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ワールドスーパーバイク:よりよいレースを産み出すための新ルール

来年からワールドスーパーバイクに導入される新ルール(全車EVOクラス化)についてKevin Cameron氏がCycle Worldに寄稿していますので訳出。MotoGPにとっても無視できない動きです。まあプロモーターの親会社は一緒ですから様々な動きが同期してるんでしょう。
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来年のワールドスーパーバイクは大きく変わることになる。市販車ベースをフルチューンしたレーシングマシンからコスト抑制型のノーマルに近い、言わば英国スーパーバイクやスーパーストックに近いものになるのだ。現在でもこのEVOクラスがグリッドを埋めるために12台参戦している。

一方でこれは経営的判断でもある。25年前は毎レース60台以上のエントリーがあったが、現在のSBKはいくつかのワークスと資金力のあるチームだけのものとなっている。このままいけばそのうち参戦台数は0となってしまうだろう。

そうはいっても私も含めて多くの人が最速マシンを作り上げるという魅力をこのクラスに感じているのも事実だ。エンジンやフレームやサスの改造に取り組み、その結果故障することのないチタンコンロッドや真空再融解法で作られたへたらないバルブスプリング、軽量マグネシウムホイールなどが導入されている。こうしたアイディアを含む様々なパーツが導入されタップタイムが縮まってきたのだ。サーキットにいないときには圧延機や旋盤やグラインダーベンチの横にいるのだ。充実した人生である。

新たに導入されるEVOクラスは恐れていたほどこうした技術を抑圧するものではなかった。何円にもわたってSBKはアメリカ人のスティーヴ・ホワイトロックの指導の下に発展してきた。彼はあらゆるレベルのバイクレースで経験を積んだ人物である。彼のポリシーは「彼らが必要なものを手に入れられるようにする」ことでグリッドを埋めるということだ。純粋なノーマルクラスのレースでは最新のバイクを販売しているメーカーが勝ってしまうことになると考えているのだ。新モデルには新技術が盛り込まれているからだ。そのため他のチームは追いつくために自分たちのパーツを改良しなくてはならない。ホンダのCBR1000RRにはフライバイワイヤー(電子制御式)スロットルがついていないため、ホワイトロックはチームにフライバイワイヤーの装着を許可している。

これは公式に認められた「ずる」だと考える人もいる。ドルナの親会社がWSBKの興行権を持つインフロント社を買った際に、彼らはホワイトロックのような考えを導入しないで接近戦を実現する厳格なルールを作ろうとした。ホワイトロックのやり方は主観的に過ぎると考えたのだ。元レーサーであるポール・スマートの息子のスコットがホワイトロックの替わりに技術監査を行うことになった。厳格なルールを求めるグループはやっと自分たちが認められるときが来たと喜んだものいだ。

しかしことはそれほど早くは動かなかった。結局ホワイトロック式の考え方が賢明にも引き継がれたのだ。ベースモデルがフライバイワイヤーを採用していないマシンを使うチームは2,500ユーロ(訳注:邦貨換算35万円くらい)以内でこれをとりつけられることになったのだ(2017年からは市販モデルにもホモロゲーションのためにはフライバイワイヤーが義務づけられる)。カムシャフトや他バルブタイミングシステムは自由に交換しても良いが、オリジナルの場所に取り付けられなければならない(バルブサイズや挟み角の変更は不可)。コンロッドは変更可能だが材質は同一でオリジナルの重量を超えてはいけない。このルールは実に現実的だ。ノーマルのコンロッドは、そして特に大端部(ビッグエンド)のキャップボルトはレースでの回転数に充分耐えられるように作られているのだ。シリンダーヘッドは混合気の流量を増やすために改造可能だがノーマルパーツから作らなければならず再鋳造は認められない(「いやこれはノーマルですよ。ノーマルパーツを使って一旦溶かして金型に入れたんです」という話もあった)。燃焼室も改造可能で圧縮比も自由にいじることはできるが、ピストンはノーマルでなければならず改造付加でオーバーサイズピストンの使用も認められない。

