« 2014ミサノMotoGP日曜まとめ:伝説ライダーの復活 | トップページ | ストーブリーグ表2015(2014.9.15時点rev.2) »

MotoGP:サンマリノGPまとめ(技術的視点から)

今度はCycle WorldからKevin Cameron氏による、なぜヤマハがホンダに勝てたのかに関する技術的側面を中心とした解説です。
============
ヴァレンティーノ・ロッシとホルヘ・ロレンソの2人のヤマハライダーが1−2フィニッシュでホンダに完勝した。一方マルク・マルケスは10周目にフロントからクラッシュしており、マルケスのチームメイトであるダニ・ペドロサが3位となった。

プラクティス中の雨がまずは悪いニュースだった。日曜も雨になるならまだしも、プラクティス中に得た情報が使い物にならないことを意味するからだ。金曜のFP1とFP2がウェットだったため、マシンのセットアップは時間との戦いとなった。そして情報獲得競争に勝ったヤマハが良いセッティングをみつけ、結果としてマルケスのミスを誘うことになったのだ。

ミサノのコース図はまるで錨のようだ。錨爪の先端と錨の柄の先端に低速コーナーが設置され、それぞれが短いストレートでつながっている(ストレートの最高速は283km程度)。つまりホンダにアドバンテージがあるという風に見えるのだ。ホンダが得意とするのは低速コーナーとブレーキングスタビリティ、そして鋭い加速だからだ。

ではマシンとライディングスタイルの違いをみてみよう。ホンダは現時点でMotoGP最強マシンだと言われているが、マルケス、ペドロサの強みであるハードブレーキングを担保するためにフロントサスはマシンとライダーの荷重を100%支えられるよう硬くなっている。フロントが沈み込んだあたりでのサスの硬さを求めると、その分リアのスプリングレートも上げざるを得なくなる。そうしないとコーナリングの最中に荷重を掛けたときにマシンのリア側がフロント以上に沈み込み過ぎてしまうからだ。もしリアが沈みすぎるとフロントの荷重が抜けてマシンが出口でアウトにはらんでしまうのである。これは「スクワット・アンド・プッシュ(沈み込みの反動)」と呼ばれる現象だ。こうしてホンダライダーは思う存分ブレーキをかけられるのだが、その分、サスの硬さも求めることになる。

ミサノについてもう一つ重要な点は、路面のグリップが悪く、さらにバンピーだということだ。去年マルケスはこのコースについて「グリップはあんまりないし、それよりバンピーだというのも問題ですね。あちこちにバンプがある上にグリップも良くない。最大の問題はでもバンプですよ。それに合わせてセッティングしないといけないんです」と語っている。

去年ここで勝利したロレンソはそのレースの前にこう言った。「ブレーキングでマシンを減速するのに苦労していますね。それにいつも通りに加速しようとするとリアが空転しちゃうんです」。去年は日曜のウォームアップでは速さを見せ、チームが良いブレーキングのセッティングを見つけてくれたのだと語っている。

リアの空転は路面のせいだろうが、しかし減速で苦労するのはここ3年ヤマハにつきまとってきた問題である。ブレーキングを始めるとその瞬間からリアの荷重が少なくなり、リアが振れることになる。そしてもしリアタイヤが地面を離れると(マルケスはいつもそうだし、これをスムーズにやっているが)転倒の危険に直面するのだ。MotoGPの初期にはブレーキングの不安定性が深刻な問題だった。リアが振れ始めるとすぐにそれが止められないほど大きくなり、ライダーを投げ出したのだ。とは言え時代を経るに従ってそうしたリアの振れのきっかけをなくすための策がいくつかみつかってきた。一つはエンジンブレーキのコントロールで、もう一つはシフトダウンをスムーズにすることだ。

さてそろそろ核心に近づいてきたようだ。どのチームもサスを柔らかくするとメカニカルグリップが増すことはわかっている。柔らかいサスがバンプを吸収し、マシンが暴れるのを抑えることができるのだ。ルカ・カダローラとフレディ・スペンサーはどちらもサスのスプリングレートを低く(柔らかく)することでメカニカルグリップを得て、コーナリングスピードを稼ぐ助けとしていた。その分グリップの高いコーナーでサスがボトムしやすくなったことに対しては、スプリングのプリロードを上げ対処していた。そうしたライダーのマシンのシート部分を上から押したことのある人はみなこれにとまどったものだ。「ワオ!すごく硬いのが好みなんですね」と言ったものだ。しかし硬さとプリロードは別物である。

