« 日本GP:獲ってみたらもっとたくさんタイトルがほしくなる、とマルケス | トップページ | ミカ・カリォはなぜアスパーとフォワードの誘いを蹴ったのか »

2014年もてぎ日曜まとめ:ロレンソの復活、マルケスのタイトル獲得、ヒートアップするMoto3

素晴らしい日曜を回想しつつ、いつものMotoMatters.comの長文まとめです。
============
マルク・マルケスが日本にやってきたのはホンダにとって初の地元開催でのタイトル獲得をもたらすためだ。モヴィスターヤマハは地元ファンと会社の偉い人たちの前で優勝するためにやってきた。最終的に「偉い人大戦」は引き分けに終わったと言えるだろう。ホルヘ・ロレンソが彼の得意なスタイルで勝利を飾り、ヤマハの偉い人にいい思いをさせた。そしてマルク・マルケスはヴァレンティーノ・ロッシをはじき飛ばし2位を獲得、タイトルを阻むことのできる2人の前でゴールすることで2014年のMotoGPチャンピオンに輝いたのだ。マルケスはホンダが所有するサーキットで、そしてホンダ社長の伊東孝紳氏の前でチャンピオンを獲得してみせたのである。ロレンソもマルケスももてぎにきた目的を果たしたのだ。

ホルヘ・ロレンソの週末はほぼ完璧なものだった。予選は勝利に向けての単なる一ステップに過ぎなかった。彼はセカンドローから素晴らしいスタートを切ると、彼は闘争心をむき出しにして1コーナーでマルケスを抜き、チームメイトのヴァレンティーノ・ロッシの後ろにぴったりつけるまで他のライダーを次々と屠っていく。ロッシはフロントロースタートを活かしホールショットを奪っていた。その後ろにはポールのアンドレア・ドヴィツィオーゾがいたが、ロレンソは次のコーナーですぐに彼を抜いてしまう。

ロッシは必死でロレンソを離そうとするが、ロレンソは彼の後ろにぴったりつけたままだ。しかしマルケスが落ち着きを取り戻しアンドレア・イアンノーネとドヴィツィオーゾを抜くと、ロレンソは待つのをやめる。ロレンソがバックストレートエンドでハードながらもクリーンにロッシを抜いてトップに立つとロッシは逆襲の機会をうかがうがアウトにはらんでしまい、気付くとドヴィツィオーゾに抜かれそうになっていた。

その時点からレースはロレンソのものだった。彼のペースが速かったために他のライダーはついていくことができなかった。ロレンソ自身、かなり無理をしていたのだろう。ヤマハの2人はどちらも今年最高にきついレースだったと言っている。トップ4は、2014年のランキングトップ4だが、全員ものすごくきついレースをしていたのだとレース後にロレンソは言っている。

最速ラップをひとつのミスもしないで刻み続ける。猛烈な集中力を持続し続ける。それはロレンソが今シーズン序盤にできなかったことだ。理由は誰もが知っている。シーズンオフの手術後に体調が完璧に回復していなかったこと、新型ブリヂストンのリアのエッジグリップが去年ほどではないということ、去年より燃料制限が厳しくなった中、ヤマハのスロットルレスポンスがスムーズでなくなったこと等々だ。ロレンソは体力の回復のためにハードなトレーニングを行っている。その結果、これまでにないほど体調は万全だと本人は言う。ヤマハはロレンソとロッシが「信じられないほどの改善」と言うほどM1を再び乗りやすくしてみせた。マシンがバランスを取り戻したのは誰の目にも明らかだ。クールダウンラップが終わるとパルクフェルメに2台のヤマハワークスマシンが並ぶのだから。

それ以上にロレンソに影響しているのは彼自身の気持ちであろう。リアタイヤへの不満を口にすることはなくなった。まだ気に入ってはいないだろうし、2013年ほど使いこなせてはいないが、気持ちを切り替える努力もしているのだ。サマーブレイク明けにその努力が形になっている。インディアナポリスでGPが再開されたとき、彼は連続2位を記録し、アラゴンではついにシーズン初優勝を遂げた。その時は自分でも予想していなかったし、途中から雨になるという天候を活かしきったからではあるが、ドライの時点から彼は速かったのである。

