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アマチュア写真家はプロと作品を比較すべきか?

海外でも結構いますが、日本のサーキットでは長い望遠レンズを構えたカメラ好き/写真好きが観客席にたくさんいます。マダムこと私の妻も300mmにテレコンつけてサーキットをうろうろしてたクチですが、なかなかいい写真が撮れないって悩んでました。そんなアマチュア写真家のみなさんへのプロからのメッセージです。MotoMatters.comでお馴染みのScott Jones氏のコラムをPHOTO.GPから。
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最近私はある友人と話をする機会があった。彼は今年のシルバーストンで撮ったMotoGPの写真が私の写真のように見えないのだとがっかりしていたのだ。パブで飲み食いしながら私がラップトップでその日に撮った写真を選択している最中、彼としばらく話をした。彼は私の隣に座っていたので、私がAdobeのLightroomでその日の写真にキーワードを付け、写真を選び、そして私のWeb上の顧客に送るまでの一部始終を見ることができた。

彼が同じ日に撮った写真と私の写真との最大の違いはフォーカスである。環境は同じだ。少なくとも天気や光の加減などに違いはない。しかし私の写真リストは捨てる写真が少ないのだ。

彼は私のプロ用機材がどれくらい関係しているのか、そしてお金さえあれば私のような結果を得られるのかについて聞いてきた(彼はキャノンの100-400mmLレンズキャノン7Dを持っている)。さらに彼は私にコースサイドに入る許可証がどれくらい関係しているのかについても尋ねてきた(私たちが話し合っていたのはコースサイドの写真のことだ。彼はピットレーンでは写真を撮る術がないのだから)。どれくらい落ち込むべきなのかとか、彼が週末に撮った写真を私のものと比べることにどれくらい意味があるのか、といったことが議論の中心だった。

そういうことを考えている熱心なアマチュア写真家は彼だけではないだろう。そこで私はここにその時の議論のポイントを書き留めておくことにした。この話に聞き覚えがあるなら、たぶんあなたはプロではなく真剣に取り組んでいるアマチュアだと思う。真剣なアマチュアとはモータースポーツの現場に自分でそろえられる最高の機材を抱えて駆けつけ、週末中全力を尽くすという意味だ。状況が許す限り最高の写真を撮ろうと努力しているに違いない。

その前提の上で、あなたが興味を持ちそうな私の見方を書いておこう。

コースサイドへのアクセスと機材の良さは確かに写真の質を左右する。コース上の被写体により近づけるということはフレーム内で被写体が大きくなるということであり、データ量も豊富になるということだ。もし被写体(2輪でも4輪でも)が遠すぎればその被写体はぼやけ、細かい部分はつぶれてしまう。被写体に割り当てられるピクセル数が少なくなるからだ。さらに対象がカメラから遠いと空気のせいで画像が歪むのである。暖かい日には特に問題となるが、涼しくて天候が穏やかで、くっきりした写真が撮れると思っても、空気によって歪んでしまうことがあるのだ。

コースサイドにアクセスできるということはたいていは(いつもとはいかないが)フェンスやその他の邪魔者を回避できるということでもある。フェンス周りで写真を撮ろうとするとなかなか苦労するものだ。それがないというのはかなりのアドバンテージである。さらに許可証を持っていればコースを様々な視点から撮影できることになる。フェンスの後ろからではなかなかライブ感に満ちた写真を撮ることは難しいとは言えよう。

機材についてはどうだろう。6,000ドル(訳注:65万円)のカメラが2,000ドル(22万円)のカメラと同じだったら、6,000ドル払っている我々は馬鹿者ということになる。9,000ドル(100万円)のレンズと1,500ドルのレンズを比べた時にも同じことが言える。300ドル(3万円)のレンズについては何をか言わんやだ。

しかし電子的な製品の常として、価格/パフォーマンス比で見ると、高価格帯では価格の上昇ほど性能は上昇しないものだ。つまり最高のものを手に入れるための追加投資は、最初の投資とは比べものにならないほど多くなるということだ。

