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レースはどれだけ安全にすべきなのか?

MotorSportMagazineより、いつものMat Oxley氏のコラムです。
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ちょっと思索的な質問をしてみよう。バイクレースの安全性に限度はあるだろうか?別の言い方をするなら、MotoGPはどこまで安全であるべきか/危険であるべきか、ということだ。MotoGPはマン島TTに戻るべきか、しかし恐ろしい結果が待っているだろう。ではドルナは中東の産油国が持つ何兆ドルもの資産を利用して、すべてのコーナーに数千mもの砂のランオフエリアを設けた驚異的なサーキットを彼らの王国に作るべきなのだろうか?

私がこんな質問をするのは、正直言って奇妙としか言いようのない安全性のための「改善」がこのところ続いているからだ。ひとつはカタルニアの10コーナーである。バックストレートエンドにある低速左コーナーは下り坂でバンプがある上、F1のせいで滑りやすく、さらに(最も重要な点だが)最後の抜き所のため多くの転倒者を生じさせている。ここでだめなら勝てない、というコーナーなのだ。

去年のカタルニアGPでは10コーナーで都合28台が転倒しており、年間を通じて最も転倒者が多かったコーナーとなっている。しかし怪我をしたライダーは皆無だった。今年は21台が転倒しているが、やはり全員がレースに出場できた。

にもかかわらず6月のカタルニアGP後のテストでは、10コーナーでF1が使用している「安全な」コースを使うという提案がされている。最初に懸念されたのはブレーキトラブルや衝突の際の逃げ場がないことだ。スペースが不足しているためにグラベルを拡張できないからである。

何が起こっているのだろう?健康と安全に配慮しすぎた主催者がクラッシュや怪我が許されないという時代を先取りしてドルナをそっちの方向に持っていこうとしているのだろうか?

同じことがザクセンリングでも起こっている。安全委員会が11コーナーを改修したのだ。ここは元々勇気を必要とする高速右コーナーで、多くのライダーがコースアウトしている。去年は11コーナーで10台が転倒したし、今年は8台が転倒している。これまでの累計は64台になった。カル・クラッチローは去年も今年もこのコーナーの犠牲者だった。彼は2年続けて痛い目にあったがレースには出場できている。

カタルニアの10コーナーと異なり、ザクセンリングの11コーナーは高速で時速210kmにも達するコーナーだ。さらに左コーナーが7つ続いた後に初めて訪れる右コーナーであるというのも恐怖を加速する。30秒もの間タイヤの右サイドは接地することがないのだ。つまりタイヤ温度が上がらずグリップは非常に少ないのである。ほとんどのクラッシュが午前中の涼しいセッションに集中しているのがその証左だ。

タイヤ温度が低いというのはライダーにとっては恐ろしいことである。さらに悪いことに11コーナーはブラインドであり、しかも逆バンクとなっている上、10コーナーのすぐ後に続いているためタイヤに荷重を充分かけらないのだ。安全委員会に言わせれば、これでは事故が起こるのは当たり前だそうだ。

しかし同じ理由で私が全サーキットの中で最も愛しているのがこのコーナーである。ザクセンリグにつくとすぐに11コーナーに急ぎガードレールの前にわくわくして立つのが習慣となっている。

ライダーがクラッシュするのを見たいわけではない。ライダーがぎりぎりで戦うのを見たいのだ。それがバイクレースの魅力なのだ。もし人間の素晴らしい肉体とテクニックだけを見たいならテニスを見ればいい。しかし私が望むのは人間が闘争本能に駆られつつ、勝たなければいけない、でもクラッシュはできないというぎりぎりのラインで綱渡りするのを見ることである。私が見たいのは最高の才能を持つライダーたちが自らのテクニックでこのぎりぎりのラインを渡っていく様子である。私にはそれがバイクレースのすべてなのだ。

私の考えではレースというのは2速でライダーが滑っていくものではない。私の最大の恐怖は、いつかすべてのサーキットが、誰もが安全に走れるよう2速や3速で曲がるコーナーばかりになることだ。そんな日が来たら私はうちに帰ってガーデニングを始めるつもりである。