もてぎでの彼の勝利は昔のロレンソスタイルの復活を意味する。傲慢と言えるほどのレース運びでライバルを退けたのだ。日本のサーキットを走るその姿はローマ時代の将軍がチャリオットを走らせるかのようだった。ロレンソの親友であるマックス・ビアッジがローマ皇帝とあだ名されていたが、今回のロレンソこそ、その名にふさわしい。ロレンソの尖った鼻、命令するのに慣れたような風貌、傲慢で高慢とも言える態度、M1を素晴らしい速さで走らせる様子、まるでセレコウス人を前にしたローマ皇帝そのものである。まあ正直言うと現地で観ることができたら最高だったろう。マシンを駆るロレンソがどれほど力強かったかよくわかっただろうから。テレビでは楽に乗っているように見えたがコースサイドなら彼が何よりも自身の意志でマシンをコントロールしていたのがよくわかったに違いない。

もしこのロレンソがカタールにいたならマルク・マルケスのタイトル防衛はもっと苦労するはずだったが、そのロレンソはシーズン序盤にはどこかに消えてしまっていたのだ。しかし本当のロレンソが戻ってきた。マルケスは残りシーズン、厳しい挑戦を受けることになるだろうし、2015年はもっと接近した戦いになるはずだ。

ロレンソの復活はヤマハM1の改良によるところも大きい。この2戦の優勝、そしてミサノでのヴァレンティーノ・ロッシの優勝をカウントするとヤマハは3連勝ということになる。マシンの戦闘力は増し、この冬にシフトダウンもシームレス化して、さらにパワーを増やしスムーズなエンジンにすれば、来シーズンは相当良いスタートとなるだろう。ロレンソは復活を遂げ、ロッシは自身にとって初めてとも言えるレベルの高い戦いに直面して、これまでに無いほどうまく乗れていると言われている。マルケスの来シーズンのチャンピオン防衛は今シーズンより厳しいものとなるだろう。

しかしマルケスにもまだまだ伸びる余地はある。それをもてぎで証明したのだ。慎重なスタートは、レース後にマルケスが言っている通り、ミサノとアラゴンのクラッシュの痛い思い出がよぎったためだ。しかしその後すぐに落ち着きを取り戻し、前に出て行った。S字でドゥカティが苦労しているのを観て、比較的楽にアンドレア・ドヴィツィオーゾを抜き去ると、次のターゲットはロッシとなる。彼はドヴィツィオーゾよりは強力な相手だ。最初にV字コーナーで前に出ようとするが、次のヘアピンではらんでしまう。しかし次のラップでロッシを抜くと、そこでロッシとペドロサに抜かれなければチャンピオンを決定するというポジションを確保した。

彼はロレンソがロッシを抜いた時点で優勝はあきらめたと言っている。その時点からレースの焦点をロッシとの戦いに絞ったのだそうだ。2位を確保するために全力を尽くし、そしてロッシとペドロサの前でゴールした。2度目のMotoGPタイトルを決めたその瞬間、彼は安堵のあまり崩れ落ちそうになっていた。彼の安堵っぷりはこの2戦が21歳の若きタイトルホルダーにとっていかに辛かったかを物語っている。外からはそのプレッシャーは見えなかったかもしれないが、明らかに彼は重圧に苦しんでいたのだ。最初のタイトルは誰も期待していなかった中で獲ったものだ。彼は言う。「去年は全然プレッシャーはありませんでした。ミスをしても許されたんです。ルーキーでしたから」。2014年、完璧なスタートを切ったことで周りからは楽なシーズンだと思われていたかもしれないが、マルケスにとっては違ったのだ。すこし自信過剰になっていたのかもしれない。彼はこう告白する。「たぶん後半はアドバンテージがあることでミサノとアラゴンではリスクをとりすぎたのかもしれませんね」。しかしそれは報われず、マルケスはアラゴンでのタイトル獲得のチャンスを逃してしまった。本来なら地元ファンの前で決めるはずだったのだ。辛かったかもしれないが、いい教訓にはなったようだ。

彼のタイトル獲得のキーワードは「経験」である。マルケスはレース後の記者会見で、去年の経験が、そして自身のおかれた状況をいかにコントロールするかについての経験がものをいったと語っている。去年はMotoGPマシンでの走り方を学んでいたのだが、今年はどのサーキットでも自分の走りと比較できる。しかし逆境をどうコントロールするかこそが鍵だったのだ。カタールの開幕戦では6週間バイクに乗っていなかった。トレーニングで足を骨折したからだ。しかし彼はダートトラックでトレーニングして、そこで攻めすぎたせいで怪我をしたという多くの批判を一蹴している。「そんなの馬鹿げてるって言う人もいましたけど、最終的には、ライディングを改善したくて速くなりたかったらトレーニングが必要なことは明らかになってるし、リスクもとらなきゃいけないんです」