スイングアームピボットの位置は、はたつきを抑えるために重要だが、ノーマル位置から5mmの範囲で変更可能となっている。ノーマルで位置可変機構が導入されていなくてもだ。またスイングアーム自体も変更可能である。17インチでフロント3.5インチ、リア6.0インチまでのアルミ製であればホイールも変更可能だ(鍛造マグネシウムホイールは鍛造の上に削りだし加工が必要なため実に高額となる)。

ギアレシオは一時減速比も含めて固定であり、前もって決めなければならない。このおかげでチームはカセットギアボックスを用意する必要がなく、さらにすべてのギアに対して5種類ものレシオを用意するといったことからも免れられる。

ブレーキやサスペンション等の多くのパーツは許可リストの中から選択することができる。確かにこれはAMAプロレーシングが資金稼ぎのためにやったあのいやらしいパーツ許認可制を思わせるものではあるが、最新もMotoGP風ロッド貫通式フォーク(訳注:through-rod fork:訳に自信なし)なぞ3メーカーしかさいようできずお金の問題なのだから、このルールは合理的である。

そこで気がつくかもしれない。MotoGPで採用されている先進的だが費用のかかる技術、例えば自動シフトアップ/ダウンシステムや、CNCマシニングを施したピストンやヘッドで燃焼を最適化することは市販ベースのクラスには入り込む余地は無いのである。そんなことになったら持たざるものたちを表彰台から追い出すことになってしまう。

英国スーパーバイクの成功は誰もが認めるところである。グリッドは常に埋まり、いつでも接近戦があちこちで見られる。そのおかげで英国のライダーは世界でも最高レベルのレースに参戦できるのだ。スペイン選手権の成功も相まって、EVOクラスへの影響は多大だ。目的はエントリー台数の増加と接近戦によるエキサイトメントなのである。

原理主義者は「電子制御もひっぺがして、人間同士の戦いに戻すべきだ」とも言っている。確かにある面ではそれに共感できるところもある。60年前はレースは一人の人間が一つのシリンダーを使っていたのだ。そこについていたのはルーカス製のマグネトーひとつとアマルのキャブひとつである。しかしレースマシンはそのころから4倍以上のパワーを出すようになっている。アメリカ海軍がジェット機にアプローチと着陸のための電子制御を搭載しているのは、高度に訓練されたパイロットを一人たりとも失わないためだ。同じことがバイクレースにも言える。高度にチューンされたエンジンによるしっぺがえしは大きな事故を招き、グリップの高いタイヤはいきなり滑るのである。市販マシンだけでなくレースマシンにも電子制御は搭載されるべきだ。これがコース脇で待機している救急車の助けにもなるのだ。

確かに嫌われ者のインテークリストリクターについてもEVOクラスのレギュレーションには書かれている。ちゃんとした競い合いを確保するために慎重に表現された項目だ。極端な状況に対する抑止力でもある。仲間からある改造を使用としているチームがあるとホワイトロックが聞いたときのことだ。それが多大なアドバンテージをもたらすとしって彼はそのチームのピットに行き、こう言った。「わかったよ。でももしそっちがXを導入するなら、君らがYを使ってるってカワサキが講義するって言ってるんだけどね。だから慎重に考えた方がいいよ」。リストリクターの恐怖は同じような効果をもたらすだろう。性急に何か新しい機構を導入しようとすることに対する抑止力となるのだ。

人間がやることに変わらないものなどない。技術は常にシンプルなものから複雑なものに進化していく。放っておけばどんなものでも高額になりいずれ買うことができなくなるものだ。1972年にカスタムレーシングフレームを買ったときに私が払ったのは数百ドルだ。しかし今日Moto2チームはその400倍以上を払っている。物価上昇率を見込んでも67倍になるのだ。ナンセンス極まりない。

こんな風に価格が高騰するのはレースにとって良いことは一つもない。しかし技術発展が全くないのも悲しいことだ。すばらしいレーシングマシンがボーリングシューズ並の価値になってしまうのを見たい者はいないだろう。しかしSBKやBSB、CEV、そして(在りし日の)AMAプロレーシングプロスーパーバイクの楽しさは、一定のルールが必要であることを強く示唆している。もっとたくさんのアメリカ人ライダーがヨーロッパで走って、もっとたくさんのヨーロッパ人ライダーがデイトナを走る。そんな日が来るのを私は楽しみにしている。
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そして日本人ライダーも・・・。

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