これは確かに難しい問題だ。バイクレースが危険になりすぎるのも私は望んでいない。しかし安全になりすぎたらスポーツとしては全く違うものになってしまう。私は無頼のアメリカ人作家のバーナービー・コンラッドの意見に賛成なのだろう。彼はこう書いている。「闘牛と山登りとモーターレースだけが本当のスポーツだ。あとはただのゲームである」(まあ私は闘牛がスポーツだとは思わないが)

1993年にミサノのなんということもないコーナーで転倒し脊髄を損傷したウェイン・レイニーでさえこれに同意する。「今でもライダーが挑戦しなければならないコーナーがあって、そういうコーナーは難しいものと決まっている。それを誰でも簡単に攻略できるものにするのかい?それは間違っているね。そういうコーナーは残しておかなければならない」

多くのライダーがこの11コーナーがいかにリスキーかについて語っている。冷えたタイヤと荷重不足が主な問題である。

土曜の午後に今年も派手に転んだクラッチローは言う。「暑くて天気が良ければ11コーナーは問題ないですよ。最高のコーナーのひとつがつまらなくなるのは見たくないですね。でも去年みんながクラッシュしたんでしょうがないですかねえ」

2013年の議論を受けて出た一つの回答が11コーナーのプロファイルの変更である。これは木曜に何人かのライダーが試している。私がこれを見たとき、あごがはずれるほど驚いた。コーナーの曲率を小さくするよう金属製の縁石が敷かれていたのだ。そしてブラッドリー・スミスとアンドレア・イアンノーネ、ステファン・ブラドルが時速190kmで通り過ぎていった。私は誰かが転倒して金属製の縁石にぶつかったらどうなるだろうかと不安になった。縁石の端は10数センチ路面から高くなっていたのだ。もちろんそうそう起こることではないだろうが、翌朝、金属製縁石が取り去られたその場所でスミスがクラッシュしたのだ。この金属製縁石はむしろ安全性を低くすることになったということである。

そして曲率を小さくしたところで根本的な問題は解決しないのである。相変わらずタイヤの右サイドは11コーナーでは詰めたいままだ。もうひとつの回答はブリヂストンが供給する左右非対称のフロントスリックだ。しかしこのタイヤは今回は間に合わなかった。税関を通すのに時間がかかったのだ。

ダンロップのより柔らかいMoto2用タイヤの方がうまくいっていたようだ。11コーナー最速のMoto2ライダーは時速200kmで、MotoGPでは205km。しかしMotoGPの転倒者はMoto2の2倍だったのだ。

Moto3ライダーのジャック・ミラーも11コーナーのテストを見ていた一人だが、正直者の彼はこう言っている、「くっそばかばかしいですね。最高のコーナーをつぶしにかかっているんです。これじゃあみんなにとって同じになってしまう。とにかくクラッシュしなきゃいいってことですよね」

ミラーの考えは多くのライダーと同じだった。みな高速のチャレンジングなコーナーでタイムを稼いでいるのだ。確かに彼らが安全性を改善するように声を上げたのだが、しかしその「改善」が実現すると、ほとんどのライダーは元に戻すように要求したのだ。

何よりもまずザクセンリングで5連勝を飾ったマルクマルケスが言っている(彼は「最高のライダーは①危険なコーナーを安全に走るために、②しかも誰よりも速く走るために、才能と知性を使う」という私の理論を体現している)。「11コーナーでは他のコーナーよりスムーズじゃなきゃいけないんです。でも僕の秘訣は10コーナーを少し遅めに走ることですね。11コーナーに安全に入るにはそうしないといけないんです。つまり10コーナーは犠牲にするってことですね」

別の言い方をすれば彼は10コーナーを遅めに抜けることで左に寄ることができて11コーナーでワイドなラインを獲れるということだ。これによって荷重を充分掛けて好きなだけリーンできるということなのだ。彼が他のライダーから抜きんでているのはこういうことだ。だからバイクレースはおもしろいのである。違いますか?
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違いません。

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