何年か前、私は非常に成功し技術もある(成功と技術は必ずしもリンクはしないのだが)4輪レースカメラマンに会ったことがあるのだが、彼はカメラ本体については実にユニークなアプローチをしていた。最高のキャノンを2年ごとに買うのではなく、最新型のセミプロ向けを2台買っていたのだ。そしてそれを1年使うとebay(訳注:ネットオークションサイト)に出品し、次のシーズンにはまた最新のミドルレンジの本体を入手していた。

それほど高名な写真家がキャノンのフラッグシップを使っていないことに驚いたが、彼はそれはお金の無駄だと切って捨てたのだ。彼の好みのミドルレンジの本体は5年前に使っていたプロ向けより性能が良く、当時よりいい写真が撮れるということなのだ。さらに価格はずいぶん安く、現金払いで買えるとも言った。もし深刻な問題があれば新型を買えばいい、そうすれば高い機材の修理のために時間と金を費やし無くて済む、というのが彼の主張なのだ。

つまり私の最初のコメントに関して言えば、2,000ドルではなく6,000ドルの本体を買うのはバカバカしいということである。個人的には最後のちょっとしたパフォーマンスのひと伸びがほしいのだが、それが個人的趣味なのか実際に仕事として要求されているかについては私にもわからないというのが正直なところだ。実際最高価格のカメラにできて安いカメラにできないことはあるのだ。しかしたいていの場合、特に4輪であればミドルレンジを買うというのは悪い考えではないだろう。

私の経験ではニコンD300D300Sでスピードの速いバイクを撮るよりもD3D4で撮った方が明らかに良い結果が出せた。フォーカシング性能がより高いのである。4輪も2輪も撮っているが、4輪の方がカメラの性能が低くても大丈夫なようだ。これは4輪が2輪よりはるかに大きいこと、つまりオートフォーカスが利きやすいためであると私は考えている。さらに同じ距離からなら4輪の方が大きいために被写体のデータ量が多くなるということもある。4輪のコーナリングスピードが遅いということもあるかもしれない。焦点を合わせやすいのだ。カメラマンからすれば大きな被写体を追いかけるのはより簡単だし、いい写真が撮りやすいということである。

だから4輪の写真を撮るならミドルレンジでも十分かも知れないが、バイクレースでうまくいくかどうかは難しいところだ。個人的にはMotoGPのコースサイドから撮るならD4やD3Xの方がD300より満足度が高い、ただしピットレーンでは話が別だ。D300やD300Sでも美しい写真が撮れるのである。

D300とD300Sの名誉のために言っておくと、私はコースサイドでも両方を使っている。以前はD700でいい写真が撮れていたし、今の方がより良い写真を撮れている。2〜3年もすればD4やD3Xでもっといい写真が撮れるだろう。経験がものを言うのだ。私はD300やD300SよりD4やD3Xの方が慣れているのだ。

これこそが私が最後に言いたいことである。プロとアマチュアを比べるというのはどういうことかというと、要するに大事なのはどこから撮れるかとか機材がどうこうではなく、経験の差なのである。

冒頭に挙げた私の友人は確かに熱心な写真家ではあるが、毎日の仕事は写真とは何の関係も無い。彼はMotoGPや国内選手権に時々出かけて写真を撮っているだけなのだ。だから彼がどれほどモータースポーツ写真を愛していて、撮影を楽しんでいても、年間5回ほどしか機会がないのである。

私の考えではこれが彼や彼と同じ境遇にあるすべての人が自分の写真をプロと比べて落ち込みすぎる必要がないという理由だ。

私が本気でMotoGP写真を撮り始めて以来、何万コマもの写真を撮ってきた。さらに現像にも多くの時間を費やしてきたし、何が間違いだとか、どうすればもっと良くなるのかについて研究し続けてきた。自分が尊敬する他の写真家の写真も研究した。いろんな実験をして技術も磨いてきた。その時々で手に入れられるカメラで、オリジナルの写真ができるだけよくなるようにしてきたのだ。そしてコンピュータを使って現場での失敗をカバーしながらよりよいものを作ろうと努力している。

