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新しいライディングスタイル、新しい転倒スタイル

先日のミサノを受けてマン島TTウィナーであるマット・オクスレイ氏がコラムを書いています。彼のコラムはいつも新しい視点を提供してくれるので、とてもおもしろいです。Motor Sport Magazineより。
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さて、「老犬に新しい芸を覚えさせることはできない」という諺を考えた人は自分が何について語っているのかわかっていなかったのだろうと思う。

この日曜、イタリアで中年男が上り調子の若者を打ち破ってみせた。これにはいくつか理由があるが、まずは彼が新しい芸をひとつかふたつ覚えたということが最も大事だろう。

ヴァレンティーノ・ロッシはGP年鑑モトコース(Motocourse)の古い版を読んでYZR-M1の乗り方を変えたに違いないとしか私には想像できない。なぜなら彼の乗り方は1990年代のBSBチャンピオンであるジェイムズ・ウィッザム(James Whithnam)の乗り方にそっくりだからだ。ヨークシャー出身のウィッザムの乗り方はずいぶん奇妙だった。上半身を完全にバイクからのり出し、首をコーナー内側に伸ばし、まるでコーナーの頂点に向けてマシンを引っ張るかのようだったのだ。

ウィッザムは暴れ馬だった1992年型スズキGSX-R750でこの乗り方を身に付け、その後、彼は絶好調を維持できた。この乗り方はロッシにも向いていたようだ。彼はハンドリングが素晴らしいホンダに乗る若く生きのいいマルク・マルケスに追いつくにはどうしたら良いのかと科学的に分析した結果、このライディングスタイルに到達したのだ。

「もしトップにいつづけたいなら最速のライダーが何をしているのか学ばなければならないんです」とロッシは言っている。「今の僕は前より上半身をのり出してコーナリングを改善しているです。よく観察した結果ライディングポジションを変えて、マシンの動き方も変えたんですよ。今は前荷重も多めにしてウィリーをコントロールしてます」

前荷重を大きくすることでロッシがかねてから言っている、マシンより人間の方が重要だという言葉が証明された。他のライダーがウィリー防止のために電子制御の介入を許してしまっている一方、ロッシはそのせいで点火がカットされて加速が鈍るくらいなら自分でコントロールした方がましだと知っているのだ。つまり彼は自分で荷重をコントロールすることで電子制御による助けを断っているということである。

もちろんロッシがやったのはそれだけではない。彼の2014年型M1は去年型より彼のライディングにあっているのだ。もちろん今年モデルのいちばんの進化はクラッチ無しでシフトダウンできる新型ギアボックスにあるのだが。このおかげでブレーキングでもホンダに伍するようになっている。

「新型ギアボックスのおかげでマシンは安定してますからブレーキングでも深く突っ込めるようになりましたね」とロッシは言う。「全後輪ともにグリップできるよう、減速にはエンジンブレーキも活用しているんです。去年は前輪だけに頼っていましたからね」

そしてミサノである。MotoGPでヤマハがホンダを加速で離すのを見たのはいつ以来だろう?私は覚えていないがものすごく昔の話に違いない。そしてそれが起こったのは一回だけではない。少なくとも2回起こっているのだ。ロッシがストレートでマルケスを2回置き去りにしているのである。

ことによったらプラクティス初日を無意味にした金曜の雨のせいかもしれない。ヤマハはホンダより偏ったところの内マシンで、セッティングも楽なのだ。通常であればホンダのライダーは完璧なセッティングのための完璧なスケジュールをこなしている。金曜はサスやジオメトリーといった昔ながらのセッティングを行い、それが済んだら土曜は電子制御のセッティングに集中する。ミサノではそのスケジュールを2日間に詰め込まなければいけなかった。明らかに時間が不足していたようだ。さらに路面が滑りやすかったためにトラクションを得られないRCVがずいぶんと弱くなったのも大きかったはずだ。クランクが軽いためパワーの出方がピーキーなのである。決勝でのマルケスの加速が鈍っていたのはホイールスピンのせいでトラクションコントロールが働き、点火カットによりパワーが落ちたためである。

MotoGPのレースはコース上だけで行われているのではない。ピット作業もレースの大きな部分を占めているのだ。金曜の雨がマルケスとロッシの両方に影響している。簡単に言うならロッシ、彼のスタッフ、そしてヤマハはマルケスとそのスタッフとホンダよりいい仕事をしたということなのだ。

レースについて言うなら、マルケスはロッシについていくために明らかに自らの限界を超えて攻めていた。最終の高速右コーナーで何度か彼はアウトにはらんでクリッピングにつけなかった。彼が安全を重視して2位を確保するためにスロットルを緩めるのではなく、勝利を目指して戦うことを選んだのは尊敬すべきだろう。彼ほど2位以下にポイント差をつけていれば、普通のライダーなら慎重さを選ぶのも勇気であると考えるに違いない。しかしマルケスは生まれながらのレーサーなのだ。よほどのことが無い限り、彼は限界まで攻め続けるのだ。

そして彼は転倒した。別にロッシが新しいライディングスタイルを発見したから転んだわけではない。むしろマルケスは新しい転び方をしてみせたのだ。彼のスタイルはいつもリーンアングルが深く膝も肘も地面に接している。つまりフロントからスリップダウンする前からとっくに地面に着いているのである。これまた見事な転び方である。

決勝でマルケスがフロントから転んだのは右の低速コーナーで、マシンとライダーが一体になって路面を滑っていった。マルケスには30分ほどにも思えたかもしれないその2秒ほどの間、彼は全精力を注ぎ込んで膝と肘でマシンを立て直そうとしていた。マシンが止まって初めてライダーがマシンから離れたのだ。確かにクラッシュはしたが、ほんのちょっとの差だったのだ。

マルケスは2週間ほど前、ブルノのテストでも同じことをやっている。マシンは完全に横倒しになり、膝と背中と肘は地面に着いていた。しかしその時にはコントロールを取り戻したのだ。彼はそれができたのである。

私はロッシの勝利を言祝ぎたい。私を含めて多くの人が二度と無いかもしれないと思っていた勝利なのだ。そしてマルケスのことも言祝ぎたい。彼は新しい、そして痛みを伴わないクラッシュの方法をみせてくれたのだ!唯一の問題はもちろんそのためには64度という深いバンク角が必要だということである。
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マルク、恐ろしい子・・・。

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コメント

あの状況でマルケスが転倒したのは
ブルノでのアレを
何処かでやってやろうと
考えていた様な気がしてなりません…
ラグナセカで予選中にミスしたフリ?
してコークスクリューの下見
した件やスタートミス→追い上げなど考えると…
あの状況で転倒ってと考えてしまいます。
まあまあわざと転倒したなんて、そんな事有り得ないけど
そう勘ぐりたくなる位な次元
悪魔に魂売ったのか?
マルケス恐ろしい子

投稿: ほす | 2014/09/19 00:12

>ほすさん
 それは思いつきませんでした!おもしろいです!!なくはないかも・・・。

投稿: とみなが | 2014/09/19 21:06

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