。理由はまだわからないし、まあ正直言うとそれはどうでもよくなっています。そりゃコーナーを速く曲がるにはリーンアングルは稼げた方がいいですし、そこで僕らは苦労してますけど、もうそこは気にしないことにしたんです。意味がないですからね。


CRASH.net:2015年にはLCRでジャック・ミラーがチームメイトになりますね。Moto3からいきなりMotoGPに来ることについてどうお考えですか?彼のことはもうよく知ってますか?そして彼は来年結果を出せると思いますか?

クラッチロー:ジャックはいいやつだと思いますし、彼はMotoGPで走るだけの潜在能力はあるんで、うまくいくといいですね。ただMotoGPで走るには冷静さが必要ですね。Moto3でやってるみたいに腕を振ったりとかMtoGPではできませんから。まず誰かに怒ってる暇なんかない。ウィリーもできない。そんなことをしてたら遅くなるだけですよ。
 Moto3が楽だって言ってるわけじゃないですよ。実際たいへんだし、GPはみんなたいへんですからね。タイトル争いは激しいし、でもMotoGPは最高峰クラスなんです。Moto3だと後ろを走って次の周に2台抜きとかできますけど、MotoGPでは無理なんです。スタートから全力で行かなければならない。精神的にも肉体的にも限界で、マシンも限界まで走らせなきゃならない。それが最初から最後まで続いて、手を抜く余裕なんてないんですよ。


CRASH.net:スーパーバイクでのキャリアが長いですよね。英国選手権と世界選手権ですが。GPと比べてスーパーバイクの人気についてどう思いますか?

クラッチロー:ちょっと残念ですよね。どうすればいいのかはわからないですけど。ドルナがスーパーバイクの興行権を買って、それから良くなったと想いますよ。ルールも新サーキットもね。でも観客が来ない。なんで見に来ないのかはわからないですけど、きっとまた盛り返すでしょう。ブランズハッチやドニントンにみんなやってくるようになると思いますよ。フォギーやトースランドやホジソンの時代みたいにね。スーパーバイクで育ったようなものだし、レースも楽しかったし、お客さんもたくさんいましたね。またそういう風になればいいと思ってます。でもMotoGPじゃないんですよね。みんなMotoGPが大好きで、木曜の観客だけでスーパーバイクの週末の観客総数を上回るんじゃないんでしょうか。すごいライダーもいるんだから残念ですよね。テレビで見られるというのがとても大事なんですよね。


CRASH.net:英国選手権はどうですか?

クラッチロー:今いちばん注目してるのがBSBですね。お客さんも多いし、シリーズの運営の仕方もうまいですよ。国内選手権だったらファンもそれほどコストをかけずに移動できるからだって言う人も多いけど、それでもお客さんがいっぱい入っているのはいいことだし、僕が走っていた頃から見ている人に加えて新しいファンも増えている。運営がいいんでしょうね。


CRASH.net:MotoGPのキャリアを終えたらBSBを走りたいと思いますか?それともレース界から引退するんですか?

クラッチロー:さっき言った通り、レースより生活の方が大事だし、他にしたいこともたくさんあるんです。レースの他にもやってる仕事もあるし。誤解しないでほしいんですけど、バイクレースがいちばん大事ですよ。他のことは今のところ二の次です。でもキャリアを終えたらレース以外が中心になるでしょうね。いつも言ってるんですがレースの現場に身を置きたいという理由だけでレースをする気はないんです。レースが好きですけど、そうなくなる時期が来るかもしれないし、速く走れなくなるかもしれないし、怪我をするかもしれない。引退後にはライダーを手助けしたいってことはずっと言ってます。毎周レースに来るなんてことはしたくないですけどね。もう何年も旅続きですから。だからライダーの手助けをして、育てていきたいと思っています。まずは自転車レースがしたいですけどね!


CRASH.net:ベン・スピースが自転車チームを持っているが羨ましいですか?

