« 公式リリース>マレーシアGP2014 | トップページ | No1ライダーでないからといってヤマハを離れたのは失敗だったとロッシ »

ミラーとマルケス:それほど大げさに騒ぐほどのことか?

ランキングトップのアレックス・マルケスと2位のジャック・ミラーが11ポイント差で最終戦ヴァレンシアにもつれこむという熱い展開となっているMoto3について、Mat Oxley氏が記事を書いています。Motor Sport Magazineより。
============
23年前、ルカ・カダローラとヘルムート・ブラドルが250ccタイトルを巡って激しい争いを繰り広げたが、それは現在Moto3で争われているアレックス・マルケスとジャック・ミラーの戦いにそっくりだった。ミサノで2人が最終コーナーをサイド・バイ・サイドで立ち上がると、イタリア人のカダローラはわざと肘を出し、ドイツ人のブラドルをダートに押し出す。カダローラは1000分の9秒差で勝利を挙げ、ブラドルは悔しい2位に終わった。

その次の週末は西ドイツGPだった。最後の数コーナーを見渡せるホッケンハイムの円形闘技場を思わせるグランドスタンドは地元のファンで埋まり、そしてもちろん雰囲気は友好的な物ではなかった。カダローラがスタジアムセクションに来る度に観衆は彼を大ブーイングで迎えたのだ。カダローラには殺害予告まで届いており、予選ではグランドスタンド前で転倒するというミスも犯している。ふらふらになった彼をマーシャルが危険な区域から連れ出す間、群衆はさらに傷を広げようとでもいうように彼をののしっていた。カダローラが怪我を負ったことで、多くの観衆は喜んでいたように見えたものだ。

<1991年250ccミサノ最終ラップ>

私はスポーツ愛国者ではないが、それでも自国の選手を応援したい気持ちはちょっとはある。彼/彼女がおなじパスポートを持っているという理由だけでうれしくなるのだ。つまり地理的な偶然で自分のヒーローを選んでいるということでもある。しかし1991年のホッケンハイムは恐ろしい雰囲気であり、すばらしい戦いに水を差してしまったと思う。

カダローラがミサノでやったことは間違いだったが、ドイツ人ファンはライダー同士の戦いに介入すべきではなかった。ジャック・ミラーはこの日曜にセパンで間違ったことをしたか?限界を踏み越えてしまったのは確かだ。しかしレーサーはそれくらいするものではないのか?性能に劣るKTMで4台のホンダを相手に戦うオージーはチャンピオン争いの真っ最中であり、そうなれば接触もあり得るだろう。

ミラーがやったのは2008年にヴァレンティーノ・ロッシがラグナセカでやったのと同じことだ。4台のNSR250RWの誰かがコーナー二つ分でもクリアな状況を手に入れれば、どんどん先に行ってしまうだろうことをミラーは良くわかっていた。だからこそ彼はロッシがラグナセカでストーナーにしたことをやらなければならなかったのだ。

これは昔から起こってきたことである。歴史上初めてレースが行われた時から、ライダーはライバルに対して少しだけ限界を超えたアタックをして、相手を萎えさせてきたのだ。膝を使い、肘を出し、チャンスがあればライバルの顔に唾を吐きかけていた。当時のヘルメットはオープンフェイスだったのである。

先週日曜のMoto3では何度か接触があったが、低速コーナーでちょっと触れたに過ぎない。2年ほど前にはこうしたことはコメントもされなかった。激突したわけでもなく、誰かの命を危険にさらしたわけでもない。ミック・ドゥーハンのような昔のライダーがくぐり抜けてきた激しい争いの中では普通のことだったのだ。

昨今では状況が違うのはもちろんである。レースの状況が変わったからではなく、全世界中継と、スローモーションとソーシャルメディアが一体となって、大したことのない出来事を大げさに騒ぎ立てるようになっただけなのである。

ミラーのレースは素晴らしかった。最高速にわずかに劣るKTMの不利をカバーする走りを見せたのだ。エストレア・ガルシアのアレックス・マルケスもすごいレースをした。しかし彼は何度かミスを犯している。1コーナーではかなり無理をしていた。ミラーがすばらしいブレーキングでインを差しているのにマルケスはアウト側で自分のラインを守ろうとしていたのだ。しかしそれは成功するはずのないやり方だ。タイトル争いをしているとなってはなおさらである。アウト側のライダーは危険にさらされることになるのだ。マルケスが自分のポジションを維持したまま逃げ切れると思ったのはナイーブに過ぎる考え方と言わざるを得ない。

ミラーは1コーナーで何度もフロントから転倒しそうになっていた。フロントタイヤが滑る度に彼はアウトにはらみ、そうでなければ彼はマシンをあえて滑らせマルケスがマシンを起こしてアウトにはらみ、ポジションを落とさざるを得ないようにしていた。