逆境をコントロールする術の中にはMoto2での最初の年に身に付けたものもある。セパンでの怪我は彼のキャリアを終わらせかねないものだった。クラッシュで物が二重に見えるという怪我に悩まされたのだ。家族とそしてマネジャーのエミリオ・アルサモラといっしょに5〜6人の医師をまわり、怪我を理解しようと努めようといたとマルケスは記者会見で語っている。視力を回復する前の手術で成功は保証できない、再びバイクレースをできるとは保証できないと彼は言われている。そしてその5か月の間、彼はポジティブでいようと努めていたという。「でもその5か月はとても長かった」と彼は言う。手術が成功したとわかると、キャリアの中でもっとも重要な教訓を得たのだ。「今を楽しまなきゃ行けない。だってこれからの未来に何が起こるかはわからないんですから」

MotoGPのタイトルは決まったが、残りの2つのサポートクラスもタイトルが決定は間近だろう。ティト・ラバトがMoto2のプラクティスを支配していたものの、レースではそうはいかなかった。レースを支配したのは、スタート直後からレースをリードしフィニッシュまで2位との差をコントロールしていたトム・ルティだった。マーヴェリック・ヴィニャーレスが差を縮めるとルティもそれに反応し、やすやすとヴィニャーレスを退けたのだ。

ラバトはプラクティスで見せた好調を維持できなかったものの、チャンピオン争いのライバルでチームメイトのミカ・カリォも良い結果を残せず結局5位に終わっている。ラバトはその2つ前でゴールした結果、5ポイントの差を広げることに成功した。ラバトとカリォの差は38ポイント、ラバトのタイトル獲得を阻む望みはますます薄くなっている。このペースでいけばMoto2のタイトルはセパンで決まるだろう。

週末最高のレースはMoto3だった。今シーズン最高と言ってもいいだろう。しかし同時にここでタイトルがほぼ確定したのも否めない。アレックス・マルケスがジャック・ミラーとの接触があったアラゴンでポイントリーダーの座を奪っている。ミラーは臥薪嘗胆、もてぎでの復讐を誓ったのもの、それがかえって高くついてしまった。5台でのバトル(ミゲール・オリヴェイラがクラッシュで脱落するまでは6台のバトルだった)の勝者は最終ラップで最も果敢なライダーになるだろうと思われた。その結果残り2周というところで激しいポジション争いが繰り広げられることになった。誰もダウンヒルストレートでトップにいたくなかったのだ。スリップストリームを使って90度コーナーで抜かれることは避けたかったのである。ミラー、ダニー・ケント、マルケスがバックストレートに一団となって入っていく。しかしマルケスのとったラインが最も賢いものだった。ミラーは他の2台を抜こうとしたが、シフトダウンを焦ったためニュートラルに入ってしまいコーナー進入を失敗してしまう。ケントはラインをはずしダートに乗り上げてしまい、やはり最終コーナーを失敗してしまう。その結果マルケスは簡単に勝利を手にすることができたのだ。そして彼のポイントリードは11から25にまでひろがった。ヤコブ・コーンフェイルがアレックス・リンスをレース序盤で押し出したのにも助けられた。リンスは中団に飲み込まれてしまったのだ。幸運、というか、まあハプニングと言った方がいいのだろうが、とにかくそういうものがマルケスのタイトル獲得を近づけたのである。

マルケス兄弟がタイトルに近づいている。そしてもてぎでは他の人たちが二人を讃えることになった。タイトルを決めたのだからヴァレンシアでMoto2走らないのかとマルクがまた尋ねられると、彼はそれを否定し、しかしこんな冗談を言ってみせた。「Moto3ならありかもですね」。弟のタイトル獲得を手助けしようというのだ。それもいいかもしれない。ホンダも参戦していることだし。まあそれは冗談としても、マルク・マルケスなら実際そんなことをする可能性もゼロとは言えないだろう。そしてマルク・マルケスがレースをやめる日というものなど来るのだろうか?
============
マルケスのチャンピオン獲得ですっかり影の薄いロレンソの優勝ですが、ちゃんとそこから取り上げるのが安心と信頼のMotoMatters.comですよ。

|

« 日本GP:獲ってみたらもっとたくさんタイトルがほしくなる、とマルケス | トップページ | ミカ・カリォはなぜアスパーとフォワードの誘いを蹴ったのか »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/69409/60473955

この記事へのトラックバック一覧です: 2014年もてぎ日曜まとめ:ロレンソの復活、マルケスのタイトル獲得、ヒートアップするMoto3:

« 日本GP:獲ってみたらもっとたくさんタイトルがほしくなる、とマルケス | トップページ | ミカ・カリォはなぜアスパーとフォワードの誘いを蹴ったのか »