嫌な気分になりたければ、あなたの機材をプロのMotoGPカメラマンに渡して、週末中、彼/彼女をフェンスの観客席側においてみるといい。プロならあなたと同じ機材であなたが立ち入れる場所から全然違う写真を撮ることに賭けてもいい。テクニックと、たぶんもっと重要な決断力が違うのだ。

例えばジジ・ソルダーノにミドルレンジの機材で写真を撮らせたとしよう。彼が撮る写真はやはり素晴らしいだろうことは疑いもない。確かに彼がコースから1mのところで撮った写真とは違うだろうが、やはり素晴らしいものになるはずだ。彼が撮る写真はコースサイドへのアクセスやプロ用のニコンとは全く違うところにその意義があるからである。

だからもしあなたがこないだのGPで撮った写真がプロの撮ったものとは全然違っているからとがっかりしても、一晩でそれを解決するためにプロ用機材にお金を注ぎ込むなどとは考えないでほしい。観客席のフェンスの内側に入るつてを探すのも意味はない。根本的にあなたの写真を変えるには自分の機材を今よりもっと知性と愛情をもって使うことである。私が言いたいのは、いつ、どこにカメラを向けるか、そして自分のほしい画を撮るためにどうセッティングを決めるかということに精通すべきだということなのだ。そしてシャッターを切っているときに、どうカメラを動かすか(またはどう固定するか)をよくわかっているべきである。

そうしたことを身に付ける最も確実な方法は、考えながら練習するとことだ。ただたくさんシャッターを切ればいいのではない。そんなことをしても出かけて何千枚も写真を撮って、でも何の目的もなくやる。それではだめだ。考えながら写真を撮る。次に撮る写真がどうなるといいか、明確なイメージを持って撮る。そうしながら何がうまくいって何がうまくいかないかと試していく。そうすれば次にどうすればいいかがだんだんわかってくるのだ。たくさん学べば、気付かないうちにそれだけいい写真が撮れるようになる。そしてシャープな良い写真が撮れるようになるのだ。

その頃にはピントの合っているだけの写真では満足できなくなるだろう。ピントの合っている写真はいくらでも撮れるようになる。そして自分の写真にもっと別のものがほしくなるのだ。そうなって初めて写真が本当に面白くなり始めるのである。

リンク先の写真ニコンD4ニコン500mm f/4.0
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まあ身も蓋もない結論っちゃー結論ですが、それでも「考えながら撮れ」というのはとても正しい気がします。昔と違ってデジタルなんで試行錯誤にフィルム代を犠牲にする必要はありませんから、いろいろ考えながらやるのがいいんでしょう。ちなみに私は(マダムに影響されたのもあるけど)「写真は構図と影で決まる」説。

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コメント

私は「写真はフォーカスと露出で決まる」説です。そういう写真しか撮っていないというのもありますが。

投稿: HappyMan | 2014/09/24 11:36

興味深く拝見しました。実は似たようなやり取りを2年前の茂木で某カメラメーカーのデポさんとしたことがあります。その時も2輪と4輪の被写体の大きさの違いが大きな話題になりました。2輪撮影の難しさを再認識した次第です。「考えて撮る」はどのような場面でも重要です。特に動画のように撮れる電カメではなおのことでしょう。

投稿: 46_gallina | 2014/09/24 14:30

>HappyManさん
 それもありですが、私はその上に何をのせてくるかを期待しちゃいますね。

投稿: とみなが | 2014/09/24 22:02

>46_gallinaさん
 やっぱ2輪は難しいんですね。私はモータースポーツ写真を撮ろうと思ったことはないんですが、確かにたいへんそう。リーンもあるからオートフォーカスは難しそうですし。
 そして考えることは何にでも重要と。

投稿: とみなが | 2014/09/24 22:04

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