ドゥーハンも全く同じことをやったろう。彼はかつて私にこう言った。「誰かがアウトから行こうとしたら、僕はマシンを起こしてラインを変えていたんだ。でもそれは相手もわかっていたしね。だからやることはひとつしかなかったんだよ」
それでもマルケスが冷静さを保ったのは印象的だった。跳ね返されるたびに彼は冷静にトップを取り戻そうとしていたのだ。普通のティーンエイジャーなら冷静さを失い、やりすぎてクラッシュしてしまうところだ。

彼の運命を決定づけたのはダニー・ケントが追いついてきたという事実だ。ミラーの戦略もケントの追走に手を貸した。ミラーとマルケス、エフレン・ヴァスケス、アレックス・リンス、ジョン・マクフィーとのバトルはトップグループのペースを落とすことになり、他のライダーが追いついてきてしまったのだ。ミラーの戦略はシンプルなものだった。彼とマルケスの間にできるだけ他のライダーを入れようというものだ。ホルヘ・ロレンソが去年のヴァレンシアで同じ戦略をとっている。彼もペースを落とし、他のライダーをバトルに加わらせようとしていた。

さて、私はヴァレンシアで誰を応援するだろうか?実は誰も応援するつもりはない。感情が高ぶり過ぎてしまうだろうからだ。ただレースを見て、その瞬間を楽しもうと思う。そして最も速く最も賢いライダーが勝つことを祈ろう。

もちろん地元民が誰を応援するのかは決まっている。しかし2000年のカタルニアで馬鹿者がしたようなことはしないだろうと思っている。靴下に石を詰めて勝者のケニー・ロバーツJrに投げつけたのだ。

ミラーはいささか奇妙な状況におかれている。日曜には彼はホンダが最初のMoto3タイトルを獲得するのを阻止するために全力を尽くすだろう。翌日には彼はホンダのMotoGPライダーとしての活動を開始するにもかかわらずだ。彼はセパンで笑いながらこう語った。「ホンダの人たちにはやな思いをさせてやりますよ。彼らには行ってるんです。『MotoGPマシンにまたがる前にファッ○ンなあんたたちを負かしてやる』ってね」
============
とは言え、スペインでミラーは大ブーイングを浴びるんでしょうね。それはそれでレースの光景。そこを跳ね返して良いレースをしてほしいものです。

|

« 公式リリース>マレーシアGP2014 | トップページ | No1ライダーでないからといってヤマハを離れたのは失敗だったとロッシ »

コメント

ドゥーハンはトップに立ったらペースを
落として、レース全体を混戦にするとか
そういう策はしなかったと思うけどね。
ミラーは策を弄しすぎるように思います。

ミラーは次も同じ作戦で行くってコメントしているので
また、エルボー合戦になりそうな予感が・・。

投稿: ブラインドカーブ | 2014/10/30 15:27

>ブラインドカーブさん
 まあドゥーハンの場合ほとんどが独走できたんで、あんまりえげつなさが目立たなかったってのはありますね。
 個人的にはエルボー合戦くらいなら大歓迎ですw。

投稿: とみなが | 2014/10/30 20:40

ケーシーやミックがああいうミラーの
戦い方を見て、なんてコメントしているか
聞きたいですね。

投稿: ブラインドカーブ | 2014/10/30 21:18

>ブラインドカーブさん
 ドゥーハンはどうかわかりませんが、ストーナーは怒りそうですね。

投稿: とみなが | 2014/10/30 21:21

「わざと肘を出し」って、モトクロスをある程度のレベルでレースを経験していれば当たり前のことなんですけどね。肘を出さないで直接ハンドルが接触すると、あっという間に転倒してしまうので。

このミサノでのルカの汚いところは、ダートまで押し出そうとしていることですね。厳密にはギリギリまでですが相手を大転倒させかねないライディングです。

レース終盤に一回だけ当たる(当たってしまった)のであれば、二輪レースには付きもののバトルだと思います。
ミラーは、レース終盤だけではなく、何回も、マルケスに当たっていますよね。ミラーがマルケスにやられたら怒りまくっていたでしょうね。ちょっと、Mat Oxleyさんの記事には同意できないですね。

まぁ、レースディレクションは今回のミラーの走行について問題なしと判断したようですから、これからはOKとなるのでしょうけどね…。後味が悪いレースでした。

投稿: mac | 2014/10/30 23:26

>macさん
 まあアラゴンではミラーが激怒りしてましたしねえw。

投稿: とみなが | 2014/10/30 23:58

私はバレンシア戦でミラーを応援します。
彼は軽量級では125ccクラスのドヴィツィオーゾ以来の、興奮させてくれるライダーですね。

投稿: りょうじ | 2014/10/31 06:26

>りょうじさん
 そして来年のMotoGPでの活躍も楽しみですね!

投稿: とみなが | 2014/10/31 22:57

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/69409/60564014

この記事へのトラックバック一覧です: ミラーとマルケス:それほど大げさに騒ぐほどのことか?:

« 公式リリース>マレーシアGP2014 | トップページ | No1ライダーでないからといってヤマハを離れたのは失敗だったとロッシ »