ホンダのライダーはどちらもダートトラックスタイルの走りで、ブレーキングはハードで深い。そしてコーナーではすばやく倒し込む。どちらについても、これを実現させるにはスプリングレートを上げなければならない('48年型ビュイック[訳注:ふわふわのサスペンションの車]でスラロームをすることを考えてみるといい)。このためにメカニカルグリップが失われることは百も承知の上だ。しかしマルケスやペドロサがやっているようなスライド走法によりタイヤが発熱することで、バンプではじかれても縁石でどきっとしてもすぐにグリップを回復できるのである。しかしミサノでは路面のグリップは平均以下であり、タイヤのグリップを回復させるほど十分に発熱させられないのだ。

トップライダーの区間タイムを見てみよう。これでわかるのはロッシのタイムは4区間とも安定しているということだ。一方のマルケスはセクション1、2で速いが、セクション3、4でははっきりと遅くなっている。そして後半セクションがミサノの特徴を最も表しており、11コーナーと14コーナーはその前のコーナーより低速でタイヤの右サイドに負担をかけるコーナーとなっている。

ヤマハのマシンはコーナリングスピードが速い分、ブレーキングをそれほどハードにしなくても良い上に、メカニカルグリップが高いことで滑りやすい路面でバンプがあってもホンダよりグリップを得やすくなっている。マルケスはセクション3、4で遅い分をセクション1、2で限界を超えて攻めることでなんとか取り戻しているのだ。つまりそれだけミステイク・ゾーンに足を踏み入れやすいということでもある。マルケスが勝ったレースでこれまでみせてきたように快適なペースで走っているのであればラップタイムは時計のように安定しているはずだ。しかしそれ以上に速く走ろうとすると、すべてを正しくこなすのが難しくなり、小さなミスが現れ始める。その結果としてラップタイムは安定しなくなりるのだ。はらんでしまったりインにつけなかったりといったミスは取り戻すのに時間がかかるからだ。ライダーが速く走れば走るほど、ミスは多くなり、しかも大きなミスとなる。それがミステイク・ゾーンだ。

マルケスやその他のトップライダーは誰もがケニー・ロバーツの格言を身にしみて知っている。「低速コーナーは低速で走れ」。しかしセクション3、4での遅れを取り戻したいマルケスにそれはできなかった。彼はコース前半の1速・時速70kmまで落とす右コーナーであるリオ(錨爪の先端)でフロントから転倒してしまった。リスタートしてレースには復帰したものの15番手で1ポイントしか獲得できなかったのだ。

ロレンソは土曜はハード側のフロントタイヤで好調だったが、他のライダーは日曜にソフト側を選択していた。彼は言う。「昨日はハード側で良かったんですけど、今日はエッジグリップが全然なかったですね。タイヤは安定はしてたんですけど、昨日ほどは良くなかった。限界まで攻めたんですが、ヴァレンティーノが強かったですね。彼は勝利にふさわしいですよ。
 まあスタートは良かったですけど序盤からリーンでもブレーキングでもフロントに自信を持てなかったんです」

ホンダがグリップを得られなかったことはペドロサの言葉でよくわかる。「2台のドゥカティ(イアンノーネとドヴィツィオーゾ)を抜くのに時間がかかってしまって、しかも抜いたら抜いたでフロントもリアも滑るようになったんです。マシンをコントロールするのがたいへんでした。
 2周もするとロレンソや他のライダーから離れてしまったんです」

ドヴィツィオーゾとイアンノーネは4位と5位でフィニッシュしている。これはドゥカティが「1周しか速くない症候群」から抜け出しつつあることを証明しているだろう。最終ラップまで良いタイムをキープできるようになったのだ。

ロッシが自身のライディングスタイルを変えながら向上し続けているのは私たちをワクワクさせてくれる。しかも彼は未だにレースが、バトルが大好きなのだ。大人が伸び盛りの若者に見せつけてやったとも言えるだろう。彼はサーキットからわずかの距離である地元、タブーリアの家族や友人やファンの前で1年以上も遠ざかっていた勝利を手にしたのだ。今回の勝利はさぞかし甘い果実だったに違いない。
============
技術系翻訳なのでちゃんと伝わっているかどうかですが、おもしろい記事でした。

|

« 2014ミサノMotoGP日曜まとめ:伝説ライダーの復活 | トップページ | ストーブリーグ表2015(2014.9.15時点rev.2) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/69409/60321200

この記事へのトラックバック一覧です: MotoGP:サンマリノGPまとめ(技術的視点から):

« 2014ミサノMotoGP日曜まとめ:伝説ライダーの復活 | トップページ | ストーブリーグ表2015(2014.9.15時点rev.2) »