クラッチロー:いや、そんなことはないですよ。だってバイクレースをやってる今でも自転車でも彼には負けないですよ!自転車に乗るのが大好きで、夢は自転車チームを持つことだったんです。バイクレースを始める前のことですけどね。だから引退後は是非そうしたいと思ってます。たぶんそれが将来の夢ですね。でも僕的には国内戦クラスのチームじゃなくて、フルスペックのチームがほしいんです。すごく時間がかかりそうですけどね!


CRASH.net:フェルナンド・アロンソがエウスカルテル・チームを買おうとしたのに刺激されたんですか?

クラッチロー:それも将来的にはそれもありかもしれないですけど、まずはMotoGPのレースに集中したいですね。その他のことは二の次でいいです。レースをやめたら、って10年後くらいでしょうけど、そしたら他の仕事のこととあわせて、チームを買うというのも考えてもいいですね。


CRASH.net:今年はキャリアでいちばん辛い年だったと思いますが、モチベーションの持ち方は変わりましたか?きついシーズンのおかげで気分転換して、レースを楽しんでいるんだと自分を見つめ直す時間が大事だとわかったとか。

クラッチロー:もちろん6か月前に、あと10年MotoGPで走りたいかと聞かれたら、たぶんそれはないと答えたでしょうね。でもアラゴンの予選後だったらあと20年!って答えてたかもですよ。気持ちの問題で、もちろん浮き沈みはあるんですけど、最終目標はいつも同じで、とにかく戦える状態でありたいということなんです。で、そういう状態の時はもっと走っていたいと考えるようになる。
 ケイシーと話したんですけど、バイクはまた乗りたいけどレース自体にはもう興味がないって言ってましたね。引退したらそうなるんでしょうし、予選直前とかレース直前の小雨についても、もう結構って感じでしょう。でも僕はまだMotoGPでできるだけ長い間走り続けたいと思っています。戦える状態でいたいですけど、別にそれを誰かに対して証明しようとしたいわけじゃない。そういうのには興味がないんです。
 達成すべき目標はあるけど、それが達成できなかったからと言って、ただサーキットにいたいためにレースをしてるということではありません。自分がやってきたことには満足しているし、MotoGPのワークスチームに入れたことにも満足しています。世界最高の連中と働けたわけですしね。それにスーパースポーツの世界チャンピオンにもなった。レースを引退しても人生は続きますけど、今はレースを続けていきたいですね。
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クラッチローのお父さんが、なんとなくかわいいw。

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コメント

いつもありがとうございます。
カルは、誤解を招きやすい言動が多いんですが、実際に話をしている時の雰囲気、そして、プレカンで周りを爆笑させるユーモア等々、いい意味でcrazy Eglish man ですね。 nice guyです。 マルケスとの絡みなんてメッチャ面白いです。 昨年のアッセンでの決勝レース最終ラップの接触の際の発言であったり、今年のオーストラリア予選後にマルケスをからかったコメント等々・・ 爆笑しました。 ドゥカティ離脱については、自分の予想と当たっていた部分があります。 契約を解消する直前は、「ドゥカティはイアンノーネとワークス契約を結びたいが、カルが契約を解消しない限り出来ない」 なんて露骨に邪魔者扱いされていましたよね。 個人的には、LCRとの契約は大正解と思っています。 立場を軽んじられることはプライドが許さないでしょう。 ワークスに乗れるのは、実力があり、尚且つ right momentにその実力を発揮する必要があり、今はその意味では最悪の時期です。 マルケスは偉大ですが、ケイシーの引退なしにはレプソル入りは無理で恐らくグレシーニかLCRだったかと。(ワークス待遇とは思いますが) ロッシでさえも、仮にスピースの成績がホルヘと同等、もしくは少し落ちるくらいであればヤマハとの契約は難しかったでしょうし。 チャンピオンを取れるシートが実質4つしかない状況が続く限りこのジレンマは続いて行くと思いますが、カルの様なライダーには、やはりちゃんとした道具を与えたいですよね・・

話がそれてしまいましたが、2年後、カルには笑っていてほしいです。 ひょっとしたら一番好きなライダーかもしれません。

投稿: ken | 2014/11/05 13:07

>kenさん
 ですね。カルの笑顔が今から楽しみです!

投稿: とみなが | 2014/11/06 22:43

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