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MotoGPタイヤをめぐる陰謀

Q1からQ2に進出したライダーには余分にソフトタイヤを供給すべきだというニッキー・ヘイデンの提案をMSMA(モータースポーツ製造者協会:ワークスマシンを供給するホンダとヤマハとドゥカティで構成される)が蹴った件についてのMat Oxley氏の記事。Motor Sport Magazineより。
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レースというのは基本的に利己的なものだ。それ以外ではあり得ない。いい奴は勝てない、という古くからの言い伝えが真実ではないのは、どんなに性格が良くても勝てるライダーはレースのことを考えるときには無慈悲な殺戮者に変貌するからである。レースがスタートすればなおさらだ。

しかしそんな厳しい世界でも全体の利益のために利己主義を引っ込めるべきときもあるのだ。

2か月ほど前、ニッキー・ヘイデンが良い考えを思いついた。彼はQ1/Q2という2回の予選が設定されていることの根本的な問題に気付いたのだ。Q1のトップ2がQ2を走ることになるのだが、Q2ではたいてい下位に沈んでしまう。既にソフトタイヤを使い切っているからである。そんな中でQ2に出るのにどれほどの意味があるだろうか?そこでヘイデンはこういう提案をした。Q1からQ2に上がったライダーには余分のリアタイヤを供給してはどうかというのだ。

ヘイデンの提案は非常に合理的なものである。もし他のライダーより15分長く走らなければならないなら、その分、余分にリアタイヤを供給されてもいいではないか。MotoGPのタイヤ本数は非常に厳しいのである。グランプリ・コミッションにその提案が提出されたとき、構成メンバーのうち3者、ドルナ、FIM、そしてIRTA(参戦チームの集まり)はヘイデンの提案は採択されるべきだと賛成した。

しかし構成メンバーの最後のひとつであるMSMAはこの提案を拒絶したのだ。結局Q1からQ2に上がったライダーは意味のないQ2を走り続けることになった。自分のポジションを上げる見込みがほとんどないにもかかわらずだ。

「ヘイデンの提案はすごくいいアイディアで、考えるまでもないと思ったんですけどねえ」とIRTA書記長のマイク・トリンビーは言う。「だからMSMAが拒否権を発動したときには驚きましたよ」(訳注:グランプリ・コミッションは全会一致が原則)

もちろんMSMAはワークスの利益を代表しているのではあるが、こういうときこそMotoGPは全体の利益を利己主義に優先させるべきではなかろうか。

MSMAが拒否権を発動した理由は誰にもわからない。グランプリ・コミッションは透明性の高い組織ではないのだ。しかしこういう理由があるのではという話をきいた。MSMAとしては2人だけが余分なリアタイヤを供給されるのは不公平で、そもそも15分余分にコースを走れるだけでも感謝すべきだと考えているというのだ。しかし摩耗したタイヤで走る余分な15分というものにどれほどの意味があるというのか?

さらにMSMAとしてはシーズン途中にルールを書き換えるのが嫌だったという話もある。しかしドルナがシーズン開幕直前にオープン2ルール(訳注:ファクトリー2ルールのことと思われ)を発表した時に、無理矢理(しかもばかばかしい方向に)書き換えさせたのは誰だったろう?さらに言うならアレイシ・エスパルガロが開幕戦カタールでオープンスペックのフォワードヤマハに乗ってフリープラクティスでトップに立ったとき、少なくとも一人のワークスのトップがドルナに対してオープンクラスからエクストラソフトタイヤを取り上げるようロビー活動したのを私は知っている。

エスパルガロにしても他のオープンクラスライダーにしてもコンディションが特殊だったカタールを除けばワークスにとっての真の脅威となっていない状況で、彼らは何を恐れているのだろう?

オープンクラスマシンのほとんどがMSMAの参加ワークスによって製造されているのだから、彼らも弱小チームに救いの手をさしのべてレースを楽しくしてもいいのではないか、それがモーターサイクルレーシングのためになるのではないかと考える人もいるだろう。Q1からQ2に上がったライダーが3列目に食い込むのが見られたかもしれないのだ。だからといってワークスがいらつくこともあるまい。

MSMAが奇妙な政治的振る舞いをしたのを見てもヘイデンは決して激怒することはなかった。ヘイデンは言う。「彼らにも理由があるんでしょう。なんか政治的なものだろうけど。タイヤが7本しか使えないのは厳しいですよね。Q2に出てもタイヤをセーブしなければならないんですから。別にワークスに影響があるとは思えないんですが」

ヘイデンの言うとおりだ。これはMotoGPの今後のレギュレーションに関する激しい戦いの中の小さな一コマに過ぎない。ワークスは2016年に発効される多くのコストカットルールについてドルナと争っている最中で、今回のタイヤ問題でもなぜ彼らがこんな態度をとったのか、誰にもわかっていないのだ。

戦争では良くあることだが、すべては戦術と戦略の一環なのである。敵に対してフェイントをかませたり、びっくりさせたりさせるのが手なのである。しかしワークスを食おうと死ぬ気で走っているグリッド中盤の選手がその犠牲になるのは正しいことでは決してない。
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海外メディアはMSMA(中でもホンダ)に対してとても厳しいのが常ですが、まあ今回はもっともなことを言っていると思いますよ。

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